第6章
まだ窓の外からは、小鳥のさえずりさえ聞こえて来る。太陽もまだ真上までは遠い。しかし志穂はこの狭く暗い部屋の中で、額に汗を浮かび上がらせながら単純作業に没頭させられている。目を覚ました瞬間までは、限りなく幸福な気分に身を委ねていたはずなのに、だ。
休日の朝、部屋で響く電話の音で目が覚めた。視線を動かして時計を見れば午前7時。ふと背中に温もりを感じ躰をひねるとそこには、愛しい息子の瑞々しい寝顔があった。
「等……」
その表情を見、昨日の愛の交わりが一気に思い出され、志穂の心をいっぱいに満たした。一度その愛しい寝顔を手の平で撫で、枕元の受話器を取った。いつもなら、必ず躊躇していただろう、義祐からの電話を。
受話器の向こうで義祐は、昨日と全く同じ要求をしてきた。「あんたを今すぐ抱きたい」と。たった今までの幸福な気分は、一気に醒める。
「ああ……っ」
実の息子 等と結ばれた事で、志穂の心はさらに複雑な陰を背負ってしまった。等とのつながりから生まれる幸せを、絶対に失いたくない。しかし義祐がその事に気づけば、その幸せをいとも簡単に奪い去ってしまうだろう。
「なあ、志穂さん」
「……はい」
「電話、等に替わってくれんか」
「……!」
戸惑い躊躇する志穂の心をさらに乱すように、義祐は悪魔のように囁きかける。義父の意図を察する事が出来ない志穂は、恐怖に躰を硬直させるしかなかった。
「さあ、志穂さん。どうするね」
母親のこの上ない混乱を察したのか、傍らの等が目を覚ました。志穂はそれに気づき、他になす術が無いという風情で、受話器を渡すしかなかった。
「おじいちゃんから、電話」
「んー?」
眠たげに目を擦りながら、等は受話器を取った。志穂には、電話の内容は聞こえない。ただ時折、等が寝ぼけたままの声でうん、うんと生返事をしているだけだ。しかし、それさえも志穂には恐怖だった。
「うん……うん」
しばらくの間、その悲痛な時間が志穂を炙り続けた。電話と等、どちらを見ることも苦しくて、唇を噛みながら視線を逸らすしかなかった。
「うん、うん、わかった……ママ、おじいちゃんが替わってって」
等の言葉に、志穂は震える手で受話器を再び取った。
「志穂さん……」
「……は、はい」
「ずっと、怯えておったじゃろ」
「……っ!」
怯え慄く息子の嫁を、義父はすっかり予測していた。手の平の上で踊らされているという、そこはかとない不安。
「大丈夫、等には何も言っておらん。だが、あんたの素直さ次第では……ということだ」
不安そうに母親を見つめる等の顔さえ、昨晩あんなに熱く眺めたはずの息子の顔さえ、怖れに満たされた志穂の瞳には映る事は無かった。
唾液と肉の塊がぬちゃぬちゃと音を立てている。真夏の、湿気が多い義祐のアパート。
等にはお気に入りのアニメビデオを見せて、家を出て来た。等は志穂に向かって、何も言わなかった。しかし逆に、その無言こそが志穂には陰鬱だった。母親のいない日曜の午前。そんな事は、今まで一度も無かったからだ。
アパートのドアを開けた時、義祐は暗い部屋の真ん中に座っていた。そして、義祐は裸だった。志穂は一度、小さく吐息を洩らした。裸の義父そして、裸の勃起……。
あぐらをかいて座る義父の股間に跪き、志穂はずっと口淫を続けている。義祐は股間のモノをただ黙って指さし、志穂もまたそれに無言で従った。
「おお……おうっ」
「んんふっ……んっ、んっ、んっ……」
志穂は、抵抗しない。ただひたすら熱心に、義父の体に似合わぬ逞しい肉柱に舌を絡め唇を這わせ続けた。志穂は、もう疲れていたのだ。義父の脅迫、夫への背信、等との禁忌、そして何より、歪んだ肉欲に堕ちて行くだけの自分の爛れた躰に……。
「クククっ。志穂さん、そんなにわしのチ○ポが好きか」
蔑みの言葉が心に突き刺さる。しかし後悔や恐怖とは全く別の感傷が、志穂の内部の神経に淫らに揺さぶりかける。それが自分の熱い亀裂を潤わせている事さえも、志穂は気づいているのだ。
