separater あいつの全てが欲しかった。 仗助に跨りそのまま腰を落とすと、勃起した熱い性器は僕の腸壁を抉りながら奥へと潜っていった。亀頭の太い部分が入ってくる瞬間がとても好きだ。何度回数を重ねて も、身も心も反応してしまう。 まるで初めてこの感覚を味わった時のように。淫らな声を止めることができない。 「そんなにいやらしい声出して……本当に感じてんだな、女の子みてえじゃん」 「ちがっ……ああ、僕は」 「俺が来ない間、ずっと寂しかったんだろ。ここが」 そう言うと仗助はにやりと笑い、僕の腰を掴んで強く突き上げた。急に奥深くまで犯されて、背を逸らしながら再び声を上げる。触れられてもいない僕の性器はすでに 硬く勃ち上がり、だらしなく先走りの滴をこぼしていた。 試験期間中だった仗助が数日家に来なかっただけで、僕は自慰でも足りないほど性欲を持て余していた。他の男と関係を持つことは考えなかった。この身体は隅から 隅まで仗助だけを求め続けていたのだ。16歳のものとは思えない大きさの性器の味も感覚も全て、すぐに思い出せるほど覚えてしまった。 最初の頃は使っていたコンドームはもう、いらなくなっていた。僕達の間を遮るような無粋なものは必要ないし、付けないほうが仗助を生で感じることができる。 お互いに気持ち良くなれるのだから、何の問題もないだろう。面倒な他のことよりも、快感だけが全てだった。 仗助は僕と会っていない間、まさか他の相手とこんなことをしていたのではないかと、急に不安に襲われた。こいつが学校の女子達に人気があることは知っているし、 その気になれば誰かを抱くこともできる。考えただけで嫉妬で狂いそうだ。仗助の全ては僕のものなのに。 何度か突き上げられた後、仗助は僕の中で射精した。待ち望んでいた熱いそれを、僕はうっとりしながら身体の奥で受け止めた。力を失った性器が引き抜かれると、僕の 尻の穴から精液が溢れ出し、太腿を伝い落ちていった。まだ達していなかった僕は余韻に浸りながら、仗助が見ている前で自らの性器を扱いた。そんな僕を見ている仗助の 性器は、再び勃起し始めていた。僕の痴態を見て興奮しているのだと思い、快感が更に高まる。もう何も考えられなくなり、かすれた声で仗助の名前を呼んだ直後に、 手やシーツを精液で汚した。ベッドに倒れ込んだ僕を抱き寄せると、仗助は乱暴なくちづけをしてきた。本能のまま相手を求める獣のようだと、舌を絡めながら思った。 僕は枕の下に隠していたナイフを取り出し、仗助に覆い被さった。そして自慰をしていた僕を見て勃起した性器にナイフを当てると、仗助の表情が凍りついた。 「露伴、あんた何やって……」 「お前は僕のものだ。男だろうが女だろうが、他の相手と同じようなことをしたら許さない」 自分では治せないんだろう、と静かに呟きながら僕はナイフの先端を性器の根元に近付ける。すると今まで黙って見ていた仗助が薄く笑った。 「あんたにできるのかよ……俺とのセックスに溺れてるくせによ」 「僕は本気だ」 「どうだか。でも安心しろよ、今の俺はあんた以外の奴とする気ねえから」 大きな手のひらが僕の頬を撫でる。先ほどまでの激しい行為とは違う優しい動きに、僕は胸が熱くなった。仗助を独占したいという気持ちが更に増した。 その首を締め上げる両手に力を込めると、仗助は表情を歪めて苦しそうに呻いた。騎乗位で繋がりながらも、僕は熱い衝動に突き上げられるままに締め続ける。 今日の夕方、仗助が見知らぬ女と一緒に歩いているのを見た。女は制服姿だったので、同級生か何かかもしれない。僕は町の中で偶然にもその光景を見た途端、裏切られた という気持ちでいっぱいになった。