第8章後半
衆人環視の中で志穂を抱く。後ろから貫く。志穂から躰を振るわせる。もう義祐はそんな事では満足していない。一度、ちらっと右手の腕時計を眺める。まだだ。あの時間までに、志穂をまだまだ辱めておかなければならない。
「志穂さん……一緒の場所でばかり突いていては、わしも面白くない。なあ、少し協力してくれんか……?」
「……っ?」
志穂の返答を聞くより早く、義祐は次の責めを開始した。激しい躍動を止めぬまま、自分の膝で志穂の生膝を何度も強くこづく。
「分かるじゃろ志穂さん。あんたは、自分からケツを振るような獣……獣なら獣らしく、四つん這いのまま、わしのを入れたまま歩いてみるんじゃ……なあ志穂さん」
言葉を続けながら、膝への突きをやめない義父。志穂の美しい両脚は、その圧力に屈するしかなかった。
「それ歩け志穂さん……ケツを振りながら、畜生のようにぶざまに歩け、そらっ!」
ゆるゆると一歩一歩、四つん這いの美身で芝生の上を進む志穂。膣内に深く打ち込まれた熱棒が、獣のように振舞えと命令する。先程まで縋っていた立ち木はすでに義父の横にあり、濡れた喘ぎを続ける志穂の目の前には、少し背の高い茂みが迫っていた。歪んだ思考に支配されようとしていた志穂には、その茂みが持つ意味が、いまだ分からずにいた。
「あ、あひ……んっ、ん。あ、ひ、ひど、い……っ!」
拒否の呻きは、足が止まるまで続いた。移動中の膣内は固いこわばりの先端で上、下、横、そして思わぬ場所を擦り上げられ、切ない喘ぎを絶えず洩らしてしまった。
「志穂さん、まったくあんたは淫乱じゃのう。こんな恥ずかしい事やらせておるのに、あそこはわしのをどんどん食い締めてくるぞ……」
「あ、ああっ……そんなこと、言わない、でぇっ」
自分の猥褻な変わりようを認めたくない志穂。しかし、義祐が再び激しい抽送を開始すると、志穂の肉体は当然のように鋭く反応し、美尻は大きく振られ、粘膜は牡の生殖器を絶対に離さないが如く強く締め上げる。
「すげえ……」
「……っ!」
3メートルほど離れた茂みから、今はっきりとした呟きが聞こえた。もしかしたら自分よりも若いかもしれない、男の声。自分を取り囲み覗く人間達の気配は確かに感じていた。しかし、現実に自分の痴態に浴びせられた声に志穂は、荒れ狂う心中をさらに波立たせた。
「ほら志穂さん、もっとケツを振れ……みんなあんたを見ておるぞ。あんたを見て、チ○ポを固くしておるはずじゃ……」
「ひ、いや……っ、恥ずかしい……あんっ!」
志穂の更なる困惑を察し、義祐はさらに腰を巧みに繰り出して来る。義父が自分をもっと辱めようとしているのに気づく志穂。しかし、熱い体温を宿した淫らなヒップは止まらない、止められない。
「ひいっ、あ、あう……そんなに、つ、んっ、強く、しない、でぇ……っ」
義父のあまりに強い突きに、志穂の美貌は目の前の背の高い生垣に当たる。鼻先に緑の葉が痛い。そして、志穂は初めて気がついた。その茂った葉の向こうに、光が見える。光は、けして弱々しくない。だからこそ、志穂は愕然とした。
その光は、志穂がいつも何気なく眺めている、駅前繁華街の明かりだった。駅入り口すぐ隣の花屋。宝くじ売り場。街灯に照らされた美しい模様のタイル歩道。少女をモデルにした美しい銅像。家路を急ぐサラリーマンやOL達。全ての光景が、志穂にははっきりと見て取れた。
「……っ!」
慌てて唇を固くつぐむ。激しい愉悦に踊らされて、今まで耐える事無くあらぬ声を巻き散らし続けていた。しかし現実は、志穂の肉体を更に恥辱に塗れさせた。
駅前の目抜き通り、人通りの多い歩道、そのすぐ側にある、生垣。志穂はその生垣に顔を押し付けられ、喘ぎを発し続けていたのだ。