「そんなによくしてくれるのなら、わしもお礼をせんといかんな……」
義祐の手が、志穂のスカートに伸びる。捲り上げ、その下から現れたベージュのショーツの端から、人差し指と中指を差し入れた。皺の刻まれた二本の指が、若い肌の弾力をじっくり探りながら這い回る。
「ん……んふうっ、うんっ、んむ、んっ」
声がさらに濡れて、しかし決して唇を離そうとしない志穂を見て、義祐は指の愛撫をより深いところに向けた。汗と愛液ですでに潤っている、あの場所へ。
「んん……っ!んふ、んむ、うんっ!」
愛液が溢れ出す音が、鼻や口の端から洩れる切なげな吐息と交じり合って、狭い室内に響く。義祐の指は志穂の淫裂をしっかりと捉え、志穂の自尊心を掻き乱すように荒々しく弄くり回す。
それでもなお、志穂は義祐の怒張を離さなかった。義父の指によってもたらされる淫靡な波と共に、男のモノを淫らに貪る快感もまた、自分の躰に確かに存在しているのだ。
「ううむ……まだまだお礼が足らんかもな」
義祐はそう言って、体を急に起こした。志穂の紅い唇からこわばりが、粘った音を立てて外れる。
「あ……っ」
志穂はそれを、潤んだ瞳で追った。
「志穂さん、そうあせりなさんな……ほら」
傍らに敷いている粗末な布団の上に、義祐はその身体を横たえる。股間にはしっかりと起立したペニス。それがまるで自分に向かって嘶いているように、志穂には感じられた。鼓動が早まり、喉が乾き、躰が、どうしようもなく火照って来る。
「こうすれば互いにしっかり舐めあえるじゃろ……?あんたはわしのチ○ポを、わしはあんたのオマ○コを、な」
「……恥ずかしい、です」
夫の祐二とは、そのような体位で互いを愛撫しあったことなど無い。想像の中に浮かぶ淫らな妄想が、志穂に今日初めての躊躇をさせた。威嚇するように、義父のペニスが脈動に合わせ嘶き続けている。
「今さらなんだ、志穂さん。あんたは今の今までわしのこれを美味しそうにしゃぶってたじゃないか。さあ、来るんだ志穂さん……」
拒否できないと分かっている美しい嫁を、義祐は薄笑みを浮かべ眺める。今ある幸せを頑なに守ろうとし、淫乱な肉体を恥じ、だからこそ乱れた姿の美しい、この女を。
「ああ……」
誰に向けられたのか、何を意味していたのか。志穂は熱い温度の溜息をついた。それからすぐ、志穂の躰は力なく義父の上に崩れ落ちる。顎のあたりに触れた逞しい肉茎の先端が、たまらなく熱く感じられた。
「さあ、遠慮することはないよ志穂さん。あんたの涎でべたべたの、わしのチ○ポをな」
言葉が頭の中でこだまする。目を閉じる事さえしないまま、志穂は再び義父の猛ったこわばりに顔を埋めた。
「ん……ん、んふっ」
「そうだ、いいぞ志穂さん」
自分のペニスが魅力的な唇に包まれたのを感じ、義祐は目の前で息づく志穂のあの場所に舌を伸ばした。触れた瞬間、志穂の全身が快感に震えるのを、義祐ははっきりと見て取った。
「ん、んく……っ!うんん!」
志穂は甲高く喘いだ。しかし、義父の逞しいペニスを、決して唇から離そうとはしなかった。
粘っこく、執拗に、老いた舌は若々しくも熟れた秘裂を嬉々として舐めた。口淫に熱中していても、女の尻は痺れる感覚に淫らにくねっている。その様子があまりに猥褻で、義祐はさらに舌を志穂の奥深くまで差し入れた。
「んんむ……んあっ!お、お義父、さまっ……そんなにすると、あ……っ、舐められ、ませんっ、ああんっ!」
敏感すぎる肉体に抗えなくなったように、志穂は肉棒から唇を離し息も絶え絶えに囁きかけた。
「くっくっく……」
しかし自分の股間からは、低い笑い声しか聞こえて来なかった。すぐに淫液に濡れた舌技が再開される。志穂はしばらく目前の陰茎に荒い息を浴びせていたが、やがて諦めたように自分の唾液に輝くモノに舌を這わせ始めた。夫にもしたことの無い、尿道や陰嚢に対する入念な口淫だった。まるでそうする事が、自分にとって当然のように。
