苦い欲望 母親に見つからないように真夜中の部屋でこっそり観たアダルトビデオで、女優が白濁で顔を汚される場面がやたらと印象的だった。こんなことを実際にやられたら女は不愉快になるのではないかと思いながらも、肉厚な唇に流れてきた精液を赤い舌がぺろりと舐め取る様子に興奮した。 ベッドに転がったまま絶頂を迎えて射精した仗助の頭に浮かんだのはビデオの女優ではなく、わがままで気の短い年上のマンガ家だった。しかも、男だ。 勃起した仗助の性器に自ら腰を落とそうとした露伴を、仗助は慌てて制止する。場の雰囲気といい互いの身体の燃え上がり具合といい、後は繋がるだけという状況の中で。 「なあ〜露伴、オレやってみてえことがあんだけど」 「何だよ、空気読めてないんじゃあないのかお前……ここからが本番だろう」 「1度でいいからガンシャさせて!」 「死ね!」 笑えるくらい予想通りの反応だった。この露伴が、人の精液を顔で受け止めるという行為を許すはずがない。 更にセックスを中断させてしまったせいか、明らかに機嫌が悪い。もっと早い段階で言えば良かったかもしれない。OKしてくれるかどうかは別としても、多分ここまでは怒らなかった。 「お前はぼくの中より、外に出すのがいいって意味か」 「違うんスよ!そりゃ〜中出しのほうがイイけど、これも男のロマンってやつっしょ!」 「知らないよそんなくだらないロマンは!」 念願の顔射どころか、まともに繋がることすらできないままこの日は別れた。 大人というものは面倒な、いやそれはこの男に限ってなのかは分からないが、仗助は自分の力で歩こうとしない露伴に肩を貸しながら玄関のドアを開ける。酒臭い呼吸を繰り返す露伴を、いつも自分が寝起きしているベッドに寝かせた。 あれから数日、連絡も取っていなかった露伴が仗助の家の前に座りこんでいた。夕方からすでにどこかで飲んできたのか、かなり酔っている状態だった。目が虚ろで、頬も耳もほんのりと赤く染まっている。それが少し色っぽいと考えている間もなく、困惑している仗助の存在に気付いた途端に立ち上がった露伴は、急にこちらへ向かって倒れ込んできた。 何日か気まずかったが、やはり露伴への気持ちは冷めていない。ひたすらしがみついて離れない露伴を色々な意味で意識しながら、とりあえず部屋で休ませることにしたのだ。 ベッドに寝かせた露伴は呻きながら何度か寝返りを打った後、深く息をついた。 「すまない、気が付いたらお前の家の前に来ていた」 「それはいいけどよ〜、酔っ払ってる露伴って初めて見たぜ」 「飲みたい気分だった、もやもやして仕事も進まなくてな」 露伴でもスランプに陥ることがあるのか。そう思っていると突然上半身を起こした露伴が、ベッドのそばに立つ仗助のベルトに手をかけた。 「なっ何してんスか!」 「顔射、させてやるよ。ぼくもいい経験になるしな」 「今? ここでやるのかよ!?」 まだ母親は帰って来ないが、性器をむき出しにした仗助と、顔に精液を浴びた露伴の姿を見られたらどうすればいいのか本当に困る。しかしあれだけ拒否していた露伴がどういうわけかその気になっていて、すでにベルトの金具は外され、ズボンと下着を膝までまとめて下ろされた。大人しかったはずの仗助の性器は、露伴の視線を浴びて逞しく上向きになりかけている。 「何だ、お前もやる気充分じゃあないか」 裏筋を舐め上げられ、根元の袋を優しく揉まれる。襲ってきた刺激に性器は完全に臨戦態勢を迎えた。カリの付近を舌先でくすぐられると、変な声が漏れてしまう。 酔った勢いというやつなのか、露伴はじゅぶじゅぶっとえげつない音を立てながら仗助の性器を深く咥え込み、口内で締め付けながら大胆にフェラを始める。後ろの穴への挿入にも劣らない快感に堪え切れず、放出直前の精液が尿道口をめがけて上がってきていた。 「お前のペニスの匂い嗅ぐと、疼いて仕方ないんだよ……今日はまだシャワーも浴びてないんだろう?」 「まあ、帰ってきたばかりなんで……っ、う!」 痙攣した性器から押し出された精液が、露伴の顔や髪に注がれた。1度だけではなく放出は何度か続き、そのたびに露伴が白く汚れていく。生臭いそれを浴びた顔を見て、射精の快感と入れ替わりに征服欲がわき上がってきた。出したばかりなのに、性器は再び硬さを取り戻していく。 「苦い……まずいな」 精液が垂れてきた唇を舐めた露伴が、眉間に皺を寄せて呟く。ティッシュで汚れた顔を拭いている露伴をベッドに押し倒した仗助は、性器を露わにしたまま露伴に覆い被さり唇を貪る。キスは自分の精液の味がして変な気分だったが、舌を絡ませているうちにその味も薄れて消えた。 「念願叶って、満足したんじゃあないのか?」 「顔に出すのもたまにはいいけどよ、やっぱり露伴のケツにちんこ挿れねえとムラムラがおさまらねーよ」 嫌がられるかと思ったが、予想に反して露伴は薄く笑みを浮かべると今度は自身のベルトを緩める。 「今は気分がいいんだ、サービスしてやるよ」 誘うように脱いでいく露伴を眺めながら、やはり露伴の熱い腸壁に締め付けられながら奥へと射精する瞬間の、脳が痺れるような快感を忘れられない。 |