床に押さえ付けられた望月の顔を見てニヤリと笑った男の1人がそのまま早坂の髪を掴み上げてニヤケ面を崩さずに己の先端で早坂の唇を突付くと、濡れた唇は促されたかのように開き、そのままチュッ…と音を立てながら一物を咥え込んだ。
「ヘヘッ…流石は秀才。物覚えが早ぇなぁ。最初は口に入れるのを泣いて嫌がってたくせに」
「うっ……ぅん………うんっ……」
縄で拘束された身体を細かく震わせ、涙を流しながら奉仕行為をする親友を見た望月は微かに声を裏返しながら叫んだ。
「何が物覚えが早いだ!!無理矢理やらせてるんじゃねぇか!」
「はいはい、御意見・御質問は後でお願いしますよ」
別の男が近付き、道化の態度で望月の頭をクシャクシャッと撫でる。その馴れ馴れしい行為に睨もうとしたが、それは即座に中止となった。中止理由は口内を犯されている早坂に群がって来た男達。早坂の涙に濡れた赤い瞳が不安げに動いた。
「よそ見はいけないなぁ。授業中もよそ見はいけないって教えられてるだろ?」
「んぐっ…!!…んんっ………」
髪を掴まれ、喉の奥まで入り込むように引き寄せられた早坂の口から苦しげな呻きが漏れる。望月は親友の名を叫んだが、呼ばれた方は振り向く事さえ出来なかった。
無防備な鞭傷だらけの背中を見た周りの男達が何かを閃いたらしく目配せをし、顔を歪めて笑顔を見せあう。集団の1人が音を立てずに早坂の背後に近付いた。
「!」
奉仕に夢中だった早坂が腰を掴まれる感触によって漸く背後の男の存在に気が付いた時、既に男の欲望の対象である其処は容赦無く貫かれていた。
「ぐっ……ううっ!!」
貫かれる為の準備を整えていなかった為に激痛が全身を駆け巡り、無意識の内に歯を立てる。ブチッ…と言う音が聞こえると共に口の中の苦味に鉄の味が加わった。
「てめぇっ!何しやがる!!」
「うああぁっ!」
「良ちゃん!!」
鈍い音と親友の悲鳴に似た声が耳に響き、次の瞬間には身体が壁に叩き付けられていた。壁に激突した頭から、撲られた顔の左方の口端から血がトロトロと流れ出て来る。壁の下でぐったりとする早坂を見た藤堂がわざとらしい溜め息を吐いた。
「ちょっと、確かに死んだら仕方が無い…とは言ったけど極力殺すのは止めてよね。処理するのが面倒なんだから」
…死んだら仕方が無い?藤堂の思わぬ台詞に絶句した望月を眼中に入れず、早坂を殴り飛ばした男は舌打ちをしながらガラスの外の藤堂に目をやった。
「あぁ、悪ぃな。だが、コイツ噛み付いたんだぜ?」
「君達が悪戯するから悪いんだろう?まぁ、早坂君にとっては嬉しい行為だと思うけどね。で、彼は生きてるのかな?」
藤堂の質問に答えるべく、壁に男の1人が近付いてしゃがみ込む。そして、早坂の身体の数箇所に触れた後、何度か小さく頷いた。
「…大丈夫みたいだな。ちょっと気を失いかけているだけだ」
「そう。じゃあ目覚ましの薬でも使ってあげたら?」
「あぁ、あの薬な。アンタも好きだなぁ」
藤堂の言葉に思い出したかのようにニッと笑いながら、近くに転がっていた袋の中から何かを取り出す。それは商店等でよく見かける小瓶に入ったイチゴジャムのような物だった。瓶の蓋を開けると、ジャムの甘い香りが場違いな空間に立ちこめる。何で、こんな所でジャムなんか……。怪訝そうに眉を顰める望月の視線に気付いた男は歪んだ笑顔を見せて瓶の中に指を突っ込んだ。本物のジャムよりはやや水っぽいそれが男の指に付着し、引力に耐えられなかった物が赤い雫となってポツポツと落ちる。甘い香りがする赤い斑点の横には鉄の匂いがする別の斑点があった。後者の斑点を生み出した者が甘い香りに視線を動かし、そのまま瞬きを忘れたかのように固まる。あ……と微かに声が漏れた気がした。声を出す為に軽く開かれていた口に赤い指を捻じ込むと早坂は硬く眼を閉じた。
「そんな顔すんなよな。味もジャムと変わらねぇだろ?…ま、昨日もコレ舐めたから無理もねぇか」
「……な、何だよ。ただのジャムなんだろ?」
男や早坂の行動と謎のジャムに疑問を抱いた望月が微かに声を震わせながら問い掛けると、男達の視線が思い出したかのように望月に向けられた。彼らを代表するかのように藤堂がガラス越しに答えた。
「確かに見かけも味も香りも普通のジャムと同じように作っているよ。でも、これはジャムなんかじゃない。ウチの会社が開発した媚薬さ。普通のジャムのような作りだったら使い易いだろう?飲み薬にしても塗り薬にしても…」
「び………」
ジャムの正体の名の全てを言えずに息を呑む望月の目の前で早坂の身体が小刻みに震え始め、そのまま両手や身体を固く縛りつけた縄を振り解こうともがき始めた。
「ほーら、始まったぜ。…お前もよく見とけよ。お友達のやらしい姿をな」
