第9章


 全裸の肉体を、水で洗っている。よりにもよって、噴水に腰かけさせられ、義祐に躰を洗われている。

「なあ爺さん、またこのべっぴんさんを連れて来てくれるのか?」

 誰かが、下卑た笑いと共に声をかけて来る。

「さあね……まあ、志穂さんが望めば、またあんたらの前で裸を曝け出してくれるさ、なあ志穂さんや……くくくっ」

「……っ」

 何も、言えるはずが無かった。もう裸だとか、激しい交わりだとか、どうでもよかった。

 浮浪者や覗きたちに痴態を晒すなど、今思えば些細な事だったのだ。この男は、愛する夫の姿を見つめながら汚い粘液にまみれる女を見たかったのだ。

 嘲笑に耐えながら、くしゃくしゃになった衣服を着け終わっても、志穂は堕ちきった心を元通りにはできなかった。周囲の男達の好色の視線を浴びながら、先に歩く義祐の後を力ない足取りで進む。3時間ほど前、目の前の男の真意を測りかねていた散歩道を逆に進む。今は、ただ一つの感情しか湧かない。

 

 この男が、憎い。

 

 自宅には、明かりが灯っていた。午後九時過ぎ。誰かが、確かにリビングにいる。事実を思えば思うほど、その温かいはずのリビングの照明が志穂の心を刺す。

「さあ着いた。志穂さん、あんたの愛する優しい旦那が、わしの立派な息子が、馬鹿でかい花束なんぞ抱えて待っているぞ……」

 受話器を持たされたまま、祐二と会話させられながら貫かれた今朝の繋がりと同じように、その言葉には明らかな侮蔑が含まれていた。志穂の肉体を支配したという歪んだ自信が、義父を恐ろしい男に変えてしまったのだ。

「……っ」

 玄関ノブを握る手が震える。衣服は、乱れをしっかり整えた。しかし、幾人もの男達の樹液を全身に浴び、そして膣奥に義祐のスペルマを注がれたこの躰が、汚れ切っているように志穂には感じられる。

 夫に、男の濃い匂いを悟られはしないだろうか?

「何してる、志穂さん。ほら、さっさと入るぞ」

「あ……っ」

 義祐はわざと志穂の手のひらに自分の手を重ね、ドアノブを回した

「おーい、祐二!」

 とってつけたような声を張り、開いた玄関ドアから息子に呼びかける。リビングの方から聞こえる足音に、志穂の鼓動は早鐘のように鳴り続ける。

 そして、リビングから現れた愛する夫 祐二は、結婚してからあまり見せたことのない、明らかに不機嫌な表情で現れた。その顔を見た時、志穂の良心ははちきれそうになっていた。

 志穂の口が、少し開いた。義祐への怒りもその要因になったのだろう。ここで今までの全てを告白し、贖罪すればまだ戻れるかもしれない。たった四日前の、爛れ汚れた四日間の前の、ただ幸せのみが存在していた日々に……。

「……ひどいな、親父」

 不機嫌な顔。それがまるで幻のように掻き消え、祐二の顔は普段どおりの笑顔に戻った。志穂の贖罪の機会は、閉ざされる。志穂は結婚して初めて夫を、優しすぎる夫を、呪った。

「今日の九時頃にとりあえず帰ってくるって、今日の夕方電話しただろ?」

「ああ、すまなかった。ちょっと買い物に付き合ってもらうつもりだったが、途中の公園で知り合いに会ったもんでな」

「しょうがないな、親父は。花束なんか用意して、せっかく志穂や等を驚かせようと思ってたのに。まあ、慣れない事をするなって事かな」

 そこにはもう、いつものような笑顔しかない。義祐はそれを読み切って、息子の招くままに家の中へと入っていく。

「どうしたの、志穂?」

「……え、あ、ごめんなさい」

 志穂もそれに続いた。足取りは重い。リビングの花瓶に飾ってあった美しい花束を見ても、志穂の心には冷たい風しか吹かなかった。

 