「んふ……んっ、ふ、んんっ、んふ……っ」
(……わたしは、こうする事で家族を守ってる。わたしのこの淫乱な躰をお義父さまに差し出せば、今まで祐二さんや等と作って来た幸せを、守る事ができる。だから、だから……)
今まで三度抱かれた時より、志穂の自我ははっきり残っていた。義父の愛撫は前に増して強くなっているが、志穂は心から浚われる事は無かった。夫とこの世に生み出した愛息 等と深く愛し合った事で、志穂は悲壮な覚悟を持って義父 義祐と繋がろうとしていたのだ。その覚悟さえ、粉々に砕かれてしまう事もまだ知らずに……。
「……志穂さん、ココはいい具合になったぞ。それにあんたの口は激しすぎて、わしのモノが出てしまいそうだからな」
若い男でも放出してしまいそうな長く巧みなフェラチオに耐えた義祐が、そう言いながら体を起こすそぶりを見せる。志穂はそれに従うように、躰を浮かせた。そのまま布団に尻餅をついた志穂の着衣を、義祐はゆっくりと脱がしていく。シャツ、ブラジャー、スカート、ショーツ……。脱がし際にたわわな乳房を揉んでも、美しい腰の曲線を手の平で撫でても、義祐には、若嫁がまるで抵抗していないように思えた。
細かい汗の粒を多数浮き上がらせた白い背中を、義祐は指先でつんっ、と一回だけ軽く押した。志穂はそのままうつぶせに倒れ込む。
「……志穂さん、あんたのあそこはこんな状態だ。入れて欲しいんだろう?」
薄い布団に埋まった志穂の貌が、小さく縦に動いた。
「じゃあ、どうして欲しい……?あんたが好きなようにするんだ……」
義父の抑えた声に応えるように、志穂は太腿に力を込めていく。次第にあの魅力的な尻が差し上げられ、その中心に息づく猥褻な泉も、しっかりと男に向かって濡れそぼっていた。
「そうかそうか、後ろからやられるのが好きなのか……祐二もこうやってあんたを突いてくれたのか?」
夫の事を言われ、志穂は唇を軽く噛んだ。
「祐二さんは……こんなふうに……してくれません……」
布団でくぐもった小さな声。
「そうか、祐二はしてくれんか……でもあんたは、この格好が好きなんだろう?男に向かって、尻を突き出す格好がな……」
義父の言う通りだ。夫とは経験したことの無い体位を、この義父の部屋で初めて貫かれた恥ずかしい体位を、自分は無意識のうちに求めてしまったのだ。心の中でどんなに気丈でいようとしても、躰が勝手に淫らな選択をしてしまう。それはまさに、女の本能だった。
「それじゃあ、遠慮なく突いてやろうかの……」
義祐の手の平が、ぺちんっと志穂の豊かな尻を張った。少し強めの痛みが、赤い跡と共に広がる。しかしその痛みにさえ、志穂は無言だった。
「あう……っ」
初めて見たあの日、あまりの存在感に失神してしまったあの逞しいペニスが、熱く滾った淫裂に先端をめり込ませて来た。
「ほうら……」
「あ、ふうっ!」
硬く張ったえらが、緩んだ肉の入り口をしっかりと擦っていく。
「おお、熱いぞ志穂さん……」
「ふう、うん……っ!」
肉の凹凸をゴツゴツと浮かび上がらせた長い幹が、柔肉の壁を突進していく。
「くっくっく、そんなに締めないでくれ志穂さん……」
「くふうっ、あ、あは……んっ!」
しっかり根元まで侵入した怒張が、ぴったりと食い締める粘膜を伝って鼓動を一致させる。
挿入されただけで、志穂は性の電流を全身に駆け巡らせた。老練な指や舌の攻撃にずっと曝されたこの感じやすい躰は、心にどんな決意を持っていても、快感を抑える事ができない。
「あ……はあっ、ふうん……んっ!」
志穂が喉奥から、艶を帯びた吐息を発する。
「くうっ……志穂さん、もう気をやったのか。嬉しそうに、わしのチ○ポをキュウキュウと締め付けてきたぞ」
「……」
返事は無かった。しかし、例え志穂が語らなくても、義祐の言う通り志穂の膣内はペニスを、歓喜をもって迎え入れたのだ。小さな絶頂の、それが確かな返答だった。
「いいぞ、志穂さん……さあ、たっぷり可愛がってやろう……そらっ」
