3時限目の始まりを知らせるチャイムが鳴り響く教室の中で望月が視線を向ける席は相変わらず無人だった。今日も…来ないのか。安心したようなガッカリしたような複雑な気持ち。また早坂は休みか?と言う教師の声をボンヤリと聞きながら望月は頬杖をついた。欠席したと思っている親友は登校途中で拉致された事も知らずに。
「んっ…あ………あぁ…!」
その頃、学校で欠席扱いされている秀才は涙まみれの顔を横に向けて嬌声を漏らしていた。望月が相手だった時とは違う恥辱感が胸に広がる。あの時も確かに同じ感情を抱いたが、それとは比べ物にならない、狂いそうなまでの恥ずかしさ。相手が名前も素性も知らぬ男だったから無理もなかった。容赦無く打ちつけて来る所は親友と似ていたのだが。
「いやっ…だ…痛……い……!」
ストレートな感情を口に出すが、相手の方は聞いているのかいないのか、腰を余計に前進させて奥までの侵入を試みて来た。
「ひあっ……!!」
ビクッと四肢を痙攣させる早坂の接合部に赤い円が浮かび上がり、その図形の下から数本の線が引かれて床に水滴を落とした。
「ハハッ…お前、まだ経験浅いんだろ。血が出て来たじゃねぇか。どっか裂けたのかもなぁ悪ぃ悪ぃ」
「そんっ…な……嫌ぁっ……!…っ…んっ……!!」
必死に目を逸らして喘いでいた顔を無理矢理掴まされ、開きっぱなしの唇を吸われる。慣れない口付けと口内を舐めて来る相手の舌の感触に早坂は身体を震わせて泣きじゃくった。
「うんっ……ん、ん………っ…!」
奪われたままの唇から漏れ出る嬌声が水音と混じり合って空しく響く。手錠を掛けられた腕を持ち上げている方の男が少し苛立った様子で口を開いた。
「おい、まだ終わらねぇのか?俺にもさせろよな」
「まぁ待てって。コイツ、まだ慣れてないみたいで処女並に締め付けて来やがるんだ。あっさりイクのは勿体無いってもんだ」
「チッ……仕方ねぇな…。じゃ、お前の後にすぐ出来るように準備しとくかな」
順番待ちをしていた男が立ち上がり、身体を早坂の顔の横に移動させる。目の前に突き出された屹立に早坂が小さく悲鳴を上げたのは、それからすぐの事だった。その行動の意味に気が付き、激しくしゃくりあげながら首を何度も振る。
「…ひくっ……やだっ…僕…そんな事っ……出来ない……舐めるのなんて…やだよ…!」
「さっきから嫌だ嫌だ言ってるけど、余り我が侭は言うもんじゃないぜ?アイスキャンディーを舐める感じでやってみな。上手く出来たら家に帰してやるさ」
家に帰してやる。その一言が早坂を突き動かす。気が付けば、おずおずと舌を伸ばし先端に舌先を当てていた。舌の上に相手の先走りが乗り、苦味が走る。アイスキャンディーとは似ても似つかぬ生温かい肉の塊に吐き気を覚えたが、それでも目を硬く瞑って舌を動かしてると髪を掴み上げられ、痛みを感じた時には口の中に捻じ込まれていた。
「ぐっ…………!!」
舌の上を走っていた苦味が一気に口内に広がり、生温かさも加わる事で一気に吐き気も強くなる。喉の辺りまで込み上げて来た物を必死に唾で流し込みながら慣れない奉仕活動を続ける間も腰を掴まれ、激しく揺すられていた。熱い……。口の中を忙しく動かしながら、視線を陵辱されている接合部に向ける。熱い。繋がっている箇所が。流れ出ている血が。自分自身が。
「んっ………う、んうっ………」
口から出る嬌声にも熱が篭って来る。望んでいない性的反応。こんなの嘘だ。痛い筈なのに、気持ち悪い筈なのに、僕は犯されて感じている。縛り付けられて駿君に無理矢理犯された時と同じように。あぁ…こんな事って………
「お前も気持ち良いみたいだな。喜んで貰えて嬉しいぜ」
目ざとく見つけた相手が腰を掴んでいた手の片方を移動させ、意思とは関係無く濡れている先端を軽く撫でると撫でられた方に電流が走った。
