C-47 「スカイトレイン」
                
              
      C-47 「スカイトレイン」
 

  
 1930年代、アメリカでは国内の長距離の移動手段は鉄道から航空機に移りつつありましたが、現代のような大型旅客機は存在せず、乗客数もせいぜい15名程度という規模でした。この当時、旅客機のライバルに「飛行船」がありました。一般的な飛行船なら乗客数は60名超と多くの旅客を運ぶことができましたが、飛行スピードが時速150キロ程度と低速な上に、1937年に発生した「ヒンデンブルグ号爆発事故」など安全面でも問題がありました。そこで各国の航空業界はたくさんの旅客を運べて、安全で、しかもコストパフォーマンスに優れた新世代の旅客機を求めました。

 1935年、ドイツではルフトハンザ航空向けにハインケル社が開発した高速旅客機が就役し、ヨーロッパの各地を結んでいました。この高速旅客機はそもそも爆撃機としての叩き台として開発されたようなもので搭乗できる旅客数も現在の小型チャーター機程度でした。

 大西洋をはさんだアメリカでは1920年代に創業した新興航空機メーカーのダグラス社がDC-1、DC-2という民間用航空機を世の中に送り出していました。ダグラス社は創業時、初期メンバーに恵まれており開発する航空機は優秀なものばかりでした。初期メンバーの有名どころといえば、P-51を開発したノースアメリカンの初代社長のジェームス・キンデルバーガー、夜間戦闘機P-61を開発したノースロップ社の初代社長のジャック・ノースロップなどが挙げられます。

 同じ頃、ボーイング社でも採算の取れる旅客機を新規開発していましたが、採用するエンジンの選定で運用するパイロットから思わぬ横槍が入りました。信頼のおける小型の型遅れのエンジンを採択したため、機体もそれに合わせた設計をせざるを得ず、結果として旅客数の少ないあまり発展した機体にはなりませんでした。

 ダグラス社ではそういった横槍が入らなかったのも幸いし、すでにベストセラーとなっていたDC-2の機体幅を拡大したDC-3の開発に成功しました。座席数もDC-2の14席よりもずっと多い21席、最大で32席を設置することができました。このDC-3の素晴らしいところは旅客数が1.5倍になっていながら、運用コストは前機種とほぼ同じという「使えば使うほど儲かる」という航空会社からすれば夢のような旅客機でした。スピード、キャパシティ、整備のしやすさ、運用コストの安さなど、優秀な旅客機はやがて軍用輸送機としての運用も検討されました。

 アメリカ陸軍航空隊はDC-3を軍用輸送機として使用するため、航空会社から140機ほど徴用しましたが、ほどなくして輸送機バージョンをC-47として制式採用し、第二次世界大戦のあらゆる戦場の補給に動員されました。

 各国の軍事関係者は競って、このDC-3のライセンスを取得し、輸送機として運用しました。枢軸国側にいた日本も例外ではなく、太平洋戦争前のDC-2の時代から航空会社で運用していました。誰もが認めるその性能ゆえに後継機であるDC-3はすぐにライセンスを取得しての生産が開始されました。やがてこの設計を国産化した設計がなされ、零式輸送機という新機種が誕生しました。日本には別に100式輸送機という輸送機も存在しましたが、積載量の面では零式輸送機の方が優秀でした。


 後にアメリカ大統領になるアイゼンハワー将軍は第二次世界大戦を制した要素に「バズーカ砲、ジープ、C-47」の3つを挙げています。第二次世界大戦終結後、大量生産されたC-47は民間に大量放出され、航空会社に流れていきました。その優れた輸送力は戦後復興のための物資輸送や多くの人間の移動に十二分に発揮され、ジェット旅客機の本格実用化まで、多くの関係者に支持されました。

 驚くべきことに戦後、各国の多くの航空エンジニア達が伝説のDC-3に匹敵する旅客機の設計開発にチャレンジしてきましたが、運用性やコストの総合的な面でDC-3を超える設計は未だ生まれていないと言われています。また初飛行から75年経った現在でもDC-3のマイナーチェンジ機は未だ世界の空を飛んでいます。その目的はスカイダイビングであったり、旅客機であったり、軍事用であったりと様々ですが、名設計であることはゆるぎない事実です。

性能諸元  (B24-J)

 全長;  19.66m
 全幅;  28.96m
 全高;  5.16m
 正規全備重量; 12700kg
 エンジン;
P&W ツインワスプ (離床出力1200馬力)×2基
 最大速度; 346km/h 
   
              
    
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