「ひ…っ………あっ…ぅああぁっ……!」
「りょ……良ちゃん!どうしたんだよ!!」
解けない縄に苛立ちを覚えているかのように身悶えし、激しく喘ぐ早坂に叫びかけるが相手は聞こえていないらしく何も答えない。ただ激しい呼吸の音と震えた喘ぎ声のみを口から出している。例のジャム…媚薬の瓶を手にした男が唖然とする望月の顔を見ながら“解説”を始めた。
「お前は知らないが、昨日もこれを使ったんだ。かなり強力な奴らしくてな、縛ってない状態でうっかり使ったら一人で指で弄ってイッちまいやがった。だから、今日は拘束状態で使ってみたんだが…ハハッ、苦しそうだなぁ。何ならもっと苦しめてやろうか。被虐嗜好の秀才さん」
「いっ……嫌っ…あ………やあぁああぁっ!!」
赤い媚薬が再度指に付着し、そのまま男を求めているであろう蕾に捻じ込まれ、中で掻き回す指がそのまま媚薬も塗り込んでしまう。赤いジャムを塗られた其処は瞬く間に熱くなり、次の瞬間には耐えがたい痒みとなって早坂の苦しみと体内を駆け巡る熱を強くした。
「はぁっ…はぁっ…や、やだっ……痒…くて……苦し…い…よぉ……!!」
「あぁ、そうか。大変だなぁ。まぁ、ちょっと待っとけよ。先にそいつをヤッとこうぜ」
「えっ……!」
二つの“えっ”が重なった。押さえ付けられていた片方が羽交い絞めにされ、もう片方から男達が散っていく。欲望の対象は瞬く間に早坂から望月に変わった様だった。
「お前、もう経験はしてるんだろ?……色んな男相手に援交してるもんなぁ?」
援交と言う単語にクッ…と小さく呻きながらも望月の視線は壁の下の早坂に向けられていた。放置された親友は捨てられた子犬のような弱々しい顔で涙を流している。まさか、薬を使ったまま放置されるとは思わなかったのだろう。乱れる自分の身体を弄ばれると思っていたのだろう。身体の中で暴れる熱を容赦無い性交によって押さえ付けられると思っていたのだろう。だが、その全てが覆された。
望月は迷った。早坂を先に抱く(正しく言えば“犯す”だが)ように頼むべきかと。…人として言えるだろうか?自分の親友を先に犯してくれと。だが、今の親友は薬によって暴走している欲望の熱に身を焦がしている。それを考えると、頼む方が彼の為になるのではないか?現に、こうして考えている間も早坂は苦しげな声を漏らしながら床を転がっているではないか。
「気になるか?」
迷いが顔に出ていたらしい。羽交い絞めにされた望月の制服の前を開いていた男がニヤリと笑いながら早坂を一瞥し、再度顔を望月の方に向けた。
「心配するなって。アイツも馬鹿じゃねぇから、どうにかするさ。お前は俺達を楽しませる方法を考えて置けば良いんだよ。」
「…なぁ、駄目なのか?俺がアイツの代わりになるのは…アイツを解放するのは駄目なのか!?」
涙を流し、服を剥がされながら、さっきと同じような懇願をする。何としてでも早坂を放して欲しかった。これ以上、親友を巻き込んで苦しめる事はしたくなかった。
「そうだなぁ…お前次第かな?アイツよりお前の方が良いって分かったらアイツは解放するぜ」
「!」
男の台詞を聞いた早坂の焦点の定まらぬ瞳に一瞬の光が戻った。絶対に信じてはいけない言葉。彼らはその約束を守りはしない。現に僕もその台詞に騙されて……。
「…しゅ…駿……く…ん……」
気を抜けば漏れる嬌声に似た喘ぎ声を必死に抑えて友の名を呼ぶが、蚊の鳴くようなその声は親友の耳には届かない。親友は羽交い絞めにされた状態で力無く頷いている。男の言葉を真正面から信じている証と言える行動だった。
「だ…め……駿…くん………駄目…ぇ………!」
その言葉を信じたら駄目だ、彼らに僕達を解放する気は無い。本当はそう伝えたかったが、其処まで口に出す余裕は既に残されていなかった。こうしている間も熱や痒みは容赦無く襲い、理性もプライドも何もかも飲み込もうとしている。残された理性を必死に引っ張り出して出した声も余りに弱々しく揺れていた為、漸く声を聞き取った望月には薬によって漏れたうわ言にしか聞こえなかった。
「……大丈夫だって良ちゃん。お前、もうすぐ帰れるからさ。……ぅんっ…!」
僅かに不安の色が混じっている笑顔を向けたかと思うと、一瞬の内に苦悶の表情に歪む。はぁっ…と一回、大きな吐息を漏らしたかと思うと、そのまま身体が上下に揺れ始めた。
「あっ……はぁっ……んっ…んっ……!」
妙に艶めいた嬌声を漏らし、過剰なまでに自分から身体を揺さぶる。早坂はそれは望月の芝居だと分かった。きっと、彼は僕を助ける為にわざとあんな事しているんだろう。僕よりも彼の方が“楽しめる”と判断させるつもりなのだろう。…そんな事したって……僕達が助かる訳無いのに…!
