「うぁ、ああぁぁ……!! い、痛いっ…痛いぃぃ…!!!」
  身体を両足の間から真っ二つに引き裂かれそうな激痛(実際、其処から熱い何かが流れるのを感じ、それは鮮血である事を即座に悟った)が幾度も身体を貫き、圧迫感にむせる喉からは悲鳴と泣き声が絶え間なく飛び出すが、目の前の男はそんな自分の様子を見て恍惚の笑みを浮かべた後、より激しく腰を揺さぶり始めた。
「さすがは現役中○生。何て気持ち良く締まった穴してやがるんだ…!!」
「や、やめて……裂けるぅ…!!」
「いや、もう裂けてるんじゃね? 血もダラダラ出てるじゃん。にしても、そそるねぇ。お前みたいに可愛い顔したガキがヤられてる時の顔は」
「お前、今度学校で自慢すれば? もうセックス経験しちまったって。しかも野郎同士のな。アハハハハハ!!!」
  男達の好き勝手な言葉と笑い声を拒絶するように首を幾度も振り、嫌だと言う言葉を繰り返しながら泣きじゃくっていると、左手に何かを握らされる。恐る恐る視線をやると共に小さな悲鳴を上げた光矢の左手の中には既に硬度を増していた太い茎があった。
「ほら、扱いてみろよ。何時も自分のを弄ってる時みたいにさ」
「…………」
  どうせ、逆らったって無駄なんだ。素直に言う事を聞いてサッサと終わらせてしまった方が良いかも知れない。自分なりにそう判断し、伏せた眼から涙を流しながら、ゆっくりと左手を動かし始めた光矢だったが、自分のそれとは全く違う醜悪な象徴物の感触に嫌な寒気を感じた。視線を床に向けながら苦痛に耐える光矢の顎を目の前の男が掴み、無理矢理視線を合わせて笑う。
「どうだ? 気持ち良いだろ」
「…………」
  その質問に対して肯定の返事など出来る訳が無く、首を激しく振って涙の粒を散らす少年の背後から別の男の手と怒鳴り声が襲って来た。
「嘘吐け、本当は気持ち良いんだろ!?」
「き、気持ち、良くなんかっ………ひあぁぁっ!!!」
  背後から伸びた手は自分の脇の下を通り、鮮やかな色をした突起を激しく抓り上げて来る。その強い痛みに咽ぶ光矢の耳元に男の唇が近付いて、不気味なまでに優しく囁いた。
「な? 気持ち良いんだろ?」
  素直に肯定しないと、もっと痛い目に会わせるぞ? 優しげな声色に隠された悪魔の台詞を感じ取った光矢は暫くの間、目を硬く閉じて泣きじゃくっていたが、やがて観念したのか小さく口を開いて震えた声を漏らした。
「き、気持ち……良いです…」
「そうか、そりゃ良かったな」
  少年の返事に満足げに頷き笑った眼前の男は肯定の返事と共に解放された突起を執拗に舐って舌先で幾度も転がしつつ、腰の律動を一層激しくした。
「俺もお前のおかげで充分気持ち良いぜ? ほら、ご褒美の一発目」
「え、あ、やっ…嫌ああぁぁぁ…!!!」
  相手の息遣いが急に荒くなったかと思うと、接合部が一瞬弾けて中を焼き払われるが如き未体験の感触に襲われる。その絶望的な感触に眼を見開いて悲鳴を上げる少年に触発されたかのように、左手を支配していた男も切羽詰った声を上げ始めた。
「…はっ、はぁっ……俺も出すぞ……! その綺麗な顔にかけてやるっ…!!」
「そ…そんなっ…やめ……あっ…!」
  少年の手の上に二回り程大きな手が被さって激しく前後すると呆気無く濃厚な白が少年の顔に容赦無く振りかかり、美しいカーブを描いている輪郭から重たそうに雫を垂らした。
「あーあー、可哀想な事すんなよな。可愛い顔がお前のザーメンで台無しじゃねぇか」
「お前も終わったならサッサと抜けよ。後がつかえてるって言っただろ?」
  一滴残らず注ごうと言うのか中々離れようとせずに腰を細かく揺する男に苛立ちの声をぶつけると、彼は曖昧に返事をしながらゆっくりと腰を引いた。
「いやマジで凄ぇよ、このガキ。顔は見ての通りだが、身体も極上だ」
「へぇ、やっぱり? じゃあ、俺も堪能しようかな♪」
「も……もう、やだ………やめて……ぅんっ!!!」
  顔を濡らす精も拭わずに、弱々しく懇願する光矢の瞳が飛び出さんばかりに見開かれる。小さく開かれた口に無理矢理捻じ込まれたのは、ついさっきまで下に捻じ込まれていた血と様々な体液に塗れた本体。
「んぐっ、うっ……うぅぅ…!!」
「ほら、お前の血で汚れたんだから綺麗にするんだよ!」
