手を引かれて連れて来られた体育館は至る所の窓が開かれ、入り込む爽やかな風が二人に触れた。
「………と、藤堂君…やっぱり……止めようよ…」
壁に両手と胸を付けるような体勢を取らされた早坂が無意識に腕が届く範囲にある窓を閉めながら振り返るが、藤堂は微笑を浮かべた表情を変える事は無かった。
「大丈夫だよ、出入り口は閉めたんだから。…勿論、鍵はかかってないけどね」
言いながら、体勢の関係で突き出された箇所から生えている“尻尾”に手を伸ばして勢い良く引き抜くと濡れた音と悲鳴が重なり合った。壁に額を当てて嗚咽する早坂の背中をニコニコと見ながら、藤堂はそれに…と言葉を続ける。
「君のこっちは何時でも準備OKみたいだけど?」
「ひっ…!ぃやあ………っ…!」
玩具の代わりに2本の指が柔らかく解れた“こっち”の中に侵入し、無遠慮に掻き回して来る感触に早坂は理性を失いそうになりながらも必死に叫んだ。
「駄目……やっぱりっ…駄目……おねっ…がい………やめ……」
「何で?君だって好きなんだろ?」
クチュクチュと派手に音を立てながら動かす指をより奥まで捻じ込みながらサラリと問うと、でも…と言う小声が聞こえて来た。
「出入り口の鍵は…かかってないし……それに…窓が結構開いてるから………誰かが入ったり覗いたりしたら…」
「僕は別に構わないけど?」
「えっ…………!?」
思わぬ答えに目を見開く早坂に藤堂は満面の笑みを返した。
「だって、見つかった時は軽く口止めすれば良いんだから。見た人と…まぁ、とりあえず先生にも軽く僕のポケットマネーをあげれば僕がこんな事してた…って事実は闇に葬られるさ。人間なんて金を積み上げれば大抵言う事を聞くからね」
「そ……そんな………ぅんッ…!!」
酷いと非難する筈だっただろう早坂の唇を塞いだ藤堂の唇の端が小さく上を向き、それを少しだけ離して口を開いた。
「僕には人を跪かせるだけの金があるんだよ。君と違ってね。……あぁ、でも君のお父さんも中々有能な医者らしいから、それなりに裕福かな?でも…この学園全体を口止めさせる事が出来るほどの金は無いだろう?それ以前に君が口止めの援助を求める為に、全ての事実を御両親に言えるとは思えないけどね」
「………………ったよ…」
「うん?何か言ったのかな?ハッキリ言ってくれたまえ」
「……分かっ…たよ。分かったから……せめて…早く終わらせてよ………」
「それは君次第だよ。真面目にやれば僕も早く達する事が出来るんだし」
フフッと笑いながら答える藤堂を、早坂は涙も拭わずに下唇を噛み締めて見つめていたが、観念したかのように再度壁に両手を付け、腰を突き出して小さく言った。
「……い……入れて………下さい……」
早く終わらせる為に紡いだであろう懇願の言葉に藤堂は笑顔を絶やさずに頷き、突き出された腰に手を伸ばした。

 窓から入る涼しげな風が身体に触れる度に早坂の全身を焦りが駆け巡り、早く行為を終わらせようと腰を揺する度に履いているシューズの底が床に擦れてキュッ…と鳴いた。
「…くぅ………んっ……うぅ………」
自分で口を手で覆い、嬌声が漏れ出るのを必死に抑えるが後ろからは容赦の無い突き上げが幾度も襲い、嬌声の音量を強めようとする。それでも、決して手を口から離そうとしない早坂に後ろにいる藤堂は不服そうに声をかけた。
「声、出してくれないかな。声が無いと面白くないじゃないか。……それとも…」
腰を掴んでいた手の内の片方が伸びて熱くなっている本体に触れ、小指から順番に包み込んで行くと前にいる身体が大きく跳ねた。
「やっぱり、人に見られそうな所じゃ流石の君も燃えないのかな?」
「んっ!ん、ぅんっ……んんんーーーっ!!!」
手を離していたら外にまで響いていたであろう声を必死に篭もらせながら顔を仰け反らせた瞬間、目の前の薄汚れて薄い灰色になりかけている壁の色とは違う白色が飛び散って床に向かって細い線を描き始めた。