 

「明日の夕方にはまた出張先に戻らなきゃいけないんだけどね。今朝電話で志穂のカゼが酷そうだったから、慌てて帰って来たんだ。そのおかげで、来週はまた徹夜続きになるだろうけどね。あはは」

 ソファで父親と酒を酌み交わしながら、相変わらず祐二は笑顔で語っていた。公園で激しく犯され、買い物さえできなかった志穂は、冷蔵庫の中にあった食材で二人の酒のつまみをキッチンで作っていた。

「志穂、カゼはもういいのかい?」

 夫の一言。それだけで志穂は、義父の暗い部屋で受話器を抱き締めながら狂い求めた自分の恥態を思い出す。

「え、ええ……大丈夫よ。もう、平気」

 愛する夫に嘘をつき、ペニスを食い締め尻を振った騎乗位の自分。喘ぎをごまかす為わざとらしく咳き込んで見せたのは、確かそんな瞬間だった。

「なあに、カゼなんて体をちょっと動かして汗をかけば、すぐ直っちまうもんだ。そうだったなあ、志穂さん?」

 ソファからキッチンを振り返り、祐二のものとはまるで違う冷笑を向けながら、義祐は志穂を言葉で玩ぶ。

「そ、そうですね、お義父さま」

「ああ。わしも公園で運動に付き合ってやったが、なかなか大変だったよ」

「……っ」

「おいおい親父、何をしたか知らないけど、もうあんまり若くないんだから、無理しないでくれよ」

 祐二にとってみれば、他愛の無い会話なのかも知れない。しかし志穂にとっては針のムシロだった。食材を刻む手が何度も止まる。そんな時間が哀しく続いた。

「なあ志穂、つまみはまだ?」

「あ、ええ、もう少し……」

「おいおい祐二、手伝ってやらんのか……しょうがない、わしが手伝ってやろうか」

「いいのかい?じゃあ親父、手伝ってやってよ。いま延長戦が面白いとこなんだ」

 贔屓のプロ野球チームの試合に熱中する息子を残し、並んで座っていたソファから、義祐が立ち上がった。そのまま、志穂がずっと恐怖し続けているあの冷笑を浮かべながら、キッチンへと近づいて来る。

「へえ……チーズを春巻きで巻いて揚げるのか。さすが志穂さん、料理が得意じゃな」

「ありがとう、ございます……っ」

 義父が、背後に立って志穂の手元を覗き込むようにする。傍目、不自然な動作ではなかったが、志穂は言葉と共に熱を帯びた息を吐く。スカート越しのヒップの割れ目に、義父のペニスが強い力で押し付けられたからだ。そしてそのペニスは、当たり前のように、逞しく勃起している。

 ソファに座る夫の後ろ姿を視界に捉えながら、後ろからぐいぐいと硬い凶器を押し付けられる。荒くなる息遣いを必死に抑えながら、志穂は自分の肩越しに哀願の瞳を向けたが、義祐はさらに加虐心を強くし、腰を押し付ける圧力を増す。

 さあ志穂さん、今度は本当に祐二の目の前だぞ。どんなに乱れてくれるんじゃ……?

「ん……んくっ」

 固く唇を閉じていても、その端から思わず切なげな吐息が洩れてしまう。許されないと分かっていても、熱い場所の疼きは止められない。夫と同じ空気を吸いながら、夫の父親の攻撃に酔い、淫らな吐息を吐き続ける。

「……くくくっ」

 すぐ後ろから聞こえる、義父の含み笑い。形さえもはっきりと感じ取れるほど押し付けられた怒張。老練で巧みな義祐の愛撫は、志穂の思考を霞ませていく。志穂は今、自分の淫裂がこんな状況下であっても潤い始めている事に、戸惑いながら気づいていた。

