薄暗い部屋で二つの影が絡み合い、片割れがもう片方の上に乗りかかって獣の繁殖行為さながらの動きをする。
雌の扱いを受けている方は先程までの拒絶や恥じらいは何だったのかと言わんばかりにすっかり乱れ、最奥まで入り込む雄を甘んじて受け止めていた。
「あんっあんっ
信長様のっ、凄ぇイイ
」
「盛った雌犬よ。信長が肉棒、堪能しておるか?」
「はうっうンっ
美味しい、ですっ、信長様の肉棒、美味し、いぃっ、あっ、あぁっ
「ククッ…で、あるか」
やはり、多くの男に嬲られ続けている内に元々感度の良かった利家の肉体はより淫靡に仕立て上げられてしまったらしい。
自分の相手として身体を交わしていた頃とはまた違う反応に新鮮味さえ覚えた信長は唇を歪めて笑い、改めて相手の腰を掴んで乱暴に突き立てると雌犬の鳴き声が心地良く耳を貫いた。
(見張りも置かぬとは、いくら大殿とは言え無用心が過ぎる)
信長の陣屋の入り口に誰一人立っていない事に勝家は驚き、小さく嘆息した。その手には徳利と杯。戦の勝利を共に祝いたい、と言うのは建前で、本心では利家を心配して様子を見に来たのだった。
信長に褒美を与えられると言う事で軽い足取りで陣屋へ向かった利家の後姿に不安を覚えつつも、同輩の丹羽長秀が呼んでいると秀吉に言われたので彼の元へ行けば、そのような事はしていないと言われ、まぁ折角だから共に祝おうぞとそのまま勧められた酒を断る訳にも行かず、数杯酌み交わしている内に何時しか祝宴と称した馬鹿騒ぎが始まり、武勲の自慢大会やら酒の早飲み勝負やら秀吉の猿踊りやらで周辺が雑多になった隙にその場を去って利家を探したものの、見つからなかった為に今に至る。
利家が信長の元へ向かってから結構な時間が経っているが、中々戻って来ない事が勝家の不安を増長させていた。利家は腕は立つが、昔から勢い付くと調子に乗って突拍子も無い事をしでかすきらいがある。ただ単に酒が進んで盛り上がっているだけなら良いのだが、もしかしたら、既に信長の前で何らかの粗相をしでかして深刻な事態になっている可能性も否定出来ない。
(万が一、利家が余計な事をしてしまい、その時に大殿の虫の居所が悪かったりすれば…)
悶々と考える勝家の頭の中で機嫌を損ねた飼い主に再度捨てられ、帰れる筈だった小屋を失った犬が寂しげに自分の目の前から去って行く。
それは勝家にとっても何としても避けたい事だった。
「やはり、様子を見た方が良かろうな」
半ば自分を鼓舞する為に声を出し、手の中の徳利を持ち直す。
二人が何の問題も無く楽しんでいれば、自分も参加させて貰えば良い。利家が最悪の事態に直面しているのなら(多分、それは無いと信じたいのだが)、父として彼と共に地に頭を擦りつけ、全力で彼を危機から救えば良い。
勝家は大きく息を吐き、無人の入り口を見据えた。
そして、第一歩を踏み出そうとした時、奥から信長の声とそれに重なる誰かの喘ぐような声がボソボソと聞こえて来た。
「クククッ……自分から腰を振りおる。そんなに良いか」
「はぁっ、はっあ、あぁ…あぁああー…
」
言葉の内容と台詞の端々に込められた微かに荒い息遣いや相手のあまやかな声に信長がしている行為を容易に理解した勝家は一瞬胸が跳ねるのを感じたが、すぐに平静を取り戻して声の方へと視線をやった。
(小姓と楽しんでおいでであったか。お盛んな事よ)
予想だにしなかった展開と余り堂々と聞くものではない声に微妙な感情が生じて眼を細めるが、突然その瞳が大きく見開かれた。
勝家の脳裏に蘇るのは笑顔。信長の陣屋に向かう際に目が合い、その時に見せてくれた照れながらも誇らしげだった利家の笑顔。
直後に頭の中で嫌な予感と認めたくない事実がグルグルと回り、重い頭痛を感じ始めた頃に漸くパチリと何かが合わさった。
「…利家、か?」
そう言えば、聞こえて来る信長の声と重なっていた相手の声は聞き慣れたそれだったではないか。だが、そんな、まさか……。動揺し、声を小さく震わせる勝家の存在に気付いているかのような二人の声が受け入れたくない現実を容赦なく突き付けた。
「ひあんっ
ンッ
太いっ
やっぱり、信長様のご陰茎が、一番太くて硬いいぃ!」
自分の身体を容赦なく蹂躙する相手の機嫌を取ろうと言うよりも自分が感じたままに口にした率直な感想だったが、肝心の相手は鼻で嘲笑し、激しく前後する双丘を鷲掴みにして爪を立てた。
