指揮官様の潜入任務U SAMPLE  2 3(R-18)
電気拷問


 冷めた目を向けているスコールを、小男はにやにやと締まりのない顔で見ていた。
卑しさを隠しもしない目許は、見ているだけで不快感を与える。
しかし目を逸らす訳にも行かず、スコールがじっと男を見つめていると、男はスタンガンを持つ手を徐にスコールに近付け、太腿に宛がってスイッチを入れた。


「────っ!」


 足の爪先まで一気に電気が流れる痛みに、スコールは目を瞑って耐える。
ぎりっと噛んだ歯の音が軋んだような気がした。

 スタンガンは直ぐに離れ、スコールの体を襲う電気も途切れる。
と思った直後、またスタンガンが同じ場所に当てられ、スイッチが入った。


「ぐぅあ……っ!」


 電気刺激を受けた筋肉が収縮運動を起こし、スコールの足がビクッビクッと跳ねるように動く。
スタンガンが離れると、強い電流は消えたが、残った電気が痺れのように体に響いて、スコールの足が小刻みに震えた。


「へへ……どうだ?」
「……っ」


 どうもこうも、とスコールは男を睨む。
一思いに苦しめるのではなく、妙な所をねちっこく攻めると言うのが、如何にも嫌らしい。
不愉快だと隠さない表情で睨むと、またスタンガンが当てられる。


「ううぅ……っ!」


 ビリビリとした痺れが太腿から広がり、膝が震え、下腹部まで強張る。
しつこい、とスコールは思ったが、その傍ら、妙な感覚を覚えていた。


(電圧、弱くなってないか?)


 初めは痛みに声を上げる程の強い電流だったものが、宛がわれる度にその威力が抑えられている。
今当てられたものに至っては、少し歯を噛んで堪えれば耐えていられる程度だった。
やる気がないのか、と目の前にいる小男を見れば、にやにやと笑っている。
何かを企んでいると判る表情に、スコールは眉根を寄せ、気を抜くな、と自身に戒めを言い聞かせた。

 またスタンガンが太腿に当てられる。
スイッチが押され、ビリビリと電気が太腿に流れた。
スコールは眉根を寄せて顔を顰めたが、声を上げる程の痛みは感じられない。
何度も電気を流されている所為で、感覚神経が麻痺しているのか。
しかし、スタンガンが当てられていると言う感触は判るので、触覚を感じられなくなったと言う訳でもないらしい。


「へへ……へへへ……」


 目の前で男が笑っている。
スコールが電流の痛みで表情を歪める度に、男は興奮しているようだった。
D地区収容所で拷問されていた時も、スコールが苦しむ様子を見ては笑っていたように思うが、こんなにも変態的な笑い方をしていただろうか。
やはり、最初に見た時の印象の通り、常軌を逸している所があるのかも知れない。

 拷問に使うには余りにも甘い、微弱な電流がスコールの太腿に流されている。
スコールは太腿の筋肉が何度も伸縮運動するのを感じていた。


「う…く……っ!」
「どうだ?どんな気分だ?」


 両目をぎらつかせながら問う男に、どうもこうも、鬱陶しい、とスコールは胸中で吐き捨てる。
口を開かなかったのは、悪戯に隙を見せれば、男に嬲る楽しみを与えてしまうからだ。
男の思う通りになるのは癪だった。

 唇を噛んで痺れに耐えていると、スタンガンが足から離れた。
煩わさしさへの辟易で漏れそうになる吐息を、喉奥で堪える。
と、固い物が体の中心に当てられるのを感じて、ギクッとスコールの体が強張った。


「何処を触って……」
「ん?何処?何処だ?」


 顔を顰めるスコールの反応に、小男は面白がっている表情で訊いて来た。
こいつ、とスコールの眉間の皺が深くなる。

 スコールのズボンのフロントにスタンガンが宛がわれ、布越しに中心部を撫でるように擦っている。
ベルトと生地の隙間に捻じ込んで、ぐりぐりと押し付けられ、スコールは不快感に顔を顰めた。
足が縛られていなければ、躊躇なく蹴り上げてやる所だ。


「くく……そらっ」
「────っ!!」


 ビリィッ、と電気があらぬ場所から走り、スコールは目を瞠った。
悲鳴を上げなかったのは、脇腹や胸を責められるのとは比べ物にならない痛みを感じた所為だ。
電流量そのものは決して大きくはなく、直ぐに離れた為に、其処が焼け焦げるような惨事にはならなかったが、重要な場所である為に敏感な神経が集まっている其処は、微弱な電流でさえ強力なものとしてダメージを与えてしまう。

 中心部に残る痺れを帯びた痛みに、スコールの体が嫌でも震える。
不慮の事故で其処に物が当たっただけでも、男にとっては堪らない衝撃になるのだ。
人を制する為の非殺傷武器であれば尚更、そのダメージは単純な打撃よりも大きい。

 生理的な涙が滲むのを堪え、ぎり、と歯を噛んで目の前の男を睨む。
小男はくつくつと笑いながら、また股間に押し付けたスタンガンのスイッチを入れた。


「っあああ!」
「へへ……やっぱり良い声だなぁ」
「う、う……ぐぅううっ!」


 男は一旦スイッチを切り、スコールが残る痺れを流そうとしている隙に、またスイッチを入れた。
何度もスイッチのオンオフを切り替え、その度に上がるスコールの悲鳴に聞き入る。


「く……っ、うううっ!」
「ヒヒッ」
「っは……は……っ、───くああぁぁっ!」
「段々声が大きくなって来たな」
「うぐ……ん、ううぁぁっ!」


 ニヤついた男の言葉に、くそ、と毒づいて歯を噛み締めようとするスコールだったが、どう足掻いても鍛えようのない場所から与えられる電流に体が跳ね、声を上げなければ余計に苦しくなってしまう。
それを見た男が益々調子づき、カチカチ、カチカチ、とスイッチを激しく切り替えて、スコールの体を弄ぶ。



----指揮官様の潜入任務U p60〜p65