布団の周りに散らばっている衣服は少し前まで利家が纏っていた物。すぐ近くの褥の真ん中に仁王立ちする魔王の両足の間で少し乱れた茶色がかった髷が水音を立てながら動く。
「ンっ……はっ、うん、ぅ…」
一糸纏わぬ姿で跪く利家が信長の臀部から腰にかけて両腕を回し、小袖の裾を開いて引っ張り出した一物を口に含んだまま頭を揺らしていると、頭上から伸びて来た手が髪の毛を軽く掴んだ。
「どうよ、利家。久方振りの信長の男根は」
「ん、んむぅ…」
口いっぱいにそれを含んでいる為に返事はろくに出来ず(わざとしなかったのかも知れない)ただ上目遣いで信長を見上げる瞳は涙が滲んでいた。
当の本人は無意識でも魔王の加虐心を激しく煽るその眼は昔――少年だった利家が自分の夜伽の相手として毎夜のように抱かれていた頃と何ら変わっていなかった。
「ククッ、いかがした。うぬの好きな肉棒であろう? もっとしっかりと味わわぬか」
言葉が終わると共に髪を掴んだ手を荒々しく動かす事で利家の口内を蹂躙する。
人間の反射反応と言う物が働いているのか、喉の奥を突かれ、頬の裏に擦り付けられ、歯や舌を使って扱かれる事で唾液がドプドプと中を満たし、それを飲み下す事も出来ずに口と一物の隙間から溢れ出て顎を濡らしていく。
目を固く閉じ、苦しげに呻く利家の様子に魔王は満足気な笑みを零し、相手の鼻が己の下の毛に埋もれるほどに身体を押し付け、逃げられぬように手に力を入れた。
「ふっ…ん、んぐっ……んぐぐぅ…」
モゴモゴと何かを言っているようではあるが、聞き取れる訳が無く(元々、聞く気も余り無かったのだが)ただ自分の欲求のままに生温かい口の中で無遠慮に己を昂ぶらせる。そして
「よし…出すぞ…犬、よ…!」
「っ!! むぐっ! ぅん! うんンンーっ!!!」
喉奥に叩き付けるように射精される事で口内を満たしていた唾液に信長の精が混ざるが、飲み込む事も吐き出す事も出来ず、利家の頬が餌を溜め込む小動物さながらに大きく膨らんだ。
「ククッ…苦しいか利家」
「ぅぐっ…」
固定したままの頭の上から問うと、頭頂部が辛うじて頷くように上下した。
その合間にも唇の隙間から唾液と白濁が混ざった体液がポタポタと零れ落ちる利家の剥き出しの太腿に目をやった信長は何かに気付いて眼を細め、やおら掴んでいた頭を引き離したかと思うと自分も敷き布団にゆっくりと膝を突き、同じ目線になった相手の涙に濡れた瞳と視線を絡ませると
「ンっ、ぐ…ふゎっ…あっ、あぁぁあ…」
大きく膨らませて決壊寸前だった堤防を両側から強く窄めるように押さえつけ、決して見てくれが良いとは言えないタコのそれと似たような形になった口に余った手の指を突っ込む。細長い数本の指が口の中の体液を掻き回し、泡立ってきたそれを掻き出して涙の線が伝う頬に塗りたくると、塗られた方は絶望すら感じさせる涙声と共に泡立ち糸引く体液をだらしなく口から漏らして顎や床を濡らした。
「何だ、うぬは未だに口や顔に出されるのは苦手か」
「ぐっ、ぅえっ……ゴホゴホッ…! は、はぃ…」
「ククッ。で、あるか」
口癖を出しつつ精と唾液でベトベトに汚れている相手の顔を躊躇無く胸元に抱き寄せ、余った手をある場所に伸ばす。利家の短い悲鳴が部屋に響いたのはその直後だった。
「その割には此処は勃って来ておるな。昔、うぬと夜伽を楽しんでいた頃に同じ事をした時はここまで顕著な反応はしなかった筈だが?」
「の、信長様っ、だ、駄目です! 見ないでっ、触らないで、くだっ…!! ひっ…!」
「様々な男と幾度もまぐわっている内にこれ程までに卑猥な身体に仕立て上げられておったか」
利家の拒みに聞く耳は持たず、熱り立っている男の濡れ始めている先端を抓んで軽く引っ張り上げると拒絶の声は裏返った悲鳴に変わり、信長の指が抓むそれと同じく天を仰ぎながら身を震わせた。
「良いか、利家」
「はぁ、はっ……ぅンっ…信長様…もう、これ以上は…」
「これ以上続けるのは怖いか。これ以上したら理性を失って完全に盛った犬と化すか」
「……………」
肯定も否定もせず、ただ赤く染まった顔を逸らしてハァハァと荒い呼吸を繰り返す利家だったが、その薄く閉じられた瞼に添えられている湿った睫毛が吐息と同じく小刻みに揺れている事を魔王が見逃す筈が無かった。そして何よりも
「声に熱と色が入って来ておる、ぞ? 犬千代」
「えっ」
突然の幼名呼ばわりに一瞬驚くが、即座にその行動の意味を理解する。