義祐の力強い躍動が開始された。60歳の男が、26歳の女を、激しく突き上げ始めた。
「ひ……っ、あ、あ、あんっ!」
ズンっ、ズンっ、と杭がめり込むたび、志穂の唇は甲高い声を発し続ける。
ふくよかな尻が男の鋭い抉りに歪み、美しさを際立たせている。
汗の粒がしっとりと浮き上がり、白い素肌を猥褻に輝かせている。
愛する夫や息子のため、凛々しく清楚であろうとすればするほど、淫らな本能に犯される肉体は相反して狂おしく燃え上がってしまう。
「そうら、そうらっ!……志穂さん、もっともっと声を上げんか。そうらっ!」
「あう、あう……んっ!ひ、いいっ!」
(わたしは、あんっ……祐二さんや、等のために……っ、うんっ、躰を、んんっ、投げ出して、いる、のよっ……わたしは、墜ちてなんか、あっ、い、ない……っ!)
義父に抱かれ、禁忌の悦びに浚われそうになる自分を、志穂は唯一の拠り所に頼りながら踏み止まらせていた。まだ志穂には、今ここで淫らに振舞えばまた夫や息子との愛を確認する時間が与えられる、という微かな希望があった。しかしそれは、あまりに儚過ぎる希望だった。
「どうだ志穂さん……前よりもずっとよくなったか?」
「ひ、あっ……あん、くう、ん……っ、お義父さ、ま……あっ、い、あ、いっ……んっ」
志穂は溢れ出しそうになった言葉を噛み殺した。
「ふうむ、まだガマンしているみたいじゃな……」
あと一歩のところで必死に耐える若い美女を、義祐は冷静に観察していた。確かに今まで犯した時より、志穂は激しく喘いでいる。躰も淫猥に振るわれている。しかし義祐はやはり、若く美しく、清楚で麗しい息子の嫁が、心の底から乱れ墜ちていく姿を見たいのだ。
「あ、くう……っ!」
義祐は突然、志穂の背中を抱え後ろに倒れこんだ。志穂は小さく唸る。自分の体重で挿入感が何倍にも感じられる、騎乗の体位。
「ほら志穂さん、こっちを向け……わしの方をを向いて、そのおっぱいや尻を一所懸命振ってみろ……」
「……は、い……」
そろそろと腰を動かしながら、志穂は仰向けの義父の中心で回転する。躰の奥底まで打ち込まれた義父の熱いペニスを、自分の爛れた肉襞がジュクジュクと締め上げているのが、はっきりと感じられる。
自分のペニスの上で震える志穂の姿。義祐はその肉体を、これまでよりずっと乱れさせたかった。自らのテクニックももちろんだが、志穂をさらに美しく淫らにさせるには、何かが足りないように思える。
「そら動け。あんたのその大きな尻をいやらしく動かすんじゃ」
「……っ」
志穂は、一つだけ小さく息を呑み、素直にそれに従った。下から眺める義祐には、志穂が遠慮がちに腰を、そして尻を揺らめかせるのが見える。淫猥で素晴らしい、光景。
「くう……っ、うふ、んんっ、ん……っ」
男の上に乗って、進んで腰を振る。義祐に命じられなければ、おそらく一生経験しなかったであろう、恥ずかしい体位。
「よおし、その調子じゃ。あんたのオマ○コがわしのチ○ポを咥え込んでるのが、よーく見えるぞ……」
「ああ、恥ずかしい……」
辱めの言葉が、心を痺れさせる。しかし、腰の動きは止まらなかった。
大きく振れば、男の幹は柔洞をしっかりと満たし尽くす。
巧みにくねらせれば、男の硬く張ったえらは性感壁を責め上げる。
淫乱な肉体を持った女が感じる、それが現実だった。
「おうっ……そんなにされては、すぐに出てしまうぞ志穂さん……」
「ん、ふっ、あっ……お義父、さま……あ、あんっ!」
志穂は大きな声を上げながら腰を動かし続けた。早く放出させれば、早く自宅に帰る事が出来る。そんな願いも微かにあった。数秒後に聞こえる、その音さえ鳴らなければ……。
「おお……?」
「……っ」
二人の躰がくねり合うその粗末な布団の枕元で、電話のベルが鳴り響く。無論義祐は、電話に出て行為を中断する気など無かったし、志穂もまた義父がベルをやり過ごすだろうと思っていた。
(……ああっ!)
