くちづけの後で 甘えるように身を寄せてきた赤木を、南郷はそれに応えるように抱き締めてやった。 髪を撫でると赤木は背中に腕をまわしてきた。衣服越しに伝わる体温が心地良い。 これでも最初は、必要以上に触れるつもりはなかったのだ。安岡の提案で川田組との再戦の日まで赤木をここで預かり、普通に寝食を共にするだけの予定だった。 しかし赤木の唐突な要求と夜の雰囲気に流されるままに交わしたくちづけで、ふたりの距離は急速に縮まった。 キスしよう、と言った時の赤木の表情が今でも忘れられない。13という年齢からは想像できないほど、静かで大人びていた。こちらを真っ直ぐに見つめる目、首に絡み付いてきた細い両腕。 唇を軽く重ねるだけのはずが、いつの間にか夢中で深く求め合っていたことも。 くちづけの後はそれまでとは違う意味で赤木を強く意識した。命を救ってくれた恩人以上の存在として。この気持ちは一体、どこへ行き着くのだろう。 「ねえ南郷さん、何考えてるの」 「えっ……?」 「さっきからずっと黙ってるからさ」 赤木のことを考えていた、とは言えない。変な意地でも何でもなく、単に照れくさいだけだ。 何も言えずにいると、赤木は再び唇を近づけてくる。この行為にはもう抵抗がなくなった南郷は自分も同じようにした。 しかし赤木は直前に方向を逸らして、南郷の唇ではなく首筋にくちづけをした。柔らかい感触がくすぐったい。 予想外の展開に戸惑っているうちに、その感触が首筋から胸元、腹、そして股間までたどりついたところで慌てて赤木を止めた。 「あっ、赤木お前何やってるんだ……!」 「何って、俺の好きなところにキスしてるだけだよ」 「好きになってくれるのは嬉しいが、そこはちょっとまずいだろ……なっ?」 なるべく穏便に済ませようと必死で、南郷は赤木の髪に触れようとした。しかしその手はあっさりと振り払われてしまう。ごまかそうとしているのを見透かされたようだ。 「こんなふうにされるのは嫌?」 薄い笑みを浮かべる赤木の指先が南郷の股間に触れて、ズボン越しに優しい調子で撫でていく。もどかしい快楽へ追い詰められていく予感と共に、もっと触ってほしいと密かに思った。 賭博の才能はあっても、実際はまだ子供だ。性についてはまだ未熟だと決め付けていたが、どうやらそれは間違いかもしれない。 その手の経験はなくとも男なのだから、同性の人間がどこをどうされれば気持ちよくなるのかくらいは知っていて当然だ。 赤木に何度も触れられ、ズボンの下では性器に血液が集まり次第に昂ぶり始めていた。 決して上手いわけではないが、赤木の隙のない大人びた性格と愛撫の拙さのギャップが余計に気分を煽った。 くちづけをするだけならまだ良かった。あれだけで終われるなら、赤木に対して抱くのは憧れと親愛に近い感情、そしてわずかな後ろめたさだけで済んだのに。 今はもう、吐き出した精液で赤木の顔や身体を汚す想像が浮かんでしまい消えなくなっている。子供相手にそんないかがわしい欲望を抱く自分は、多額の借金を背負ったことよりも情けなくてだめな人間だ。 「こんなことして、楽しいのか……赤木」 「そうやって必死で我慢してるのを見るのが、楽しいよ」 「もし我慢できなくなったら、どうするんだ」 「南郷さんなら、俺を好きにしてもいいよ。もう限界なんでしょ」 まるで挑発するように、赤木は南郷の股間に爪を立てて小さく引っかいた。ズボン越しなので痛みはなかったが、今までにない刺激に襲われて腰が動いてしまう。 一方的に翻弄されるのが悔しかったので、赤木のシャツの裾から両手を入れて捲り上げる。その過程で、赤木の身体を手のひらで確かめるように探っていくと、肉付きの薄さに驚く。 赤木は抵抗せず、南郷の手の動きに身を任せていた。静かに伏せられた目、わずかに乱れ始めた呼吸。露わになった小さな乳首を指で摘まむと、赤木は短く甘い声を上げた。 「脱がせてよ、俺の服」 熱っぽい声に誘われて中途半端に捲り上げたシャツを脱がせると、その手は赤木のズボンのベルトにも導かれた。 そこまで脱がせるつもりはなかったのでさすがに手を止めたが、すぐ下に視線を動かすと赤木の股間も膨らんでいるのを見てしまった。 「俺も南郷さんと同じだよ……もう、だめかも」 「赤木……」 「これでもう、我慢しなくて済むよね」 濡れた目でこちらを見上げてくる赤木のズボンの前を開き、下着から露出させた性器を南郷はゆるやかに扱く。誘い込むようにゆっくりと両足を開いていく赤木は、息を震わせながらも確かに笑っていた。 服を脱がし合って全裸になり、布団にふたりで倒れこんだ。 密着していると、勃起した性器が擦れ合うのがたまらない。 赤木に股間を愛撫されていた時から、こうなることを望んでいたのかもしれない。 南郷は気持ちの高まりと共に先走りの滴を溢れさせ、自分と赤木の性器を濡らしていく。 これから足を踏み入れようとしている行為が、許されないものだとは分かっている。それでももう止められなかった。 |