あれほど仗助は僕のものだと言い聞かせたのに。 僕は気が狂いそうになり途中でその場を離れたので、後であのふたりがどこへ行ったのか は分からない。本人に直接聞くことすらできずに、僕はいつものように家に訪れた仗助と当然の流れでセックスをした。 僕は仗助の温もり無しでは生きていけない。この世の 中に、僕以上に仗助を強烈に愛している人間など存在するだろうか。出会い方は最悪だったが、憎悪はやがて愛情に変わっていった。感情がひっくり返ることなんて、何も おかしくはない。一瞬の出来事ですら相手への印象を塗り替えるには十分だからだ。恋に落ちることに、時間も理屈も必要ない。 呼吸を塞がれて苦しいはずの仗助の性器は、腸壁の中で更に膨張して僕の中を萎えることなく犯し続ける。妙な感じがして首から離そうとした僕の手を、仗助が押さえ込んだ。 「やめ、るな……続けてくれ」 「仗助……?」 「こうやって首締められてると、よく分かんねえけどすげえ興奮する」 ノーマルだと思っていた仗助にこんな性癖があったとは知らなかった。しかし確かに性器は反応しているので、趣味の悪い冗談ではないらしい。 それ以来、仗助とのセックスの時には首を締めながら行うことが暗黙の了解となっていった。少し間違えれば死ぬかもしれない、そんなスリルがたまらないという。 僕のほうも殺人者になるかもしれない危険と隣り合わせの状態だったが、仗助が喜ぶのなら望みを叶えてやろうと思った。 数日後、僕と仗助は外出先で何とも言えない欲望に勝てずにラブホテルに入った。 近くに会った適当なところを選んだので、値段の安さに見合っているような狭い部屋だった。それでもふたりで愛し合えるならそれでも構わなかった。 四つん這いになって後ろから仗助を受け入れた後、体位を変えた。仗助の首を絞めやすいものへと。勃起している性器に跨り、腰を落としてから首に手をかける。 いつもより興奮しているせいか、僕は自分が意識しているよりも強い力で締めていたようだ。ふたり同時に果てた後、仗助は虚ろな目で息絶えていた。 僕は我に返って取り乱すどころか、それを見て満たされた気分になった。これで他の誰も、仗助に触れることができなくなった。こいつの最後の相手はこの僕だった。 仗助から身体を離した後、僕は持ち歩いていたナイフで仗助の性器を切り落とした。白いシーツや仗助の内腿、そして僕の手が噴き出した血で真っ赤に染まる。 切断してただの肉塊になった仗助の性器に口付けをした後、それを新聞紙に包んで鞄に入れた。そして僕は何事もなかったように、ひとりでホテルを出て帰宅した。 16歳の少年の遺体がラブホテルで発見されたというニュースをテレビで見た時、自分が逮捕されるのは時間の問題だなと僕はやけに冷静な頭で思った。 性器が切断されていたことで、この事件は猟奇殺人として報道された。仗助の葬儀が行われている時間、僕は切断した性器を寝室で愛でながら過ごした。すっかり変色して異臭を 漂わせていたが、これが仗助のものだと思うと何の嫌悪感も生まれなかった。今でも仗助に対する愛は少しも揺らいでいない。 数日後、原稿を進めていた僕の家に刑事が訪れた。僕の名前と罪名が書かれた逮捕状を見せられながらも、頭に浮かんだのは来るべき時が来たのだという思いだけだった。 警察での聴取中、僕は仗助との日々を思い出しては甘く、そして胸が苦しくなるような気分になった。あいつの心ごと、全てを愛していた。しかしそれはどこかで歪んで形を変えていき、 最後にたどり着いたのは仗助との永遠の別れだった。少しでも長く一緒に居たいと願っていた僕自身が、全てを血に染めて終わらせてしまった。 ……なあ、仗助。お前が僕と過ごしていた時間は幸せだったか? |