自分が、目の前の男と夜な夜な交わっていた時、自分は、犬千代だった。同時に蘇る記憶は少年だった自分が幾度も彼に名を呼ばれながら突かれ、嬲られ、弄ばれた事によって得た恐怖と屈辱とこの上ない悦楽。
そこまで思い出した所で利家は自分の身体の中心が窄まるような感触を覚えた。自分の反応が手に取るように分かっているのか信長がその感触を生々しく口に出す。
「心の奥では欲しておるのだろう? 身体の奥は疼いておるのだろう?」
「あうっ、あ、あぁあ!」
粘りつく色気が篭った声が耳を擽り、同時に未だ先端を抓んでいた指がいやらしく捏ね回すと、勝手に腰の辺りから利家の身体が跳ね、熱がジワリと溢れ出るのを感じた。それでも執拗に蹂躙を繰り返す魔王の手の中で犬は嬌声を震わせながら力を失い、やがてその胸の中に己の身体を預ける形となった。
「答えよ、利家」
「はぁ、はぁ…な、何でしょう…?」
息を荒げる利家の肩を抱き、その耳に唇を近付けて不気味なほど静かに囁くが、その後に続いた問いは決して優しい物ではなかった。
「うぬは信長以外の男と如何ように愉しんだ?」
「! た、た、愉しんでなンか…」
「良いから答えぬか。普通の情交で満足して終わる者ばかりでは無かったであろう?」
「いっ、痛っ!!」
両手を背後から脇の下を通して胸部まで回し、快感を得ていた証である体液に濡れた指先がとっくの昔に硬くなって小豆のようになっていた褐色の突起を躊躇い無く抓ってそのまま千切らんばかりに強く引っ張ると利家はアッサリと観念したらしく、小さく鼻を啜りながら震える声で己の過ちから生じた事実を自らの口で穿り返した。
「…あ、あの、その……。……されました」
「聞こえぬ。この部屋中に響くくらいの声で言わぬか」
自分の口で言うのも恥ずかしい行為をわざと小声で言っても許される訳が無く、酷な責めに追い込まれた利家は半ば自棄のように裏返った声で叫んだ。
「だからっ、その、されました! 目の前で自慰する事を強要されました! 複数人で回されもしました!! ひっく、うっ…うええぇっ…」
言うだけ言って恥ずかしかったのか、その時の事を思い出したのか、子供のように泣き出した利家に対し、信長は特に反応は見せなかった。と言うよりも見せない振りをしていた。
「で、あるか」
適当な答を口にしながらも身体の内では強い興奮が渦巻いているのは、泣きながらもまだ証言を続ける利家の普通とは言えない様々な性行為を頭の中で精密に、より淫猥に再現し続けているからか。
少し前に精を吐き出したそれは先程以上の昂ぶりを取り戻し、元々胸に抱いていた目の前の男への陵辱欲が自分でも戸惑うほどに急速に高まっていく。
もう良い。出来る限り感情を抑制した声で利家の告白を断ち切る。
「うぬが卑猥な尻軽犬である事が充分に分かったわ」
「だ、だから、俺が望ンだ事じゃなくて、相手に無理矢理され……ぅんっ!」
小豆を乱暴に捻り続けていた指は打って変わって優しく周辺の褐色を撫で回し、腫れかけた突起部分を丁寧に擦り上げると利家の涙声に戸惑いが混じり、僅かずつながら熱も取り戻してきた。
伸ばした舌で赤い耳朶を撫でる。時折、息を穴の中に吹きかける。それを繰り返して行く内に艶かしい嬌声が耳に入るようになって来た。
「あっ、あんっ、んっ、ぅ…」
「此処が良いのであろう? 利家」
「はうっ…」
まともな受け答えも出来ずにただただ喘ぐ利家は自分が急速に情事へ向かって心も身体も準備を整えて来ている事にある種の恐怖のような物を覚えていた。自分はおかしいのだろうか。信長様が言う所の“尻軽犬”なのだろうか。
先程、相手によって尋常ではない性体験を告白させられている時も羞恥を感じたが、それ以上に強く感じたのは快感だった。自分は、様々な男に辱められた話を自らの口で暴露しながら感じていたのだ。口にしている内にその時の情景と感触を事細かに思い出して。そして、言わされながら泣いていたのは、その度重なる陵辱が辛かったからではない。ただ、純粋に己の性経験を言うのが恥ずかしくて涙が出ただけだった。
その事が分かっているのだろうか信長は利家の赤い顔を覗き込み、ねっとりした声色と指で利家の精神と肉体を攻め立てた。
「うぬは昔と全く変わらぬな。胸と耳を攻めれば身体がすぐに信長を欲する準備に取り掛かる」
「はぁっ…はぁ……だ、だ、め……そこ…駄目…ぇ!」
