第2章
すりガラス越しに、義祐の姿が見えている。どうやら大方服を着終えたようだ。
志穂はまだ、シャワーの水流の下にいた。限りなく恐ろしい行為の後でも、涙は湧いてこない。もちろんそれは、自分の肉体の淫らさに打ちのめされたからに他ならない。ただ一つだけ恐ろしい事は、あの足音の主の心についてだった。
義祐もまた、言いようのない心情に捕われていた。たった今抱いた女に声をかけるでもなく、ただ無言で脱衣室を出て行く。ほんの少しだけ、閉じた居間の扉を眺めてはみたが、そこに歩みを進めるでもなく、ゆっくりとした足取りで玄関から出て行った。
どうしようもなく力の入らない躰を、志穂はなんとか起き上がらせる。知らず知らずのうちに、シャワーの水流があの猥褻な汗を流し切っていた。よろよろと脱衣室に辿り着くと、バスタオルだけを躰に羽織る。
「ああ……」
鏡に、自分の姿が映る。ほんの少し前、軽やかな気分で眺めた鏡。しかしそこに映っている女の表情は、限りなく潤んだ瞳を淫らに輝かせている。
自分が世界で一番淫乱になった気がした。夫の実の父親と関係を持ってしまった肉体を、志穂は打ちのめされた気分で虚ろに眺めるしかなかった。
そのまま、重い足取りで廊下へと歩み出た。今やらなければいけない事はただひとつ。先程の足音の主に、なんとか事情を伝える事だ。
「……」
リビングの扉を開ける。誰もいない、静かな空間。ただひとつだけ、テーブルの上のコップに注がれた飲み残しの牛乳だけが、ここに今の今まで誰かがいた事を教えていた。いつもなら、自分がコップに注いであげる牛乳。それを飲み干したら、優しく頭を撫でてあげる事が、志穂の習慣であった。
きっと、いつもなら笑顔を投げ掛けてくれる母親がいない事をいぶかしんだのだろう。家中を探しまわって、バスルームに辿り着いたとしたら……。
志穂はひとつ深い溜息をついて、二階を続く階段を昇り始める。
階段は永遠に続くように思えた。これほど苦痛な歩みがあるだろうか。わたしは息子に詫びなければならない。しかし、息子が納得できるような答えを、自分自身が用意できるだろうか、志穂には何も分からなかった。
「……等、入るわね」
声が震える。室内からの返事は無い。志穂はゆっくりとノブを廻した。
「等……」
一人息子 等は、部屋の真ん中にちょこんと胡座をかいて座っている。そして、何をするでもなくぼんやりと窓の外を眺めている。
「ひ、とし……」
6歳の子供に、見せてはいけないもの。自分自身がその光景の中にいた事を思い出し、瞳に涙を溢れさせた。志穂は寂しげな等の背中に思わず縋りついた。
「等、ごめんね。ごめんね……ママ、いったいどうしたらいいか」
表情の見えない息子の頭を撫でながら、志穂は泣き続けた。言い訳など、浮かんで来るはずもない。自分でさえ、なぜ義祐に躰を許したのか分からないのだから。
「……ママ」
等が、小さな声で呟いた。
泣きじゃくる志穂の方を振り向いて、等が微笑む。
「ママ、僕今日も牛乳飲んだよ。ちゃんと飲めたよ」
「等……っ」
涙は止まらなかった。息子のいつも通りの振る舞いが、今の志穂にはたまらなく愛しく思えた。
「ごめんね、等……ごめん」
「ママ、苦しいよ」
息子が見なかったとしたら、不幸中の幸いとしか言いようが無い。義祐と交わした禁忌は、現実として志穂の心を覆い潰そうとしている。息子があの恐ろしい光景を見たとしたら、志穂は絶望の底に墜落する事になるだろう。
「……ママ、おなかすいた」
「え、ええ……ごめんね等、すぐ用意するから」
志穂は涙を拭いて、気丈に立ち上がった。過ぎた事はもういい。この息子の笑顔を眺めていられるなら、すぐにあの忌まわしい出来事も忘れられると思った。
「このオムレツ、おいしいよママ!」
「そう?ありがとう」
いつも通りの、母と息子の食卓。志穂の料理は、いつも息子や夫の幸せを誘っていた。
「パパ、今度はいつ帰ってくるの?」
「そうねえ、今度のお仕事は北海道だから少し先になるけど、ママがいるから寂しくないでしょ?」
「うん!ママがいるから、僕さみしくなんかないよ!」
オムレツのケチャップを口の周りにつけながら、等は母親に微笑んだ。
