志穂、哭く。
   第10章


 濡れたエプロンや上着、スカートを脱衣カゴに脱ぎ、志穂は暗く静まり返った廊下へと出た。下着まで外さなかったのは、全裸になるのが怖かったからだ。

 すぐ隣にある客間に、志穂は一瞥した。つい先程自分を汚していった男がいる、部屋。

 黒い想像が浮かぶ。暗い部屋で、静かに笑う男。そこにゆっくりと歩み寄る影。緩やかな曲線を持った裸の躰を揺らめかせて男に歩み寄る影が、淫靡な微笑みを浮かべる……。

志穂は首を振り、必死に妄想を振り払った。歩み寄る影、微笑みを浮かべる影の素顔を、悟ったような気がした。

二階に続く階段を、灯りもつけずに上がる。時より髪先から冷たい雫が足元に滴る。髪を拭く事さえ億劫になっている自分に、志穂は今気づいた。

「……」

 寝室のドアの前に、志穂は立ちすくむ。神聖なはずの夫婦の寝室。しかし昨日の白昼、志穂はこの部屋で義父の腰の上で淫らに躰をくねらせ、狂ってしまった。それを思い出した途端、全身に鈍い悪寒が走る。

 きっと、わたしとお義父さまの匂いが、あのベッドに染み付いてしまった。祐二さん、あなたは、そんなベッドで、何も知らず眠っているのね……。

 志穂は、居た堪れなくなって、そのドアを開けた。暗く、何も動いてはいない、真夜中の寝室。やはり、夫 祐二は酒に疲れて眠ってしまったようだ。

 クローゼットを開き、パジャマを緩い動作で着け始める。疲れて、ただ眠ってしまいたいはずなのに、霞んだ頭の中では、先程バスルームで最後に囁きかけられた義父の言葉が幾度も響き渡る。満足していない、満足していない……。

「……っ!」

 刹那、背後から突然抱きすくめられた時の志穂の恐怖は、それは大きなものだった。背後から荒い息を首筋に吹き掛けて来る人物を当然のように、また神聖な寝室で、それも夫の前で凌辱しようと欲する義父だと思ったからだ。

「……志穂」

 アルコールを含んだ名を呼ぶ声。志穂はその時やっと、背後の男が夫 祐二だと悟った。

「なあ……いいだろ?」

 ほんの少し前なら、心の底からときめきを覚えたはずの夫の囁き。しかし恥辱と欲望に彩られた四日間を経た志穂の心には、それは後悔と自責を促すためだけの音と成り果てていた。

「祐二さん、だめ……」

「どうしてさ。出張の間、僕はずっと君とこうしたいって思ってたんだよ」

「ああっ……だめなの。祐二さん」

 どうしていいのか分からない。夫の愛に応えたい。しかし、その夫を裏切って淫らに肉体を蠢かし続けた自分の罪も、はっきりと感じている。

「疲れてるでしょう……?だから、今日は……ねえ、お願い」

 愛する夫には、今夜は抱かれたくない。心から愛してるからこそ、これからずっと愛し続けたいからこそ、朝から何度も貫かれ、幾人もの男達に裸を晒し、たった今白濁液を浴びせ掛けられたこの躰を、抱かれたくないのだ。

「祐二さん、許して……お願い」

 志穂は懇願の瞳を、背後の夫に向けた。

「……っ」

 そこには、今までに見たことのない表情があった。いや、ただ一度だけ見た事のある表情。

 7年前。二人が初めて躰を繋げた時の、真剣な眼差し。

「……君が、今朝『愛してる』って言ってくれたから。だから、僕は今志穂をどうしても抱きたい」

「祐二さん……」

「志穂、愛してる」

 心の中に黒く澱んでいる物に、高原の涼風のように吹きつける。夫の言葉と眼差しは、まさにそういう物だった。

 祐二さんに抱かれれば、少し、昔の綺麗なわたしに還れる……?

