ミーティア
ミーティア
第二次大戦中、両陣営で開発されたジェット戦闘機の双峰はドイツの
Me262「シュヴァルベ」と今回ご紹介するイギリスの「ミーティア」と呼ばれています。
1939年9月、イギリス空軍省はグロスター社に対して開発中のジェットエンジンを実装した試作機の製作を指示しました。ジェットエンジンはドイツが発明したイメージがありますが、現代のジェットエンジンにつながるものはイギリス空軍の技術士官「フランク・ホイットル」によって考案されたものでした。
しかし、イギリスの専門誌は彼の画期的な研究成果を軍事機密と考えず、広く世界に公表してしまったためナチスドイツを筆頭に世界の列強各国にもジェット機の将来性を教える結果にもつながりました。1930年代後半にはドイツでは、ドイツのジェットエンジンの第一人者「ハンス・フォン・オハイン」が所属するハインケル社、ユンカース社で既にジェットエンジンの実用化に向けた開発が進行しており、ジェット戦闘機が実戦配備されればもはやイギリスが制空権を失うことは目に見えていました。
ここで簡単にジェットエンジンの説明をさせていただきます。ジェットエンジンは大きく2種類に分けることができ、「軸流式」と「遠心式」があります。ジェットエンジンの理屈は空気を取り込み、エンジン内で燃焼させ、燃焼ガスを後方に送り出すことで推進力を得ます。ただし、取り入れた空気よりも多くの量を後方に排出させないと前に進むことはできません。そこでジェットエンジンの中に空気を圧縮する装置を付けてより多くの燃焼ガスを噴出させるのですが、この方法の違いが「軸流式」と「遠心式」です。イギリスのホイットルは構造が簡単で実用化が近い遠心式を、ドイツは不安定で出力が非力な遠心式を避け、ほとんどパイオニアのいない軸流式をとりました。ちなみに現在のジェット機は軸流式が定着しています。
グロスター社はホイットルの協力を得ながら、試作機の製作を進め第二次大戦勃発から1年半後の1941年4月に完成しました。初飛行では最高速度が時速750キロという高性能を見せつけ、新時代の飛行機到来の希望を与えました。この試作機を足がかりに実戦機への開発と踏み出すはずでしたが、イギリス空軍省とグロスター社設計技師「ジョージ・カーター」との間で意見の違いが発生しました。敵国ドイツでも頭を抱えていたエンジンの信頼性でした。
この当時は耐熱金属の黎明期でジェットエンジンの長時間運転はエンジン火災と相場が決まっていました。軍は空気抵抗の少なそうな試作機の拡大発展を望みましたが、ジョージはエンジンの低信頼性から双発機の新規開発を提案しました。両者の意見対立は結局メーカー側の提案する双発に決定し、開発が進められました。
意見の衝突で時間を浪費し開発を急いだためか、機体の革新的な設計はされず、プロペラ機の機体にジェットエンジンを搭載しただけという凡庸さでした。機体は1942年春に完成しましたが、搭載エンジンの選定と開発がついていけず、初飛行は1943年の3月までずれ込みました。改修の終わったこの機は「ミーティア」という呼称が付けられました。その意味合いは「流星」です。
1944年7月からヨーロッパ戦線で実戦参加が決まりました。急加速ができない「ミーティア」は
スピットファイアを同伴しての出撃となり、その任務も最前線でドイツの最新鋭機との決戦・・・ではなく、ドイツの飛行爆弾「V−1ロケット」の迎撃でした。この頃はドイツ空軍も弱体化しており、「ミーティア」の活躍の場は失われていました。」
ドイツ降伏が目前に迫った1944年末、本命となるジェットエンジン「ロールスロイス ニーン」が完成し、そのエンジンを搭載した試作機はライバル機Me262を圧倒するものでした。皮肉にもそのエンジンはホイットルの考案したものとは設計段階から別物であり、信頼度や効率は格段の向上を見せました。
戦後、ミーティアは朝鮮戦争にも投入され、ソ連が開発したMig-15との対決を迎えました。Mig-15はミーティアと同じ系列のエンジンを積んでいましたが、Me262の開発データを組み込んだ上に新規開発した最新鋭機でした。戦闘は国連軍側のほうが互角以下に追い込まれ、アメリカも開発されたばかりのF-86Aを持ち込むなどジェット戦闘機の開発競争は熾烈を極めました。
熾烈を極めた開発競争に取り残されたイメージのあるミーティアですが、プロペラ機からジェット機への機種変換にはもってこいの良機であったため、1970年代半ばまで使用を続けられました。
性能諸元
全長; 12.57m
全幅; 13.11m
全高; 3.96m
正規全備重量; 6260kg
エンジン; ロールスロイス W.2B/23C「ウェランド」ターボジェット 推力771kg×2基
最大速度; 668km/h
武装; 20mm機関砲×4
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