箱の中で 思春期真っ只中の子供達が義務教育という名の元に集められ、人生の内で2度と戻らない数年間を過ごす。ここはそんな施設だ。 少しばかり聞こえは良いかもしれないが、結局は規則に縛られた窮屈な箱の中。しかし社会に出た経験のない未熟な生き物が集団生活を送る場所なので、 何もかもを自主性に任せるわけにもいかないだろう。 校舎内は朝から放課後まで何かと騒がしいが、1階の片隅に位置しているこの保健室は余程のことが起こらない限りは静かだ。 校医の市川は若い頃の出来事が原因で視力を失っているが、怪我の手当てなどを全て器用にこなす。目が見えないので、生徒の身体を触って確かめることもある。 ここは男子校なので、老人に少し触れられたくらいで嫌がり大騒ぎする生徒は居ない。余計な気を遣わずに仕事ができるのは有り難いと思う。 仮病を使ってくる生徒はそれをすぐに見抜いて教室に帰す。数に限りのあるベッドを、くだらない理由で占領させるのは不愉快だ。 正午まであと1時間を切った頃、保健室のドアが開いた。適度に暖められた部屋に、廊下の冷たい空気が入り込んでくる。 「ちょっとお邪魔するよ、先生」 「帰れ」 何度聞いたか分からない声の主を思い浮かべ、市川はうんざりした表情でそう言った。 ドアが閉じられ、こちらに近づいてくる足音。もうこの時点で分かる、保健室を訪れる生徒の中でも特に厄介な存在の登場だ。 「ちょっと体調が悪いんだ、そこのベッドで休ませてもらえない?」 「やりたいから抱いてくれの間違いじゃねえのか、赤木君」 皮肉をたっぷり含ませた口調で言ってやると、小さな笑い声が上がった。愉快でたまらないという感情が、腹立たしいほど伝わってくる。 目の前に居る赤木というこの生徒は、初めて対面した時から生意気で、可愛げのない子供だった。とにかく腹が痛いと言うので原因を確かめるためにその辺りを軽く押している最中、 手を掴まれて下肢に導かれた。瞬間、かなり遅れて赤木が仮病を使っていると知った。他の生徒と違い演技がやたらと達者だったので、不覚にも騙されたのだ。 少しばかり動揺したものの、その日は何とか追い出すことに成功した。しかし赤木は、その後も何日かに1度の間隔で保健室を訪れ、あの手この手で市川を誘惑してきた。 性の経験が浅い、それどころか全くなさそうな子供に誘われてもその気にはならないと自身に言い聞かせていたが、そんな努力も空しく何度目かの巧みな誘いでついに 赤木の思い通りになってしまったのだ。張り切って誘ってきた割には不慣れなくちづけに心を乱され、成長しきっていない細い身体をベッドの上で存分に貪った。 終わった後は互いの汗や零れ落ちた精液で汚れたシーツをはがし、清潔なものに替えた。 教室を移動する生徒達の足音や話し声を壁越しに聞きながら、半裸の赤木を下から突き上げて激しく犯すことに薄暗い興奮を覚えた。あれは今でも忘れられない。 「ねえ、何考えてんの……」 そんな囁き声で我に返った。椅子に腰掛けている市川に、赤木がくちづけをしてくる。最初の頃よりは上手く応えられるようになってきた舌の動きに満足しながら、 赤木に触れた。脇腹から腰、尻の辺りまで撫でるように手を動かしていくと、赤木の服装が普段とは違っていることに気付いた。 「これも、市川先生お得意の触診?」 「体育の授業、抜けてきただろう」 「ああ、これね」 制服じゃ動けないからさ、と言って赤木は市川の肩に額を乗せてくる。わずかに汗の匂いを感じた。 赤木が身に着けているのは薄いTシャツ、そして半ズボンはちょうど尻が隠れる程度の丈しかない。肉付きの薄い小さな尻をしつこく撫で回していると、赤木の腰が揺れる。 「いつも通り、鍵はかけてきたよ……だから」 「体調が悪いなら、大人しく休まねえとなあ」 赤木の甘い言葉をわざと遮り、尻の割れ目を指でたどりながら手を離す。不機嫌そうに黙り込む気配を感じて、市川は薄い笑みを浮かべた。 やはり今回も仮病だった。つまり赤木は、市川と性交するために保健室を訪れたのだ。赤木の様子からして図星だろうが、わざと知らない振りをしてやる。 「先生も一緒に寝てくれるなら、いいよ」 「何言ってやがる、そこまで付き合ってやるほど暇人じゃねえよ」 「ふたりきりで同じ部屋に居るのに放っておくなんて、酷くない?」 それを言うなら普通の校医と生徒はどうなるのかと思った時、布が擦れるような音が聞こえてきた。そしてすぐに赤木が息を乱し始める。 その身体に触れると、赤木が半ズボンと下着を膝まで下ろして自慰をしていることが分かった。