「ほらほら、こぼさないようにお片付けしなくちゃ」
「はーい」
ふざけながら食器を片付ける等を、志穂は優しい母親の瞳で見つめていた。
「あ、そうだ!」
等が、なにか思い出したようにつぶやいた。
「ん、どうしたの?」
「ママ、今日はいっしょにお風呂にはいろ、ね?」
小学1年の等は、普段は夫の祐二と一緒に入浴する。今夜のように祐二が出張で家を空けるときは、等はちゃんと一人で風呂に入っていた。
「ね、いいでしょママ?」
「え、ええもちろんよ……」
なぜ急に等がそんな事を言い出したのかが分からない。志穂は正直戸惑いを隠せなかった。
「じゃ、僕先にお風呂にいってるから」
「……」
パタパタと走って行く息子を、志穂は眺めるしかなかった。
しばらくの後、志穂はあの忌むべき行為の行われたあの場所に向かっていた。何も無かったと思い込もうとするほど、夕暮れの淫猥な光景が脳裏へ甦ってくる。脱衣室に入るとその感慨はさらに強烈に迫って来た。姿身、昼間着ていた服が入った脱衣かご、転がったままの空のシャンプーボトル……その全てが、自分が限りなく淫乱だと証明しているように思える。
服を脱ぐ手が、重く感じる。裸になるという事は、こんなに恐ろしい事だったのだ。
「ママ、はやく」
「ごめんなさい、今行くわね……」
襲いかかる違和感を振り払って、志穂は浴室のドアを開ける。そこには湯船につかり、無垢な笑顔をたたえた息子がいた。
忘れよう、と決心した。今日の自分の痴態は、たった一度の気の迷いだったのだ。義父とセックスをしてしまった事実は変えられない。しかし、これ以上事さらに思い悩む必要もないではないか。義父はあの後なにも言わなかったが、求めてくるなら、毅然と拒否すればいい。躰の寂しさは、家事やこの健やかな息子の子育てで紛らわせればいい。
「じゃあ等、頭を洗ってあげるから、ここに座りなさい」
「はーい!」
はしゃぎながら浴槽を飛び出してきた等が、ちょこんと自分専用のクマのイラスト入りバスチェアに座った。志穂はその頭に優しくゆっくりとシャワーをかける。
「シャンプーするから、目を閉じておかないと」
「うん」
息子の幼い黒髪に、シャンプーの泡がまぶされた。あまり強くするとむずがるので、志穂はしなやかな指先にだけ力をこめて息子の髪を洗っていた。
ひさびさの息子との入浴は、さきほどの決意の気持ちをさらに強くした。忘れなければ……息子や、夫のために早く忘れなければ……。
「ねえ、ママ」
「ん?どうしたの」
「……夕方、おじいちゃんとお風呂でなにしてたの?」
「……っ!」
やはり、見られていたのだ。わずか6歳の息子に。
「ねえ、ママ。おじいちゃんとなにしてたの?」
「あ、あのね……」
言葉が詰まる。あの忌むべき空間を、なんと息子に伝えられるというのだろう。
「いえに帰ってきて、ママがいなかったから僕探したんだよ。そしたら、シャワーの音が聞こえて、このおふろにおじいちゃんといっしょにいたんだ。そうだよね?」
「え、ええそうよ」
そう答えるしかなかった。
「ねえ教えてよ、ママあの時お風呂でなにしてたの?ねえねえ!」
普段はちょっとした疑問にも優しく答えてくれた母親が、今まで見た事もない顔をして戸惑っている。実際、等にはどうしてか分からないのだ。
「もしかして……いけない事?」
「……え?」
「ママ、パパに怒られるような事しちゃったの?」
「そんな……」
小学生の等には、言い出せなくて困る事態というのは怒られるような事をした時だけ、としか考えられなかった。きっとママはパパに怒られるような事をしたに違いないんだ。だから、僕に言えないんだ、と。
「だめだよママ。僕が牛乳のこしたら、いつもパパと一緒に怒るくせに」
「……」
「パパが帰ってきたら、僕いいつけよっと。『ママがお風呂でおじいちゃんと悪い事してたんだよ』って」
「待って等!」
頭の中が混乱している。目の前で無邪気に質問をぶつけて来る愛息の顔と、昼間この場所で義父と交わしてしまったセックスのシーンがぐるぐると駆け巡る。その渦に愛する夫の顔が混じった時、志穂には子供じみた言い訳しか浮かんで来なかった。