「うわっ、鬼畜ーっ」
  仲間の行動をからかうようにゲラゲラ笑いながら震えが止まらぬ細い両足を広げ、腰を近付けて来る男を見る光矢の瞳は虚ろになりつつあった。
 …何で、誰も助けてくれないんだ? 兄ちゃん……何で、来てくれないんだ? 兄ちゃんがずっとずっと光矢や有花を守るからな。母との別れをしたあの日、涙ながらに兄が言った誓いの言葉。あの時、約束…してくれたよな?  俺の事を守ってくれるって…。こう言う時こそ、俺の事を助けてやるって意味だよな? それなのに、何で…何で……。
 現実逃避でもするかのように虚空を見詰めながらも涙を流す光矢の身体を鈍い衝撃が貫いたのは、それから数秒後の事だった。

「くそっ……!!」
  夜が更けても未だ人で賑わう繁華街の片隅で一人の長身の少年が壁を強く叩き、通行人の視線を一瞬浴びた。
「何処に行ったんだ、アイツ…」
  上着のポケットに弟の写真を一枚入れて施設を飛び出してから一時間近く。弟と交友がある人物の家を虱潰しに回り、繁華街に出て彼が好みそうな施設や店を一軒一軒回って写真を見せつつ、写真の中の人物についての情報を求めたが、有力な手掛かりは全く得られなかった。
 ふと頭の隅に蘇る、子供の頃の記憶。あの日の夕方も自分は行方不明になった幼い弟を必死になって探し、見付からぬ事に苛立ち、弟は何か災難に襲われたのではと勝手に想像して恐怖を覚えた。あの時と変わった事と言えば、幼過ぎて近所周辺をチョコチョコ歩き回る程度だった弟もそれなりに成長して行動範囲が比にならぬほど拡大してしまった事か。そして、それが今回の捜索を余計に困難にしている。智哉は大きく溜め息を吐き、近くにあった植込みのレンガに座ると祈るように組んだ手に額を当てて目を瞑った。
 コウちゃん、帰って来るよね…? 瞼の裏に何時も傍にいて遊んでくれる次兄の帰りを待つ妹の不安げな顔が浮かび、同時に智哉はハッと眼を開いた。コウちゃん、夕ご飯いらないって。おいしい物食べるのかなぁ?
「夕飯は要らない……」
  妹の台詞を思い出し、口の中で小さく呟いた智哉は弾かれたように立ち上がり、次の捜索の場所を目指して夜の道を勢い良く駆け出した。

 遅い夕飯をとったり、飲み物とケーキを並べて談笑を楽しむ若い客達がポツポツと席に座り、何処と無く静かでゆったりとした店内の空気を派手に出入り口の扉を開く音が見事に打ち壊した。所々でざわめきが聞こえ、数人の客が立ち上がって出入り口の方へと視線を浴びせる中、若い女性店員が額から大粒の汗を多量に流して肩で大きく息をしている高校生位の少年に恐る恐る近付き、愛想笑いを何とか浮かべた。
「い、いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
「はぁ、はっ…ち、違います……人、探してるんです…。こう言う子、来ません、でしたか? 自分の、弟なんですけど……」
  額の汗も拭わずに首を幾度か横に振り、激しい呼吸で言葉を途切らせながらポケットから取り出した写真を渡すと、女性は両手でそれを受け取り、手招きをして他の店員を呼び寄せた。
「人探してるんだって。誰か、こんな子見なかった?」
「うぅん……あたしは見なかったなぁ…」
「…この辺のっ……レストランを、手当たり、次第に…回って、聞いてるんですけど…見つからなくて…」
「あっ、この子……!」
  長い間走り続けたのだろう少年に冷水の入ったグラスを手渡しながら写真を覗き込んだ店員の一人が声を上げると、他の店員と少年の視線が一気に声の主に集中した。
「見たんですか?」
「えぇ……八時半ぐらいだったかな。綺麗な子だなぁって思ったのを覚えてるし。男の人と一緒にいて、食事の後に黒っぽい車であっちの方へ行くのを見ましたよ」
「男の人!?」
  グラスの中の水を一気に煽っていた少年が店員の言葉に眼を見開くと、その勢いにたじろぎつつ彼女は小さく頷いた。
「え、えぇ。あの子は、その人をお父さんって呼んでましたよ?」
「……そう、ですか…」
  あの野郎…! 胸の中に一気に怒りの炎が燃え上がるのを感じ、空のグラスを力の限りに握ると手がブルブルと戦慄いた。その様子にオロオロする店員達の視線に気が付いて、顔を上げた少年は何とか微笑を作ってグラスを目の前の女性に手渡した。