その事実に先に気づいたのは、志穂の方だった。故郷や近所にも知り合いのいない義祐の、この部屋の電話ベルが鳴り響いてる。この部屋の電話番号を知っているのが、誰であるかという事を。
自宅のアドレス帳に書き留めているから、息子の等も電話する事が可能だ。しかし、等はまだ電話をかけることに慣れていない。等で無いとすれば、電話の向こうの相手は、この世にたった一人しかいないのだ。だからこそ志穂は恐怖におののき、その瞬間思わず腰の揺らめきを止めてしまった。
(お願い……早く、早く鳴り止んで……っ!)
固く瞳を閉じ、志穂はそれだけを願い続けた。黒電話のベルが、心に神経質に響き、その恐怖は永遠に続くように思える。
チンっ、と音が止んだ時、志穂は安堵の息を洩らした。しかし、すぐにその安堵はかき消される。
「……もしもし」
義父の声。瞬間、志穂の開いた瞳に映ったものは、耳元に受話器を宛がいながらこちらに冷たい笑みを向けている義祐の姿だった。義父も、電話の相手が誰だか気づいたのだ。
「おう、祐二か。久しぶりだな……ああ、志穂さんはここにいるよ」
絶望の淵にいる若嫁を眺めながら、義祐はその若嫁の夫と話を始めた。実の息子と電話で話しながら、その美しい妻を抱く。この世にこれほど愉快な情景があるだろうか。義祐はそれが面白くてたまらなかった。
「ああ……家にいなかったからこっちにかけたわけだな……ああ、ああ……もちろんだ。志穂さんには、いろいろ世話してもらってるぞ」
そういうと義祐はただ一度だけ、嫁の中に入っているペニスをぐっ、と突き動かした。
「あ、う……っ!」
洩れた自分の声に志穂は驚き、すぐに固く唇を閉じた。
にやけた顔で、耐える志穂を眺めている義祐。この上ない加虐心が、老人の肉体に湧き上がって来る。これでまた、この女を心から狂わせる事が出来そうだ……。
「うん……ああ、じゃあ志穂さんに換わるよ。ほら、志穂さん」
美しい裸体を腰の上ですくませている美淫女に、義祐は受話器を差し出す。視線で訴えかけながら躊躇する姿を見ているだけでゾクゾクしてくる。
「……」
受け取る他選択肢の無い志穂が、おずおずと受話器を受け取った瞬間、義祐は強烈な突きを若嫁に繰り出した。
「ん、くう……っ!」
まだ口元に届いていなかった受話器は、その呻きを拾わずに済んだ。しかし、志穂はそんな恐慌の中にいても、潤んだ目で義父に哀願する他にどうする事も出来ない。
「……もしもし」
『ああ、志穂か?久しぶりだね』
祐二の声が、志穂の心に染み渡る。もう4日間見ていない優しい笑顔が、頭の中に浮かぶ。このたった4日間のうちに、志穂の生活は余りに淫らに歪んでしまった。
「ええ……祐二さんは、元気……?」
いつもより荒い息遣いが夫に悟られないだろうか。
『ああ、元気だよ。ごめんね、ずいぶん長く家を空けちゃって。水曜日の急な出張には、僕自身も参ってるんだけどね』
水曜日。夫の出張が急に決まった日。バスルームで、夫の実父に犯されたあの日……。
「……本当に、いつもいつも仲のいい夫婦じゃなあ」
皮肉をたっぷり込めた冷笑を浮かべ、義祐が大きな声で言った。もちろん、電話の向こうの息子に聞こえるように。そしてその言葉を合図に、義祐は下からの突き上げを再開する。志穂は、祐二と会話しながらどんなふうに乱れてくれるだろうか。
「っ!」
白く美しい首が、強烈な感覚に反った。連続する腰の躍動に、言葉が途切れてしまう。