立ち上がった豆を指先で捏ね、乳でも出させんばかりに指の腹で強く圧すれば汗ばむ身体が上下に数度跳ね、天を仰いで悲鳴を上げる。その間にも腹に付くほどそそり立っている肉搭の頂点から溢れ出続けている汁が筋が浮き出る側面を伝い、身体を揺らせば足元に雫となって散った。相手に翻弄されながらも利家は頭の奥で何処か冷静な呟きを漏らした。
(無理も、ねぇ)
少年時代、何も知らなかった自分は小姓と言う名目で彼の側に付き、当時の彼と同じく派手ないでたちをし、町中を瓜やら大根やら齧りながら我が物顔で闊歩し、好き勝手な事をして遊び回ったものだ。
小姓とは名ばかりの一緒に悪さをする遊び相手。自分はそう認識していた。
――眠れぬから相手をせよ。
彼に突然言われ、碁の相手かそれとも話し相手かと思いながら寝所を訪ねたあの日の夜。彼が相手として求めたのは夜伽だった。
彼自身もまだ若く、性によって得られる快楽と言う未知の存在に興味を抱き、手っ取り早くその好奇心を満たそうと思って相手に選んだのが何も知らぬ自分だったのだ。
抗った為に殴られた頬を腫らして泣き叫び、互いに初めてだった為か大した段取りも踏まずに無理矢理捻じ込まれる事で呆気なく処女を散らされ、激痛の中で目を固く閉じて早く終われ早く終われと必死で祈った時の事は今でも鮮明に覚えている。
だが、それも最初の頃の話。強制的に場数を踏まされている内に何時しか自分は彼に性の悦びをしっかりと仕込まれていた。そして、その過程において己の身体にある性感帯と言う物を開発したのも彼。言うなれば、彼は自分の身体の事を知り尽くしていたのだ。
そんな彼――信長によって自分の弱点である乳や耳元を的確に攻め立てられれば、身体は鋭敏に反応し、利家の理性さえも奪われそうになる。
んっ、んっと何とか耐えるように呻き、唾を飲み込むような声を出す利家を見た信長はいじらしさのような物を感じつつも、微笑を崩さぬその口から出す言葉は相変わらずな内容だった。
「此処まで来てまだ耐えるとするか? 人としての、生きる者としての本能に抗うな」
それとも。声を落とし、胸元を玩弄していた指が静かに熱を帯びた身体から離れていく。突然の事に利家は少し驚きながらも、とりあえずほっとしたのも束の間。
「うぬのような駄犬には言葉で諭すより、こうして直接触れた方が早いか」
「ひあっ! あん、あっ、や……あぁぁっ…!!」
真っ先に触れられそうでありながらずっと今まで放置されていた接合に使う穴に指が回り、数度周辺を旋回しただけで無遠慮に二本侵入して来ると利家の声の音量が大きくなり、熱も一層強まった。実はかなり前から男を求め始めていたのだろう其処は思ったよりもあっさりと解れ出し、出し入れを繰り返す指を離さぬような収縮に信長は目を細めた。
頃合い、か。
「褒美が欲しいか? 利家」
「…はぁ、はぁ…」
ただ荒い呼吸を繰り返す相手に自分の顔を近付け、熱に浮かされつつあるその瞳を凝視しながら言葉を続ける。
「この穴に男が欲しいか。信長が欲しいか。交尾がしたい、か」
「っ……あっ…!」
言葉を続けながらも相変わらず窄まりを刺激し、容赦なく中を掻き回していた指が何故か突然利家を解放した。思いがけぬ行動に利家は戸惑い、落ち着き無く視線を泳がせ、身体をもじもじさせたかと思うと、いきなり目の前の魔王の胸元に飛び込んでその顔を見上げた。
「……の、信長様っ…抜いたら…嫌です……」
「ならば、受け取るか? 信長が褒美を」
「…は、はい」
「ククク……フハハハハハッ!」
余りにも自分の思い通りに動く従順な犬に一頻りの哄笑をぶつけた後、打って変わって胸に縋る犬の肩を抱き、不気味なほどに優しく囁いた。
「ならば、どのような形で信長に突かれたいか見せてみよ。うぬの望みの形で愛でてやるのが褒美、よ」
「…………」
魔王の言葉に数秒ほど視線を床に向けていた利家だったが、やがて小さく唾を飲み込んだ後、おもむろに褥に両膝を付き、そのまま両手も敷布の上に乗せた。
小さな含み笑いを背中で受けながら、土下座をするかのように両腕を折り、頭から胸にかけて床に付けると自然と腰が上に上がる。 獣の体勢をとった犬は突き上げた腰を尾を振るように小さく横に揺らして懇願した。
「く、ください……信長様のご褒美を…俺のだらしない尻穴に…ください…!」
声を震わせながらも淫猥な言葉を用いて自分を求めてくる利家に信長は満足気な笑みを見せ、ゆったりと近付いて柔らかな肉丘に手をかけて横に広げると褒美を求めてヒク付く穴が信長の視界に入り、互いの興奮をより高めた。
「やはり、うぬは犬よ。獣の形で男を求めるとはな。まぁ、良い。褒美を取らそうぞ、利家」