「あ…有難う御座いました。失礼します。…お水、ご馳走様でした」
「いえ…。あの……弟さん、見つかると良いですね」
「…はい、有難う御座います」
  店員の言葉に小さく頷き、そのまま深々と頭を垂れた少年は入った時とは逆に何処か落ち着いた様子で扉を開き、店員が指した方向へと駆けて行った。

 左手を相手の首元に回し、抱きつくような体勢になっている少年は未だ容赦の無い陵辱からの解放を許されていなかった。もう、何回注ぎ込まれたか分からない。何回咥えさせられたか分からない。何回男の樹液を飲まされたか分からない。何回無理矢理扱かれて射精を強いられたか分からない…………
「んっ、ぅん……ぁ…」
  既に泣き叫ぶ気力すら残っておらず、掠れた声が喉の奥から小さく漏れる程度。それでも相手は顔を歪めて笑い、少年の細い身体を抱き直すと同時に突き上げた。
「へへっ、どうだ。少しは慣れて気持ち良くなって来たか?」
「……も…もう…やめて………ふぁ……あん…」
「ハハッ、まだ嫌がる力が残っていたのかよ。何発もヤられたクセに」
  既に全てを注ぎ終えた男達が缶ビールを煽り、煙草の煙を吐きながら少年の嗄れた懇願を笑い飛ばす。涙で真っ赤に腫らした少年の何処か虚ろな瞳が一瞬見開かれたのは、それから暫く後の事だった。
「あっ、だ、駄目……もう、中…やだぁ…!!」
「駄目って言われても、もう出ちまったしなぁ。ま、今まで何発も出されたから殆ど同じだろ?」
「うっ…ひくっ………うぅぅ…」
肩を震わせて泣きじゃくる少年の顔をじっくりと眺めながら腰を引くと、蹂躙された其処から白濁液が溢れ出て床を汚して行き、その姿に改めて男達は派手な嘲笑を飛ばした。
「良いねぇ、その姿。ビデオに撮っときゃ良かったな」
「あー、惜しいな。こんな綺麗なガキのレイプビデオなんて高く売れただろうに」
「…………」
  漸く解放されたらしいが、何故か身体が全く動かない。度重なる陵辱の傷だろうか、それとも精神的外傷が余りにも大き過ぎたか。
「光矢」
頭の上から聞こえる父親(今となっては、そう思いたくない)の声がボンヤリしている。何処か霞んだ視界の中に、悪魔の笑顔が映った。
「気持ち良かっただろ? 何回もイッてたもんなぁ」
「……………………」
  返事をせぬ息子に父はクックと肩を震わせて笑い、精で濡れた髪を掴んで息子の顔を眼前まで乱暴に引き寄せた。
「どうだ。光矢が頑張れば、一杯お金が入ってお父さん助かるんだぞ?月にほんの三、四回今までの事と同じ事をすれば、光矢にも一杯お小遣いが入って、欲しい物が何でも買える。光矢は何が欲しいのかな?  漫画か? CDか? 服か? それともゲームソフトかな?」
「何なら、俺の知ってる店でも紹介しようか? そのガキは顔も身体も良いから客が一杯付くぜ」
「…だってさ、光矢。お店で働くのも良いなぁ。どっちにしろ、これからもお父さんと一緒に暮らすよな? ハハハハハハ…!!」
「……………」
  酒臭い息を吐きながら高笑いをする悪魔に対し、天使の顔を穢された少年は小さく首を横に振る事しか出来なかった。

 寿命が切れかけている電灯の灯りの下で、電柱に手をかけて地面を凝視しつつ肩で息をし、唾を幾度も飲み下す。長時間走り続けた事で智哉は吐き気に襲われていた。気持ち悪い。だが、余り長い事休んではいられない。こうしている間にも弟は父親の手によって何かされているのかも知れない。早く、早く助けに行かねば。
「お、こんな所に酔っ払いか? 背中でも擦ってやろうか」
「……………」
  口元を手で押さえながら背中から聞こえた声の方へ振り向くと、いかにもガラの悪そうな男二人組が自分の青い顔を見て笑った。
「何だ、まだガキじゃねぇかよ。なーんか今日はガキと縁がある日だなぁ?」
「……どう言う事だ?」
  男の台詞に直覚を刺激され、口から手を離して問うと相手は笑顔のままで小さく肩をすくめた。
「別に? この先のアパートでちょっとしたパーティーが開かれてよ。そのパーティーの主人公が可愛らしいお子様だったってだけ」
「……そうか…」
「ま、余り首を突っ込まずに坊やはママの所へお帰り? さもないと、巻き込まれちまうぜ」