「……こ、これを揚げますから、油が、飛びます……お義父さま」

 震える菜箸でチーズ春巻きを持った志穂が、乱れる声を必死に留めながら背後の義父に訴えかけた。

「お、おお。そうか」

 ヒップに感じていた熱い圧力が、離れた。離れ際、義祐がまた志穂の耳元に囁く。

「とりあえず、お預けじゃ……」

 義父は再び、息子の座るソファに向かっていった。志穂の躰には、急激に上昇した体温と激しい鼓動、そして垂れる寸前まで潤わされた秘裂の感触が残った。

 

 

「でもやっぱり、自分の家で呑む酒は美味いな」

 空になったコップをまた置いて、祐二は一息ついた。顔が赤い。志穂から見ていても、今日の夫の酒量は多い。久しぶりに妻や息子の待つ我が家に帰って来た安心感が、そうさせるのだろう。

「呑むなあ、祐二。ほら、もう一杯」

 日頃から酒に慣れている義祐が、息子のコップにまたビールを継ぎ足す。

「あ、ありがとうな親父」

 緩い動作で、祐二はまたコップを持ち一口ビールを飲んだ。そして、しばらく考えて、言った。

「そうだ親父。今夜は家に泊まっていけよ」

「……っ!」

 夫の提案が、志穂の心の波をさざ波立たせる。

「いや、それは悪かろう。なあに、アパートはすぐ近くじゃ」

「親父も酔っぱらってるだろ?こんな夜に、親父一人帰らせられないよ」

「心配ない、大丈夫じゃ」

 息子の性格を知って、義祐はわざと大袈裟に強がって見せた。そして、その様子は志穂にも分かった。志穂の不安通り、祐二は義祐の思うように話を続けた。

「俺は前から、親父に同居を勧めて来たじゃないか。お袋が死んで結構経つし、最近は体も弱くなって来たみたいだし。親父の性格じゃ同居なんて嫌だろうけど、とりあえず今夜は泊まっていけよ、な?」

 体が、弱い?志穂はキッチンで、弱々しく拳を握った。そうだ、夫は何も知らないのだ。弱々しく見える老人の内面に、野獣のような欲望が渦巻いている事など……。

「そうか……そんなに言うなら、同居の話はともかく、今夜はここに泊まるとしようかな。いいかね、志穂さん?」

「……え、ええ。もちろんですわ、お義父さま」

「いや、すまないね。じゃあ志穂さん、急で申し訳ないんじゃが、風呂を沸かして欲しいんだ」

「あ、そうだよ。すまないけど志穂、親父に風呂を沸かしてやってくれないか?」

「……はい」

 ソファから、よく似た二つの顔がこちらに微笑みを投げ掛けている。しかし、二つの微笑みはまるで違っていた。愛する妻に申し訳なさそうに投げ掛けられた笑顔と、これから起きる悦ばしい事に思いを馳せながら、ほくそ笑んでいる顔。志穂はいたたまれなくなって、二人から視線をそらすとバスルームの方に駆けて行った。

 

 

 祐二はまだテレビに夢中で、志穂は食事の後片付けをしている。志穂の乱れる心とは裏腹に、リビングには奇妙なまでに静かな時間が流れていた。

 今ここで告白する事が出来るなら、どれほど楽だろう。

 祐二さん。わたし。お義父さまに。犯されて。そして。

 やはり、それはできなかった。全てを告げてしまったなら、自分は救われるかも知れないが義父、夫、そして等さえも不幸になってしまう。自分が激しい悦びに溺れている事実が、何より志穂の良心を固く閉ざしてしまっていた。

