カスタマイズ 「お前、どういうつもりだ?」 目の前で明らかに警戒しながらこちらを睨んでいる露伴に対し、ソファに腰掛けている仗助は上機嫌だった。美味しい妄想が頭を駆けめぐり続けて、止まらないのだ。 「今から俺は、露伴専用の椅子になってやろうかなーと」 「暑さで頭がいかれたのか」 「細かいことは気にしねえで、俺のここに座ってくれよ。あ、顔はこっちに向けて」 そう言って仗助は、自らの太腿を両手で叩いて見せた。これで上手くいけば妄想は現実になり、夏休みの間に露伴といい雰囲気になって結ばれるという目標は達成できそうだ。 こちらからの告白は意外にも受け入れられたが、まだキスすらしていない仲だ。 向き合いながら密着していれば自然とその先まで進展しそうな気がした。夏は人の心を開放的にさせる何かがある。その不思議な力を信じて、自分から行動を起こそうと思った。 椅子がどうのこうのとは、抱き合いたいと素直に告げるのが恥ずかしいので冗談のつもりで言っただけだ。 「椅子、か……」 露伴は呟いた直後、にやりと笑った。それを見て仗助は急に嫌な予感がして立ち上がりかけたがすでに遅く、近づいてきた露伴に強引にソファに押し倒された。 ベルトを引き抜かれてジーンズも脱がされ、予定とは大きく外れた展開に頭が混乱した。 絡みついてくる舌の温かさだけでもたまらないのに、微妙に強弱をつけて亀頭を吸われると思わず呻き声が出る。 唾液まみれになった性器は、ごまかしようがないほど硬く勃ち上がっていた。 顔を上げた露伴の唇は自身の唾液か、それとも仗助があふれさせた先走りなのか分からないもので濡れている。 「そろそろ限界か?」 「お、俺がしたかったのはこういうのじゃ、ねえよ……!」 「僕専用の椅子を自由にカスタムして何が悪いんだ」 「カスタム、って」 「座ると気持ち良くなって、楽しめるようにだよ」 意味深に目を細めた露伴に、指先で性器を軽く弾かれる。突然の刺激に仗助は声を上げながら喉を反らした。しかし射精にはまだ足りない、それがもどかしくて苦しい。 ふいに、露伴が口に出した「座る」の意味が気になった。仗助は自分の太腿に座らせて抱き合う予定だったが、こちらを見下ろしながら下半身を覆うものを脱ぎ捨てていく 露伴は、どうやら違うことを考えているようだ。最後の1枚を脱いだその姿を見て、仗助は我に返った。 「俺はただ、あんたと抱き合っていちゃつきたかったんだよ」 「今更何言ってんだ、お前が言い出したくせに」 「まだ、キスもしてねえのに……おかしいだろ」 「男同士だぞ? 純情ぶるな、気持ち悪い」 仗助の必死な訴えも実らず、露伴は笑いながら人差し指を舐めて唾液を絡めた。その様子があまりにも扇情的で、少しずつ仲を深めていって結ばれたいという純粋な想いが、 薄暗い欲望にかき消されていく。 力を失いかけていた性器が再び固くなり、いつの間にか気持ち良くなることしか考えられなくなった。 「座り心地抜群だな……っ、いい……!」 勃起した仗助の性器に跨り、腰を落とす露伴が声を上ずらせて快感を示す。 舐めて濡らした指で後ろの穴を解していくのを見せつけられた後なので、本当は露伴の腰を掴んで 揺さぶりたかったが、お前は椅子なんだから大人しく座られていろと残酷な命令を下されていた。 黙って露伴の痴態を眺めていることしかできず、気がおかしくなりそうだ。 小刻みに腰を上下に動かしたかと思えば、抜けるぎりぎりまでのきわどい位置まで引いていく。そんな露伴は心の底から楽しそうだ。人の気も知らずに。 しかし時間が経つと、露伴は何も言わなくなった。代わりに目を伏せ、声を堪え始めている。着たままのシャツの裾がちょうど露伴の性器を隠していて、そこは不自然に 持ち上がり、小さな染みが広がっていた。その下の状態を見たくて手を伸ばしたが、ぱしっという音と共に振り払われた。 「見るな」 「椅子は大人しくしてろってか?」 「分かってるなら、そうしてろ」 「……ごめん。やっぱり俺さ、人間だから」 仗助はそう宣言すると身を起こし、驚く露伴を抱き締めながら腰を突き上げる。仗助の動きに合わせて、腕の中で何度も喘ぐ露伴の両腕が背中にまわされて胸が熱くなった。 こんな激しい行為をしているのに、まだ濡れている唇を奪うタイミングが掴めない。 |