もしもの妄想 「おれはあんたみたいなツンツンしてる奴を見てっと、意地悪したくなるんだぜぇ〜〜〜いつもお高くとまりやがってよぉ〜〜〜〜!」 にやにやしながら急接近してきた仗助に抗う暇もなく押し倒され、露伴は混乱した。酒の匂いがする息を吐きながら何故か唇を近づけてくる。 確か承太郎の部屋を訪ねてみるとすでに仗助がいて、夕方になった頃には絨毯にビールの缶が転がるようになり、ひとりでコーラを飲んでいたはずの仗助までいつの間にか飲酒していた。 露伴の危機にも、承太郎は平然とソファに腰掛けて何本目かの缶ビールに口をつけている。 「あなたの叔父さんがね、放し飼いの獣になっているんですが!」 「ん、ああ、そいつが勝手に飲んだんだ。おれは知らねえ」 「そんな無責任なことがっ、んーっ!」 年長者としての全責任を放棄した承太郎のせいで、顔を真っ赤に染めた仗助にとうとう唇を奪われ、有り得ないことに舌まで入れられた。 子供のくせに調子に乗って酒を飲み、男を押し倒してキスまでするというこの状況。正気に戻った仗助に事細かく伝えて恥をかかせてやりたい。 「やばい、露伴の唇すげえ柔らけえ」 「死ね!」 「もっかいやらせて!」 「お前自分で何やってるか分かってないだろう!?」 虚ろな目で再び迫ってくる仗助を両手で必死に押し返している最中も、承太郎は自分で撮影したらしい海の写真を眺めながら恍惚とした表情でため息をついている。おれには関係ないと言わんばかりの態度が許せなかった。 仗助のほうも、普段は町で会うたびにうんざりした顔をするくせに。いくら酔っているとはいえ理解できない。 「おれとするのがそんなに嫌なら、承太郎さんにキスしてこよっと」 「……はあ!?」 「じょうたろうさーん! 露伴に振られたんで慰めてくださーい!」 「仕方ねえな、いいぜ」 あっさりと仗助のふざけた要求を受け入れてしまう承太郎も、おそらく酔っているに違いない。写真の束をテーブルに置き、歩み寄る仗助に向かって薄い笑みを浮かべる承太郎は、今まで見たことがないほど危険な魅力を振りまいている。 「そうはさせるか、くそったれが!」 承太郎の腕の中に飛びこもうとした仗助の首根っこを掴んで引き離すと、露伴は顔を強引にこちらに向けさせた。いいところを邪魔されて不機嫌になったのか、仗助は未だに赤い顔のままで睨んでくる。 「なーんだよ、おれとキスすんの嫌なんだろ?」 「確かにそうだが、他の人間にするのを見るのは面白くないだけだ」 「うわ、意味わかんねーよぉ〜〜〜〜何なんだこいつオカシイぜぇ!」 「おかしいのはどっちだ、このぼくに! あんな下手くそなキスしやがってふざけんなよ!」 露伴自身も酒が入っているせいか、今度は勢い余って自分から仗助にキスをした。経験は多くないが、少なくとも仗助よりは上手いと断言できる。舌先を絡ませ、更に深く潜り込む。 「っ、はあ……ろ、はん」 唇がわずかに離れると、かすれた声で名前を呼ばれる。それを聞いて不覚にも煽られてしまい、仗助の広い背中に両腕をまわしてしがみつく。これはもしかすると独占欲で、仗助を誰にも取られたくないと考えているのだろうか。 そんなはずはない、今でも腹立たしい存在であることは変わっていないのだから。 「なあー、露伴っておれのこと好きなのか……?」 「ん、あっ、わからな、い」 「おれ、こんなキスされて、ここもうやべーんだよ」 下腹部あたりに押し付けられた仗助の股間は硬くなっていて、驚いて身を引こうとしたが抱きしめられているせいで動けない。 露伴とエッチなことしてえ、と熱い息と共に囁かれて我に返る。 「あっちにベッドあるしよぉ、我慢できねーよ」 「バカ言うな、ここは承太郎さんの部屋……」 そう言いながら視線をずらした先では、ソファに転がって寝息を立てている承太郎がいた。 この出来すぎた展開はかなりまずい。 ベッドの主に罪悪感を抱きながらも、下から突き上げられる快感に理性が砕けた。仗助が動くたびに露伴はそれに合わせて大きく喘ぎ、背を反らす。昨日までは罵り合っていた仗助と、まさかこんなことに。 今度は露伴が動いて、と要求されて自分でも驚くほど素直に従ってしまう。亀頭が抜けるぎりぎりまで腰を上げ、勢いをつけて再び落とす。繰り返すうちに慣れてきて、仗助の反応を楽しむ余裕も出てきた。 「そんなに気持ちいいかい、ぼくの中……ガキには刺激が強すぎたかな?」 もしこの行為を、目を覚ました承太郎に発見されると気まずい。その反面、男の上で快楽を貪る痴態をじっくり観察されたいという歪んだ考えも浮かんできた。 うっすらと汗ばみ、火照った肌も。仗助の性器の形に拡がった穴から、どろりとした精液が溢れて落ちていく様子も。 今この瞬間も、背後から見られているかもしれない。振り向けば明らかになるが、あえてそうはしない。真実を知ることなく、腸液が滴る結合部を晒して腰を振る姿を観察されている妄想をネタにして半勃ちの性器を握った。突然自慰を始める露伴の手元や顔を、下にいる仗助が凝視している。もっと見てほしい、感じる視線の強さがたまらない。 根元まで飲み込んだ後で強く締め付けてやると、仗助は眉を寄せて呻いた。派手な柄の下着から現れた彼の勃起した性器は予想以上に大きく、先ほど初めて目にした時は密かに息を飲んだ。こんなものが入ってきて、内側を犯されたらと思うと興奮して下半身が疼いた。 仗助の熱い手のひらが腰に添えられ、がっちりと固定された直後に更に激しい動きで攻められた。信じられない速さで何度もがつがつと奥を突かれて、自分がどこにいるのかすらも分からなくなるくらい乱される。 男ふたりが余裕で並べる大きさのベッドが、荒い息や喘ぎと共に忙しなく軋む。 「こんなにされ、たら、もう……!」 「おれも、露伴の中に出しちまうよ、止まんねえ!」 「じょう、すけ! ああっ、いくっ!」 仗助の性器が膨張して、彼が動きを止めると腹の中に温かい飛沫が連続して注ぎ込まれた。僅かに遅れて露伴が扱いていた性器も精液を吐き出し、仗助の逞しい上半身に散る。 「人のベッドでずいぶんお楽しみだったじゃねえか、ああ?」 行為後の気だるさを吹き飛ばすような、恐ろしく低い声が背後から聞こえた。 長々と説教された末、しばらくはふたり揃って承太郎の部屋には入れなくなった。それだけのことをしたのだから、当然の結果だ。そもそもこうなったのは仗助に原因があると思う。 詳しくは聞いていないが、眠っていたはずの承太郎はいつから気付いたのだろう。終わった後ならともかく、全て見られていた可能性もある。 ホテルからの帰り道、隣を歩きながら落ち込む仗助をよそに露伴はぞくりと身震いした。 恐怖ではなく、もちろん興奮という意味で。 |