「……」

 志穂は祐二の瞳を、しっかりと見つめる。そしてそのまま、躰を沿わせ、無言のまま頷いた。

 

 

 なぜ、夫と二人同じベッドに入るだけなのに、こんなに緊張しなければならないのだろう?鼓動は早打ちを続け、自分の肉体全てが大きく振動しているように感じられるほどだ。

「あ……っ」

 緊張した身体に、夫の手のひらが触れた。パジャマの上から優しく、太腿を撫でている。そこから、少しだけ熱い温度が感じられた。ほんの何日か前、僅かな罪さえ犯していなかった頃の夫婦の営みに、ほんの少しだけ希望が湧く。

「志穂、愛してる……」

 祐二さんは何も変わっていない。わたしが、汚れてしまっただけ。だから祐二さん、わたしを、変わらず、愛して下さい……。

「祐二、さん……」

 志穂もまた、夫に囁きを返しながら愛撫を始めた。夫が自分にしたように太腿、腋、首筋、頬と辿り、愛する人の体温を感じようとする。そして、その行為はすぐにもどかしくなる。薄い布越しなどではなく、直に肌の感触に触れたくなる。

「ふ、うん……」

 あらぬ熱を持ち始めた吐息と同時に、志穂の白い指先は夫のパジャマのズボンに滑り込んだ。

 夫の指先よりも、先に。

 

 

 少し長くなった口づけと、互いの手のひら指先の触れ合い。もうほとんど裸となった二人の姿は、先程志穂が望んだ昔と変わらぬ夫婦の姿だった。

「ん、んふっ……」

 義父との悪夢のようなつながりに溺れた事を、決して忘れたわけでは無い。それを覚えているから、夫を真剣に愛したかった。二人の間にある純粋な愛を、確かめたかったのだ。

 夫の物は、疲れのせいか酔いのせいなのか、まだエレクトしていない。指先でその辺りを撫でても、まだ滾るほどの興奮は感じられない。それがたまらなく、切ない。

「……っ」

 志穂は、ゆっくりと上半身を移動させる。一刻も早く、夫の物に相対したかった。相対して、夫をずっと愛したかった。

「……ああっ」

 足と足の間に、それは力なく横たわっていた。義祐の逞し過ぎるペニスはおろか、等の幼くも力強いペニスよりも、それは精気を失っているように見える。

 わたしが、至らないからなのね……。

 志穂は、紅い唇をそっと開いて、夫のペニスを口に含もうとした。

「おい……志穂」

「……?」

「無理しなくても、いいよ」

 む、り……?

「確かに、そういう事やって欲しいけど、汚いと思いながら無理にさせるんじゃ、申し訳無いからね」

 ハッとした。瞬間、志穂の全身が紅潮する。今まで夫との営みでは、激しい口淫はおろか、先端への口づけでさえした事が無かった。しかし今は、目の前のペニスに何の躊躇もなく自分の淫乱な舌を絡ませようとしていたのだ。義祐のモノを、等のモノを、この夫のいなかった短い間に何度口で貪っただろう?そんな乱れた唇が、いつの間にかペニスを恥ずかしげもなくしゃぶる事を、当たり前の事と感じてしまっていたのだ。

「祐二さん……」

「ん?」

「汚くなんて、ないわ。わたし、祐二さんのを……おしゃぶり、したいの」

 顔は、きっと紅潮したままだ。しかし、志穂の瞳はなまめかしい光を宿し始めていた。

「『おしゃぶり』なんて。意外だなぁ、志穂」

 心臓に、ズキっと突き刺さる夫の言葉。しかしそれもまた、夫とのつながりを、他の誰かとのセックスと同じ位感じたいと願う志穂には、静かな興奮の材料となる。

 夫の先に、そっと口づけた。その行為までは、まだ正しい選択だったのかも知れない。

 

 