「やっ…あん……!!」
無意識に漏れた自分の声に顔から火が出るのを感じる。男達の視線が異様に痛かった。相変わらず弄られている其処からも待ち望んでいたかのように大量の蜜が溢れ出ている。早坂は完全に男達の望み通りの反応をしていた。
「ヘヘッ…見ろよ。すっげぇやらしい顔してやがる。素質あるかも知れないぜ、このガキは」
「はぁっ………はぁっ……」
僅かに開いた口から吐息を漏らしながら、早坂はより激しい刺激を求めるように両足を震わせた。いやらしい顔って……素質って…何?今、僕はどんな顔しているの?考える早坂の下半身の振動が突如大きくなる。この感触は覚えている。相手の絶頂が近いと言う事…自分も例外ではない。その証拠に嬌声のリズムが早くなっている。
「あ、はぁっ…ゃっ、あんっ…はむっ……ん、んっ、うんっ……!!」
途中から口内に一物が乱入してくる事で、嬌声が篭ってしまう。口の中で溢れんばかりに膨張しているそれから滲み出ている異様な量の体液が早坂の唾液と混じって口の端から伝い落ちる。その間も下半身はガクガクと揺れ、視界がボンヤリとして来る。そして。
「うっ……くうっ…………!」
「やっ…ひあああぁああぁぁぁっ!!」
低い呻きと高い悲鳴が重なった瞬間、早坂の下半身の周りは白い粘液で濡れていたが、陵辱の中心部や内股は白ではなく血が混じったピンク色の線が走っていた。濡れた下半身と注ぎ込まれた後ろの生温かさを感じながら横を向き、虚ろな表情で涙を浮かべている早坂の目が何かに気付いてハッと見開かれた。
「良い顔だな。…もっと良い顔にしてやるよ」
目の前に突き出されたのは、自分の口に捻じ込まれていた一物。既にそれは大きく脈打ち、絶頂が近い事は明らかだった。先端からだらしなく雫を垂らしたそれを早坂の眼前でゆっくりと扱く事で漸く達した本体は、濃厚な白を激しく射出し、早坂の顔を無遠慮に汚した。暫くの間絶頂はご無沙汰だったのだろうか、その男の射出は中々止まらず、手を往復させる度に早坂の顔に大量の欲情が飛び掛って来た。
「ふあっ……ああぁあっ…………」
弱々しい涙声を出す間も黒髪に、泣き顔に熱い精が叩き付けられる。白濁は頬の曲線を伝い、涙と共に床を濡らしていった。顔と下半身を白くし、身体を小刻みに震わせる早坂を男達は快感による溜め息を吐きながら見下ろしていた。
「もう……やだ………帰るぅ…」
焦点の定まらぬ目でコンクリートの壁を凝視し、うわ言のように“帰る”を繰り返す。そして、思い出す。上手く出来たら家に帰してやる、と言う言葉。その言葉を信じて自分は、こんな行為をしたではないか。手錠の掛けられた手を床について上体を起こし、男達と視線をあわせると相手の目が丸くなった。
「上手く出来たら帰すって…」
「お前、アレで上手く出来たと思ってるのか?」
途中で男の言葉が乱入し、早坂の台詞をとぎらせる。早坂を絶望させる一言で。
「ハッキリ言ってアレじゃ駄目だな。100点満点の内の…赤点かな?」
「!!」
息を呑むと同時に早坂は自分の愚かさを憎んだ。僕、馬鹿だ。こんな奴らが約束を守る訳無いじゃないか…!唇を噛み締めて下を向き、肩を震わせて啜り泣く早坂に男の顔が近付き、顎を掴んで無遠慮に引き上げる。精と涙で濡れた顔を舐めるように見ながら、男はニヤリと顔を歪めた。
「こりゃ高く売れるな」
「え………?」
言葉の意味が分からず、ただきょとんとする顔を見ながら、笑ったままの男が親指で背後のコンクリートの上の方を指す。早坂の視線がボンヤリと指された方向に向けられる。そして見開かれる目。サッと青褪める顔。ビデオカメラのレンズが自分を捉えている。そんな…性質の悪い本じゃあるまいし……!
