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***「たま○っち事件 後編」
長い休み(←おそらく土日連休に何かの祭日が入ったのだと思われる)に入るので、自分で世話をする。
子供たちがそう言ってたまごっちを奪っていったのはいつのことだろうか。オレは愛するまるちぇろを取り上げられてしまい、かなり荒んでいた。
オレが世話をしていない間に、どうやら今度はリュウのたまごっちに子供が生まれたようだ。まめ族の可愛い女の子、名前は「くくーる」。大きくなったらまるちぇろと結婚させるのだと言う。
天国の院長、オレとマルチェロの子は本当に良く育っています(涙)
隣でげんなりしているマルチェロにはやはり気付かないふりをして、オレはにこやかに微笑んだ。
確かまめ族とくち族の子供はまめ族になるはず…。きっとオレたちの子は可愛いことだろう。
オレはまるちぇろとくくーるを大切に大切に育てた。まるちぇろが学校を卒業してレストランに就職したときには、コック姿のマルチェロを想像して悶えたりもした。
さて、そうなればくくーるは「めいどっち」にするしかないだろう。必死におしゃれを上げてまるちぇろの元に嫁ぐ日を待つ。
子供の名前を考えることも忘れない。男の子ならオディロ、女の子ならマイエラにしようそうしよう。兄貴はどう思う?と尋ねたら途端に嫌な顔をされた。ああ、ごめん。もう兄貴じゃないんだっけ。院の時代を思い出していたらついつい昔の呼び名になってしまった。
しかし、それからしばらくオレはたまごっちの世話を出来ない状況になってしまった。
院長の三回忌の法要があったりして手伝いに行かねばならなかったからだ。とりあえずオレは愛するまるちぇろとくくーるの朝ご飯だけ食べさせて、後は園から戻った子供たちに任せることにした。
子供たちのお迎えは近所の奥様、ビアンカさんがやってくれるという。いつもお世話になってます。可愛い双子のお母さんで、なかなかの美人さんなのだ。畜生、オレにマルチェロが居なかったら間違いなく口説いてたのにな!
そんなこんなでオレが夜の9時頃クタクタになりながら家に戻ると、寿司の皿が玄関にあった。
おい! オレの不在中に寿司なんて取って食ってるんじゃねえよ! マルチェロは「早かったな」なんて知らん顔している。オレの分はないらしい…。たまにこの男の愛が信じられなくなる。オレが法事の準備で疲れてるっていうのに、この男は容赦なく「わたしの礼服を用意しておけ」と偉そうだ。
腹が立ったのでバギクロスをお見舞いしたら、祈りをこめて十字を切りやがった。もういい。たまごっちもゼシカもリュウも寝ちまったし、オレもこのまま寝ることにする。
前日苛々して寝つきが悪かったせいか、翌日オレはまるちぇろとくくーるの世話を忘れて家を出てしまった。オレは焦ったが、確か半日程度なら世話しなくても病気になるくらいで済むはず。取りに戻るわけにもいかず、オレは後ろ髪を引かれながらマイエラに向かった。
あ、そういえば兄貴の礼服出してくるの忘れてた。まあいいか今夜で。法事は明日だもんな。
午後5時を回ったころ、明日に備えて休んでいいというのでオレはウキウキしながら家に戻った。まるちぇろとくくーるに逢うのは久しぶりだ。それに、今夜はゼシカとリュウにも夕飯を作ってやれるだろう。マルチェロ? ふん、あんな奴知るもんか。出前でも取って食ってればいいんだ!
ビアンカさんにお礼を言ってゼシカとリュウを引き上げる。そして子供たちの持っていたたまごっちを取り上げ…もとい預かった瞬間、オレは言葉通り固まって動けなくなった。
オレのまるちぇろが…ハゲた変なジジイになっている。
おいおい、マルチェロだってこんなに禿げてねえぞ! 一体これはどういうことなんだ。
ゼシカとリュウを問い詰めると、ショックを受けているオレに構わず残酷に言い放った(この辺は絶対に父親似だ!!)
「産卵期を越えるとたまごっちはこうなっちゃうのよ。知らなかったのククール」
だからお母さんと呼べと……まあいい。今はそれどころじゃない!
「じゃあ、結婚は!? くくーるとの結婚は!?」
「しなかったわよ」
「どうして!?」
「だって仕方ないじゃない。まるちぇろはくくーるが成長するのを待ってたのよ。何度もお見合いの話が来たけど全て断って。でもなかなかくくーるに産卵期が訪れなくてね。待ってる間におじいちゃんになっちゃったってわけ」
淡々とゼシカは言う。隣でリュウもにこにこ笑っている。
「年の差がありすぎたみたいだね。まるでどこかの夫婦みたい」
いやあああああっ!!
オレは頭を抱えて蹲った。まさか、まさかたまごっちでまでオレたちの年の差が障害になるとは。
走馬灯のように流れていくのはオレとマルチェロが結婚を決めた日のこと。
一回りも歳が違うオレたちの結婚を祝福してくれたのは院長だけだった。マルチェロ本人もその気でなかったのに、今こうしてオレが彼の妻としてこの場にいられるのは院長のアドバイスがあったからこそ。
『マルチェロとしか結婚したくない? では、既成事実でも作ってしまえばいいんじゃないかの? 思わずマルチェロが奇声を上げそうじゃが』
院長には悪いけど、その頃「既成事実」だけは出来ていたんだけどね…。
『お前たちの子はわしにとって孫みたいなもんじゃのー。まごまごするでない、急ぐのじゃ。なんてな』
寒い、寒いです院長! でも、おかげでオレはマルチェロと出来ちゃった婚ができました!
