口唇/
「舐めて……僕のを、しゃぶって。お願いだよ……」
美希子は、舌を、出した。
そうする事が、まるで母親の義務であるかのように。
「あ……っ」
徹が、小さく呻く。深夜のリビング、両手の圧力、振り切るように閉じた瞳、
滲む汗。
母親と息子は、触れた。最大限にいきり女の中に侵入するためだけに変化した
物の先端と、下半身の粘膜と同じように赤く濡れて伸ばされた舌先とが、触れた。
「母さん……僕、嬉しいよ……」
甘い、声。部活で鍛えられた肉体とは裏腹に、声変わりの最中であるかの
ような、幼い響き。それが美希子の心の揺らぎを、さらに高く波立たせる。
「あっ、あっ……母さんの舌、気持ち、いい……これが、フェラチオなんだね」
目を閉じていても、徹の体が快感によって捩るのが分かる。
違うわ、徹……まだ、舐めてるだけ……本当はもっと、気持ち、よくて……。
触れ合う面積は限りなく小さくても、今まで経験した口淫よりどうしようもなく
昂ぶる。だから、もっと、触れたくなる。
「あ、あ……っ、そんな所まで、舐めて、くれるの……?」
舌先は、笠の縁を這う。まぶされた唾液が、暗い空間でも亀頭を妖しく光らせる。
「んっ……ん、ちゅっ……」
少年特有の、汚らしい滓をそこにかすかに感じた。徹の母親は、美希子は、
それをしっかりと味わいながら、舐め取った。熱い中心が、本能にざわめく。
「ああ……っ、そこ、すごく気持ちいい……母さん、すごいよ……ああっ」
声はますます甘え幼くなっていく。ペニスはますます熱く固くなっていく。
舌は、先端を味わいつつ血管を浮き立たせた幹に移動した。つまり、
先端は、唇によって愛撫され始めたのだ。
自分の唇が、熱くいきった愛息の先端に辿り着いたのを、美希子は気づいた
だろうか?道徳では許されない、禁忌。しかし徹の実の母親は、その先漏れを
始めた先端を、確かに唇でちゅっちゅと吸った。舌はもっと息子の体温を
知ろうと、シャフトを這いずり回る。
「嬉しいよ、母さん……っ、あ、くうっ!」
気持ちいいのね、徹……ああ、いけない事なのに……もっと、気持ちよく
なって……。
「ん……んふ、んっ……ちゅ、ちゅっ……んっ」
深夜のリビング。母と子、二人で行なう行為。美希子が顔を動かすたびに
響く、濡れた音。それはもう、間違いなくフェラチオだった。
「すごいよ、母さん……ほんとに咥えてくれたんだ……ああ、いいっ!」
亀頭は、美希子の唇の中に消えていた。その唇の中では、舌がまるで違う
生物のようにうねうねと蠢く。
口淫の悦びを思い出す瞬間。そしてもっと、楽しみたいと思う瞬間。
「ああ、すごいよっ……か、母さん……っ!」
徹の声が、濡れている。
ズボズボと、息子の肉柱が出入りする唇。固く、しかし柔らかくすぼめられ
幹を刺激する。
ちゅくちゅくと、息子の肉柱を舐めしゃぶる舌。エラがさらに張っていく事に
悦びを感じ、さらに際限なくうねる。
「そ、そんなにすると……僕、出ちゃうよぉ……ああ、母さん……っ!」
出すのね、徹……熱いの、出すのね……。
口淫に酔いかけていた母親に、ほんの少しの自我が甦る、刹那。
この男の精液は、呑み下してはいけないはずなのだ。
美希子は、慌てて唇を離した。最大限に膨張した息子のペニスが、目の前で。
「あ、ああ……くうっ!」
唸り。美希子が目を閉じる間もないまま、徹の怒張は激しく爆発した。
びゅるっ、びゅるっ。
眉を歪めて目を閉じた頃には、熱い粘液が遠慮なくその顔を汚していた。
閉じた瞼と鼻の間。鼻筋。頬。半開きの、唇。
「ふ……んくっ」
鼻腔に、強烈なにおいが突き刺さる。こんなに近くで嗅いだ、実の息子の
生々しい精液の匂い。
頭痛のような衝撃が、美希子を襲う。
ああ……これを、飲んでしまうところだった……。
「あ、あっ、は、あ……」
ぶるぶると震えながら、徹は最後の一滴まで放出しようとしていた。しかし
すでに、その滴りは母親を汚す勢いを失っている。
「かあ、さん……」
弱々しい声を残して、徹が床に座り込んだ。
「飲んでくれると、思ったのに……」
「だ、め……っ」
白く汚れた表情で、美希子は僅かな常識を持って息子の言葉に抗う。
「もっと、母さんの事……好きになりたかったのに……」
徹は、そのままゆっくりと立ち上がって階段へと消えた。母親を残して。
男においが充満したままの、暗いリビング。美希子は二階へと消えていく
息子の姿を見つめた。その眼差しはまるで、満たされなかった事を寂しがる、女の。