光矢の失踪事件から数日後の昼下がり。授業を終え、一人校庭を進んで校門から一歩足を踏み出した智哉は、その片隅にいた小さな何かに、えっ…と思わず声を上げた。
「にーちゃんっ」
目が合った瞬間に嬉しそうに笑い、腕にしがみ付いて来た小さな何かは幼い弟。思わぬ展開に目を丸くしながら、智哉はしゃがみ込んで弟と視線を合わせた。
「光矢…何で学校まで来たんだ?」
「にーちゃんとあそびたくってね、ずっとまってたの。……こーやが、おうちいりゅと、おかーさんいやがりゅし…」
「……」
母親の事を口にした瞬間、笑顔を寂しそうなそれに変えて視線を落とした弟を智哉はこの上なく哀れに感じたが、敢えて笑顔を見せて立ち上がり、小さな手を強く握った。
「そっか、待ってくれて有難うな。じゃあ、公園行って遊ぼっか。学校まで歩いて来て疲れただろ?」
「へーきだよっ! こーや、にーちゃんにあいたくって、きたんだもん。こーや、ぜんぜんつかれてないよっ」
「光矢は強いんだなぁ」
「えへへ……」
誉め台詞に頬をほんのりと赤らめて照れ臭そうに笑う弟の横顔を兄は眩しそうに目を細めながら見詰め、手を握り直して歩き始めた。
学校帰りの子供達の遊ぶ声が至る所から聞こえる公園の隅のベンチで、道中コンビニエンスストアで買った安価なビスケットの包みを開ける手元を幼児が目を光らせて見詰めている。そんな弟に兄は小さく笑いかけ、開いた包みから
一枚だけビスケットを取り出すと残りを袋ごと手渡した。
「にーちゃん、それだけでいーの?」
「良いよ。兄ちゃん、お腹いっぱいだから光矢にやる」
「そなの? ありがとっ」
兄の言葉が嘘であるとも知らずに光矢は頬を上気させて笑い、ポロポロとカスを散らしながらビスケットを齧った。
「……光矢、この前はゴメンな」
「??? なんのこと?」
突然の一言に二枚目のビスケットを口へ運ぶ事を一時中止して兄の顔をきょとんと見る光矢に智哉は困ったような微笑を浮かべて言葉を続けた。
「…光矢を見つけるのが遅くなってゴメンなって事。あんな所に閉じ込められてるなんて思わなかったから…。あんな暗くて狭い所にずっと閉じ込められてて辛かっただろ?」
「うん…。でもね、こーやが泣いてたらね、変な人が出てきて、なかないでって言ったんだ」
「変な人?」
思わぬ答えに怪訝そうな顔を浮かべる智哉の目から自分の目を逸らさずに光矢は大きく頷いた。
「うん、変な人。顔とかはよくわかんないけど…。でも、やさしそーな人だったよ」
「でも、兄ちゃんがあの倉庫開けた時は光矢以外見当たらなかったぞ。…泣き疲れて眠って、夢でも見てたんじゃないのか?」
「ゆめ?…そっか、ゆめだったのかなぁ?顔とかおぼえてないし…」
首を何度も左右に傾けながらも、兄の言葉に妙に納得してしまったらしく、食べるのを中止していたビスケットを改めて口に運ぶ弟を見詰めていた智哉だったが、自分達に近付く人影の存在に気付き、その方向を向いた。
「智哉君、光矢ちゃん…」
人影の正体は、近所の住人の中でも特に親身になってくれている若い主婦。その後ろには中年に差し掛かりつつある男性が立っていた。
「羽鳥智哉君だね?」
質問に小さく頷く智哉に見知らぬ男性は微かに目を細め、智哉の隣に座る幼児の目の前へと歩み寄って膝を突いた。
「ボクは智哉君の弟かな? 可愛い子だね。お名前は?」
「はとり、こーや。…おじちゃん、だれ?」
「おじさんはね、今日から君達が暮らすお家で働いてるんだよ」
「???」