『ん……どうした、志穂?』
「……う、ううん……何でも、何でもないわ……んっ、く……っ」
『そうか。まだいつかって決められないけど、あと少ししたらカタがつくと思うんだ。だからもう少し、待っていてくれよ』
「うんっ……祐二さん、お、お仕事だから……あっ、し、仕方ない、わ……っ」
愛する夫を謀りながら、禁じられた愉悦に躰を炙られる志穂。最大限に緊張している躰でも、男の巧みな抽送に反応して、そのモノを熱く絞り上げてしまう。
『ありがとう……そう言ってくれると、僕も安心して仕事に打ち込めるよ』
「ん……っ、いいの……志穂、待ってます……んっ、だから、あっ……お、お仕事、がんばって……」
健気な言葉と、淫乱な肉体。挿入時よりずっと強く食い締めてくる柔肉に酔いながら、義祐は両手を伸ばした。たわわに揺れる志穂の胸をむんずと掴み、力一杯揉みしだく。女の躰は、肉柱と腕にしっかりと捕らえられ、ゆっさゆっさと揺さぶられるしかなかった。
『あ、それはいいけど……志穂、きみはこんなに早くから親父の部屋に行ってるのかい?』
夫の何気ない言葉が、志穂の心に突き刺さる。
「え、ええ……お義父さま、のっ……お食事とか、あっ、おそ、うじ、とか……んっ」
「……身体の世話もやってもらってるぞ」
義祐が、今度は志穂にだけ聞こえるように言う。自らの淫乱さに投げ掛けられた侮蔑の言葉さえ、熟れた膣肉を緊張させるきっかけとなってしまう。
『まあ、それもいいけど……さっき家の方に電話したら、等が淋しそうにしていたからね』
「……っ」
今の志穂にとって、何よりも重い言葉だった。
『親父を大切にしてくれるのは嬉しいけど、等もまだ母親が必要な時期だからね。僕の仕事が忙しいのが一番の原因だけど……』
夫が申し訳無さそうな声で囁く。
(祐二さん……あなたは悪くないの……すべて、すべて……淫乱なわたしが、悪いの……っ)
祐二や等を裏切っているという感情が、男のこわばりをしっかりと呑み込んでいる自分の肉体をさらに熱く痺れさせていく。いけないと分かっていても、いやいけないと分かっているからこそ、その躰は義父との禁じられた繋がりに昂まっていくのだ。
「くっくっく……祐二と話し始めてから、あんたの中はキュウキュウ締め付けてきたぞ……」
右耳に愛する夫の声。左耳には義父の抑え目の声。
『……この仕事が片付いたら、会社に長い休暇を貰うつもりだから、その時は等と3人でゆっくりと旅行でもしようね』
「あっ、く……う、うんっ……はやく、その日が、来ると……いいね……っ」
『そうだね……どうしたの、志穂?何だか声がおかしいみたいだけど』
途切れ途切れの口調に、夫はついに気がついた。
「……っ!」
息を呑む志穂。
『すごく調子が悪そうに聞こえるよ。風邪でもひいたんじゃないか?』
「う、ううん……っ、大丈、夫……ちょっと、ノドの調子が、あっ、悪い、み、たい……」
わざとらしく咳の真似をする志穂を眺め、義父はニヤニヤと笑っている。
「全く……今ごろ志穂さんの様子に気づいたか。我が息子ながら鈍い奴だ」
その言葉には、はっきりと息子を馬鹿にする響きが含まれていた。志穂は思う。義祐は変わってしまった。田舎から出て来た時は、連れ合いを失い抜け殻のようになって、ただ一人の肉親である祐二を頼り切っていたのに。何が、無口だが優しい義父を変えてしまったのだろう?