「………はぁっ……はぁっ……」
漸く手から口を解放し、行為終了後特有の荒い呼吸を繰り返す。終わった、誰も来なかった、良かった……心の中で自然と安堵する早坂だったが、その安堵を瞬く間に打ち砕いたのは藤堂の言葉だった。
「何、休んでるのさ。こっちはまだ終わってないんだけど?君ばっかり勝手にイッてずるいよ」
「………!!」
言いながら腰を引いて肉体を一つから二つに戻し、手首を掴んで強く引くと、揺れていた感触が身体に残っているのか早坂は足を縺らせて転びかけ、藤堂の眉間に皺を寄せさせた。
「全く……しっかりしてくれたまえ。…ほら、次行くよ」
「……藤堂…くん………もう…止めて………」
「何を言ってるんだい。君が恥ずかしがるから場所を移動してあげようと言ってるのに」
問答無用と言わんばかりに強く掴んだ手首を引いて進む藤堂と身体を震わせながら後を続く早坂の進んだ後には目印でも標すかのように体液の雫がポツポツと続いていた。

 連れて来られた先は館内ステージの裏側に当たる部分だった。明るく整然としているステージ上に比べ、裏側は薄暗い上に何処か黴臭く、様々な道具が乱雑に散らばっているが、覗かれる心配は無い場所である事に早坂は微かに顔を緩めた。
「此処なら良いだろう?さっきの場所に比べれば覗かれたりする事は無いんだから」
「………う、うん…。………っ!!」
答えながら藤堂に視線をやった早坂は小さく息を呑んだ。視線の先には何処から拾ったのかガムテープがのびている。
「だから、軽く遊ぼうよ。…簡単な事さ、君の手首を固定するだけだから。…好きなんだろう?拘束」
「…うっ……………」
早坂は小さく呻いたが、柔らかい口調の中での有無を言わさぬ声にただ小さく頷いて手首を重ね合わせた両手を突き出す事しか出来なかった。
 数分後、ビッ…とガムテープを千切って、近くに置いた藤堂の目は幾重にも巻き付かれて動かす事もままならない早坂の両手首に向けられ、そのまま目を細めた。
「良い姿だよ。…玩具だった君には御似合いだ」
不安げに瞳を潤ませながら手首を見つめる早坂を埃まみれの床に横向きに寝かせ、片足を抱え上げて間に腰を近付ける。その行為と体勢にハッとした時には抱え上げられた足は藤堂の肩の上に乗り、近付いた腰はしっかりと己の腰と繋がっていた。
「あぅっ…ん……ああぁああっ………!!」
他人に知られる心配が微かに薄れた為か、今度は口を塞がずに派手に嬌声を上げる早坂に藤堂は満足げに微笑んだ。
「そう、その声が聞きたかったんだよ」
「…ひぁっ……ゃ…ぁあ…」
望み通りの反応を示す相手の身体を容赦無く貪りながら、視線を早坂から反らしてある物に向ける。此処に連れて来たのは覗かれるのを防ぐ為…か。まぁ、その理由も少しはあるけど、それは君に此処まで来て貰い、派手に喘いで貰う為の口実に過ぎない。此処に来た本当の目的は………
「ねぇ、どうして此処に連れて来たんだと思う?」
「え?…覗かれない為だろう?」
「それもあるけど…それ以上に重要な理由があるんだ」
相手の言動の意味が分からずに小さく首を傾げる早坂を一瞥して小さく微笑を見せた後、再度視線をある物に戻し、手を伸ばしてそれを掴む。パチンッ。手の中にある物体についているスイッチらしき物を親指で上に上げるのを見た瞬間、早坂は“重要な理由”を理解したらしく唇を震わせ、声を揺らした。
「う…嘘……だろう…?そんな……の…」
「……………フフッ…」
早坂の問いに答えず、ただ小さな含み笑いを返しただけの藤堂が手にした物の丸い先端を軽く叩き、息を吹き込むと、辺りに、体育館中に鈍い音と雑音が混じったような風の音が響き渡った。
「マイクテスト…OK、と」
無事にテストをクリアしたマイクで嬌声の音量を大きくする気だろうか。だとしたら…さっきみたいに必死に口を抑えるなりすれば何とかなる。そう思い、無意識の内に唇を噛み締めるが相手がマイクを向けた先は口元ではなかった。