 そして現実は、絶望の淵に佇む志穂をさらに深い闇に沈めようとする。その合図は、湿気に篭った男の声で訪れた。

「おおい、志穂さん」

 バスルームから、義父の声が聞こえた。志穂が返事するより早く、祐二が応えた。

「どうしたんだ、親父?」

「おお、なんだかちょっと肩が痛くてな。背中が上手く洗えんのだ」

 誘いの罠なのは、すぐに分かった。しかし、志穂にはそれをどうする事も出来ない。

「何だ情けないな。俺が背中流してやろうか?」

「お前じゃ加減が出来んで余計に痛くなっちまう。志穂さんに流して欲しいんじゃ」

 嫌……嫌です……背中を流すだけで、済む筈が無い……。

「しょうがないなあ。ゴメン志穂、親父を手伝ってやってくれないか」

 志穂は、唾を一つ飲んで、すぐに笑顔を作った。夫には、何も罪は無いのだ。ただ、何も知らないだけなのだ。

「……ええ。お義父さまのお背中、流して来ます」

 足取りは、やはり重い。自分のパタパタというスリッパの足音をバスルームの男はどんなふうに聞いているのだろうか。

 鼓動が、早鐘を打ち始める。恐怖と緊張から来る動悸と、期待と興奮から起こる動悸を、志穂はどう区別したらよいのか分からない。脱衣所に足を踏み入れると、すりガラスの向こうに、この4日間ずっと体温を感じさせられて来た浅黒い肌が、バスタブの縁に座って待ち構えている。

「……失礼します」

 声が震える。夫と数メートルしか離れていない場所で、自分の躰を貪り尽くそうとしている裸の男に相対しなければならないのだ。

「おお、すまんな志穂さん」

 扉を開ければ優しい声が、冷笑を浮かべたままの唇から聴こえた。志穂は、その顔から視線を逸らそうとして、すぐに止まった。全身がまた、あらぬ熱を持ち始める。目前の男の股間に嘶く、逞しい肉柱。ずっと志穂の肉体を狂わせ続けた、そそり立つ怒張。若い女の躰を、どうしようもなく哭かせ続ける、熱く猛ったペニス……。

 そのペニスを、義祐は無言で指し示した。何度も何度も、志穂に向かって指を見せ続ける。志穂の喉が、渇いてくる。義祐はその渇いた喉に、自分の樹液を流し込もうとしているのだ。志穂の膝が力なくタイルの床についたのは、それからすぐの事だった。

「……いい口上で頼むぞ」

「……っ」

 顔を寄せて耳元で囁く声。躰中の血液が、どうしようもなく早く駆け巡り始める。

「ご……ご奉仕させて、頂きます……っ」

 紅潮する顔が、義祐の悦びにさらに油を注ぐ。この女、ますます淫乱になっているぞ……。

「クククっ……困った嫁さんだ」

 嘲りの言葉に衝き動かされて、志穂は義父の怒張に唇を宛がった。舌先にぬめった先洩れ液の味を感じれば、女の思考は澱んだ熱い霧に包まれていく。

 感じたくないのに、志穂の舌先は義祐の、夫の実の父親の先端をなぞる。しっかりと張ったえらが、潤み始めた粘膜を疼かせる。鼓動を伝える幹が、唇を幾度も蹂躙する。

「ああ……上手いぞ志穂さん。尺八は、祐二にもやってあげてるのか……?」

 口を塞いだままの志穂が、返事の代わりに少しだけ首を振った。事実、夫の祐二には口での愛撫などした事が無い。フェラチオの相手は、目の前の義父とそして息子の等だけ。夫にもした事の無い淫らな行為を、自分は禁じられた相手と行っている。その事実は、志穂の歪んだ興奮を掻き立てていく。

「そうか。それなら今夜してやるといい。自分の嫁がこんなにいやらしいんだと、大喜びするだろうよ……」

 若嫁の心に深い傷をつけ、義祐は新たな攻撃を開始する。躰を折り曲げ右手で、先程から切なげに左右に揺らめくヒップの中心に触れる。

「ん、んふ、うん……っ!」

 腰を押し付けられ、口内の凶器はさらに喉奥を穿つ。下半身の愛撫から湧く布越しの鈍い快感が、その凶器に巻きつけられた赤い舌をさらに淫らに蠢かせる。

「なんだ、もう濡らしてるじゃないか……そうか、さっき台所で愛してやったからな」

 愛してやった。背後からペニスを尻の谷間に押し付ける行為を、義父は愛してやったと言った。屈辱を倍化させる言葉さえ、本能に強く支配された肉体の中心はさらに熱い淫汁を滴らせ、ショーツの上から弄る義父の指を歓喜させる。