そして、志穂は悦びに浮かされる思考の中で気づく。義父を惑わせ、悪魔のように変えたのは、誰あろう自分自身なのだ。淫乱な躰を持て余し、清楚な態度で押し隠して来た、この自分なのだ。
『夏風邪はこじらせると大変だよ。無理しないで、ゆっくり休むといいよ。僕が出張から帰った時、君の笑顔が見られないとつらいからね……』
激しく全身を揺さぶられながら、志穂は夫に心の中で何度も謝罪する。初めて出会った時から、ずっと祐二は優しかった。なのに自分はその優しい夫を裏切り、あろうことかその夫の実父と躰を熱く交わしている。逞しくてたまらないペニスに、ずっと自らの尻を振るい続けている。
「ありがとう、祐二、さん……っ、ん、んくっ……ねえ、祐二さん……祐二、さ、んっ」
愉悦にかき消されてしまいそうな意識を振り絞って、志穂は夫に問い掛ける。
『ん?……どうしたんだい、志穂?』
「ゆ、祐二、さん……わたしのこと、んっ……あ、あい……愛し、てる……?」
濡れた吐息を喉奥で押し殺しながら、志穂は受話器に囁きかける。
『おいおい。突然何を……弱ったな』
シャイな祐二が、電話の向こうで照れているのが、志穂には想像できる。
「お、お願い、答え、て、祐二さん……っ、わたしのこと、愛、してる……っ?」
官能の炎に煽られ、自分の躰がどんどん狂い墜ちていく。腰は今までにないくらい大きくスライドし、熱く滾った媚肉は男のモノを搾り潰すかの如く締め上げている。それを全て実感しているからこそ、志穂は夫のただ一言に縋りたかったのだ。
「くっ……何を甘っちょろい事を」
義父が憎々しげに呟いた言葉は、志穂には届かなかった。
『うーん……親父もそこにいるんだろ。うーん……勘弁してくれないか?』
「だ、ダメ……っ!言って、祐二さんっ……わたしのこと、あんっ……愛してるって……言って、お、お願いっ!」
『……』
少しの沈黙さえ、志穂にはナイフのように痛い。
『……愛してるよ、志穂』
「……っ!」
『愛してる……世界中の誰よりも、君を愛してるよ』
心の中が一気に熱くなる。
「祐二さん……う、嬉しい……っ!」
『まいったな……困らせないでくれよ、志穂』
「わたし、もっ……愛してるっ……祐二さん、愛してる……っ!」
どんなの淫らに肉体をくねらせていても、これだけは譲れなかった。夫が実際に見ればショックで死んでしまうようなこの光景の中にいても、志穂は確かに祐二を心から愛していた。
「……くそっ!」
この上なく淫らで美しい女を抱いているのは自分であるはずなのに、愛する二人の会話に立ち入る隙もない。義祐にはそれが腹立たしくて仕方なかった。祐二の父としての嫉妬ではない。それはもう、男としての激しい嫉妬だった。
「……あうっ!」
義祐が急に身体を起こした。力のこもっていなかった志穂の身体はされるがままに後ろに倒された。
は素早い動きで白く伸びた両脚を抱えると、義祐は埋まったままの分身をさらにグッと力を込めて若嫁の奥に押し込んだ。
「ん、くうっ!」
瞬間、志穂はまたイってしまった。その声を抑える余裕は、志穂には無かった。
『おい、どうしたんだい志穂?』
「んっ……な、何でも、ないっ……あ、あ、あんっ!」
両脚はどんどん差し上げられて、淫らな接合部が志穂の眼前に晒される。
「……祐二に言ってやれ。『わたしはお義父さまのチ○ポをオマ○コに呑み込んでいます』って」
義祐はわざと見せつけるように、太いペニスをゆっくりゆっくり出し入れさせた。
「ほら言え。『お義父さまのチ○ポがオマ○コに出たり入ったりしているのを、見ながらよがっています』ってな」
自分の目で見ているからこそ、志穂には義祐のペニスがどんな形で自分の淫裂に突き刺さっているのかがはっきりと分かる。志穂の羞恥は極致に達する。それは義祐にとって望んだ通りの反応だった。
『志穂、大丈夫かい?……すごく息が荒いよ』