  黒髪をクシャクシャと掻き回し、下卑た笑いを発しながらその場を去った男達の背中を智哉は暫く見送っていたが、やがて吐き気も忘れた様子で薄暗い通りを駆け始めた。
 あんな奴らが参加していたと言うパーティーなんだ。絶対ろくな内容じゃない。もし、そのパーティーの“主人公”が弟でなければ、保護すれば良い。弟であれば………。
 色々と考えている内に灯りがポツポツと点いている古ぼけたアパートが目に入って来る。そして、その近くにある駐車場にふと視線を向けた瞬間、智哉の心臓が大きく跳ねた。駐車場に無造作に停められていた車に見覚えがある。数日前、望まぬ再会をしたあの日。公園を後にしたあの男が乗り込んでいた黒の車………
「…!」
  例の“主人公”は弟である事を確信した智哉はアパートに飛び込み、階段を駆け上がった。廊下を駆け、一部屋一部屋の表札に眼を向ける。そして、それは何部屋目だろう。自分がたった 七年ほど与えられていた名字と父親の名前が書かれた表札が目に入った時、智哉の胸の鼓動は一層速く、激しくなり、耳の奥までその音は聴こえた。震える手がドアノブに伸び、冷たいそれを握る。後は、ただ勢いと感情のままに身体が動いた。
「…光矢!!」
  弟の名を叫びながら扉を開けて廊下を駆け、灯りが漏れ出ている部屋の扉を開くと、目の前に想像以上の惨状が広がっていた。
「遅いじゃねぇか、ナイト」
  乱入して来た自分に驚く様子も見せず、寧ろそれを予想していたかのようにニヤニヤ笑いながら嫌味たらしく騎士呼ばわりする父親を強く睨みながら一歩中に入ると、体液で汚れた床に裸の弟が変わり果てた様子で転がっていた。
「こ、光矢!! しっかりしろっ!」
「………に、ぃ…ちゃん…?」
  薄く閉じていた瞼をゆっくり開き、瞳を合わせる事で兄が来た事を確認した瞬間、虚ろな瞳からぶわっと大粒の涙が溢れ出た。
「…来るの……遅過ぎる、よ………待ってたのに……兄ちゃんが…助け、来るの………」
  そして、兄の腕の中にいる事に安心したのか瞳を閉じると同時に首を落とし、人形のようにダラリとその身を預けて来る。汚れた華奢な身体を支える兄の腕が小さく震えだした。
「…アンタ、正気か!! 実の息子に…!!」
  憎しみを全開にして睨み付ける智哉の反応を面白そうに眺めながら、父親は床にある何かを拾い始めた。
「仕方ねぇだろ。そいつが“売り”させたくなるぐらい綺麗な顔してるんだから。お陰様で大好評だったぜ。なぁ?」
「あぁ、勿論。そんなガキ、滅多にお目にかかれねぇしな」
  父親とまだ家に残っていた“客”らしき男達の声を聞く毎に虫唾が全身を駆け回り、震えの範囲が腕からどんどん広がっていく。死んだように眠る弟の頬に描かれている涙の跡の線を見た瞬間、智哉は喉の奥から搾り出すように言った。
「……俺の目の前から消えてくれって……光矢は巻き込むなって…言っただろ…!?」
「あぁ、言ったよ? だから、お前の目の前には出ないで光矢の目の前に出たんじゃないか。それに光矢を巻き込むなとは言ってたが、売春をさせるなとは言ってないだろ?」
「…………………」
怒りと憎しみだけが心を支配し、相手に殺意すら覚え始めた智哉の目の前に見覚えのある服が投げられた。
「ほら、サッサとその汚い服とガキ連れて出て行きな。また金が欲しくなったら、何時でもおいでって光矢に伝えといてくれよ?」
「そうそう、そのガキなら何時でも買わせて貰うからな。何なら、お前でも良いぞ? そのガキの兄ちゃんなんだろ? 顔はそのガキには劣るが結構な上玉じゃねぇか。その細っこいガキに比べりゃガタイもい……」
  弟を腕に抱いた智哉が男の一人を目にした途端、ベラベラと喋っていた男の口が止まる。そのまま智哉が無言で背中を向けて部屋を後にした途端、口を止めていた男が大きく息を吐いた。
「何だよ、いきなり喋るの止めやがって。……顔青いぞ? どうしたんだ?」
  仲間の一人に肩を叩かれたその男は額に滲んできた汗を拭いながら、再度息を大きく吐いて小さな声で言った。
「……お前、アイツの眼見なかったのか? …アイツ…本気で人を殺せる眼をしてやがった…」
  男達の会話を聞いた父親は実の息子の“人を殺せる眼”を思い出し、小さく鼻で笑った。