俺と文哉と俺たちの母さん |
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「でね」 「……?」 「もうひとつ、呼びかたの問題」 「……ん?」 「和、ちゃん」 「ひいっ」 マジ、かよ。大げさでもなんでもなくて、全身に震えが走った!マヌケな声も出ちゃった! 「ちょ、ちょっ」 「あ……ダメだった?」 「それは……カンベン」 「今からほんの少しだけで、いいんだけど……昔みたいに、ダメ?」 「ダ、メ。顔真っ赤になりそう」 「なってもいいのに。ふふっ」 「いやマジ、カンベン……お願いします」 すでに顔真っ赤になってたかもしれん。それくらい数年ぶり?の「和ちゃん」は衝撃的だった。 「そっかー、ダメか」 「ダメダメダメダメ」 「少しだけなのに」 「いやだって……恥ずかしいし」 「少しだって」 「それ、に……文哉を文哉って呼んで、俺が、その、和ちゃんだったらおかしいでしょ?」 「……だーかーら、今だけだって」 「あ、でも……カンベンして下さい、お願いします」 ああもうっ! 完全にみっともない姿晒しちゃってんなぁ俺。 母さんが必殺技出してきちゃったからしょうがなんだけど、これはあまりにみっともないし恥ずかしい。 まあ、でも……仲直りできた感はあるな。 結局母さんに主導権握られちゃったけど、さっきあのままお互い険悪なままで過ぎてたら、ちょい怖かった。 あとで母さんに「ごめん」って言えば、とりあえずは明日からの関係はなんとか……。 「よし」 「……ん?」 「じゃあ、交換条件」 「……何よ」 少し余裕が出て来て、冗談っぽい口調で返事できてる俺。顔もまあ、多分真っ赤だけど笑顔だと思う。 「こっち向け」 「向いてんじゃん」 「顔じゃなくって……全部。体」 「……は、あ?」 「母さんのいう事聞くの。好きなカッコがあるんだから」 好きなカッコ、で心臓が弾んだのはナイショだ。多分向こうは深い意味ない。 |
「何でよ」 「和ちゃんって呼ばせないのが悪いんでしょー?こっちは超母親モードなのに」 「まだ言う」 「あ。それに」 「……?」 「……まだ私が王様じゃん」 「……まだ言うか」 ……あー。全部王様ゲームから始まったんだっけか。旅館での文哉の「ちんこ触り」から始まって。 最後の命令は何だったっけ……あ。母さんの「アレ舐めるから出して」だ。うわあ。 「ほらー……王様の言う事はー?」 「……くじ引きしろよー」 「時間ない!黙って聞け!……ほら、体こっち向くだけ。和樹」 「……ああもうっ」 和ちゃん攻撃とか、王様ゲーム攻撃とかを連続で繰り出されて、俺は鼓動が早くなりっぱなし。 んで車内のアレまで思い出したもんだから、いろいろ他の部分もプチヤバい。 でも、改めて「和樹」って呼ばれたのがきっかけで、俺は仕方ないポーズをとりつつ、体全体を母さんに向ける。 ……顔見ながらとか恥ずかしいんで、布団に顔埋めて向けてやったぞ。ふふん。意味ナシ。どうせ顔も向けるし。 「……よし」 「何がよし、だ」 「……覚えてない?」 「?」 「えっと……そっか、文ちゃ、文哉が生まれる前でやめちゃったから、覚えてないかも」 「何を」 「んー?私ね」 母さんが俺の頭の後ろに手を回して、ぐいっと自分のほうに引き寄せた。何っ!?今度は何攻撃っ!? 「……子供の頭の匂い嗅ぐのが大好きだったの。何かちょい安心する匂いでさ」 「……はあ?」 「子供特有の……和樹は分かんないか。でもそんな感じの匂いがすんの。ちょっと牛乳……乳くさいっていうか」 「……」 「すんすんしながら頭撫でてたら、私も和樹もいつの間にか寝てたの。だから毎日してた感じ。あ、父さんは別の意味ですぐぐっすり」 「……それは知ってる」 「だよねー」 笑いながら、言葉の端で本人が言ってた「すんすん」って音が聞こえる。俺の頭の頂点から聞こえる。 「……今そんな匂い、しないよ。多分」 「……ん」 「……それって、ガキの匂いって事でしょ?」 「……ん」 おーい。すんすんばっかになって言葉が少なくなってきたぞ母さんって! |
「……文哉は、どうなん」 「……あ。アレ不思議だよね。文哉は、しないの。あの匂い」 「……へえ」 「文哉が生まれた時ぐらいに、部屋が移動したじゃん。だから当然、和樹と同じみたいに文哉の頭匂ったのね。イイ感じで寝れると思って」 「まぁ、母さんはするわな……」 「うん。でもねー、赤ちゃんの時はともかく、あんな感じなのに、文、文哉はミルクくさくなってないの。アレはもう、和樹の匂い」 ……うわあ。天然発言、ってか母親モードの発言って生々しいわぁ。向こうにそんな気がナッシングな分だけ余計に、ねえ。 それに。それにだ。 「……でも、やっぱ、もうそんな匂いしないでしょ。どっちかって言うと、男くさい、っていう、か」 「……ん。んー?」 母さんはまた鼻すんすん鳴らして俺の頭を嗅いでる。頭にやさしく手を置いて、自分のほうに近づけて遠慮なくすんすん。 だから、俺は。母さんのほう向いてる俺は。目の前に。 「あーでも」 「……?」 「近いよ、近い。確かにいかにもな男子の匂いっぽいのもあるけど。どっかに昔の匂いみたいなの、ある」 「……へえ」 「んー……そうだ、これこれ。安心する。和樹の、頭の匂い。ふふっ」 そっからは、黙って。多分ニコニコしながら、すんすん鼻を鳴らして匂いを嗅ぎまくってる。手はもう両手俺の頭。 俺は、ね。 目の前に、母さんのおっぱいがあるわけですよ。暗い部屋だけど、パジャマだけど、目の前に母さんのおっぱい。 横向きだから少ーしだけ下に形が歪んでる、おっきなおっぱい。それがまあ、10cm前。 昨日から、まあ数回生で見てるおっぱいだけど。近いわ。ヤバいわ。心臓も、下半身も。 「……ん。いい、匂い」 「……」 「……っ」 「……」 また鼻鳴らし熱中モード。俺はもう完全に下のほうが危機状態。 じーっくり血が流れ込んでて、パンツの中でちんこがもそもそと立ち上がり中。 頭と違って下半身は接触してないから何とかなってるけど、今後どうなるか分からん。母さんが動いたら一発で即バレ。 ……母さんが母親モードなのに、俺がちんこ勃起させてる場合じゃないでしょ?だから、悟られないように体勢変更ー。 「……」 「……」 いかん。母さんも俺の不自然な動きに気づいたか……?なんかすんすん音が停止中。 しかしそれどころじゃない。母さんの腰がちょっとでもこっちに近づいたら、俺のヤバい棒に接触してしまう。 ……うしょ、うしょ。ひー、ごそごそ動くのはけっこうツラし。 「……なに、してんの」 「うっ……別に」 「……そう」 今顔見てないから、母さんの質問の意図が読めん。しかしなんとか、母さんとちんこの距離を離す事には成功。うん、成功。 要は……「U」のカッコから「八」のカッコに移行……違うな。頭くっついてるから「八」じゃなくて「入」的な? そんな体勢で腰を引いてって……もう俺のケツは窓のほうの壁までくっついた。とりあえずの危機は回避の模様。 母さんも……またすんすん鼻を鳴らし始めた。よしよし。よーしよし。 |