「一番? 誰と比べて物を言っておる、この陰間が」
「ひっ! ご、ごめ、なさいっ…!」
完全に墓穴を掘ってしまった利家は臀部に刻まれる鋭い痛みと相手の不満げな声に落涙しながら謝罪するが、信長は利家を悦ばせていた律動を止め、接合部に手を伸ばして穴の縁を撫でた。
「あ……」
「利家。うぬは一体ここにどれだけの男を何本…何度咥え込んだ。誰が相手でも先と同じような言葉を口にして喜ばせ、より激しい交尾を求めたのだろう? 愚かな駄犬よ」
「はぁっ……ち、違い、ます…本当にっ、信長様のが……良かったから……だ、だから…」
「だから?」
「つ、続き…どうか…ご褒美の交尾の続きを…」
ハッハッと本当の犬のように息を切らしながら、止まってしまった律動を求める利家の涙に濡れた頬に信長の唇が近付き、伸びて来た舌が涙の粒を舐る。その感触にさえも性的興奮を覚えて小さく嬌声を漏らす利家に信長はそっと囁いた。
「ならば正直に答えよ。うぬが今まで信長以外の男を咥えた回数を」
「そ、そんな…」
信長の何処までも酷な台詞に改めて涙を浮かべる利家だったが、例の縁に触れたままだった信長の指が接合部を擦り回すと瞬く間に盛った犬に戻って腰をガクガクと揺らしながら喘いだ。
「あっ、あっ、ひぁっ、そ、そこっ、あぁっ」
「これほどまでに淫らな雌犬に仕立て上げられたのだ。ほんの数回では済むまい?」
早く答えぬか。直後に続いた急かすような言葉から、彼もまた交合の続きを愉しみたいらしい。
利家は頭の中で慌てて今までの経験を思い出し、その数を数え、追い出されていた日数やら割合やらと色々な数字もまじえて忙しく計算してみたが、すぐに頭を小さく横に振って震える声で答えた。
「せ、正確な数は分からないンすけど…そ、そ、その、三桁は…確実に…」
「三桁? フハハハハハ! それは正確な数が分からないと言うのではなく、数え切れぬと言う事よ」
「うっ…」
高笑いをする信長に何処か恨めしそうに潤んだ瞳を向ける利家だったが、信長は全く気にした様子も見せずに小さく鼻で笑い、利家の心をより乱す言葉を口にした。
「勝家が聞いたら腰を抜かすやも知れぬな。よもや己が子が生きる為とは言え、多くの男と数え切れぬほどまぐわって来たとは」
「! お、叔父貴には絶対に言わないでください! お願いします! 叔父貴にだけは!」
「……ククッ」
意のままに反応する犬の頭を撫でながら、信長は心中で呟いた。
ほんにうぬは愚かで愛い犬よ。
「言うか言わぬかはうぬ次第、よ。さぁ、自分で動いて信長を満足させてみよ」
「ひっく、うっ……叔父貴……ンっ、あぁ…あ…あっ……はぁっ…あんっ…」
泣きじゃくりながら魔王に命じられるままに自分から腰を揺さぶり、それによって舞い戻って来た甘美な感触に自然と声が漏れる。勢い良く前後する利家の背中にそっと手を添えながら、信長は部屋の出口の方を一瞥して薄く笑った。
ずっと地面に貼り付いていた勝家の足が漸く離れた。
気を緩めれば汗に濡れた手から滑り落ちそうな徳利を固く抱き締めるように抱え、物言わず陣屋を去る。
もっと早くこうしたかったのだが、今もなお頭の中で反復する利家の艶かしい声と彼自身が告白した事実に身体が完全に石化していたのだ。
(では、あの噂は真だったのか)
数ヶ月前、まだ利家が野良犬だった頃、信長の居城の廊下で二人の小姓が何やら話していた。
其処を通りすがった勝家は普段はどうせ下らぬ話だと聞く耳を持たずに素通りする所なのだが、片割れが口にした“利家様”の言葉に思わず耳をそばだて、歩く速度が自然と遅くなった。
「それはまことなのか?」
「あぁ、茶をお出しした時にお客人が信長様に言うておった。ある日、利家様が訪れて金と引き換えに自分の主とまぐわったと。その方だけでなく、他の諸侯や豪商も相手にして金や食料と己の身体を交換しているそうだ」
「あの武勇の誉れ高き利家様も其処まで堕ちてしもうたか」
ダンッ。突如廊下に響いた鈍い音に小姓の身体が大きく跳ねる。恐る恐る音の方を見ると額に血管を浮かせて廊下を強く踏み締めている勝家がいた。
「か、勝家様」
「わぬしら、何をコソコソ話しておる! 用が済んだら各々の持ち場に戻らぬか!」
「は、は、はい!」
何時も以上の激しい怒鳴り声に逃げるように走り去った二人の背中を見送ると勝家は大きく嘆息して頭を抱えた。