男性の言っている言葉の意味が余り理解出来ずに目をパチクリさせる光矢の横で智哉の顔が一瞬にして強張った。
「今日から僕達が暮らす家って……」
「…智哉君。あなたのお母さんは心の病気が原因で病院で療養する事になって、あなた達は隣町にある児童福祉施設…親と暮らせない子供達が生活する施設に行く事が決まったの。智哉君達が余りにも可哀相だったから…」
「………」
「智哉君は一生懸命頑張ってくれてるけど、やっぱり智哉君もまだ小学生だし、限界があると思うの。勝手な事をして悪いとは思ったけど…」
手を祈るように組んで視線を下ろす女性と強張った表情が崩れぬ少年の間を男性の目が何度も往復したが、やがて大きな手が智哉の黒髪の上に乗った。
「突然の事で戸惑わせてしまったが、おばさんも君達の事を考えて行動したんだ。分かってやってくれないかな。君のお母さんが治るまでの間だから」
「………」
「…にーちゃん?」
只ならぬ雰囲気に恐る恐る声をかけ、服の裾を引っ張る弟の小さな手にハッと身体が小さく動いた智哉は弟の頼りない手を暫く見ていたが、やがて手を伸ばして弟のすべらかな頬を撫でた。
「…光矢。お母さん、心の風邪が悪くなって病院に行ったんだって。…だから、お母さんが帰って来るまで、別のお家でお泊りするんだって」
「おとまり? どれくらい?」
「それは分からないけど…でも、兄ちゃんも一緒にいるから大丈夫だよ。しばらく、お母さんいないけど頑張れるよな?」
「うんっ、がんばりゅっ」
自分が置かれている状況が分かっているのかいないのか、こくんっと頷いて無垢な笑顔を見せた弟に胸を締められるのを感じた智哉はそれを誤魔化すかのように弟の髪を撫でながら、近くに立つ男を見上げた。
「あの、有花……妹は?」
「先に施設に行って昼寝をしているよ。お母さんは娘を取るなとかなり抵抗したけどね。…悪い事をしたと思ったが、仕方なかったんだ…」
その時の状況を思い出したらしく、顔を曇らせて視線を落とした男の態度から、抵抗する母の様子が容易に頭に浮かぶ。私の可愛い娘に何をする。娘を取るな。髪を乱して喚きながら、両腕を抱えあげられて病院へと連れて行かれた母親。男は何も言わないが、もしかしたら彼女は“連れて行くなら、あの悪魔の子を連れて行け”ぐらい言ったかも知れない。
「にーちゃん、べつのおうちってどこ? おもちゃとかありゅのかなぁ?」
“悪魔の子”の声にハッと我に返って見下ろすと、やはり状況を余り理解していないのだろう、“お泊り”に神経を向けて胸を躍らせている弟がいる。余りにも幼い弟を智哉は胸元に抱き寄せ、そのまま強く抱き締めた。
それから一年後。智哉は重い足取りで今の我が家である児童福祉施設へと向かっていた。
――もう家には帰れないと思って下さい。
ついさっき医師に告げられた酷な台詞が何度も頭の中で反復され、その言葉の一つ一つが木霊のように響き渡る。この一年の間、弟や妹には内緒で何度か母親と面会…と言うより様子を見に病院へと足を運んだが、思った以上に重症だったと言う彼女は、様子を見る毎に一回りも二回りも痩せ細って行っているのが分かった。重症患者に与えられた強固な施錠が施された部屋。マジックミラーから見た母は、ただ壁に向かって骨と皮だけになった手を組んで祈りばかりを捧げていた。その背中がみすぼらしさすら感じるぐらいに小さかったので、智哉はそれが自分の母の背中である事を信じたくなかった。
