案内されて扉を開けて入ると、思っていたよりもずっといい部屋で思わず立ち尽くす。
部屋の説明を始めようとした従業員にヒュンケルはやんわりと断りを入れて。
従業員が扉を閉めた音がした途端、その腕の中に巻き込まれた。
「へ?」
『休みが取れた。1日だけだが』
クリスマスは姫さんとこのパーティーに呼ばれ、夜は帰ってきた父さんも入れて家族団欒。
母さん手作りのケーキも食べて満腹状態で部屋に戻れば、携帯電話にヒュンケルからの着信。
「え、だって休み無いって」
『年末年始の前に1日でもいいから休めと言われてな』
日程を聞かされて大丈夫か?と聞かれるけれど、こちら気楽な高校生。
でも二つ返事で返すのもなんだか照れ臭くて。
「多分、大丈夫だと思うけど」
『そうか』
電話の向こう、少しほっとしたような声。素直に喜べば良かった。
どうしていつも自分はこんなんだろうか。
「じゃ、マンション行けば良いか?なんか食いたいもんとかある?」
『あ、いや、今回はホテルを取った』
「ホテル!?」
『この前、雑誌を見ていて行きたいと言ってなかったか?』
もしかしたら言ったかもしれない。クリスマス特集!とか言って雑誌には沢山の豪華なホテルが豪華な食事の写真つきで並んでいた。
あんな飯を食ってみたいと言ったような気もする。
そんな適当な自分の言葉を覚えていてくれたのかと嬉しい反面、せっかくの休みを潰すのが悪い気がして。
「でも疲れてんじゃないのか?ゆっくり休んだほうがいいんじゃねえ?」
『お前に会わないと取れる疲れも取れない』
からかうような口調だけれど、言っている内容に体温が上がる。
年上の恋人は普段無口な癖にこういう時に言葉を惜しまないから、振り回されてばっかりだ。
「……いいのか?」
『仕事が終わったら迎えに行くよ』
会議の時間だ、と言って携帯電話は切れた。
別に急ぐ話ではないし、仕事が終わった後にでもメールを入れてくれればいい事なのにわざわざ電話をくれたのだ。
「……ヤバイ、嬉しすぎかも」
一人、部屋の中で照れ隠しにベットへとダイブする。
体温の上がった頬にシーツの冷たさが気持ち良かった。
「マジで……ここなのか?」
約束の日、珍しく反故の電話も入らずに時間通りにヒュンケルは待ち合わせ場所に現れた。
ダークカラーのスーツにロングコート。
うっかりどこのホストだと思ってしまったのは秘密にしておこう。
車に乗り込んで連れて行かれたのは豪華なホテルの沢山ある有名スポット。
どのホテルにも綺麗なイルミネーションが飾られている。遠くを見れば美しい夜景。
クリスマスにはさぞかし繁盛したのだろうなというのが見て取れる。
たどり着いたホテルも例外ではなく、入り口までの道にはイルミネーションが輝き煌いていた。
「チェックイン済ませてくるから」
フロントまでの間もとにかくすごい。
高い吹き抜けになっているロビーには、テレビでしか見ないような階段。
沢山の高そうな店。
ジーンズにシャツ、スニーカーのおれははっきり言って浮いてるとしか思えなかったのだが、
ちょろちょろとフロントへ来る家族連れなんかの他の客を見るとそう大差が無くて少し安心した。
「荷物をお預かりいたします」
「ポップ」
「へ!?」
チェックインを済ませたヒュンケルと一緒に来たホテルの人がおれの荷物に手を差し出す。
何を言っているのかが分からなくてヒュンケルを見ると、顔色一つ変えずに大した荷物はないから大丈夫だと告げていた。
