過去の自分に 長いくちづけの後、幼い身体を抱きしめながら畳にゆっくりと倒れこんだ。 適当に選んで入った連れ込み宿で、しかも相手は過去の自分。異常かもしれないが、赤木はためらわなかった。 部屋に入ったばかりの時は何かと反抗ばかりしていた少年は、いつの間にか黙ってこちらに身を任せている。 赤木が迷い込んだのは、6年前の夜の街だった。元に居た時代と大きく変わったところはないが、どこか違和感はあったのだ。 戻れる方法が見つからないのでしばらく歩き続けていると、偶然出会ったのがまだ中学生だった頃の赤木だった。 過去の自分と話してみるのも面白いだろうと思って声をかけてみたものの、少年はこちらを警戒するばかりで心を開かない。 多分、未来から迷い込んだ赤木が普通の存在ではないことを見抜いたのだろう。 死すら恐れずヤクザ相手でも怯まなかった13歳の頃は、 怖いものなど何もないと思っていた。しかし珍しく動揺している過去の自分を見て、悪戯心を刺激されてしまった。 少年の太腿を枕代わりにして寝転んだり、必要以上に触れてみたり、明らかに嫌がる様子を見て楽しんだ。 じれったいほど拙いが、くちづけには舌を使って応えてくるのを感じながら、懐かしいあの男のことを思い出した。 子供の赤木に、自慰から性交まで一通り仕込んだ初めての相手。今頃どこで何をしているのだろうか。もう何年も会ってないが。 腕の中で少年は、居心地悪そうにもぞもぞと動いている。それでも力任せに逃げようとはしていなかった。 「このまま、最後までやるか?」 「俺が何て答えても、結局するくせに……」 「お前、察しがいいな」 笑みを浮かべた赤木は拗ねる少年の前髪に触れ、額に唇を落とした。 小さく淡い色をした性器を浅く咥えただけで、少年は身を竦ませた。唾液を絡めながら口で扱くと、堪えきれなくなったのか 余裕をなくした声が上がった。この頃はこんなに乱れやすかっただろうか。 抱かれてもいいと思える相手は少なかったが、行為自体は嫌いではなかった。賭博や喧嘩とは全く違う刺激を味わえたからだ。 「もう、やだ……」 「やめてほしいのか?」 「ちがう、あ……っ!」 浮かんできた先走りを舐め取り、そこを舌先で抉ると少年の細い腰が揺れた。そんな状態で嫌だと言われても止められない。 「わけわかんねえよ、まあ面白いからいいけど」 いかせてやるよ、と呟いて赤木は性器を扱く口の動きを更に早めた。やがて吐き出された精を全て飲み込むと、絶頂を迎えて ぐったりとしている少年に見せつけるように赤木は自らの昂ぶった性器を露わにする。 それは少年のものとは違い、暗く生々しい色をしていた。 「お前がイッたからって、まだ終わりじゃないぜ」 「待ってよ……少し、休ませてほしい」 「敏感になってる今だから、いいんだろ……」 弱々しい要求を無視して、赤木は少年に覆い被さる。体温を伝えるように身体を密着させると、少年は息を震わせながら背中に両腕を まわしてきた。 何かに飢えていて、常に不安定だったこの頃。集団生活を強制される学校にも馴染めず、自分の考え方は同年代の子供と比べてずれているこ とを薄々と感付いていた。だからと言って周囲に合わせる気にもならず、いつの間にかどこでも浮いた存在となっていた。 それは今でも変わらない。学歴も人並みの協調性も持たない赤木は、中学を出てからは複数の職場を転々としている。 世間からどう見られていようが構わなかった。独特の信念や価値観は、13歳の頃から何も変わっていないのだ。 少年の固く閉ざされていた部分が、赤木の性器の形に押し広げられていく。それを冷静に眺めながら、最奥へと腰を進めた。 これからどうするの、と問われて赤木は脱ぎ捨てたシャツを掴む手を止めた。 少年は全裸で布団に入ったまま、こちらを見ている。まだ疲労が抜けきれていないようだ。 「元の時代に戻れるまで、適当に過ごすしかないな」 非現実的な出来事とはいえ、こうなってしまったものは仕方がない。みっともなく取り乱しても、どうにもならないのだから。 |