「どうした志穂さん、もう泣かんのか……?まだまだ突きが足りんかのう。くっくっ……」「ん、んふっ!」
閉じた唇から、思わず洩れる呻き。60を過ぎた老人の肉体からは想像もつかない若々しい躍動が、志穂の思考を千々に掻き乱していく。声は抑えられる。しかし、声を抑えた分だけ、高められた躰の中に渦巻く悦楽は、細胞全てを蕩かして行く。
「んく、ん、ん、ひ……っ」
無論義祐は、志穂が声を抑え始めた事に気づいている。そしてその事は、新たなる嬲りの引き金でもあった。
「志穂さん、さっきまでの声は何処にいった?もしかして、恥ずかしいのか……?わしのモノを食い締め、ぐちゅぐちゅ尻を振るあんたが、声を出すのが恥ずかしいらしい。こりゃ傑作だ!」
「んうっ、ん、ん、くひ、い……っ」
「ふうむ……やっぱり恥ずかしいと見える。ようし、それなら望みを叶えてやろう……」
「……っ?」
志穂は次の瞬間、義祐の恐ろしい声を聞く。
「戸田さん、この女は口を塞いで欲しいらしいぞ。大変申し訳ないが、手伝ってはくれんか……?」
「……おう!」
声と同時に、ガサガサと葉の擦れ合う音がした。恐ろしくて振り返る事が出来ない。しかし確かに、獣の体勢でつながっている自分と義父に、何者かが近づいて来る。
「ほう……近くで見ると本当にべっぴんさんだな。これは弄り甲斐がありそうだ……」
その声は、志穂のすぐ傍で聞こえた。声と同時に、汗と埃が混じったきつい匂いが鼻についた。
「さあ戸田さん、このわがままで淫乱な女の口を塞いでやってくれ。くくくっ……」
「言われんでも」
志穂は勇気を振り絞って、恐怖に彩られた瞳を声のする方に向けた。そこには、淡い街灯の逆光に照らされる黒い男の、影。
「なんだ……そんなに物欲しいのか、この女は」
黒い影は、そう志穂に言った。影は続けて、素早くズボンのベルトをカチャカチャと外し始めた。
「や、やめ、て……っ」
志穂は後ろから突かれながら、傍に立つ男に弱々しく囁いた。
「あんた、本気で言ってるのかい?その格好でみんなの前でこんな爺さんにやられていながら、他の男のモノを口に突っ込まれるのは嫌だなんて、誰も信用しないぜ……」
嘲笑が終わると、男は股間のこわばりをズボンの中から取り出した。
「ほう、さすが戸田さんじゃ。大したモノを持ってるな……」
「ふふっ、確かにここ一年ぐらい女を抱いてねぇし、ましてや俺はあんたよりずっと若いんだ。あんたのチ○ポに負けるわけにゃいかねえよ……」
男は怒張を誇示しながら、志穂の顔に近づいて来る。確かに、男の声は義祐よりずっと若い。埃まみれの衣服を見れば、ホームレスなのは間違いない。が、声は40代、もしかしたら30代かも知れないほどの張りだ。
「おい志穂さん、戸田さんに顔を向けてやらんか。全く、一から十まで言わんと動かんのかのう……そりゃ、そりゃ!」
「あ、くうっ!」
義祐は膣内のペニスの向きを強引に変え、志穂の粘膜をぐぐっと擦り上げた。余りの衝撃に、志穂は大きく喉を反らした。
「よっしゃ。こっち向け、このアマ」
突然、志穂の顔は男の両手に強く掴まれた。
「ひ、いっ……」
目の前に、ビクビクと鼓動に合わせて震える肉柱があった。
臭い。様々な生臭い匂いが複雑に交じり合った、その香り。しかし、臭いのに、その恐ろしいほどの牡臭は、志穂の粘膜を本能的に濡らしていく。
義祐は腰を巧みに動かして、志穂の躰を戸田の方に向けてやった。しかし生垣との距離は絶対に変えなかった。それを変えてしまえば、義祐が待ち望む最後の仕掛けが台無しになってしまう。志穂は絶対に薄い生垣のそばに、そして駅前が見渡せる場所にいなければならないのだ。
「さあ舐めてくれ……さっきこの爺さんにやって見せたように、べろべろと舌を出して俺のを尺八してくれ……さあ」