わしとした事が廊下で話していただけの小姓にあんなに怒鳴るとは。いや、あの二人が話していた噂の内容が余りにも下劣だったからだ。
「利家が…わしの子がそのような事をする筈無かろうが…」
自分に言い聞かせるように呟きながら勝家は先程とは打って変わって足早に廊下を進むが、その横顔には一筋の汗が伝っていた。
あの時と同じく逃げるように、少しでも早くあの陣屋から離れるように、あの声が一瞬でも早く聞こえなくなるように勝家は未だぬかるむ道を早足で進む。その表情は何時もと変わらぬ無表情だが、その口の中はすっかり乾ききり、身体の至る所から汗が噴き出ていた。
(きっと、あの喘ぎは大殿を喜ばせる為の演技よ…)
我ながら色々な意味で好ましくない考えを抱くが、即座に自分自身で却下する。
正直者で素直な利家がそのような器用さなど持ち合わせていない事は勝家も充分に解っていた。つまり、あの媚びた声は……
利家。掠れた声で心を乱す青年の名を呼ぶ勝家の頭に響き続ける信長の粘つく声と利家の鳴き声は中々離れそうになかった。
「あぁあっ! の、信長様っ! も、もっと、もっとご褒美くださいぃい!」
絡みを後ろから突く獣の交尾体勢から、真正面を向き合って下に位置する雌を貫く人間の交合体勢へと変えた二人は互いの胸が付くほどに密着し合い、汗と体液でグチャグチャに濡れた接合部を揺すり合った。大きく両足を開いてより激しい交わりを求める利家の唇を吸うと、交わる前に自分が彼の口内に射出した種の味を感じたが、構わずに舌を絡めて温かい口を貪る。唾液が利家の横顔を伝い、糸を引きながら敷布に落ちた。
「はうっあうん
か、感じる
信長様の太魔羅にズボズボされて淫乱尻穴、凄ぇ感じる
」
「品の無い犬よ」
完全に快楽に溺れてしまっているのだろう、唇を離せば猥褻な言葉を躊躇無く口にする利家に呆れ混じりに言うが、今の利家には嘲りの言葉すら性交の盛り上げ役の一つに過ぎなかった。
「い、犬、犬ですっ! 俺は、四六時中発情してる卑しい雌犬ですっ! あ、あぁあ
「で、あるか」
普段は男を上げるだの言っている口から雌犬と言う単語が飛び出した滑稽さに小さく笑いつつ、だらしなく開きっ放しの相手の口に再び己の舌を差し入れる。先程よりも大きな水音が立つように舌を艶かしく動かした後、信長はゆっくりと顔を利家の耳元に移し、やや切羽詰った声でこれから自分が行う事を伝えた。
「出すぞ、利家。信長の種を褒美としてうぬの中に全て出す、ぞ」
己の体内に精を吐き出されると言われても利家は特に恐怖を抱いた様子は見せず、寧ろ不気味さを感じるほどの笑みを浮かべ、悦楽に浮かされた瞳で信長を見詰めながら幾度も頷いて求めた。
「く、くださいっ…信長様のご褒美の子種、腹一杯飲ませてください」
「ククッ…有難く受け取るが良い、ぞ」
何処か焦点の合わぬ眼に見詰められながら信長は下に居る利家の肩を鷲掴みにし、褒美を与えるべく今まで以上に苛烈に腰を前後させると利家の方も激しく鳴きだし、首を幾度も左右に振って涙の粒を散らしつつ裏返った声で叫んだ。
「あぁっ! あっ! あんっ! やっ、信長様っ、俺も、もう、駄目っ! ひっ、い、イクうっ! 駄目っ、やぁあ!」
肩を掴まれたままの腕を何とか動かし、右手が己の汁に濡れた本体を包み込む。後ろで信長を受け入れながら、右手で肉搭を慣れた手付きで扱くと、元々刺激と解放を求めていた其処は思った以上に呆気なく弾け、それと殆ど同時に望んでいた褒美が腹の中に多量に叩き付けられるのを感じた。
「んああぁっ! イクッ出る
出るっ
信長様に中出しされながら種汁出るうぅうっ!!」
一度の射精では満足しなかったらしく、利家の手が上下する毎に少量ながら精が飛び出して相手や自分の腹に散る。
相手の方も自分と同じ状態だったのか、一度出した後も数回腰を小刻みに振って残り汁も全て中で射出し、出し尽くした所で腰をゆっくりと引いた。うっすらと白く汚れた信長の先端と利家の開ききった穴の間で白い橋がかかる。
「ハァ…ハァ…あ…んせ、せい、し…
信長様のご褒美精子…
あはっ、凄ぇ…本当に腹一杯出されてら…
大きく開いたままの両足の間に手を伸ばし、其処から溢れ出始めた“褒美”を指先で音を立てて弄びながら嬉しそうに笑う利家に信長は薄ら笑いを浮かべた。