「ほらほら、こうしたらあんたはもっと喜んでくれるじゃろ……?」

 クロッチから指を侵入させた義祐は、びちょびちょに濡れそぼった志穂の本体を熱心になぞり始めた。自分の愛液が、節くれ立ったその義父の指を輝かせている事を、志穂は気づいている。しかしやはり、自分の淫乱な躰は、その熱い液体を滴らせ続ける。

「ほら、舌が忙しげに動き始めたぞ。あんたは本当にいやらしい女だな……くくくっ」

 若い女の口淫に少し眉を歪ませて、義祐が唸るように囁く。怒張は、舐め始めた時よりさらに膨張し、若嫁の顎を軋ませる。

 やがて、義祐の指先はもはや遠慮もなく志穂の内部を掻き回し始めた。

「ん、んっ、んふう……っ!」

 逞しいモノを咥える唇から、わずかに嬌声が洩れる。洩れ出でるからこそ、その声は艶やかに淫らに甘い。そして、洩れ出でるからこそ、リビングの夫には届きはしない。

 ずぼずぼと、熱い肉洞を中指人差し指が往復する。第一関節をわずかに曲げ、志穂のぬめる粘膜を掻き乱す。

 また、このバスルームで狂わされる。夫のすぐそばで、わたしは、お義父さまにイカされる……。本能に押し潰されそうな思考は、淫らな結末を想像し、またそれを受け入れようとしていた。

「……っ!?」

 そしてそれは、突然存在感を失った。あれほど念入りに自分の淫裂を弄くっていた義父の指が、その場所から消え失せたのだ。

「ククっ……」

 冷たく抑えた笑い。義祐はそれ以外何も行わない。しかし、志穂の口内に残る怒張はまだその逞しさを湛えている。

 志穂には、義父の意図が見えなかった。しかし、指の愛撫が止まったままの熱い泉には、大きな喪失感から来る鈍い疼きが襲っていた。

「う……んっ、くうっ」

 口の中で、切なく甘い囁きが篭る。感じやすい志穂、その躰を知り尽くしている義祐。わずか数センチ侵入していた指が掻き消えただけで、女は狂おしいほどの焦燥感を味わっていた。

 混乱した思考の中で、志穂の唇に走るのは『ひどい』とか『どうして』などの言葉だけ。しかしそれは、志穂の哀れで微かな抗いに過ぎなかった。このまま疼く肉体を放置され、口からペニスが抜け出したなら、志穂は淫らな言葉を声高に発してしまったかも知れない。

「さあて、志穂さん……」

 それを止めたのは義祐の低く抑えた声。それはもちろん、新たな陵辱の発端に過ぎなかった。

「そのままじゃ、辛かろ?せっかくだから、あんたが自分で弄くるがいい」

 義祐は手を伸ばし、志穂の膝裏に宛がい無理矢理に起こした。

「んくう……っ!」

 まるで、相撲の力士が四股を踏むような体勢で、志穂は義父の前に晒された。普段通りの姿、その脚と脚の間だけ、熱い淫液を滴らせる秘裂が露わにされる。夫と数メートルだけ離れたこの場所で、こんな惨めな格好で、その夫の実の父親の怒張を頬張りながら、自分の躰を貶めなければならないのだ。

「そら、口が休んどるぞ。いつ祐二が来るか分からんのだ、集中してしゃぶってくれよ……」

 低い声が、風呂の湿気で静かに反響する。その声に、志穂は辛い体勢での激しいフェラチオを再開し、そして、当たり前のように、自分のヴァギナにその細く美しい指を侵入させ、蠢かせ始めた。

