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勝てない誘惑 脱いだ服の下から現れた零の上半身を見て、ミツルはため息をついた。 あんなに整った顔立ちをしているのに、しっかりと筋肉がついていて余分な肉は一切見当たらない。 それに比べて自分は、最近太ってきたような気がする。いつの間にか腹の肉が指で摘めるようになったのだ。 「どうしたミツル、ため息なんかついて」 「え、いや……零はいい身体してるなって」 「いきなり何言ってんだよ、おかしな奴だな」 先に下着姿になった零が、まだ脱いでいないミツルのシャツに触れる。そしてあっと言う間に脱がされてしまった。 しかも身体をじっと見つめられて複雑な気分になった。そんなに改めて観察されると気まずい。 「見た目では分からないかもしれないけどさ、悩んでるんだよね。まずはジュースから控えてみようかと思って」 「いつもどれくらい飲んでるんだ?」 「ゲームやってる時、うまくクリアできたら気分良くなって飲んで、逆にできなかったら苛々して飲んで、毎日その繰り返しだよ。あとバイトから帰ってきた後も」 ジュースに加えて菓子まで食べているので、これでは太って当たり前だ。家族とうまくいっていないこともストレスとなり、悪い影響を受けているのかもしれない。 家族はミツルが自殺未遂を犯したことを誰も知らない。ミツルは話す気にもなれないし、どうせ大した反応も返ってこないだろう。黙っていたほうが利口だ。 「ジュースって糖分すげえから、俺はあんまり飲まないけど」 「やっぱりなあ、零はそうだよね……誘惑にも負けなさそうだし」 「お前の誘惑には勝てないけどな」 そんな衝撃的なことを言った直後、零は突然ミツルにくちづけてきた。あまりにも驚いて、固まってしまう。 ミツルは零を誘っている自覚などなかったので、そう言われても首を傾げるばかりだ。どちらかと言えば零のほうがミツルを誘惑しているような気がする。 ジュースや菓子の誘惑にも勝てない自分が、零に積極的に迫られて拒めるわけがない。 零はミツルにくちづけながら、脇腹や背中のあたりを撫でてきた。まるで何かを探るような手の動きに変な気分になってくる。 こんなにだらしない身体でも愛してくれているのかと思うと感動する。できればその手をもう少し上に動かして乳首あたりにも触れて欲しいなどと、図々しい要求を しそうになったが、くちづけの最中にそれは無粋だと考えて必死に飲み込んだ。 零の手はいつ見てもきれいだな、とぼんやり思っていると唇が離れていった。 「今触ってみたけど、ミツルだってそんなに無駄な肉付いてねえぞ」 先ほどの行為は愛撫ではなく、ミツルの肉付きを確かめただけだったらしい。勝手にいかがわしいことを妄想していた自分が情けなくなった。 零が悪いわけではないが、悔しかったのでつい意地悪をしてみたくなる。 「本当は俺、零にこんなふうに触って欲しかったんだ」 ミツルはそう言うと、零の胸に手を伸ばして乳首に触れた。淡く色付いている小さなそこを、指先で撫でると零の身体が少し震える。 普段は落ち着いている零も、こういう時だけは乱れてしまう様子を見るのがとても好きだ。 零のいやらしい姿をもっと見たいという欲望のままに、ミツルは零の下着を脱がしてしまう。 驚いたように息を飲む零をよそに、先ほど与えた刺激のせいか反応し始めている性器に触れた。自分にも付いているものなのに、どこか違うものに見える。 夜中に誰も見ていない部屋で、これを扱いて自慰をしている零を想像するとやけに興奮してきた。ミツルは思い切ってそれを咥える。 最初は亀頭だけ、そして次第に深く飲みこんでいく。 「み、ミツル……だめだ、俺のなんて」 「どうして? 零のなら俺、全然嫌じゃないよ」 喋るために1度口を離したが、再び零の性器を咥えこんだ。少しずつ昂ぶって、ミツルの口内で硬く熱を帯びてくるのが分かる。零が感じている快感が伝わってくる。 男の性器を咥えたのは生まれて初めてだった。それでも不思議と、恐怖も嫌悪もなくただ零を気持ちよくさせたい一心で口での拙い行為を続けた。 「あっ……そんなに、ミツルにされたら、もう」 視線を上げた先の零は、目を潤ませて呼吸を乱していた。そんな様子を見ながら、やっぱり好きだなと思う。零の全てが。 何の取り柄もない自分が零にできるのは、こうして身体を張るしかない。難しいことは考えられないのだから。 ぎこちなく口の動きで攻め続けた後、とどめとばかりに亀頭を強く吸い上げた。零は泣き出しそうな表情で、ミツルに咥えられたまま達する。 それを拒むことなくミツルは目を閉じて、口の中に広がる精液の味や生温かさを感じた。 |