幸せな瞬間 ミツルの下で喘ぐ零の、反応している性器を見ていると今までとは違う感情が生まれてくる。 頭の中で思い描いている妄想を実行した時、今まで築いてきた零との関係は一転してしまうかもしれない。 そんな危険を感じながらも、ミツルの中で膨らみ続ける感情はもう抑えるのが限界になっていた。 駅で待ち合わせをして先に着いていた零は、いつもの笑顔と私服でミツルを迎えた。 零が昼間に何をしているかは詮索しない。自分自身で勝手に作った決まり事を、ミツルは今でも守り続けている。 零が例え学校に行っていても、どこかで働いていても、何をしていても零への気持ちは変わらない。誰よりも特別な存在だからだ。 朝から敷きっぱなしの布団に腰を下ろし、零と唇を重ねる。その身体を抱きしめ、わずかな隙間すら作らない勢いで密着する。 部屋の汚れた窓、ちり紙や菓子の空き箱などで溢れたゴミ箱。片付ける余裕もなく散らばった漫画雑誌。 ミツルを取り巻くそんな現実から目を背けるように、夢中で零を求めた。 一時期は可愛い女の子と知り合って付き合うことを夢見たこともあったが、今は零が居てくれればいいと思っている。 肌がしっとりしていて柔らかいわけでもなく、当然ながら胸の膨らみもない。興奮すればミツルと同じように性器を勃起させる、 零は明らかに17歳の男なのだ。睫毛が長くてもきれいな顔立ちをしていても、その事実は覆らない。それでも零がいい。零が欲しい。 そんなミツルの暴走に零が付き合ってくれるのは、何かの奇跡としか言いようがなかった。 深いくちづけをしながら、いつも通りにミツルの股間に伸びてくる零の手。その動きに身を任せたくなったが、今日はそれを遮るように零の手に触れる。 「ちょっと待って」 「……ミツル、どうしたんだ」 不思議そうな表情でミツルを見上げてくる零と目が合う。ここまで来たら、最近ずっと考えていたあのことを話すべきだろうか。 受け入れてくれるかどうかの自信はあまりなかった。嫌がられてしまう可能性は充分にあるからだ。 しかしそれでも止められない。言い出せない気持ちを抱えたまま零に接していくのは、もう限界だった。 「今まではさ、ずっと俺が零を抱いてきただろ」 「そうだな、まあ、最初からそんな流れになってたっていうか」 「零は、これからもこのままでいいのかと思って」 「つまりミツルは、俺に抱かれたいのか?」 ずっと言い出せずにいたことをあっさりと口にされて、ミツルは固まってしまった。零は逸らすなと言わんばかりの強い視線をこちらに向けてくる。 これはもうごまかせないと悟り、観念してミツルは頷いた。思わず目を固く閉じてしまったが、再び目を開けると零は嫌悪感を示すどころか、穏やかに微笑んでいた。 「そんなに怖がるなよ、別に構わねえから」 「えっ……嫌じゃないの?」 「男同士だし、立場が逆になったっておかしくねえだろ。それに俺は、相手がミツルならどっちでも」 零が言い終わらないうちにミツルは嬉しくて涙を浮かべながら、零を抱き締める。まさか受け入れてくれるとは思っていなかった。 いつもとは逆になっても、零は勃起するのだろうかと考えた。しかしそんな不安を和らげるかのように、零はミツルの手を取ると自身の股間に導く。ジーンズの上から触れて みると、そこはすでに硬くなりかけていた。これは現実なのだと確かめるために、零の股間を何度もしつこく撫で回す。そうしていると更に硬くなり、外側から見ても明らかに 勃起していると分かるまでに反応させてしまった。息を乱しながらミツルの肩にしがみつく零を見て、我に返る。 「そうやって触るくらいなら、直接してくれよ……」 「じ、じゃあ脱がせてもいい?」 「俺が自分で脱ぐ」 頬を赤く染めた零は立ち上がると、ジーンズと下着を脱ぎ始める。下半身を覆っていたものが足元に落ちていく様子を、ミツルは夢を見ているような気分で ぼんやりと眺めていた。零の性器がミツルの目の前で反り返っている。今まではずっとミツルが零を抱いてきた。狭い部分に勃起した性器を挿入して、搾り取られるような熱い感覚を何度も味わった。 しかし今日はミツルが食われる番だ。細い身体の、年下の男に。しかも自分からそうなるように求めた。 「お前も脱げよ、ちゃんと尻に入るように……してやるから」 零は俯いたまま、小さな声でミツルに要求してくる。性器を露わにした途端、零はどこか緊張しているようにも見えた。 ミツル以上にぎこちない指の動きに、少しずつ内側を解されていく。そうしている間も零はミツルの様子を窺うようにじっと見つめてくるので、こちらまで緊張してしまう。 畳に仰向けになって足を広げ、零に尻の奥にある恥ずかしい部分を晒している。そんな状態でもミツルの性器は零と同じように勃起し、興奮していた。 いつもは零にしていることを、今度は自分がされているとおかしな気分だった。零の指はじれったいほど緩やかに動いている。 「ミツル、あのさ、実は俺……まだなんだ」 「何が?」 「つまり、ほら、童貞だってこと」 唐突な告白に、ミツルはどうしていいのか分からなかった。零は再び赤面したまま俯いて、無言になる。ミツルの内側を慣らす指の動きも、そこから止まってしまった。 もてそうな零なら女の子のひとりやふたりと経験していても、おかしくないと思っていた。なので童貞だとは予想外だった。 「だからお前のこと、あんまり気持ちよくしてやれないかも」 「俺にとっては、零がしてくれることに意味があるんだよ」 「な、何だよ上手いこと言いやがって……本当に知らねえからなっ」 零は最後のほうを早口気味で言うと指を引き抜き、ミツルの尻の奥に性器を押し当ててきた。誰かに挿入することなど想像できなかった零の性器が、ミツルの腸壁を拡げていく。 場所的にかなりの違和感はあったが、零といつもとは違う形で繋がっているのだと思うと感動すら覚えた。 「ミツル……辛くないか?」 「うん、平気だよ。零が解してくれたし」 「お前の中、すごく狭いんだな。知らなかったよ」 ミツルに覆い被さって腰を進める零が、熱っぽい声で囁いてくる。そんな零の背中に強くしがみつくと、再び深いくちづけを交わした。 零とセックスするまではミツルも童貞だった。もちろん女の子と付き合ったことも、キスしたこともなかった。それだけが理由ではなかったが、 零と出会うまでは何もかもが薄っぺらく、つまらない毎日を過ごしていた。胸の内は常に淀んだ重い空気で満たされたままで。 最初は反感ばかり抱いていたが、今は零と出会えて良かったと心から思っている。自殺を実行するまでは、世の中の誰もこんな自分のことなど必要としていない、 ここで消えても周囲は何も変わらない、無意味な存在だと考えていたからだ。 「ぜろ、零……俺、今すごく幸せだよ」 「俺も……お前と繋がれて嬉しいよ、もう止められねえんだ」 ゆっくりと零が動き、奥のほうを何度も突き上げられる。ミツルを必要としてくれている零の性器で満たされるのが、たまらなく幸せだった。 零が動くたびに、勃起したミツルの性器が零の腹で擦られてたまらない。 もういきそうだ、と震える声で囁いてくる零の頭をそっと抱き寄せると、ミツルの中で零が達する瞬間を待った。 |