「その調子じゃ……淫乱なあんたの事じゃ、すぐに気持ちよくなって気をやるだろうさ」

 魔法のように、浮かされた心に直接響いてくる義父の声。

「ほら、あんたが一番感じる場所があるじゃろう。おそらくもうパンパンに膨れておるだろう可愛いお豆だ……」

「う、んふ……っ!」

 人差し指と中指で、クリトリスを挟み込む。義祐の言う通り充血し膨張したその肉豆は、志穂の全身に細かな火花を幾つも爆ぜさせた。

「……今度は縁を撫でるんだ。あんたのいやらしいびらびらは、指先で少し触るだけで中から汁を垂れ流すからな」

「く、ひっ……いんっ」

 指先で濡れた泉を縁取る肉の花弁を、こんなに乱暴に触れた事など無い。しかし、その自らの信じられないほどの乱暴さが、さらに愉悦を高まらせていた。

「さあ、わしの代わりにはならんだろうが、そのぐちょぐちょのま○こに自分の指を入れるがいいさ……1本か?2本でも物足らんだろうから、3本入れるか?クククっ……」

「ひ、あ……あ、くうっ!」

 もちろん、1本では満足など出来はしない。人差し指と中指を蕩け切った肉泉に侵入させ、逞しい男根を模すように、先端を少し曲げ自らの肉壁を擦った。残りの指は肉洞に入る事は無かったが、擦る動きに同調しながら周囲の柔肉を急かしく動き続ける。

 義祐の言葉の魔力に、志穂の思考はさらに狂い始めていた。

 すぐ隣の部屋にいる夫。安らかな顔で眠る息子。口に含む義父の逞しい肉柱。その義父が浮かべる冷たい微笑。それでもなお、自らの淫裂を弄くりながらその義父を口淫するあまりに乱れた自分。その全ての光景がフラッシュバックのように、志穂の頭の中で幾度も爆ぜる。

「……興が乗ってきたようじゃな。遠慮せんで、思い切り気をやるがいい。あんたは淫乱女だ……夫や息子の傍にいるのに、よりにもよって夫の父親であるわしのチ○ポをしゃぶって悦んでいるような、色狂いの牝なんじゃ……」

「ふ、ん……ん、んく、んんんっ!」

 今まで何度も浴びせされたどの言葉よりも強い嘲りさえ、歪んだ愉悦に霞む志穂には遠い音のように聞こえた。義父の股の間に跪き、スカートを捲り淫裂に指を這わせ、ペニスに舌を這わせる状況に、確かに志穂は狂い、酔っていた。

 若嫁の唇と舌は、義祐の怒張に熱いマグマを上昇させていた。興奮とは逆の余裕を持った態度も、志穂をさらに堕としめるためだ。触れれば弾け、玩べば戸惑う。弄くれば熱を持ち、激しく突けば悶え狂う。義祐は望み、志穂は心ならずも本能によってそれに沿った。

 もうすぐ、わしの精液が志穂の喉奥に注ぎ込まれる。志穂はそれを歓んで呑み下すだろう。同時に指先で気をやって、ま○こを愛液でびしょびしょにするだろう。全ては、わしがそうさせたのだ……。

 この喜びは、何事にも替えられないほど大きかった。それこそ命をすり減らす事になろうとも、この淫靡で素晴らしく甘美な悦びに酔っていたかった。

「おーい、志穂」

 その声は、さすがの義祐にも、激しい動揺を誘う。志穂は心臓が止まるほどの驚きを覚えた。

「まだ入ってるのか、親父?」

 薄い扉二つ挟んだ場所から聞こえる息子、そして夫の声。義父の長大なペニスを咥えている志穂には、もちろん声など出せない。

「……ああすまんな、体が言う事聞かんで志穂さんの手を煩わせてばかりだ」

 義祐もまた、やっとの事で口から出来過ぎた嘘を絞り出した。

 しかし義祐はまた、この異常な状況の中で別の感慨を持ち始めていた。息子が現実の目の前にいるこの場所で、自分の怒張は萎縮する事無くなおも嘶き、美しい女の喉奥を陵辱している。心臓の鼓動は早鐘のように鳴り続けているが、それは恐怖からでは無く、あまりに乱れ狂ったこの場の興奮から来るものだ。