「あ、あのね等、ママとおじいちゃんは、別に悪い事をしてた訳じゃないの。ただ……ただ、お風呂で体を洗いっこしていただけなの。分かる?」
「ふーん……」
等は納得してくれただろうか。志穂にはそれが一番気がかりだった。表情からは、それは読めない。
「じゃあ、僕も洗ってくれる?」
「え、ええいいわよ」
等に今まで通りの笑顔が戻った事に、志穂は安堵した。とりあえずは、シャワーヘッドを取り、等の頭の泡を洗い流してやる。
「体、洗ってあげるからね……」
そのままスポンジにボディソープをまぶし、息子の小さな体に優しく押し付けていく。しかし気づいた。まだ手が震えている。
「うーん……」
何事か等がうなる。
「どうしたの?」
「うーん、なにかちがうなあ」
「違う、って?」
「あんまり気持ちよくならないもん」
「等……」
「あのとき、おじいちゃんすごく気持ちよさそうだったよ。ふつうに洗ってたら、気持ちよくならないみたい」
素朴な疑問を投げ掛ける息子の瞳が、志穂をさらに困惑させる。
「ママとおじいちゃんみたいに、からだをくっつけてないからかな?」
「……っ」
「ねえママ、あのときみたいにからだくっつけてみようよ。ママがここにねころがって、僕が上で」
息子の言葉に、志穂は全身を震わせた。等は、この純真無垢な瞳で、あの行為の真っ最中を覗いてしまったのだ。どうしようもなく、乱れた男女のつながりを。
「だめ……だめよ等」
「どうして?なんで?」
「ああ……っ」
混乱をさらに増した頭でどれほど考えても、息子の希望を否定する言葉が見当たるはずはなかった。
志穂は、黙って一つ唾を飲み込んだ。そしてゆっくりと深呼吸し、あらためて息子を見つめる。
「……いいわ。あの時と同じように洗ってあげる」
少し体温を増した躰を、志穂はゆっくりとバスルームの床に横たえていった。背中に感じるのは、昼間と全く同じ冷たいタイルの感触。
「これで、いい?」
呼びかける声がかすかに震える。
「うん。そんなかんじだった!」
等は嬉々とした表情となり、そのまま体を躍らせて母親の躰の上に飛び乗って来た。こんな事は、リビングでじゃれ合っている時にだってある事だ。しかし、お互い裸の状態で躰を接触させるなど、等が赤ん坊だった時以来ではないか。
志穂は必死に心の動揺を抑えようとしていた。そう、息子のちょっとした希望を、叶えてやればいいだけではないか。きっと飽きればすぐにお風呂を出てテレビゲームをしたがるに違いない。だからこそ、今は優しい顔で上の等を見つめ、母親らしいく振舞えばいい。
しかし、記憶がそれを許さなかった。上に乗っかっている息子の顔を眺めようとしたとき、天井の照明によって息子の表情がブラックアウトした。その時、昼間の情景が浮かび上がる。義父義祐が躰を奪い、自分の感覚全てを浚っていった、あの時間の情景が。
「どうしたの、ママ?」
きょとんとした顔で等が尋ねる。
「ううん……なんでもないの」
躰がまた熱くなっていく。
「ふーん、まあいいや」
母親の様子などさして気にとめるでもなく、等は自分の興味に正直に行動した。
「たしかこんなふうに……っと」
小さな体に力を込めて、等は目一杯母親の躰に擦り寄った。昼間見た母と祖父の様子通りに。
「痛っ!」
等が小さな叫びを上げる。
「ど、どうしたの?」
「おちんちんが、痛かった……」
志穂は、上に息子が乗っているつらい体勢で、そっと首を上げ下腹部のほうを覗く。
「……っ」
等が痛がったのも無理はなかった。志穂の生え揃ったアンダーヘアが、等の小さな性器をおおっている皮に絡み付いていたのだ。
「ごめんね等、痛かったでしょ?」
「うん……だから早く取って、ママ」
「ちょっと待ってね」
ゆっくりと手を伸ばして、志穂は自分の黒繊毛地帯に絡め取られた息子のささやかなペニスに触れた。
「ねえ、もう取れた?」
「ちょっと待ってね、なかなか取れなくて……」
自分のヘアが、まるで生き物のように等のペニスを離さない。急かしげに指先を動かして、早く息子を苦痛から解放してあげようとした。
「あ……っ」
「あ……っ」
志穂と等、全く同じ小さな呻き声を上げた。等は、生まれて初めて感じる奇妙な感覚に、志穂は、息子の幼い性器に表れ始めた変化に上げた声だった。