「い、や……いやっ!」
義父の激しい躍動に霞む思考の中から、微かに残った常識が拒否の言葉を吐き出させた。無意識に腰を振っていても、肉棒を潤んだ膣壁で絞り上げていても、二人の男に同時に抱かれるなど、志穂には受け入れられなかった。
「ふん、今さら気取ってやがるぜ……ま、無理矢理しゃぶらせるのもいいもんだがな」
男は、志穂の美貌に汚らしい手を近づけた。そして突然、怒張から顔を背けようとする志穂の筋通った鼻を強い力で摘み上げた。
「ほら、口開けろ……俺のこれを、すぐにぶち込んで思う存分しゃぶらせてやる……!」
固く閉じた唇が、小刻みに震える。その形いい唇に、戸田という男は生臭いペニスを遠慮なく押し付け、志穂の紅唇に粘つく先洩れ汁の跡を残していく。
「ん、んん……っ!」
「おい女……息苦しいんだろ?さあ口開けろよ。ほら」
呼吸を止めるのは、限界がある。志穂はその現実を体験で悟ることになった。
「……んあっ!」
「よし、そりゃ!」
「あ、ぐうっ!」
労わりも遠慮もないまま、戸田の肉柱が志穂の口内に侵入して来る。
「ん、んふ、んぐ……っ!」
「おっ、いいぞ……爺さん、こりゃ見事に仕立てたもんだな」
「まあな……戸田さん、あんたがしゃぶらせ始めた途端、また志穂さんはわしのを嬉しそうに締め上げて来たよ。やっぱり志穂さんは、一人より二人の男のほうがいいような淫乱女だったわけだ……」
「そうに違いねえな。ハハハっ!」
(……違うっ!わたしは、そんな淫らな女じゃない……っ!)
自分はそうではないと思えば思うほど、それに逆らい激しく感応し続ける肉体と本能は志穂の自我を奥底から浚い取ろうとしている。現に、最後の最後まで戸田の怒張を拒み続けた美しき唇は、その汚らしい怒張を混乱する舌で舐め続けている。レイプされた時からずっと禁忌の罪を感じ続けている義父義祐の陰茎を、まるで根元からもぎ取るように締め上げ、腰を振り立てている。
「ん、んあ、んふっ……んちゅ、ん、んふうっ!」
「へへっ、だいぶ感じを出してきたじゃないか。舌がベロベロ俺の汚ねえチ○ポを堪らねえって感じでしゃぶってるぜ……」
「ああその通り……もっとやってあげるがいい。大勢に見られ、オマ○コと口に男を迎え入れ、腰をくねくね振って悦んでいる……ほら志穂さん、もっと尻を振らんか!そんなんじゃわしは出さんし、皆も満足してくれんぞ……っ!」
男の言葉嬲りが、志穂の歪んだ悦びを更に昂ぶらせていく。
「んくっ、んふっ……ん、ちゅ……ん、んふ、うんっ!」
自分の自我が男達の逞しいモノによって崩れ去るのを、志穂は感じていた。口に突き入れられた戸田の臭いペニス、肉洞に侵入している義祐の熱く巧みなペニス。志穂は自分の肉体が一本の硬く熱い鉄棒で突き通されている錯覚さえ覚えた。
少し開いた潤んだ瞳が、周囲の状況を眺めた。先程感嘆の声が聞こえた近くの茂みでは、キャップを後ろに被った若者が目を輝かせてこっちを見ていた。その後ろの茂みでも、汚れたコートを纏った中年男が口をだらしなく開けて卑猥な視線をこちらに投げ掛けている。逆を見れば、同じようなホームレス風の男が、こちらを覗きながら体を小刻みに揺らしている。きっと、自分のペニスをしごき上げているのだろう。しかし普通なら気が狂ってしまいそうなこの異常な状況を、今の志穂は受け入れていた。いや、異常だからこそ押し隠していた真の淫性が解き放たれ、淫らに振舞えたのかも知れない。無論それを確かめ認め得るのは、志穂本人しかいないのだ。
「それ志穂さんっ、もっと食い締めろ、もっと尻を触れ……あんたは淫乱女だ。皆に見られながら、男のモノを日本も食っておる……そら、振れ、狂え、泣けっ!」
「ん、む、うん……んふうっ!」