 しばらくの後、志穂と祐二の顔が、また熱く見つめ合う場所に来る。妻の熱過ぎる口淫によって、夫の分身は見違えるように変化した。

「祐二、さん……っ」

 何度目かの、深く長い接吻。自分の熱く潤んだあの場所のすぐそばに、愛してやまない夫の物がある。

「志穂、いいかい?」

 優しい瞳の光とともに発せられた、祐二の言葉。志穂は、何も言わずに肯いた。ただほんの少しだけ、心がざわめく。

「……んっ」

 触れた。乱れきった肉体を清めてもらう為、心から待ち侘びた、夫の分身。

「あ」

 なのに、その夫の物は、間の抜けた声と共に志穂の躰から離れた。空虚の風が、女の中心に吹き荒れる。

「ごめん。なんだか興奮しちゃって……コンドーム、忘れてた」

 そう呟きながら身体を離そうとする夫の腰を、志穂の両手が突然に止めた。

「え?」

 驚き見返した夫の目を、志穂の濡れた瞳はしっかりと見据えていた。きっと祐二が見た事も無い、淫らな妻の、瞳。

「しな、いで……」

 夫の腰に添えた両手に込められる力は、また増した。

「お、おい志穂……」

 戸惑いの色を浮かべる夫の、その猛る物を、志穂の細い指はしっかりと握った。

「このまま、して……っ」

 何かに急かされるように、志穂は夫の先端を自分の秘裂に押し付けた。何度も何度も、擦りつけるように。

 1ミリにも満たない薄い膜でさえ、志穂の躰は許せなかった。夫が入れるのでは無く、志穂がその物を無理矢理に、呑み込んだ。

 

 

 強く瞼を閉じて、唇を噛む。クローゼットの扉に手をかけ、女の影はしばらく闇の中で静止していた。

 何故涙さえ浮かんで来ないのだろう?そんな人間的な感情などは、心の奥底に潜む本能的な性欲が押し流してしまったのだろうか。

 少し乱れたパジャマを着け終え、志穂はふと、ベッドに眠る夫の方を見た。微笑むような表情で、夫は静かに寝息を立てている。きっと今まで見た事の無い乱れた妻に興奮し、激しく体を奮った疲労の中で、深い眠りについているのだろう。その姿が余計に、志穂の心を波立たせる。

 夫を恨むなど、到底出来ない。全ては、淫らな肉体を持ってしまった自分が悪いのだ。

 愛する夫に抱かれ、

 自分の望んだように触れ合い、

 互いの接点に遮る物さえ無く、

 なのに、

 なのに志穂は、

 達することが、できなかった。

 義父に無理矢理抱かれても歪んだエクスタシーを覚え、血を分けた息子とのつながりでも狂い踊った自分が、一番大切な場所で、一番大事な瞬間に、達する事が出来なかった。

 緩い動作でドアノブを握り、弱々しい足取りで、寝室を後にする。今はただ、満たされなかった躰をクールダウンする冷たい水を、コップ一杯だけ、飲みたかった。

 真っ暗な階段を経て、さらに深い闇に包まれたキッチンへ辿り着く。冷蔵庫を開ければ、周囲は仄かに明るくなるが、その薄ら青い光は、自らの爛れた紅い肉欲を嘲笑っているようにさえ思えて来る。

「んっ、んっ、ん……っ」

 そんな妄想を振り払うように、ペットボトルのミネラルウォーターを乾いた喉に流し込み、志穂は息を吐いた。しかし、吐き出された吐息は、冷たい水を飲み下してもなお、熱い。

 夏特有の生ぬるい空気が、額に汗を数粒浮かび上がらせる。志穂はその汗を腕で拭った。

 かすかな、汗の匂いがした。それはきっと、今交わった夫のものであるはずなのに、志穂は、他の誰かの匂いを想像した。

「……っ」

 刹那、志穂は自分が、掘られた落とし穴に向かい進んで足を踏み出していることに気づいた。何故わたしは、寝室から一階へと降りて来たのだろう。水が飲みたかったから?そんな些細な事の為に、あの男がいる一階へ降りて来るはずがない。

 唇を、噛んだ。想像したくもない事実が、自らの全身を打ちのめしている。

 志穂は、立ち上がった。すぐにでも、夫のいる寝室へと戻らなければならない。

「……っ!」

 自分と階段を結ぶ真っ暗な空間に、何者かが立っていた。すぐに志穂は、その正体に気づく。

「……志穂」

 ゆっくりと、自分の方へと近づいて来る影。駆け出せばまだ逃れられる状況で、志穂はやはり、逃げ出す事が出来なかった。

「やめ、て……お義父さま」

 その弱々しい言葉は、相手に届くほどの力は持っていない。例え届いたにせよ、その相手は従わないはずだ。翻そうとした柔らかい躰は、すぐに凌辱者のきつい腕の中に捕らえられる。