「…えっく……ひくっ…………」
早坂は子供のように泣きじゃくった。躊躇無く足を開いてわざと乱れる親友の行動が空しくて、でもその気持ちが少し嬉しくて。騙されている事が悔しくて。帰れない事が悲しくて。そして、目の前で行われている淫行によって余計に強くなった熱が苦しくて。涙は止まらなかった。床に幾ら零しても止まる事は無かった。
「…はっ……あ、あんっ……い……イイ……」
頭の中で即興で作った“台本の台詞”を口にしながら、望月は大袈裟に腰を揺らした。助けるんだ、良ちゃんを。絶対に。これ以上、馬鹿な俺の所為で良ちゃんを苦しめる訳には行かないんだ。そんな心中を相手の男は分かっていないのだろう。落ち着かなく揺れる足の太股を押さえ、幾度も突き上げて来た。
「ゃあぁっ……あっ………もっと…」
本当は逆の意味の言葉を吐きたかったが、どうにか飲み込んで淫らな台詞に変える。男の顔がだらしなく歪んだ。
「やっぱ援交してる奴は違うな。そうやって他の男も相手にして来たのかよ」
「…へへっ……どうだと思う?」
だらしない笑顔に作り笑顔を返し、あぁっ…と喘ぎながら上体を大きく反らして淫らな演技をする。身体もそれなりの反応をしていたが、興奮は殆ど無かった。本当に淫らな自分を、興奮して乱れる自分を見せる相手はただ1人。お前なんかお呼びでないんだよ。ただ、良ちゃんを助ける為にやってるんだ。感謝しろよな。内心で文句を並べ、唾を吐きかけながらも、表面上では知らない男相手でも派手に乱れる淫乱な少年を演じる。親友を助ける為の演技は中々の名演だったらしく、男の律動が急激に速くなった。
「あっ、あんっ……ちょっ……そんな、急に……やっ…激し…」
必死に演技を続けながらも、自分の身体も急激に熱くなって来るのを感じる。両足を開く事で堂々と晒していた本体の先端も既に濡れ、先走った蜜がトロトロと溢れ出て、床に水滴を落とし始めていた。視界が霞み、頭がボンヤリとしてくる。何時しか芝居をする事も忘れて、短い叫びを発し始める。
「はっ、あっ、あはぁっ……んっ、あぁっ…もう……もう…駄目…イクぅ……ひあっ…!!」
男の一物が中で破裂し、容赦無く奥まで叩き付けられた熱い精の感触に望月も四肢を強張らせながら床に白濁を散らした。
「ふぅん……コイツも中々良いな。締まってやがる」
「マジで?じゃあ、次は俺な」
腰を引き、体液にまみれた本体を抜きながら感想を述べると羽交い絞めにしていた男が望月から手を離した。ついさっきまで忙しく動いていた身体は、絶頂の余韻に浸って殆ど動かず、力無くくずおれる。後ろから流れ出る体液の感触に嫌悪しながらも、望月は今最も望んでいる事を口にした。
「…な?俺の方が良いだろ?……だから…良ちゃんは………」
「俺達は別に構わないけどな。肝心の“良ちゃん”はどうだろうなぁ?」
「えっ……!?」
思わぬ台詞に目を丸くし、視線を部屋の隅の早坂に向ける。どう言う事だ?良ちゃん、帰れるんだぞ?その疑問は一気に驚愕に変わった。
「うぅっ………ぅぁあ……」
涙に濡れた顔は赤かった。汗まみれの身体は小刻みに震え、落ち着き無く動いていた。床には信じられない量の蜜の溜まりが出来ていた。口から漏れる声は獣の呻きを思わせた。
媚薬によって熱くなっている自分の目の前で行われた性交。それを見て理性を保てる者など何処にいる?理性なんて要らない。高いと他人から言われているプライドも要らない。僕が今欲しいのは………。
心の中で箍が外れた。
「あああぁぁああぁっ!!!」
早坂は絶叫した。それは一人の人間の叫び声ではなく、劣情にまみれた一匹の獣の雄叫びだった。