乳房/
刹那、あの場所が、たまらなく熟れる。女であることを一番感じられる
場所が、何かを求めて濡れ、わななき始める。そしてその求める物が何で
あるかを、美希子自身が悟っていた。
ああ……、欲しい……っ。
旦那にしばらく抱かれていない。
自分を慰める癖もない。
息子に逞しい物を見せつけられた。
それを口に含み愛撫している。
全てが、33歳の肉体を淫らにさせる要因だった。そして、それを満たして
余りあるものが、手の届く所にある。
しかしまだ美希子は、それを選択する勇気がなかった。それを選んで
しまえば、これまでの人生全てが禁忌の罪に汚されてしまうからだ。
息子を体内に迎え入れるわけにはいかない。しかし、限りない空虚も
感じている、女。
「ん、はあ……っ」
心に折り合いをつけられずに、口を長大な息子から離す。口に含んだ時が
思い出せないほど、そのペニスは激しく勃立している。自分がまぶした唾液に
濡れ光っているのだから、なおさら心乱された。
「ああ、母さん……もっと、舐めてよ……せつないよぉ……っ」
たまらない風情で、徹が叫ぶ。美希子はその声に応えず、ただじっと息子の
モノを見ていた。
「かあ、さんっ……もっと、もっとしゃぶって……っ、ああ、ああっ!」
身悶える、息子。震える、怒張。
我慢できなくなって、徹が右手をあてがう。傷のついた、右手。
それを必死に上下させ始める。母親の唾液に濡れたシャフトを。
「ああ……徹。やめて、傷が……」
艶やかな囁き声で、美希子が言う。その予感は当たる。往復を始めた
指先に、また赤い血が浮かんだ。
「ダメ……こすっちゃ、ダメよ……っ」
「でも、でも母さんが……してくれない、からっ……」
「ああ……っ!」
小さな血の玉が、次第に大きくなってやがて、つつっ、と流れる。部活で
豆などができたごつごつの右手が、息子のペニスに不釣合いに思えた。
だから。
「ダメよ……母さんが、してあげる……こう、して……」
躰に巻いていたバスタオルの胸元で、血の筋を拭く。その僅かな動きで、
バスタオルは美希子の躰から離れた。
気にならなかった。
そもそも、それで露わになった場所を、使ってあげるつもりだったからだ。
「ああ、徹……ダメ……」
何度も抗いの単語を吐きながら、美希子は再び固い先端に顔を近づける。
息子の右手をそっと押しのけ、ちゅっ、と優しく口づける。そして、そのまま
唇をそこに残したまま、上半身を寄り添わせていく。
「かあ、さん……?」
徹も、裸の母親が何をしようとしているのか分からずにいる。
離れない唇。そこを中心にして美希子の裸は45度回転し、ベッドの上に
移動していた。
「ズボン、脱がすわ……窮屈、でしょう……?」
言い訳。母親としての。
カチャカチャと、太く黒いベルトが外される。続けて少し汚れたユニフォーム
のズボンをゆっくりと下ろしていく。徹は、母親のその動きに少し腰を浮かして
協力する。
「は、あ……っ」
男の服を脱がすなど、美希子は経験したことがない。未経験の熱に、
のどが渇いていく。しかし、緊張とは別の興奮が、現れていく白い
ブリーフや太もも・すねの生毛を眺める事で沸いている。自覚できない、
猥褻な感情。
「ああ、とお、る……」
腰に残ったのは、白いブリーフのみ。その合わせ目から天を衝く、
逞しい息子のペニス。
「もう、手なんかで……こすっちゃ、ダメ……」
その声に、徹はまた母親の口の愛撫を期待した。
「ああ、母さん……まだ、舐めてくれるんだね」
「……」
しかし赤い口は、怒張を越えた。真剣な表情、しかし明らかに色に
濡れた瞳で息子を見つめた美希子。その両手は、自分の乳房に。豊か
過ぎる、乳房に。
「はっ、あああっ!」
手とも、口とも違う感触が、徹の分身を柔らかく包み込んだ。ぎゅっ、
と寄せられた二つの肉丘が、熱いシャフトをしっかりとはさんだのだ。
「そんな、母さんっ……あは、きもち、い……っ!」
未体験の心地よさに首を反らして喘ぐ息子を、美希子はしっかりと
見ていた。乳房での愛撫など、もちろん初めてだ。成長期から
コンプレックスを持っていた人より大きな乳房。指先や唇より柔らかい
ものと、混乱した思考の中で選んだ場所。