そして、今日様子を見に行った時。母はベッドに仰向けで横たわっていた。餓死寸前のような骨と皮のみになった身体、櫛すら受け付けそうにないグシャグシャの髪と所々素肌が露出している無残な頭、そしてぽかんと開いた口や虚ろに濁った瞳は死に掛けの魚を思わせて身体の芯から震えた。
「食事も取らずに、ずっと祈ってばかりいてね。とうとう、身体もロクに動かせなくなったんだ。思考能力…物事を考える能力も殆ど無くなっている状態だし…」
「母さん…」
ガラスに両手を貼り付けたまま動かなくなった少年の背中のランドセルに医師は辛そうに眉を顰め、少年の名を呼びながら何処からともなく箱を取り出した。蓋を開けると銀の十字架のペンダントが、箱の中で一瞬煌いた。
「これを持って行きなさい。お母さんが肌身離さず持っていた物だ」
「………」
本当は礼の一言も言うべきなのだろうが、とても口を開ける心理状態ではない智哉は無言で箱の蓋を閉めた。
「そのペンダントを預かる数日前にね。お母さん、一瞬だけ正気に帰ったんだよ。今まで見た事の無い位にハッキリした様子で“光矢は何処?”と…」
「えっ……」
「探しながら、お母さん泣いてたな。“光矢に謝りたい”って。五分足らずでまた元の様子に戻ったんだが…」
「…母さんが…」
口の中で小さく呟いた智哉は改めて変わり果てた母に目をやり、その母を数年前の穏やかに微笑む聖母に変え、そしてその聖母の胸に抱かれて嬉しそうに笑う弟を頭に描き、そのまま視線を床に落とした。
既に沈みかけている夕日の中、施設の門をくぐった智哉の長い影に一つの小さな影がぴょんと軽やかに施設内のブランコから飛び降り、頭一つ大きなその影に駆け寄った。
「おかえり、兄ちゃん。どこ行ってたの?」
「ただいま。……ちょっと母さんのお見舞いに行ってたんだ」
「えーっ! 兄ちゃんだけズルいよぉ。光矢もお母さんに会いたかったのにー!」
「ゴメンな。今度一緒にお見舞い行こう? 有花も連れて」
「うんっ」
兄の言葉に露骨に頬を膨らませたが、すぐにニッコリ笑って腕にじゃれついてくる弟の頭を智哉は軽く撫でていたが、その手はゆっくりと弟の肩に乗せられた。
「…兄ちゃん?」
きょとんとする弟の目の前に自分の顔が行くように足をゆっくりと折り畳んで、微かに丸くなっている弟の瞳を見詰める。光矢。智哉は小さく口を開いて弟の名を呼んだ。
「…光矢は……光矢の事をぶったり閉じ込めたりした母さんを憎んでるか?」
突然ぶつけられた奇妙な質問に光矢は一瞬目を丸くしたが、すぐにブンブンと首を何度も横に振って過剰に大きな声で答えた。
「うぅん!光矢、お母さん大好きだよ!お母さん、心の風邪治って病院から帰ってきたら、有花にしてくれたみたいに光矢の事も撫でたりしてくれるんだよね?」
「……うん。母さんも、光矢と遊びたいって言ってたよ…」
「本当!?」
自分の嘘にキラキラと輝き始めた弟の純粋な瞳を直視出来ずに智哉は瞬きに合わせて目を逸らす。自分は何て残酷な事をしているのだろう。何故、自分はこうして嘘を重ねてしまうのだろう。嘘を吐く事によって生じる疚しさに心苦しさを感じた智哉は、場を誤魔化すかのように手提げ袋から何かの箱を取り出して蓋を開けた。
「これ、母さんから預かって来たんだ。光矢へのプレゼントだってさ。……落としたり失くしたりするなよ。これを母さんだと思って大事にしてくれって預かったんだから」
「うんっ!」
箱から出て来た見覚えのある白金の十字架は、本来は母の胸元で輝いていたが、幼い光矢の首から下げると腹部辺りで光ってしまう。それでも嬉しそうに十字架を手にして弄る弟を智哉は何も言わずに抱き締めた。