そうだ、オレは最後まで絶対に諦めない男三井……違った、ククール。
まるちぇろがハゲようとアレが使えなくなろうとも愛し続けるんだ。それでいいんですよね安西先生。
オレの強い意志が伝わったのか、ゼシカは深く溜め息をつく。
リュウはにこにこ笑っている。
いつのまにか帰ってきたマルチェロは出前の天丼をみっつ頼んでいる。ちょっと! オレのは!?
「ククール、気持ちはよく分かったわ。まだ方法がないわけじゃない、絶対あなたたちを結婚させてあげる」
その時オレはゼシカが女神に見えたね。ありがとうゼシカ、オレはお前だけの騎士になるよ。
リュウ、天丼の海老の尻尾だけでいいから分けてくれ。あ、しいたけくれる? そう、ありがとう。お前たちは本当に良い子だな。
そして数日後。
院長の法事も無事に終わって一息ついたオレに、ゼシカが嬉々としてやってきた。
「ククール、喜んで! まるちぇろとくくーるに子供が出来たわ!」
とうとう出来たか、オレたちの愛の結晶。オレは感慨深くたまごっちを見つめた。その目に飛び込んできたのは。

いやあああああっ!!!(二度目)
「ちょっと! 結婚したいって言ったのはククールでしょ? くくーるにもお見合いの良いお話は沢山いただいてたのよ。それなのにあんたがどうしてもまるちぇろと結婚したいっていうから…。産卵期を越えてばあさんにしたんじゃない。おじっちになったまるちぇろが結婚するのはそれしか方法がなかったのよ。恋愛結婚なんだから喜びなさいよ」
がっくりとうな垂れるオレを冷めた瞳でゼシカは見ている。
リュウは腹を抱えて笑っている。
やはりいつの間にか帰ってきたマルチェロはキッチンでカップラーメンを食べている。あ、マルチェロのメシ作るの忘れてた。
オレたちの愛の結晶は、生後1時間で酒が飲めてだじゃれが大好き、おまけにスケベと三拍子揃った「おやじっち」
誰かさんにそっくりだ…と感心したように呟くキッチンからの声は聞こえないふりをした。つーか、オレはだじゃれ好きじゃねえ!
でもいいや、うん…。こんなんでもまるちぇろとくくーるの子だもんな。愛情を持って育てねえと。
オレはゼシカとリュウのたまごっちの世話を始める。おやじっち二匹、なんか泣きたくなってきた。
【注】たまごっちでは恋愛結婚すると双子が生まれ、それが父親と母親に一匹ずつ引き取られることになっている。
マルチェロはカップラーメンを食べ終わって、容器をオレに差し出した。スープ飲むかってことらしい。
いつもは喜んでもらうけど(もらうのかよ!)今日は要らない…。
落ち込んでいるオレを見て、やれやれとマルチェロは溜め息をつく。
「……子供、また作るか?」
オレはぱっと顔を輝かせた。
そうだな、また最初から作ればいいんじゃん!
今度は歳の差が開いてない男の子と女の子、それが出来るまでには苦労があるかもしれないけど、きっとオレはやってみせる。
今度はまめっち「まるちぇろ」と、めめっち「くくーる」がいいな。やっぱりマルチェロと名がつくからには賢くなくちゃ! オレだってオシャレで可愛いめめ族がぴったりじゃね?
すっかりご機嫌になったオレはウキウキとコーヒーを淹れ始める。
そんなオレの後ろで、頭を抱えていたマルチェロにオレは気付くことが出来なかった。
リアル三人目の夢を逃してしまっていたことにも。
また忘れた頃につづく。かも…
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たまごっち豆知識(じんせーエンジョイ版)
・まめっち――かしこくて礼儀正しいらしい。
・めいどっち――お掃除とお料理が得意。お嫁さんにしたいタイプらしい。
・めめっち――おしゃれで可愛いらしい。
・おじっち――爺さん。10歳を超えるとこうなる。おときっちとしか結婚できない。
・おときっち――婆さん。上に同じ。
・おやじっち――おじっちとおときっちが恋愛結婚をすると生まれる。
・お見合い結婚――産卵期になるとおせっかいばあさんがお見合いの話を持ってくる。恋愛結婚したいなら片っ端から断るしかない。ちなみに一度見合いすると絶対に結婚させられてしまう。
・恋愛結婚――他の人が育てたたまごっちと結婚できる。しかし歳が合わなかったりすると上の話のようになる。ついでに言うが女同士でも男同士でも結婚できない(当たり前)
そして、ただのギャグに後付けで出てきた無駄設定(その1)
マルチェロとククールは同じ施設で兄弟のように(この場合兄妹なのか?)育ったらしいです。でも血は繋がってないという。ゲームと全く逆です、すみません。
でも見た目は男で考えてください(笑)更に訳が分からなくてすみません。
そしてこんなギャグからは考えられないシリアスが出来上がりました。色々捏造しまくって何だかありえないことになってます。
それでも宜しければ番外編その1「決意」をどうぞ。
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