先程まで小指の先程の大きさだった小さなペニスが、今は親指ぐらいにまで膨れ上がっている。
「う、そ……」
小さな呟きが自然に出てしまった。まだ6歳の子供のペニスが、こんなに大きくなるものだとは知らなかったのだ。そして、それはまだ終わりではなかった。毒虫に刺されたように、みるみるうちに小さな幹は腫れ上がっていく。
「ママ、痛いよぉ」
等は泣き出しそうな声を上げる。生まれて初めての激しい勃起は、小学1年生の幼い少年にとっては辛い事だったのだ。
「何とかしてママ!痛い、いたい……っ!」
自分の腹の上でおちんちんをつまんでむずがる息子に、志穂は言いようのない感情にとらわれる。
「待って、等……痛いのがガマンできないのなら、そこに立ってみて」
母親が何かおまじないをしてくれるのかと思い、等は声に従いバスタブの前にゆっくりと立った。志穂もよろよろと躰を起こす。目の前には、かわいそうなくらい赤く腫れ上がった息子のペニス。
「ああ……っ」
声にならない喘ぎを口にして、志穂はそのこわばりを掴む。
「痛い……っ!」
母親の指が触れただけで、等は痛みに全身を震わせた。今にも泣き出しそうな表情だ。
「等、ゴメンね……ゴメンね……」
何に対して謝っているのか、志穂自身にも分かっていない。
自分の躰のせいで痛みを与えてしまった事か。
図らずも義父の義祐と躰を繋げてしまった事か。
それとも、これから犯す禁忌の償いのためか。
「ま、ママっ!?」
等は驚いて声を上げた。自分自身の固くなった場所を、母親の唇が包み込んだからだ。
「あむ、うむう……っ」
くぐもった声を上げ、志穂は幼い息子の肉茎をしゃぶり始めていた。痛みから開放させるのは、これが最良の策だと自然に思えた。
「ママ、汚いよ……僕もう大丈夫だから……ああ、ママぁ!」
今でもたまに等はおねしょをして、母親である志穂に叱られる事があった。『おしっこの出る場所』であるおちんちんを、なぜ母親がこんなに熱心に舐めるのか、等にはまるで理解が出来ない。
「んむう、んっ、んん……っ」
大量に唾液をまぶしながら、等のペニスを唇で愛撫する。夫とのセックスでも、経験したことのない口淫に、なぜこれほど熱心になれたのだろうか。
「ママぁ……、ダメだったら、ああんっ」
まるで女の子のような声で等が喘ぐ。しかし、志穂はその声にさえ動きを止める事はなかった。いや、むしろ唇の動きだけでなく、頭全体を使って息子のモノを舐めしゃぶる。早く、早くこの腫れを治してやらなければ……。志穂はそれだけを思っていた。
「あむ、あむう……んっ、ん……っ!」
しかし、志穂の願いは遠ざかる。母親である志穂の予想を越え、等の分身はさらに体積を増したのだ。これでは、そこから発生する痛みも倍増しているに違いない。志穂は、一度唇を等から離し、優しい視線で尋ねた。
「等……おちんちん、また痛くなっちゃった?」
等は、股間に不釣合いなものをいななかせたまましばらく黙っていたが、やがて大げさに首を振った。
「ううん。はじめより痛くなくなったみたい。ママの口の中だと」
正直な気持ちを、等は母親に語っていた。皮をかぶったままのペニスは、たしかに腫れは大きくなっていたが、母親にしゃぶってもらっていると、不思議に痛みは飛んでいったのだ。
「ねえ、汚くないの?僕のおちんちん」
等が尋ねた。
「ううん。等の体に、汚いところなんてないわ……」
「じゃあ」
「……?」
「じゃあ、さっきみたいにおちんちん、舐めて」
子供じみた仕草で、等は母親に向かい腰を突き出した。志穂の目の前に再び、真っ赤にいななくペニスが現れる。
「……」
今度は躊躇しなかった。可愛い息子が、自分に舐められる事を欲しているのだ。母親として、それを拒む事などできただろうか。
無論、普通の状態ならその行為は許されないだろう。しかし今の志穂は、愛する夫の事、夫の実父と躰を交わした事、そして息子にその現場を見られた事、全ての事を無秩序に抱え込んでいたのだ。
「うんっ、んっ……んむうっ」
唾液は、唇とペニスの間でいやらしい音を立て始める。息子のペニスは、先程よりもさらに大きくなったようだ。若干6歳の陰茎は、いったいどこまで大きくなるのだろう?