「っ…!!や、やめっ………やだあっ!!!」
裏返った叫び声に重なるのは嫌でも耳に飛び込む肉擦れの音。接合部から出る性交時特有の水音が、出入音が、肉体のぶつかり合う音がマイクに捕えられ、無人の体育館内に派手に響き渡った。
「ぃ……嫌…あ………き、聞かれちゃ……聞かれちゃううぅーーっ!!」
「クククッ……そんなに大声で叫んだら、誰が体育館でこんな事しているのかバレちゃうよ?」
「…ひっく………ゃあ………嫌ぁぁ……」
性交の音を拡大化される事と自分が叫ぶ事で誰かに知られる事。二つを拒絶する意味の“嫌”を繰り返し、床に顔を付けて啜り泣く早坂に藤堂はゾクゾクと冷たい稲妻のような物が自分を貫くのを感じた。あれ?もしかして僕ってサディスト?泣いてる早坂君を見て鳥肌を立てるなんて。もっと泣かせたい。もっと苦しめたい。歪んだ欲望が自然と手を動かし、接合音を受け止めるマイクで露に濡れた塔の側面を撫でると啜り泣きは泣き叫びに変わった。
「あああぁぁっ!!!おね、がいっ……もう、…止めてええーーーっ!!!」
擦れる音が館内に響く度に早坂は叫び、耳を押さえようとするが手首の拘束がそれを不可能にする。気が狂いそうな状況にもがく早坂の姿は藤堂の冷たい笑顔を一層深くさせた。
「全く……嬉しそうに吠えちゃって…」
「う…嬉しく……なんかぁ……っ…ひぁぅ…っ」
激しい突き上げが言葉を詰まらせ、はぁっ…と言う溜め息を代わりに吐き出させる。その溜め息を合図にしたかのように始まった接合部の収縮に藤堂は目を細め、芝居がかった呆れの声を出した。
「もしかして、またイキそうなのかな?君は何回イッたら気が済む訳?」
「…だ、だって………だっ……てぇ…………」
「まぁ良いか、僕もそろそろ出させて貰おうかと思ってた所だし」
そして突如速まる律動。それは相手が達するのも時間の問題と言う証。その事に気付いた早坂は相手と視線を合わせ、待ってと叫んだ。
「お願い……中……出さないで…」
「あれ?珍しいね。君、何時もだったら喜んで飲み込むじゃないか」
「……ま、まだ…授業…あるから………その間に…溢れ出たりしたら…」
顔を赤く染めながら小さく理由を言うと藤堂は細めていた目を丸め、瞬く間に再度笑う為に細め、そのまま天を仰いで高らかに笑った。
「成る程ね、授業中に後ろから出すのは君でも耐えられないのか。…分かったよ、正直に言った御褒美に中に出すのは止めてあげよう。…その代わり………」
「ひあっ……!」
藤堂の身体が離れたかと思うと、髪を掴まれて近くの壁に背中をあわせるように乱暴に座らせる。背中を打った痛みに顔を歪める早坂だったが、眼前に突き出された体液まみれの一物に小さく息を呑んだ。
「顔で受けるか、全部口で飲むか。どちらかを選んでくれたまえ」
「………えっ…………」
藤堂に与えられた酷な選択肢に早坂は改めて涙ぐみながら俯いたが、暫くした後にゆっくりと視線を上げ、丁寧に唇で包み込んで眼を薄く閉じた。
「成る程、飲み込む方を選んだのか。…まぁ、そうだよね。顔で受けた時に髪に付こう物なら落ち難くて大変だろうし」
言いながら腰を前進させて喉の奥まで押し込み、逃げられぬように髪を掴む。絶頂を促すかのように生温かく濡れた舌が口内で側面を撫でた時、ピクンッと撫でられた相手の身体が動き、微かに苦しげな呻き声をあげたかと思うと髪を掴む手の力を強めた。
「…くっ……良いかい?出さずに……全部…飲み干すんだよ…?」
「んっ……ぅぐ………ううっ…」
口内に大量に流し込まれ、喉の奥に叩き付けられた衝撃に早坂は目を見開いて吐き出しそうになったが何とか堪え、溢れる涙も拭わずにゴキュッ…と喉を鳴らして絡み付くそれを何とか流し込んだ。
「……ぷはっ………あぁぁ…」
どうにか解放された早坂の口が開き、中に残っていた白が細い線となって流れ落ちる。涙目で床を見つめ、小さく咳き込む早坂の姿に藤堂はニッコリと笑い、従順な犬を誉めるかのように頭を撫でた。