それから時が流れ、六歳の誕生日を迎えて暫く経ったある日の事。自分は七五三の時に着せられたような“大人の服”を着せられ、何度か足を運んだ気がする教会の一室にある椅子に座らされ、意味の分からない話を聞かされたり、幼稚園では習っていない歌を歌わされたりしていた。隣の椅子に座っている兄が視線を落として唇を結んでいる。そのまた隣の椅子では退屈な式にすぐに飽きてしまった妹が頭を兄の膝に乗せて眠りこけている。状況が分からずに視線を前に向けると綺麗な花々と光に囲まれた中で美しい母が枠の中で笑っている。後ろの席の方からは啜り泣きと小さな会話の声が聞こえた。
「まだあんなに小さな子供達を残して逝っちゃうなんて…」
「あの子達のお父さんは?」
「何でも連絡がつかないとか……」
会話の意味が余り理解出来ずにボンヤリと聞いている自分の背後から誰かが優しく声をかけて来た。
「…光矢君、お母さんにお別れしましょう。ね?」
今では自分の母親代わりになっている施設の寮母の言葉の意味が分からない。お母さんにお別れ? 何で? 目をパチクリして寮母の顔を見詰めていると、彼女は可哀相に…と呟いて目元を拭った。
「光矢」
無理やり起こされて寝ぼけ眼を擦る妹の手を引いた兄が自分の肩を叩き、そのまま例の母の笑顔の方へと進む。慌てて追いかける自分の目の前で兄が何やら綺麗な布に包まれた箱を覗き込んで、微かに身体を震わせていた。
「兄ちゃん、何見てるの?」
自分も箱の中身が気になって覗こうとするが、背伸びをしても様子が伺えない。ジャンプしたら見えるかな…と少し足に力を入れた時、ふいと脇の下から伸びた兄の手が自分を宙に浮かせた。
「?」
目の前には久方振りに見た母がおり、自分を殴ったり、閉じ込めたりし始める前には常に自分に見せていた穏やかな聖母の微笑を見せていた。あの頃に比べて頬はこけていたが、それでもなお美しい母に自分は何時ものように声をかけながら手を伸ばした。
「お母さん……っ!?」
頬に触れた途端に反射的に手を引っ込める。冷たい。今よりももっと幼かった頃に甘えたくて触れた時に感じた温もり等微塵も無い。冷たい肌に触れた手を見詰める自分を兄はゆっくりと床に降ろした。
「兄ちゃん」
自分の手から目を逸らさずに兄に問う。それは、自分でも考えたくない推測。
「……お母さん…死んだの?」
「…………うん」
兄の返事で推測は残酷な事実に変わり、自分は漸くそれを理解する。ただひたすら一点を見詰める自分の横で、余り状況を理解出来ていないらしい妹が大きな欠伸をするのがうっすらと見えた。
各所に黒服の団体が集まっている巨大な部屋の片隅で智哉はボンヤリと壁を見詰めていた。目の前に置かれたオレンジジュースは、とっくの昔に氷が解けて色が薄くなっている。隣に置かれていたジュースを真っ先に空にして、興味深そうに部屋の中をチョロチョロと動き回る有花を何となく目で追う智哉の耳に嫌でも入るのは、余り会った記憶が無い親戚と施設の人々の“大人の会話”。
「申し訳ありませんが、あの子達を引き取るつもりはありません。狂い死にした妹の子なんて…。大体、あの子達の父親はどうしてるんですか?」
「その…あの子のお父さんは連絡がつかなくて…」
「まぁ、そうなんですか。私達も今暮らすので精一杯なんです。いきなり小さい子三人も育てろと言われても無理なんですよ」
「で、ですが、あの子達も親類の方の家で暮らした方が……」