他を見ると大きなスーツケースを台車に乗せて運んでもらっている人も居て、そういうものなのかと納得した。
「ではお部屋へ案内いたします」
ヒュンケルが視線でおれを促して、ホテルの人の後を追う。
床はふかふかの絨毯が敷き詰められていて足が沈む。
驚くけれどヒュンケルを見ても涼しい顔をしていて、普通のことなのかと口に出すのを止めた。
エレベーターも大きくて立派で、凄く驚いたけどそれを伝えるのもホテルの人が居るからやっぱり止めた。
扉が開いてまたふかふかの絨毯が続く廊下を少し歩くと、今日止まる部屋へとたどり着き、そこでカードキーの操作を教えてもらったが、良く分からなかった。
後でヒュンケルに聞けばいいやとホテルの人が開いてくれた扉の中に入る。
「うわっ!」
思わず声が出てしまった。思っていたよりずっとずっと広くて綺麗な部屋。
ビックリして立ち尽くすおれを余所に、ヒュンケルは部屋の説明をしようとするホテルの人に断りを入れていた。
「それでは失礼いたします」
ホテルの人がお辞儀をして立ち去ろうとしている。
扉が閉まったらとりあえず部屋を探検しよう、と意気込んでいたけれど。
扉が閉まった瞬間、長い腕に捕らわれて。
今までの驚きを伝えようとした言葉は、薄い唇に塞がれた。
冷たい唇が温度を取り戻すまで触れ合う。
「……すごいトコだな。無理したり、した?」
長い腕の檻の中、口付けに痺れた舌を懸命に動かしてヒュンケルに問えば、離れた唇を瞼や頬に軽く落としながらおれの問いに答える。
「閑散期なんじゃないか?安かったぞ?」
「ホントかー?入り口からビックリした!」
なんだあの階段!どんな姫が降りてくんだよ!と言うとなんでもこのホテルは結婚式とかもやっているらしい。
花嫁が降りてくる場所かと思えば納得が行った。
「しかし凄いところだな。オレも驚いた」
「ヒュンケルも?」
「当たり前だ」
やっぱりヒュンケルは大人で、こんなところにも慣れているのかと思っていたけれど、そうじゃないらしい。少し安心する。
「少し探検してもいいか?」
なかなか離してくれないヒュンケルに痺れを切らして自己申告。
するとクスリと笑われて腕の拘束が解かれた。
子供っぽいと思われているだろう事にはムッとしたが、それよりも興味深々のこの部屋を探索することが先。
まずはカーテンを広げてみる。
大きな窓から見えるのは雑誌で見たのと同じような夜景。
驚くほどに綺麗だった。
「すっげ……」
見とれていると言うより、素直に驚いているおれの背後にヒュンケルは近づくと未だ着っぱなしだったコートを脱がしてくれた。
そのまま扉のほうへと歩いて、クローゼットへとヒュンケル自身のコートと共に仕舞いこむ。
何気なく見ているとヒュンケルはクローゼットの向いにある扉を開けて、その後すこし驚いた顔をした。
「どした?」
「バスルームだ」
こんな豪華なホテルの風呂場はどんなだろうかと駆け寄って、ヒュンケルの隣から覗き込むとそこは映画にでも出てくるような光景だった。
扉を開けてまず目に入るのは大きな鏡と洗面台。
左手には広めのバスタブとシャワー。
右手にはトイレと……?
「ヒュンケル、あれ何?」
ガラスで区切られた、見慣れない部屋?のようなものがある。
内にはシャワーがあるだけ。
「シャワーだけを浴びるのに使う場所だろう。泡風呂の後とか」
そういやなんかの映画でそんなのを見たことがあるかもしれない。
洗面台にも色々並んでいる。
手に取ってみると良く分からない言葉の羅列。
バスソルト?塩?
