遊びの誘い 存在自体は知っていたが、こうして直接目にするのは初めてだ。 弾力のありそうな筒状のそれは薄いピンク色で、端の窪みの中心には小さな穴が開いている。それが何を意味するのか、使った経験がなくても分かる。 「ぼくは最近、これにはまっていてね。手で扱くよりずっと気持ちいいんだ」 露伴は上機嫌な様子で言うと、筒状のものの手触りを確かめるように撫でた。 服を脱いで深く唇を重ね、ベッドに横たわった直後に露伴がどこからか出してきたのが、それだった。数日振りにセックスができると意気込んでいたが、突然現れた物体によって狂わされてしまった。 「露伴、まさかそれって」 「オナホールだよ、使ったことないのか」 「ねえよ!」 卑猥な玩具に関心がないわけではない自分でも、実際に使おうという気にはならない。買う金の余裕もなく、隠していても母親に見つかったらと思うとぞっとする。 「ちょうどいい機会だから、今も使ってみようかと思うんだ。これを着けた状態で、お前に突っ込まれたらどうなるか興味があってね」 「おい、ちょっと待っ……」 予想外の展開に戸惑う仗助をよそに露伴は、小さな容器に入った液体を玩具の穴に注ぎ込む。そしてシーツに両膝をついた状態で、勃起した性器を玩具に挿入していく。 「んっ、あ……締まる」 もはや堪え切れなくなっているのか、玩具を上下に扱きながら空いた手で身体を支えて喘ぐ。注いだ液体の濡れた音や、荒くなる露伴の息遣いが仗助の脳を侵した。 目の前にいる仗助の存在を忘れたかのように、露伴は玩具を使った自慰にのめり込んでいる。手の動きが最初よりも早くなってきていた。 「なあ……それ、そんなに気持ちいいのかよ」 「きついっ、搾り取られそうだ」 仗助の問いに、独り言のような調子で露伴が訴える。そんな卑猥な姿を眺めながら、仗助は先ほど見た容器に入った液体を指に絡めると、露伴の背後にまわって尻の窄まりに 指を潜り込ませた。手の動きを止めてこちらを振り向く露伴は、縋るように目を潤ませている。拒む様子もなく、それどころか腰を揺らして欲しがっていた。 何度かのセックスで、露伴の弱い部分はすでに把握している。ここだと思う位置で指を動かし、今までより大きな声を上げて背を反らす露伴に興奮した。 「あんたのエロい姿を見るのもいいけどよ、おれのことも忘れんなよ」 「忘れてなっ、あ……!」 「そんなに夢中になってる露伴、初めて見るからさ」 良い具合に中が拡がってきたので、引き抜いた指の代わりに仗助は待ち構えていた自身の性器を、露伴の尻に擦り付けた。細い腰を両手で掴み、焦らしもせず強引に奥まで突き入れる。 繋がったまま背中に覆い被さると、露伴はシーツに片肘をついて仗助を受け入れた。 「あっ、あー……もう、すごいっ」 性器を玩具で締め付けられ、後ろでは仗助を深々と飲みこんでいる。我を忘れて喘ぎ、露伴は首を激しく横に振った。この体位では顔が見られないのが残念だ。 手の動きは今でも止まらず、露伴にとってはどちらが玩具なのかと思うと不安になってくる。そんな感情を全てぶつけるように、仗助は露伴を壊す勢いで腰を強く打ちつけた。 「オモチャよりずっと、おれのちんこのほうが好きだって言ってくれよ」 「じょうすけ、のっ! うあ……っ」 締め付けが急にきつくなり、身体を震わせた露伴が達した。玩具の中で射精したのだ。 ぐったりとシーツに顔を伏せ、更に尻を高く上げる。最後まで言ってもらえなかったのが心残りなので、仗助は力の抜けた露伴にも構わず腰を動かし続けた。 紫色の玉がいくつも繋がった、グロテスクな棒のようなものには小さなリモコンがついている。正式名称と、その使い方を聞くのが何となく恐ろしい。棒の先は明らかに仗助のほうに向けられているからだ。 露伴はやけに冷めた表情で、ごつごつとした棒で仗助の頬を軽く叩く。 「いいだろ、これ。この前ようやく届いたんだぜ」 「それは……」 「気になるだろ、アナルビーズっていうんだよ。ちょっと考えたんだが、これをお前の尻に突っ込んだ状態でぼくに」 「いやいやいや! それは何か違うっつーか!」 「この前はさあ、ぼくに変な台詞を言わせようとしたよな。ガキのくせに調子に乗るんじゃあないよ、仗助くん?」 にやりと笑った露伴の表情からは数日前、玩具を交えた仗助とのセックスで溺れ切った時の面影は跡形もなく消えていた。 |