志穂のくぐもった喘ぎを聞きながら、義祐は一度腕時計を見た。もうすぐだ。
「……なあ爺さん、この女の服を脱がしていいか?俺は女のおっぱいを弄くりながら尺八させるのが好きなんだ」
「くくくっ、まあ、志穂さんが嫌がらんのならいいぞ……」
義祐はもう気づいていた。志穂は、もう二人の嘲りを聞けるほどの余裕すら残っていなかったのだ。腰と口、舌は男達の会話など耳に届かないかのように淫らに躍動し続けている。
「ま、何も言わんからいいんだろう。じゃああんた、可哀相だが一旦抜かしてもらうぜ……」
戸田という男のペニスは、幾分か振りに志穂の口内から抜け出た。しかしその猛ったペニスを、志穂はまるで逃したくないように、ピンクの舌を伸ばして追った。自分が娼婦のように振舞っているなどとは、本能でフェラチオを行っていた志穂は気づかないであろう。
「さあさあ志穂さんとやら。そのうざってえおべべを脱いじまおうぜ……」
戸田という男が、志穂の上半身を覆っていたピンクのサマータイトセーターの裾をぐっと掴んだ。
「あ、は……っ」
志穂の歪み上ずった期待に応えるように、その少し厚手のサマーセーターはするりと脱げる。下半身を義父に貫かれている志穂の躰に残っているのは、窮屈で堪らなそうに重力に揺れているバストを覆うちっぽけなブラジャーだけだった。
「さあ、取るぜ志穂さん……あんたは生まれたまんまの姿になって、俺のチ○ポを咥えるんだ……ゾクゾクするだろ?」
「んっ、んふう……っ」
ちゃんとした言葉が、唇から沸いて来ない。いや、やめて、しないで。志穂はそんな単純な単語を吐く事も出来ずに、義父の怒張に尻を揺らめかせ、戸田の唇への突入を待ち舌を震わせた。
「ほお、見た通りブラの上からでもいい揉み具合だ。しかしまあ、何よりナマが一番だからな、くくくっ……」
ゆるゆると志穂の巨乳に下から宛がっていた戸田が、突然乱暴にブラジャーをむしり取った。そのまま、義祐が世界で一番美しいと称する志穂の双乳を遠慮なく揉みしだき始める。
「あ、あっ、い、ん……っ!」
「志穂さん……あんたから舐めてやるんだ。本当はそうしたんだろう?わしのをいつもそうやって、嬉しそうにしゃぶってくれるじゃないか」
今まで志穂は、拒否しないまま義祐のモノを口に含んだ事はない。しかし今の志穂は、色狂いの女のように男のペニスを激しくしゃぶる自分の姿を想像して、義父の陰茎が躍動する肉体の中心をさらに熱く潤わせた。
「……はあ、あ、ふっ……」
舐めたい。狂いたい。志穂は、行動した。
「おおうっ……いい感じだぜ志穂さん。あんた、よっぽどチ○ポが好きなんだな、ハハハっ!」
もう何も気にしない。腰に力を込め、娼婦のようにヒップを揺さぶる。唇をすぼめ、舌をくねらせて頭を前後に動かす。ずっと義祐に囁かれ続けた『自分から淫らに振舞う』、それこそが今この場所で最高の悦びを得る方法だと、志穂はそう思った。
その決心が、自分の心に癒せぬ深い傷を残す事など知らずに……。
「そうだっ……上手いぜ、そのカリの所をしっかり舐めろ……おお、いいっ!」
男が上げる情けない喘ぎが耳に心地いい。
「おお、志穂さん……もっとわしのを食い締めてくれっ、お、おほうっ」
「ん、んちゅ、ん、くうっ!……んふ、んんーっ!」
濃密な交歓。逞しいモノを咥えていても、洩れ出でる声は周囲の出歯亀達を大いに刺激する。志穂の瞳が霞んでいなければ、そのまた覗き魔達が隠れていた茂みを越え、淫猥な3人のつながりの輪にゆっくり近づいて来るのに気づいただろう。無論その様子を、義祐は分かっている。
「ああ、クソっ!この女、上手過ぎる……あ、あうう、こんなはずじゃ……!」
戸田が唸る。志穂はその声に放出を待ち望み、義祐は自分よりずっと若い男に呆れた。
