勝負再び 紙の手提げ袋を持って玄関に立つ仗助は、一大決心をしたような真剣な顔をしていた。こういう時の仗助はかなりの確率で何かを企んでいると、今までの経験と勘が訴えかけてくる。 「お願いします露伴先生! おれと勝負してやってくださいっス!!」 時代錯誤のリーゼント頭を勢い良く下げると同時に、仗助が差し出した紙袋の中身をこちらに見せてきた。ちらりとそれを覗き込んだ露伴は、小さく声を上げて笑う。 「自分の得意分野を一方的に押しつけて勝負しろだと? お前らしい、卑怯な考えだよ」 「まあ、勝負っつーか……あんたとコミュニケーションを取りたいって感じで」 「ごまかしてんじゃあないよ、もしお前が勝ったらぼくとセックスしたいとか大体そんな考えだろう」 露伴の言葉に一瞬だけ、仗助の口元が引きつったのを見逃さなかった。どうやら図星だったらしい。色々あって恋愛の意味で仗助と付き合うことになったが、2週間近く経ってもまだキスすらしていない。 別に恥ずかしいとかそういう甘ったるい理由ではなく、簡単に欲しいものを与えて満足させるのは面白くないだけだ。 「……やっぱり、ダメっスかね」 「いいや」 「えっ!?」 「ちょうど原稿も一段落して落ち着いたところだ、気分転換に遊んでやるよ。もちろんお前が勝ったら、ぼくを好きにしてもいいぜ?」 顔を耳に近づけて囁くと、仗助の喉がごくりと動いた。この分かりやすい反応、やはり性欲丸出しのガキをからかうのは快感だ。 片方のキャラクターがテレビ画面の端へ無残に吹き飛ばされ、仗助は身を乗り出して悲鳴にも近い叫びを上げた。ゼロになった体力ゲージ、そして仰向けに倒れたまま動かないキャラクター。 「ぼくの勝ちだぜ仗助、ざまあみろスカタン!」 握っていたコントローラーを放り投げると露伴は背後のソファに腰掛け、絨毯に正座したまま凍りついた仗助の背中を爪先で軽く蹴った。 仗助が紙袋に入れて持参したのは、買ったばかりだという格闘ゲームのソフトと本体。これで露伴と勝負を申し込んできたのだ。多分、仗助は勝てると思っていたのだろう。 「億泰には負けたことなかったのによォ〜〜〜」 「あのアホとぼくを一緒にするな!」 露伴にはこのゲームをやった経験はないが、指さばきは仗助よりも遥かに素早く正確だ。その辺の高校生と比べられるのは心外にも程がある。 本気で落ち込んでいるのか両肩を下げた仗助に呆れながらも、露伴の中にある考えが浮かんだ。 「キスくらいなら、させてやるよ」 「……」 「まだしてなかったよな、ぼく達は」 余裕たっぷりな口調で言いながら仗助の肩に背後から触れた途端、突然その手首を掴まれた。恐ろしいほどの強い力で。振り向いた仗助の目はどこか冷めている。 「そーゆー上から目線、何か今日はすげえむかつくんだよな」 「じょう、すけ」 「おれは犬じゃねえし、いつまでもお預けされんのきついっスよ」 絨毯に押し倒され、覆い被さってきた仗助の唇に呼吸を塞がれる。所詮は高校生だと甘く見ていたが、執拗に吸われて舌を絡めているうちにおかしくなってきた。少しずつ、甘い痺れが全身に広がっていく。こんなキスくらいで腰が揺れそうになる自分が嫌だ。服の裾から潜り込んできた仗助の指が熱く感じる。 「実はエッチなゲームとかやってみてえんだよな、まだやれる歳じゃねえけど」 「いきなり、何の話……」 「でもそれより、あんたにこうするほうがずっと興奮する」 ふいに乳首を強めに摘まれ、声が出てしまう。今まで意識していなかった性感帯を暴かれるのが悔しい、腹立たしい。 露伴は更に服を捲り上げようとする手を掴み、目が合った仗助に薄い笑みを浮かべた。 「ゲーム画面の中にいる奴は、お前にこういうことはしてくれないだろう?」 すでに膨らんでいる仗助の股間を軽く撫でると、呻き声が上がった。 流されるのは御免だ。どうせ逃れられないなら、何としても主導権は握らせてもらう。 |