「抱かれに、来たのか……?」

囁きながら男は後ろから、女の胴に回した腕で腋や臍を弄る。ただそれだけで、溢れ出す事の出来なかった女の劣情が疼き始める。

「ち、違い、ます……」

もうその言葉には、微塵の説得力も残っていない。事実、義父が爪を研いで待っているはずの階下に、志穂は疑いも躊躇も無く降りて来てしまったのだ。

深く皺が刻まれているはずの腕に、さらに力が込められて行く。指先は肉の弾力を求め志穂の胸元に這う。

「んっ……い、やっ」

 喘ぎと同化した抗いなど気にする事無く、義祐は若嫁の双胸を薄いパジャマの上からしだき始めた。激しくせず、恥を倍化させるように、ゆっくりと。ブラなど着けていない志穂には、強く揉まれるよりもなお、欲望の火を煽られる。肉突は、やわやわと布地に擦られるだけなのだ。

「クククっ……」

 手の動きを止めず、女の首筋の匂いを鼻を鳴らして味わっていた義父が、低く笑った。

「祐二に、抱かれたな?」

「……っ!」

 揺れる心をさらに掻き乱すように、義祐は核心を言い当てる。

「そうか……どうだった、久しぶりの旦那の味は?」

「あ、あ……っ」

 答えられる、はずがない。

「そう言えば、あいつのモノをしばらく見とらんな。わしのと、どっちが大きいんじゃ?」

 比べられる、はずがない。

「それに……そもそも、あんたは気をやれたのか?」

 告白できる、はずもない。それ全てが、夫と自分とを隔てる深い闇へとつながってしまうのだから。

「……その様子では、満足出来んかったようじゃな。では、仕方が無い。わしがあんたの相手をしてやろうかの……」

 満たされないまま放置された熟れた中心が、義父の囁きをひどく甘い物に聞こえさせる。心の片隅の、一片だけ残った良心が、僅かな呻きを上げさせる。

「お義父さま、ゆる、して……っ」

『やめて』でも『いや』でもない、『許して』という言葉。誰に、何の許しを請うているのか。発した志穂本人にも、もはや分からなかった。

「まだ言うか……それならここで抱いてもいいぞ。あんたが食卓に手をついて、わしのチ○ポに尻を振るのを、祐二に見せてやろうじゃないか。それはさぞかし傑作だろうな」

 その光景を、志穂は想像してしまった。ありえない話ではない。今の義父なら、やりかねない。そして自分もまた、その光景に酔い痴れかねない。それが一番、恐ろしかった。

「……っ」

 戸惑いの中躊躇する女に業を煮やして、義祐は乱暴に腕を振るった。強く引っ張られたパジャマのボタンが、暗いキッチンの奥に数個弾け飛ぶ。

「い、やっ!」

 小さく叫んでも、躰は動かない。真夏前のじめじめした空気に、生肌が触れる。乳房の先端は紅い突起に張りを湛え、すぐに男の手の中に隠れた。

 義父が言った事が脅しではない証拠に、素肌の乳房をゆるゆると揉み上げながら、男性自身はしっかりと薄布2枚に隔てられた女の秘部を捉えていた。片方の手を女の尻に向け、その薄布2枚を僅かな力で引き下げれば、志穂はもう貫かれたも同然なのだ。

「……だ」

「ん……何だ?」

「だ、抱かれます……お義父さまに、抱かれます。だから、お部屋で……っ」

 溢れる寸前の涙のせいか、それとも別の理由なのか。か細く叫ぶ志穂の瞳は、際限なく潤み切って義父を見つめ返した。

 

 

 布団の上で、褐色の老人と真白の美女が頭と足を交錯させて密着している。女の口の中には熱く固い杭、男の伸ばされた舌先には濡れそぼった淫泉がある。互いの行為が最優先事項であるかのように、女はその杭をしゃぶり、男はその泉を舐め上げた。

「ん、ふっ……ちゅ、うんっ、うふっ」

 逞しいモノを口に含む志穂が洩らす呻きは、初めて義父を舐めた時よりもずっと淫靡な響きを伴っていた。舌は軟体生物のようにうねり絡まり、唇は不恰好なまでにすぼめられて、フェラチオという猥褻な運動を絶え間なく行っている。発せられるいやらしい呻きを、先程些細な振る舞いで興奮した夫 祐二が聞いたなら、その場に卒倒したに違いない。

 目の前の女芯を遠慮なく玩ぶ義祐には、志穂の激しすぎる口淫が可笑しくて堪らない。自分の前を歩き客間へと入り、僅かな手伝いをしただけで、上半身に引っかかっていたパジャマはするりと床に落ちた。あとはもう、何も言わず腕の中に崩れ落ち、全裸になった。