「貴方達は国からの援助や多額の寄付を頂いているのでしょう? あのような子供の面倒を見るのは貴方達の仕事ではないですか」
「とにかく、あの子達を養子に迎える気はありませんから」
……どうでも良いよ。大人達の会話を鼻で飛ばしながら、智哉は壁の窪みを指でなぞって遊んでいる妹に目をやった。どうせ、邪魔なんだ。今度十歳になる自分を頭に子供が三人。親戚なんて名ばかりの大人達は自分達を引き取ろうなんて、はなから考えてないんだ。そんな大人に引き取られる位なら、今の施設にいる優しい職員達に育てられる方が弟や妹の為にもずっと良い。
「…智哉君」
後ろからの声に振り返ると、時々ボランティアとして施設を訪れる若い女性が心配そうに自分を見下ろしていた。
「光矢君が中庭で座り込んで動かないの。声をかけても返事をしないし…。智哉君、傍にいてあげてくれないかしら。有花ちゃんは私が見ておくから」
女性が指差す先に目をやると、なるほどガラス戸の向こうで弟が池の近くにポツンとしゃがみこんでいる。智哉は女性に軽く頭を下げると中庭への出入り口である重たいガラス戸を開けた。
「光矢」
背後から話しかけても、手先で弄っている十字架から眼を離さない無反応な弟に仕方ないか…と心中で呟き、ゆっくりと近付いて隣に立つ。両膝に手の平を当てて池を覗き込みながら、敢えて明るい声を出した。
「あ、見ろよ。あそこに大きい鯉がいっぱいいるぞ。なぁ、こっちに呼んでみようか。手を叩くと寄ってく」
「嘘吐き!」
突然の鋭い声に言葉を切って横を向くと、涙をポロポロと零しながら自分を睨み付けている弟がいた。
「兄ちゃん…お母さんがおれの事、また撫でてくれるって言ったのに……可愛がってくれるって言ったのに…」
「…………」
自分の嘘を責めているんだ。身に覚えのある智哉は黙って目を逸らし、視線を池の方へと向けた。その事が余計に腹立たしかったのだろう光矢は立ち上がって金切り声で泣き喚いた。
「兄ちゃんの嘘吐き!! …嫌い…! みんな、嫌い…! 」
「光矢……」
「……帰ってこなかったお母さんなんて嫌い! お母さんに可愛がられた有花も嫌い! …嘘吐きな兄ちゃんなんて大っ嫌い!!」
怒りと悲しみと興奮による勢い任せの叫びを目を瞑って力の限りに吐き出し、息を少し切らせながらそっと目を開けて上目使いに兄の様子を伺うと、彼は池の方を見詰めたまま微動だにしていなかった。特に怒った様子も無く、ただ池の一点を見詰めるだけだったが、その直後に光矢はハッと瞠目した。兄の一文字に結んだ唇が小さく震えたかと思うとポツリと石の上に一粒の雫が零れ、それが二粒・三粒と続く。それは、生まれて初めて見た兄の涙。
「……ごめん…」
声を涙に揺らしながら口にした謝罪の言葉に光矢は新たに流れ始めた涙も拭わずに、ゆっくりと首を横に振った。嘘吐き呼ばわりされても、ただ涙を流して謝罪する兄の姿は幼い自分にとっては大きな衝撃を与えた。嘘吐き。大嫌い。自分は何て非情な言葉を彼にぶつけてしまったのだろう。自分は何て無責任な事をしてしまったのだろう。
「…兄ちゃっ……ごめっ…ごめんなさいっ……うわああぁぁーーーっ!!!」
泣き叫びながら胸に飛び込んで来た弟の背中を擦りながら自分の額を小さな頭に押し当てた。
「もう…良いから。…今度から、兄ちゃんがずっとずっと光矢や有花を守るからな」
何かを決意したかのように瞳を濡らす涙を袖で強く拭いた兄にしがみ付いて泣き続ける弟の胸で母の形見のペンダントが淡く輝いた。