うまく足が広げられないため、満たされていないようだ。 「あんたがあまりにも冷たいから、俺ひとりで勝手に楽しませてもらってるよ」 「強がりはやめておけ、本当はここに突っ込まれたいんだろうが」 露わになった尻に触れ、まだ広げていない部分に指を浅くねじ込む。こちらに腰を向けた格好の赤木が、びくりと身を竦ませた。同じ姿勢を保っていられるのは多分、 近くにある机に手をついているせいだろう。赤木の下肢を覆うものを更に下ろして脱がせようとしたが、片方の足首に引っかかったまま中途半端な状態になった。 余分な脂肪などついていない赤木の太腿やふくらはぎが、惜しげもなく目の前に晒されている。手で触れることでしかそれらを確かめられないのが残念だ。 赤木の性器を濡らす先走りを絡めた指を、再び埋めた。じっくりと解していくうちに内側の抵抗もなくなり、指の本数を増やしても赤木は素直にそれを迎え入れた。 生徒とのこんな行為が他の職員に知れたら、さすがにただでは済まないだろう。かすかに漏れている赤木の乱れた呼吸を聞きながらもう片方の手で、市川も自らの性器を扱いていた。 やがて完全に勃起したものを赤木の尻に押し当てると、細い腰を掴んで焦らすことなく奥まで一気に貫いた。 胸をよぎる罪悪感は、気分を萎えさせるどころか逆に高めていく。抑えもせずに喘ぐ赤木に苦笑し、狭い粘膜を攻め続ける腰の動きを早めた。 汗ばむ身体を覆う白衣が邪魔でもどかしい。すぐにでも脱ぎ捨てたかったが、赤木に束の間でも休息を与えるのは面白くないので我慢することにした。 「お前のいやらしい声が、外の奴らに聞こえるぞ」 「……誰が、そうさせてるんだか」 「そうさせてるのはお前のほうだろう、赤木」 これ以上は入らないというところまで挿入した後も、赤木の腰を引き寄せ更に押し進めようとした。老人の猛った性器が、少年の小さな尻を奥深く貫いて犯す。その様子を頭に思い描きながら、市川は自身の乾いていた唇を密かに舐めた。 強引に奥を抉られているのに、触れた赤木の性器は痛々しいほど張り詰めていた。そして後ろでは貪欲に市川の性器を咥え込み、きつく締め付けてくる。 学校という窮屈な箱の中で、痩せた子供を欲望のままに抱く。赤木がここを訪れる度に淫らな行為を繰り返し、まるで未熟な獣を調教しているような気分だった。 数年後はどのような男に育っているのか楽しみだが、その前に赤木は卒業を迎える。平凡なものだとは思えない将来を見届けずに別れるのは、とても惜しい。 「先生、もう俺、いきそう……」 かすれた声で訴えてくる赤木の幼い性器を指でしつこく刺激して、再び何度か腰を打ちつけると赤木は震えながら市川の手のひらに射精した。 力が抜けて動かなくなった赤木を気遣うこともせず、市川はその身体を容赦なく揺さぶり続ける。突き入れられる度に、赤木は短く小さく呼吸を繰り返すだけだ。 やがて赤木の中で絶頂を迎えて萎えた性器を引き抜くと、濡れた何かが床に落ちる音が聞こえた。市川の精液が赤木の中から溢れたのだ。 身支度を整えた後も赤木は、保健室を出て行こうとはしない。そろそろ昼飯の時間だから戻れと言っても動かなかった。 床の精液も拭き取っておいたが、部屋の空気には何となく今でも性交の名残を感じる。 この歳だと女を抱く気にもならず大人しく過ごしていたのだが、枯れたと思っていた性欲は赤木と関わってしまったせいで久しぶりに呼び起こされたのだ。 性交後の疲労のせいで大きく息をつきながらベッドに腰掛けると、赤木がすぐ隣に座る気配がした。 「そういえば先生って、麻雀できる?」 「……趣味のお遊び程度にならな」 「それなら今度、俺と遊ぼうよ。役とかは最近覚えたばかりなんだけどさ」 わざわざ赤木に言うつもりはないが、市川は校医という仕事をしている他にも、ヤクザの代打ちとしての顔も持っていた。組から頼まれると、夜は迎えの車で勝負の場へ出掛けていく。 大きな勝負では何百万、何千万という金を長年稼いできたのだ。麻雀を知ったばかりの、こんな子供など相手にもならないはずだ。 しかし軽く遊んでやるのも面白いかもしれない。身体を賭けさせて負けた赤木をたっぷり時間をかけた愛撫で焦らし、我を忘れるほど喘がせる。 市川がひとりで暮らしている自宅ならば、張型など学校には持って行くことのできない卑猥な道具も使える。そう考えると、心のどこかで気乗りしてくる自分が恐ろしい。 「いつでも待ってるから、気が向いたら声かけてよ」 そう言って甘えるように身体を寄せてきた赤木と唇を重ね、無意識に別れを惜しむように互いの濡れた舌を何度も絡め合った。 |