そうだ。俺は今例え祐二が事に気づき、怒りに任せてここに走り込んで来ても、決して志穂の口からチ○ポを抜く事は無いだろう。祐二が拳を振るっても、だ……。

 悟ると、全てがまた淫らに輝き始めた。義祐は、驚きから口の中の動きを止めた志穂の姿に冷笑を浮かべる。この女、舌は動かさなくなったのに、股間の自分自身を弄る指先は止まらず動き続けている事に気づいているのだろうか?

「俺、酔ったみたいだから先に寝るわ。おやすみ」

 勝った。

 息子の無警戒の言葉と同時に、義祐は志穂の口に向かい、今までに無い程腰を強く突き入れた。

「……んふうっ!」

 汚してやる。汚してやる。汚してやる。何も知らぬ息子のすぐ傍で、その息子の愛する妻の口に熱い迸りを浴びせるのだ。義祐の興奮は、最高潮に達しようとしていた。

「ん、んっ、んうーっ!」

 極度の緊張から解き放たれた志穂もまた、その反動からエクスタシーへの坂を駆け上り始めていた。激しい突きにも、その舌と唇は決して逞しいペニスから離れようとはしない。淫裂に這う指先も、あらん限りの力で往復し、それを迎える魅惑的な尻もまた、くねくねと淫らに振り続けられている。

「お、おう……っ、イクぞ志穂っ!おう、おおお……っ!」

 低くも力強い唸り声と共に、熱い濁流が激しい勢いで口内に侵入して来る。志穂は、まさしくそれを一滴残らず喉を鳴らして呑み下していく。そうする事が、もう当たり前のように。

「ん、んくっ……んうっ」

 粘液を味わいながら、しかし志穂はまだ義父の絶頂に追いつけてはいなかった。着衣のままの、その全身に汗させて志穂は指での昂まりを目指していた。

「……ククっ」

 また、義祐の冷笑が浮かんだ。萎んで行く老義父の性器を、まだ未練がましく舌先で舐めながら、自分の指に向かって尻を振る女。全く、とんでもない淫乱女になったものだ、と。

 手を伸ばして、シャワーのコックを掴む。シャワーヘッドから勢いよく熱い湯が流れ出る。それに気づかない、志穂。

「……そらっ!」

 熱い水流が、淫らな醜態を晒す着衣の美女に降り注いだ。

「あ……っ」

 志穂は、かすかな声だけを洩らした。もし夫に尋ねられた時に、説明のしようが無いほどシャワーの湯は着衣に染み込んでいく。

しかし、志穂は止まらなかった。目前に迫り来る淫靡な悦びを、常識的な不安など押し流してしまうほど待ち侘びていたのだ。

「あ、ああっ……あ、くう、うんっ!」

 ふやけた人差し指と中指を、肉洞がしっかりと締め付けた。その指先に、シャワーの水流に負けぬほどの勢いで淫液が浴びせられる。志穂は全身を小刻みに痙攣させ、絶頂した。

「……気をやったか、志穂さん。では、わしは客間で寝るとするか……」

 細くも逞しい老体を立ち上がらせて、義祐はまた冷笑を浮かべる。その時やっと、義祐の分身は志穂の唇から抜け落ちた。

 びしょ濡れの躰で自慰絶頂の余韻に浸る志穂に、義祐は呟く。

「わしは、まだ満足しておらんぞ。クククっ……」

 キュッと、シャワーのコックが閉められ、義祐はバスルームを出て行く。無音となったそのシャワールームに、志穂の荒い息遣いだけが響く。

 満足していない……。

 わたしは、また、お義父さまに、抱かれるの……?

 祐二さんや、等のいる、この家で……?

 水浸しの全身が、急に重く冷たくなった。

 午後1147分。夜は、まだ始まったばかりだった。

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