「現役男子高校生のレイプビデオ。裏じゃ結構需要が高いんだぜ?お前の場合、芝居じゃなくて本物だしな」
「…うあっ………あああぁぁ……………」
顔を真っ青にしてガタガタと震え出した早坂の肩をもう一人の男が馴れ馴れしく抱き寄せ、耳を甘噛みした。
「さて、次は俺の番だ。楽しもうぜ」
下校時刻を知らせるチャイムが鳴り響く中、望月は手の中にある紙に書かれた文章を何度も読んでいた。授業中、教師の話もろくに聞かずに書いた親友への謝罪の手紙。余ったプリントの裏を便箋にしている辺り、誠実さに欠ける気がしたが、まぁそれはさておき。
「………………」
イマイチ文才の感じられない己の手紙を読みながら、望月は溜め息を吐いた。こんな手紙で許して貰えるだろうか。俺はあんな取り返しの付かない事をしたのに。とりあえず、この手紙を渡して……どうやって?机の中とか靴箱の中に入れておくとか?ラブレターじゃあるまいし。第一、彼が今後学校に来るかどうか分からないし…。
手の中の手紙を細かく千切りながら前の黒板横のゴミ箱に近付き、ざら紙の紙吹雪を散らす。止めた。手紙なんて性に合わねぇ。直接会って謝った方が早い。…とりあえず、後3日……。後3日待って学校に来なかったら、直接謝りに行こう。
3日間と言う覚悟を決める期間を自分の中で作った望月は早坂の席を一瞥し、そのまま鞄を抱えて教室を去った。
裏で需要が高いと言うビデオの撮影は休む間もなく続いていた。最初2人だった筈の相手は気が付けば増え、5、6人にはなっている。たった数時間の間に早坂は多数の見知らぬ者との関係を無理矢理結ばされていた。
「…早坂良麻……か。へぇー、冷峰学園の生徒かよ。あそこってかなりレベル高いんだろ?」
とりあえず行為を終了させた男が煙草の煙を吐きながら、綴じられた書類らしき物に目をやっている。どうやら、自分のデータが記されている様だった。一体、誰がこんな事を?疑問が頭に浮かんだが、それを分析するまでの余裕は無かった。今でも別の男の腰が自分と繋がっているのだ。余りにも無遠慮で容赦の無い性交に早坂は幾度目かの懇願をした。
「あっ……はぁっ…おね、がい…せめて………ゴム…つけて…ぇ……!」
「ゴム?ハハッ…。そりゃ輪ゴムを根元に付けりゃ長く出来るけどな、後がつかえてるから無理だ」
この……馬鹿っ!!かあっと頭の辺りが熱くなるのを感じたが、陵辱の痛みが感情を口に出す事を不可能にしていた。口を開けば出て来るのは嬌声だけ。やり取りを見ていた男の仲間が大笑いをしながらポケットに手を突っ込んだ。
「バーカ、コイツが言ってるのは避妊具の方のゴムだろ?…にしても、凄えなぁお前、そう言う知識あるんだ?流石は進学校の生徒だな」
「冗談で言ったんだって。それ位気づけよな。…でも、コイツ医者のガキみたいだぜ。そう言うのはパパに習ったんだよな」
コイツら皆、馬鹿だ。えーと、その…何だ、セックスする時はゴム付けるのなんて常識じゃないか!それとも何?レイプビデオだから生でやった方がそれっぽいって事?…最悪。
「はっ…やあ……ぁん…っ」
ブツクサ言っている内心とは裏腹に、口の方は相変わらずビデオに相応しい声を出していた。無理矢理高く掲げ上げられている腰は揺すられ、内股は注がれ続けた男の精や自分の蜜が漏れ出て白い線と無色の線を幾つも描いている。濡れた両足は小さく震え始めた。
「もうっ…もう…嫌ぁ………!」
その言葉は相手だけでなく、自分の身体にも向けられていた。少しも望んでいないのに本体は絶頂を求め、体内の熱を集中させている。ねぇ、これで何回目?こんなだから相手も調子に乗るんじゃないか?…もしかして、僕……犯されてるから余計に感じてる?レイプされてる所を撮影されていると言う状況が余計に興奮させている?嘘だ、もしそうだとしたら…僕は………。