体力がありそうだと見込み、最初に志穂を宛がってやったがとんだ見込み違いだった。わしなら、志穂さんの尺八にずっと耐えていられる、と。志穂を淫らに開花させた自信が、義祐にはある。事実、こんなにも大勢の目が取り囲む前で、志穂は義祐の繰り出す兇器を嬉々として受け入れ高みに駆け上っている。この女は、やはり俺の女だ。
「お、お、おお……っ、で、出る!」
ドクドクッと、大量の樹液が口内に注ぎ込まれた。
(ああっ……すごく、濃い……っ)
いつから放出していないのか定かでないほどの濃厚なスペルマを、志穂はまるで甘い蜜のように呑み下していく。
「あ、あうう……」
すっかり萎えてしまった戸田のモノが、ぬるりと志穂の口から抜け落ちた。その際に唇に少し滴った残滓を、志穂のピンクの舌はゆるやかに舐め上げた。
「すげえ……」
「いやあ……あの人、スケベすぎるよ」
少し離れた茂みから、若い男女の囁きが聞こえて来た。それすらも今の志穂には、賛美の言葉に聞こえる。
「……おい爺さん。あんたすげえな、この女、ちょっとやそっとの淫乱女じゃねえぜ……」
息も絶え絶えに言う戸田に、義祐はにやりと笑い返した。もちろん、志穂を突く腰の速度を変えぬままで。
「は、ああう……っ!」
「さあ志穂さん……これでしばらくわしのチ○ポだけに集中できるじゃろ」
義祐は突然志穂の脚をすくい、自分は体を後ろに倒した。思わぬ義祐の動きに、志穂は甲高く喘いだ。もし生垣の向こうに歩む人がいたなら、その余りの迫力に驚いてしまっただろう。
「……あんたは後ろからも好きじゃが、この格好も好きなはずじゃ……さあ、もう何も言わんで好きなようにやるがいい。どうしたら気持ちよくなれるか、それだけ考えてな……」
騎乗位。野外。衆人環視。常識ならおぞましいばかりの嫌悪を抱くはずの状況で、志穂の淫乱な細胞全てがざわめき立つ。
「はあ……あ、あっ」
艶を帯びた溜息は、自分の腰の動きと同時に洩れた。くいくいと、まるでポルノ女優がするような腰遣いで、志穂は義父の上で躰をくねらせ始めた。
「そうだ、その調子……どうだ、やっぱりわしのチ○ポ、好きじゃろ?」
「……んっ、す、きぃ……っ、志穂……これが、す、好き、なの……あんっ、もっとぉ……っ!」
自分を抱いている相手を「お義父さま」と呼ばない事だけが、今唯一志穂にできることだった。残りの思考は全て義祐との、夫の実父との禁忌の悦びに支配されている。このまま、素晴らしい快感を受けながら果てたい。誰に見られていても、義父の熱い精液を受けて狂いたい。そう思っている。
ちらっと、義祐が自分の腕時計を見た。午後8時38分。もうすぐだ。ここまで志穂に気をやらせずに来たのも、全てその時を待っていたからなのだ。あと5分。駅に電車が到着するまで、あと5分……。
「皆、見ているばかりじゃつまらんじゃろ……この女を見ながら、存分にしごいてくれ。さあ、もっち近くに寄るんじゃ。なんなら、この女にかけてやってもいいぞ……」
義祐の言葉に、志穂の瞳はゆっくりと開いた。しかしそれは、その言葉に恐怖を覚えたからではない。自分の周りに裸の男が群がるのを、志穂は確かに想像し、待望したのだ。
「あ、く、ん……もっと、もっ、とぉ……っ!強く、ふか、く、突いてぇ……っ!」
義祐にねだりながら、志穂は周囲の光景を眺めた。歳を取った男、若い男。身綺麗な男、汚い姿の男。幾人もの男達が志穂のすぐ傍まで寄って来ていた。しかし、皆ある事で共通していた。
(ああっ……みんな、ペニスをわたしに向けてる……わたしの恥ずかしい姿を見て、興奮して、激しくしごき上げてる……ああ、許して……っ。わたしは、もう戻れない……このまま、みんなのペニスで、いっぱい、汚されたい……っ!)