「ちゃんと飲んだんだね。偉い偉い」
「………もう…良い…よね……?僕、もう…行かないと……」
「あぁ、そう言えば望月君と約束してたんだったね。良いよ、行ってやりたまえ。だけど……」
意味深に言葉を切りながら投げ渡したのは、昨日から早坂を蹂躙し続けている玩具。無意識に受け止め、手の中に収めたそれを見た瞬間、早坂は瞠目し、小さく身体を震わせ始めた。
「それを入れるのを忘れないようにね。折角だから僕に見せてくれよ、自分で入れる瞬間をさ」
「………………………」
本音を言うと、嫌だと叫びたかった。無理だと泣きたかった。だが、それは出来なかった。今は逆らえない。逆らったら、全てが終わる。彼の事だ、全ての事実を言い触らすかも知れない。あの悪夢が正夢になってしまうかも知れない。何よりも、今一番欲しい物が手に入らなくなる。今まで耐えてきた恥辱が全て無駄に終わってしまう。それを避けたいから、僕は…………
「あ、ぅんっ…!………ああぁぁっ…!!」
膝立ちし、玩具を持った左手を両足の間に移して冷たい先端を当てる。情事の後で完全に準備を整えている其処は思った以上にアッサリと全てを飲み込み、衝撃が早坂を一気に絶頂まで追いやった。
「おや、イッちゃう所まで見せてくれたのかな?別に其処までサービスしてくれなくても良いのに…フフッ……」
さっき壁に散ったそれよりは透明度が高い白濁の雫をわざとらしく眼を丸めて眺めた後、藤堂は再度早坂の頭を撫でた。
「後少しで終わるんだ。頑張りたまえ」
早坂に背を向けてステージを下り、体育館の扉を開けて去る。そして、薄暗いステージ裏には床に両手を付いて泣きじゃくる早坂が残った。

「遅い……な」
学生食堂の喧騒の中で頬杖を付いた望月は出入り口を一瞥し、腕時計を見た。早坂と約束を交わしてから既に数十分。片付け当番と言っても10分もあれば、全て終わってしまうと思うのだが………
「望月君」
食器が重なり合う音、生徒達の雑談の声に聞き慣れた声が混ざる。顔を上げると弁当包みを持った待ち人が笑顔を浮かべて立っていた。
「ゴメン、遅くなって………」
席を確保する為に置いてくれていたのであろう鞄を所有者である望月に手渡しながら謝罪すると、あぁ…と言う返事が返ってきた。
「マジで遅かったな。先にメシ食っちまったぞ?……で、何してたんだ?」
「うん、ちょっと………」
ちょっと、藤堂君に犯されてた。そう言ったら、彼はどう言う反応をするのだろう?気にはなったが、勿論真実は言えず…
「進路指導の先生に話し掛けられて、今まで話してたんだ。そしたら、遅くなっちゃった」
「ふぅん……何も昼休みに話す事無いのにな。メシ食うこっちの事も考えろっての、なぁ?」
「ははっ。そうだよね」
此処まで来る間に考えて来た嘘を間に受けたのか、子供のように頬を膨らませておどける望月に早坂は安堵の感情も含まれた笑顔を見せながら弁当の包みを開いた。
 大丈夫そうだな。目の前で弁当をぱくつく(本人に言わせれば、圧迫感に耐えながら胃に押し込んでいた…なのだが)親友に小さく笑みを浮かべる。今日の良ちゃんは妙におかしかったけど…竜一さんも、おかしいって言ってたけど……きっと、考え過ぎなんだろう。元々、物事を深く考える事を嫌う思考回路が無意識の内に都合良く決めてしまう。頬杖を付いてボンヤリと見つめていると、早坂が視線に気付いたように顔を上げ、笑顔を見せる。そして、弁当箱にある黄色い何かを箸で掴んだかと思うと、望月の前に置かれた空の食器の中にころんと入れた。
「卵焼き…好きだったよね?」
「え?…あぁ、お前ん所の卵焼き美味いもんな。何だ?くれるのか?」
「うん、待たせたお詫び」
「何だよ、安いお詫びだなぁ。ま、良いけど」
ハハッと笑いながら皿の中の卵焼きを摘んで口の中に投げ入れる望月を見ながら、早坂は再度笑顔を浮かべた。後ろの方では陵辱の痛みと玩具の圧迫が絶え間なく襲っていたのだが。