複雑な思考は身体に入り込んだ熱によって中断された。彼が望むような性交をしていればまず感じる事は無い熱。溢れんばかりの精を感じながら、早坂も身体を数度痙攣させて床に熱を吐き出し、そのままガックリと頭を垂れた。荒い息をしながら、そのまま力無く倒れ込む。…あぁ……僕はまた犯されてるのに達してしまった。また相手のを飲み込んでしまった。周りの人間の欲望を掻き立ててしまった。悪趣味なビデオ撮影に協力してしまった。僕はまた…………
パチパチパチ…と拍手が聞こえ、早坂の目を開けさせる。ぼやけた視線の先には見覚えのある男が微笑を浮かべて手を叩いていた。
「素晴らしかったよ、早坂君」
「と…藤堂君……!?」
拍手をしながら近づいて来たのは、自分が通う学校の生徒会長である藤堂護であった。前髪をザッと掻き上げ、白い歯を見せて笑いながら自分を見下ろしている。
「感謝するよ。僕の会社が裏で扱っているビデオに主演してくれている事にね。…君は今までの中で最高の出演者だ。君のビデオは高く売る事が出来そうだよ」
「……………………」
言葉が出ずに口を小さく開ける早坂の瞳を覗き込みながら、藤堂はフッ…と気障な笑いを漏らした。
「早坂良麻。冷峰学園創立以来の天才と呼ばれ、成績は常にトップ。……そんな君が邪魔なんだよ。君さえいなければ僕がトップになれるだろうに」
「まさか、そんな理由で僕をこんな目に会わせている訳?学校の成績ごときで?馬鹿馬鹿しいね」
気が付けば、自分は笑顔を見せていた。余りにも馬鹿馬鹿しくて失笑を隠せなかった。その笑顔を両手で掴まれ、額が重なる位に相手の微笑が接近して来る。
「ねぇ、早坂君。君、医者か弁護士になりたいんだって?人の為になるような人間になりたいって事?」
「そんな事まで調べたの?プライバシーの侵害だね」
どうして、自分はこうも落ち着いているのだろう。あぁ、そうか。目の前にいるお坊ちゃまが馬鹿だからか。笑顔が見詰め合う中、より笑顔を強めたのは藤堂の方だった。
「人間の欲望を解消するのも人の為になるよ。特に性欲なんて人間の三大欲望の一つなんだからね。喜んで欲しいな。僕は君にその場所を提供したんだから」
「!!」
早坂の笑顔が一瞬にして驚愕の表情に一変した。辺りに視線を向けると例の男達がニタニタと自分を見つめている。バイトなんだよ。最初に犯してきた男の台詞。そうか、彼らは僕の相手になる為に雇われた……
「どうやら、全て理解出来たようだね」
早坂の心中を読んだかのように藤堂はニコッと笑い、何処からとも無くロープを取り出して男達に投げ渡した。
「僕からの餞別だよ。好きに使ってくれたまえ。彼は痛め付けられるのが好きみたいだし…ね」
「と、藤堂君…!」
笑顔が消え、青褪めた早坂の顔を見ながら藤堂はクスクス笑いを漏らした。
「嬉しいだろう?君の身体は彼らの欲望のはけ口になる…つまりは人の為になる事なんだから」
ポケットに手を突っ込んで踵を返して歩き、振り向かずに口を開く。
「それじゃ皆、後は宜しくね。…基本的に何をしても良いけど殺すのは極力避けて欲しいな。死んだ時は仕方が無いけど、処理するのが色々面倒だからさ」
…嘘……死ぬ可能性もあるって事…!?
「ま、待ってよ…藤堂君!!」
後ろから早坂の裏返った叫び声が聞こえて来るが無視して先を進む。案外、あっさりと1匹目を捕まえる事に成功したな。その呆気なさに思わず笑いを漏らしながら、藤堂はポツリと呟いた。
「大丈夫だよ、もう1匹飼うつもりだから」