箍の外れた欲望は、志穂の肉体を更に大胆にさせた。肉体全ての力を腰に込め、まるでロデオのように全身を上下させた。駅前の道路と公園を隔てる生垣の高さを越え、志穂のセミロングの黒髪は振り乱された。誰かが道路からその生垣を見たのなら、志穂の性欲に支配された至福の表情を眺める事が出来ただろう。
「おお……っ!そうじゃ、もっと狂えっ……あんたの本性を、ここにいる皆に存分に見せてやれっ……おお、いいぞっ!」
「はうんっ、ああっ!イイっ……もっと、もっとぉ……あん、は、あんっ!」
自由になった両手は、自らの形良い乳房に宛がわれ、その双肉をあらん限りの力で揉んだ。全身に幾つもの火花が爆ぜ、急激に高まり来る絶頂を教えていた。
「い、イイっ……あんっ、たまら、ない……っ、も、もっと、あ、んんっ!」
覗き魔達の怒張はもう目の前に迫って来ていた。全てが放出寸前の砲口を、淫らに躰をうねらせる志穂の裸に向けている。志穂は、その熱いシャワーの中でのエクスタシーを確信していた。
「志穂さん、もうイクのか……わしも、もうすぐじゃ……お、おおうっ!」
義祐の上半身が、志穂の背中に密着した。耳元の囁きに、志穂は答える。
「はい……い、イキますっ……熱いの、い、いっぱい……くだ、さい……っ!」
志穂の我を忘れた叫び。しかし、なぜか爆発寸前の義祐は冷静だった。
「なあ志穂さん……ここから、駅の改札が、おうっ……改札が、よく見えるじゃろ……」
「っ……?」
距離もある程度あった。暗かった。しかし、志穂に見えた。花屋。花屋の前にいる、男。
「い、いやぁ……っ!」
見てはいけなかった。見なければ、志穂はこの世に生まれて来て最高の快感を得る事が出来ただろう。しかし、たったこの一瞬で、志穂は絶望の淵に叩き落された。
「さあ、イケ……っ、あいつの見てる前で、思い切り気をやるんだっ、おお、おうっ!」
「い、いや……っ、あ、あくうっ……こ、こんなの……い、やぁ……っ!」
しかし、腰は止まらなかった。志穂は先程自覚したように、戻れない場所まで自ら望んで来てしまったのだ。
「あ、あううっ!」
誰かの放出が、志穂の鼻筋に直撃する。続けて頬、首筋、唇に熱い白濁液が浴びせられる。それは肉の曲線を辿り、志穂の全身を汚していった。
「い、やぁ……も、もうっ……あ、あんっ……ああ、もうっ、い、い、い……っ!」
「……イクんだ、志穂さん……っ!」
「あ、あ、あんっ……い、くう……っ!」
恐怖の真っ只中にいても、志穂は義祐に同調していた。志穂が浴びせ、義祐が吹く。志穂が締め、義祐が張る。二つの熱い液体が、志穂の躰の一番深い場所で、しっかりと混じり合った。
そしてそれは、確かに今まで感じた事の無い、激しい絶頂だった。
「……あ、あう……っ」
志穂は、自分の気が遠くなっていくのを感じている。次第に暗くなっていく視界は、それでも駅前の花屋の光景を捉えていた。
誰かへの贈り物だろう真っ赤なバラの花束を、照れ臭そうにしながら抱えている男の姿を。
男は、祐二だった。志穂の愛する夫、祐二だった。