「何、これ。塩入れてどーすんの?」
「入浴剤みたいなものだろう。これは泡風呂の素だな」
「温泉の素みたいに言うなよ」
ヒュンケルが差し出した『泡風呂の素』は青い色をしていて開けて匂いを嗅ぐと石鹸のような匂いがした。
少し手に出してみると確かに泡だった。
お湯を張る時に使うっぽい。
「へー、風呂入るときに使おっと。ヒュンケルも使うか?残しとくけど」
ヒュンケルのほうを見るとなにやら複雑な顔をされた。
どうかしたか?と問う前に腕が伸びてきて抱き締められる。
その姿が大きな鏡に映って恥ずかしくて、それを隠すようにヒュンケルを怒鳴りつけた。
「イキナリなんだよ!」
「こういう場合、一緒に入るものじゃないか?」
少し拗ねたような顔をされて告げられる。
その顔が少し可愛いなんて思ってしまったのだけれど、言っている事はおれを驚かせた。
ヒュンケルのマンションで一緒に風呂に入った事が無いわけじゃないけれど、あくまでそれはシャワーだけの話。
こんな広くてしかも明るい風呂に2人で、なんて恥ずかしすぎる。
「む、無理!いくら広いって言ったって、この風呂に2人は狭いって!」
「ポップを抱き上げれば問題ないだろう」
「ちゃんとあったまれねーし!」
「もともと暖まれるように出来てないぞ、ユニットバスは」
「でも……ッ!」
「観念するんだな」
抱き締める腕に力がこもって、楽しそうな笑みの形の唇に唇を塞がれた。
舌が侵入してきて歯列をなぞり上顎をくすぐられると、自分の意思とは別のところで身体が跳ね上がった。
更に舌を絡められて膝の力が抜けても解放されないばかりか、シャツの下のTシャツの中にひんやりとした手も侵入してきて脇腹を撫で上げられた。
「んぅ……ッ、んんッ、……は……ぁ」
「観念……したか……?」
「や……ッ」
耳朶を噛まれながら、侵入してきた手に胸の尖りを捕まえられて身体が跳ねる。
ここまで来たらおれの意思なんて関係ないくせに。
威力なんてないのは分かっているけれど、せめてもの抵抗で睨みつけるけれど。
「そんな目で見ても逆効果だな」
もう一度、唇が降りてきて。
あとはもうされるが、まま。
「あ……ッ、や……」
泡風呂の中、座ったヒュンケルの膝の上に座らされ後ろから抱き締められた格好。
おれの身体を其処此処と撫でるヒュンケルの手は泡風呂にしたせいでいつもと違う感触で、唇から声が零れ落ちるけれどその声が響くのが恥ずかしくて手で口を塞ぐ。
「ポップ……、声、聞かせてくれないのか……?」
「んあ……ッ!」
嫌だと口を塞いだまま首を横に振るけれど、既に尖りきってしまった胸の先を泡に滑る指先に摘まれて、身体が跳ねてお湯がバスタブから零れるように声をも零れてしまう。
反射してくるはずの声は、ヒュンケルに差し込まれた舌のせいで耳へ届かない。
「ぁんッ、んッ!」
身体中ぬるつく手で触れられるけれど、既に勃ちあがってしまった自身にはまったく触れてくれない。
内股を撫でる手が際どいところまで進むのに、直前で戻って行ってしまう。
ヒュンケル自身ももう固く勃ち上がっているのに。
「ヒュ……も……んぅ……」
触れて欲しくて無理な体勢で振り向いても、強請る言葉は最後まで言わせて貰えずに唇に塞がれてしまう。
唇を触れ合わせたまま撫でる手が身体の線を撫でながら奥へと進んでいくのがわかる。
「ん、う……ぁッ」
ヒュンケルの指が、おれの奥を撫で上げる。
ぬるりとした感触に指を銜えようとソコがヒクつくのがわかって恥ずかしい。
指先が少し入り込んでは抜かれ、自身には触れてもらえず、焦らされて頭の芯がぼんやりとしてくる。
「のぼせたか?」
決してのぼせたわけではないが、認めれば風呂から出してもらえるかと頷くと風呂の栓が抜かれたのか身体を取り巻く湯が減っていく。
ヒュンケルに触れられて身体は熱くなっていたけれど、湯の温度が下がっていたのか急速に肌が冷えていくのが分かった。
「さむ……い……」
「ん……?」
冷える肌が寒くてヒュンケルに擦り寄ればまた唇が降りてくる。
抱き上げられて連れて行かれたのは先ほどの謎の場所、ガラスで区切られた一角。
立てない身体を鍛えられた逞しい身体で支えられながら浴びるシャワーの水圧にすら焦らされた身体は反応してしまう。