息子が何を言っていようが、義祐はさらに激しく腰を押し入れた。志穂の白い肌が突き破れると思えるほど、強く。
愛する夫が掛け続けてくれている優しい声を、志穂は受話器を離す事で遠ざけてしまった。志穂にはもう、義父の巧みな躍動に声を抑える自信など無かったのだ。両手で送話口を強く押さえ、躰全体から溢れ出ようとする悦びの嗚咽を夫から遮るしかなかった。
「あ、あう……っ、ひっ、あっ、あふうっ!」
結合部から溢れ出た淫液は、男と女の同調した躍動により、ジュポジュポと余りにいやらしい音を発生させている。淫液はその場所からだらしなく垂れ、志穂のへそやウエストラインを伝って布団にまで滴り落ちていた。
「だ、駄目……っ、そんなに、されるとっ、ああんっ……く、ふあっ!」
嫉妬に燃えた義祐の攻撃に、志穂の性感は一気に高められた。送話口を塞いでいる手に込めた強い力さえ、すぐに頼りなく抜けていく。
「ひいっ、あっ、だ、めぇ……おと、おとうさ、まぁ……あんっ、大き、い……いっ!」
大きく揺さぶられる美しい裸体。魅力的な肉付きの尻も、艶めかしい曲線を湛えた腰も、男たちを誘惑して止まない豊かな胸も、60歳の老境を悟るべき男によって、されるがままに狂わされていた。
「……志穂、志穂っ……あんたは、わしの女だ……」
ぐっと、息子の妻のよがり狂う横顔に自分の顔を近づけ、義祐はその耳に囁きかける。迫り来るオーガズムの予感に浮かされる志穂には、その声が鈍い衝撃となって脳に直接響き渡った。
「あ、あっ……うんっ、ううん……っ」
志穂は、ほんの少しの間だけ躊躇する。しかし、守るべき家庭を繋ぎ止める唯一の手段である、両手で握った受話器にわずかな意識を残し、やがて本能がまさった。すぐ横にある義祐の横顔に潤み切った瞳を投げ掛け、そして無言で何度も肯いた。
「そうじゃ……あ、あんたはっ……わしの、わしだけの、女じゃ……っ!」
義祐もまた、絶頂を悟っていた。極限まで女を狂わせるべく、体力の全てを出し切るつもりで腰を振るった。
志穂が握っている必死に塞ぎ続けている受話器にも気がついていた。しかし、あえてそれを跳ね除けることは無かった。義祐は、浮かんで来た妄想に身を任せているのだ。
祐二は、愛する妻の異変に、いまだ電話に呼びかけ続けているだろう。しかし志穂は、愛する夫の声を遮り、隠すべき嬌声をこの狭い部屋にこだまさせているのだ。すぐそばで志穂を犯しているのに、まるで気づかない哀れな息子……。
「あ、あ、あうう……っ、お義父さまっ……し、志穂……だめ、もうっ……いっ、イキ、そう……っ!」
「ああ、さあイケっ……わしのチ○ポを、おうっ、突っ込まれて……祐二の前で、イケ、イケっ!」
「ひ、ひいっ、い……い、イキます……あんっ、祐二、さ、んっ……許してぇ……淫らな、志穂、をっ……ゆ、ゆるし、てぇ……っ」
頭の中が真っ白になっていく。攻め寄せる快感の波に、受話器から左手が外れる。右の手の平だけが、送話口を塞いでいた。
「く、ううっ、わしも、い、いく……おおうっ!し、志穂ぉ……わしの、わしのお、女ぁっ!」
「んっ、ふ、んん……っ、ああ、ダメぇ……ゆ、祐二、さんっ……志穂、し、ほっ……い、イクうっ!」
その左手を除いた全身が、義父の迸りを感じたと同時に絶頂した。何度も何度も激しく膣奥を叩くエキスに心奪われ、身体を預けてきた義父の唇を捕らえ、進んで吸い、熱く舌を絡ませた。
やがて、上に乗っていた義祐が隣に崩れ落ちた。荒い息を吐き続ける志穂は、まだ絶頂の余韻に霞む思考の中、ゆっくりとした動作で受話器を耳元に近づけた。夫の問い掛けに答える自信など、全く無いはずなのに。
「……祐二、さん……」
『ツー、ツー、ツー、ツー……』
夫は、すでに電話を切っていた。
志穂の瞳に、みるみる涙が溢れて来る。どうしようもなく、惨めだった。
しかしそんな感慨は長く続かなかった。涙で濡れた志穂の瞳に、再びのしかかって来る義父の姿が映ったからだ。
志穂は、受話器を置く。