「ママ、ママぁ……なんだか、僕……ああっ」
今までとは違う声を、等が洩らし始めた。さっきまで明らかに感じていた痛みが消えていく代わりに、からだの奥から何か分からないものが吹き上がってくるのを感じた。手や足の指先に力が入らなくなるから、手は志穂の髪を掴み、足の指はもどかしそうに曲げられる。
その声の変化を、志穂は感じ取っていた。だがフェラチオなど夫相手にすらしたことがない志穂には、放出直前の先端がまるで違う生き物のように膨らむ事など、知らなかった。
「……なんか、なんかヘンだよ、ママ……ああ、ああんっ!」
ぐぐぐっ、と最大限に体積が増した。しかし志穂は構わず、首を大きく振ってその爆発に備えた。
「ああ、あああ……っ、ママ、ママぁっ!」
等の全身が、細かく痙攣する。それと同時に、生まれて始めての熱い放出が、実の母親の口内に注ぎ込まれた。
「ん、んっ、んんっ……」
その熱い奔流を、志穂は何のためらいもなく呑み下していた。フェラの経験はなく、男の精液を呑んだ事など、もちろんない。しかし、今ほとばしった苦い精液は、間違いなく自分の実の息子のものだ。ためらうどころか、志穂は少しの幸せを感じながらそのスペルマを受け入れたのだ。
「ママ……なんだかとっても、気持ちよかった」
等の言葉に、志穂はゆっくりと唇を息子の萎えたペニスから離した。
「そう、よかった。もうおちんちん、痛くないよね?」
「うん!」
志穂はたった今まで自分の口に入っていた等の陰茎を眺めた。驚愕さえ覚えた大きさの影も形もなく、すっかり元の大きさに戻っていたが、自分の唾液とほんの少しの精液にぬめっているそれは、志穂の心を淫らにときめかせた。
「ねえママ」
「……?」
「おじいちゃんにも、こんな事したの?」
「……おじいちゃんには、していないわ。こんな事してあげるのは、等にだけなの」
「ふーん……じゃあ、またしてくれる?」
さすがに、その言葉にすぐ返事など出来なかった。
「それは……っ」
「どうして?僕、すごく気持ちよかったよ。それでもいけない事なの?」
「……」
「ねえママ、いけない事だったら、絶対ひみつを守るから。パパやおじいちゃんにも言わないから。ね、またしてよぉ」
「……分かったわ。誰にも言わないって約束するなら、ママまたしてあげる。でもほんとに、誰にも内緒よ」
「うん!」
自分の鼓動が激しくなるのを、志穂は感じていた。嬉しそうに歌を歌う等の体を洗い、脱衣場に送り出したあとも、志穂の激しい鼓動が収まる事はなかった。
たった一人の寝室に、志穂は辿り着く。パジャマ姿の志穂は、もう何をするでもなくそのままベッドに倒れこんだ。
「……」
暗い天井を見つめながら、志穂は想う。今日一日で、あまりに色んな事があり過ぎた。昼間は義父義祐の逞しい肉体を無防備に受け入れ、夜は実の息子のペニスを感情のままに口で浚ってしまった。自分の躰がいかに淫らに出来ているか、志穂はその現実に打ちのめされていた。
義祐をはっきりと拒絶していれば、等に覗かれる事もなかったのだ。全ては、自分の淫乱な肉体のせいなのだ。
「ん……っ」
指先がパジャマの中に侵入し、自然にあの部分をまさぐる。バスルームでの出来事からすでに気がついていたが、そこはしっとりと潤っていた。
「ああ、あなた……志穂をゆるして……っ」
指が動き出すのを感じ、ここにはいない夫を、志穂は必死に呼んだ。だが、愛する夫を思い出そうとすればするほど、義父の猛ったペニスと等の幼く愛しいペニスが思考を蹂躙する。
「ああっ、ん……はあ、あふっ!」
人差し指が熱い洞内に侵入する。そして指の腹が、自分の淫らな突起を愛撫し始めた。
「あんっ、はんっ……あふ、うん……っ!」
指の動きはさらに大胆になった。艶を帯びた声が、夜の寝室にこだまする。もう、夫の顔など浮かんではいなかった。熱に浮かされた思考の中で、志穂は義祐に激しく突かれ、唇を息子 等に捧げていた。
「ゆるして……っ、ああっ、あんっ!志穂また……ああんっ!」
いつのまにか左手も、パジャマのボタンを外し豊かな双胸を愛撫していた。性感は全身を駆け巡り、また志穂の躰を覆おうとしている。
「ああんっ……ゆるして……あんっ、あうん……っ!」
激しい絶頂が、志穂を浚う。今までに感じたことのない自慰での、絶頂。
義父 義祐の事、愛息 等の事が、志穂の心に禁忌という小さな傷を刻み始めていた。