「や……ぁ、ん……ッ」
「……いやらしいなポップは……」
シャワーを当てられてビクつく身体を耳元で揶揄する声すら甘くて、何かを言おうと口を開こうとすれば唇を塞がれてもう何も考えられない。
されるがままにしていると背中にヒヤリとガラスの感触。
そして。
「あ……ッ!やあッ!」
勃ち上がった自身が暖かく柔らかいものに包まれる。
それがヒュンケルの口の中だなんてこの身体は知りすぎるほどに知っていて、柔らかい髪を掴んではその甘い快楽を味わってしまう。
腰を支える腕の片方が蠢いて快楽に震えるソコへと指が滑りこんで撫で上げる。
「あ、ぃや、だ……ッ!も、もお……ッ」
爆発してしまいそうな自身に、ヒュンケルの顔を話そうと髪を掴む手に力を込めるがびくともしない。
そればかりか舌で先を割るように愛撫され、よこせと言わんばかりに吸い上げられれば堪えることなんて出来なかった。
「うぁ、ぁあ……ッ!」
ヒュンケルの髪に縋りつきながらその口の中に盛大に放ってしまった。
放出の余韻にぼんやりとしているとヒュンケルが身体を離し、大きな手を口元へと持って行く。
その手が離れて、赤い舌が唇についた白い液体を舐め取るのが見えて。
この後に自分が何をされるのかがわかって、甘い悪寒が背中をゾクリと這い上がった。
「あ、ああッ!や、あ……んッ!」
力の抜け切った身体を反転されられガラスへ縋るような格好にさせられる。
目の前に広がるのは泡にまみれたバスタブ。
ヒュンケルはおれの放った物を掌に出し奥へと塗り込んで、指を侵入させてきた。
達した後の身体は敏感に反応して、もう声を抑えられない。
自分の物だとは信じたくない甘い媚びたような喘ぎ声と、ヒュンケルが指を動かすごとに響くいやらしい粘着質な音がもう欠片しか残っていない理性を食い破っていく。
「ぁ、んッ!あ!ヒュン……ッ!」
「ポップ……、気持ち、イイか……?」
「んんッ!ん!わ、かんな……ッ!」
言うのが恥ずかしいとかそういう事ではなくて、もう本当に分からなかった。
ただ身体が酷く熱くて、触れられるところから生まれるその熱が、行き場を求めて身体中を駆け巡っていた。
顎を取られ無理な体勢で唇を求められ、息が苦しいのに舌が甘くて自分から貪ってしまう。
「ぁ、も、指やだ、ヒュン、ケルがいい……ッ!」
蠢く指を物足りないとソコが懸命に食むような動きをするのが良く分かる。
腿に当たる固く張り詰めた熱が欲しくて強請ると、指が急に引き抜かれた。
更なる物足りなさにヒクつく場所に欲しかったそれがあてがわれ、ゆっくりと侵入をしてきた。触れた部分から生まれる快感がゾクゾクと身体を這い回る。
もっと、と収縮を繰り返してヒュンケル自身誘い込もうとするのに、なかなか奥まで来てくれない事に焦れて知らず腰が揺れる。
「……じ、らすな……よ……ッ!早、く……!」
「……ああ……」
腰を掴まれたかと思うと引き寄せられて一気に奥へと侵入された。
中を満たす熱に身体は素直に喜び、それでももっとと熱に絡みつく。
ヒュンケルはそれに逆らうかのように腰を引き、追いかけるように閉じる内側をまた熱で抉じ開けて、その繰り返し。
「あ……ッ、ん、ぅ……ッ!」
激しい注挿のなか、また唇を求められその甘い舌を貪っていると、おれの腰を掴んでいたヒュンケルの腕が自身へと絡みついた。
滴る体液を塗りこめるように指と掌で愛撫され、喉から零れる嬌声は口移しで伝えることになる。
「んぅッ、ん……ッ、は……、ヒュ……」
「……ガラスの向こうから見たら……どんなだろうな……」
離れた唇が耳朶を噛んだ後、甘く濡れた声を耳へと流し込んできた。
そして。
「……ヒュン……ッ!」
「ポップ……ッ」
今の自分の姿をガラス越しに見たときを、いや、ヒュンケルに見られている事を想像した途端、おれの頭は真っ白になって。
奥のほうで叩きつけられる熱を感じながら、意識はフェイドアウトして行った。
NEXT
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エッチinバスルーム終了。
次は部屋だ!
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