 何も請わず、何も強いず、何も命じず。この女は義祐が無造作に寝転がった布団の上に沿い、緩慢な動作でいきったペニスに相対した。補助灯だけがぼんやりと照らすこの部屋で、まだ義祐は一言も発してはいない。

「クククっ……」

 その代わりにたまに舌を離して、乱れる若嫁の姿を眺め低い笑い声を出す。その空気の振動が、志穂の恥辱とあらぬ興奮を煽り立てる。また義父の舌先を喜ばせる。

「んんっ、ん、うん……ん、ちゅっ、ふ……っ」

 また、志穂の呻きが艶やかになった。エアコンも無い、窓も締め切った初夏、深夜の部屋。義父と若嫁が流すいかがわしい汗の粒は、混じりぬめりながら全身に塗されて行く。先程まで確かにあったはずの、愛する夫と流した汗は、志穂の五感からとうに消え去ってしまった。

「さあ、志穂さんや……」

 はっきりとした意図を持った声が、その暗く狭い部屋に低く響いた。男の上で熱心に頭を上下させていた女は、猥褻な霞に蕩け切った瞳でその声の主を見つめた。

「クックック……いやらしい顔だな、志穂さん」

 何度も心を痛くさせた義父の冷笑。しかし志穂はそれにもう抵抗せず、よろよろとした動作で仰向けに寝転んだ。申し訳程度に右手で草叢を隠し、たわわに熟れた果実のような乳房は、露わにされたままで呼吸と共に息づいている。

「ふうむ……」

 口の端が、自然に上がって仕方が無い。絶対に手に入れられなかった物、手に入れてはならない物を、義祐は今手にしているのだ。あの日、欲望に任せて犯したこの女の肉体。それはたった一度であっても、生涯に相当するほどの快感であるはずだった。しかし今は、この女の躰全て、いや女の細胞全てが、自分のために淫らに変化し尽くしてしまったようだ。

「綺麗だよ、志穂さん……あんたの髪も、肌も、おっぱいも、腹も、尻も、ま○こも、っ全部綺麗じゃ……」

「……恥ずか、しいっ」

 全身の火照りが、脳にまで達した。一つの家の中に、幼い息子がいる。真上の部屋には、愛する夫が眠っている。そんな道徳が映し出す映像さえ、娼婦のように開発された肉体と、逞しい牡を求める牝の本能の前では、燃えさかる炎に注がれる油に過ぎない。

 許して。祐二さん、等……わたし、お義父さまに汚され無くてはならないの。そうしないと、どうにかなってしまう……。

汚され、たい……。

「……」

 たった一つ、隠れていた花園が露わになる。そこを覆っていた右手は、溢れ垂れた蜜を僅かに纏って、これから始まる突きに耐えるため、赤い唇に甘噛みされた。

 ほんの少し羞恥を帯びて伸ばされていた脚に、ゆっくりと力が込められて行く。十数秒後、その真白い脚は、暗い部屋に見事なM字型を浮かび上がらせた。相対する男には、乳房も、臍も、隠されるべき女陰も、その下に息づく菊門でさえ全て、露わにされていた。

「どうして、欲しい……?」

 それ以外、必要無かった。脅迫を含んだ単語など、今の義祐には浮かんで来なかった。

「……しい」

「ん?聞こえんよ」

「……ほ、しい。お義父さまのが……」

「……わしの、何が?」

「っ……、おちん、ちん」

「ふーむ。やっぱり『おちんちん』ではぴんと来んな……」

「ああ……っ」

「あんたが欲しいのは、これか?……わしはこれの事を、チ○ポといつも呼んでるがの?」

 膝立ちした義父が半歩近づく。カッカと火照った場所の十数センチ前で、これ見よがしに逞しい肉茎を振り立てる。

 それが手に入れられないのなら、発狂してしまいそうだった。

「お、お義父、さまの……ち、ちっ……ああっ!」

 燃え上がらんばかりに紅潮する顔。しかしもはや志穂の思考には、その淫猥極まりない三文字の隠語と、自分のすぐ前で誇示されるペニスしか存在しなかった。

「お……お義父さまの、ちっ……ち、チ○ポ……欲しい、のっ……ああっ!」

 目も開けず、細い指先を唇に噛んだまま、志穂は囁いた。淫猥な言葉は、それだけで女の心を波立たせる。

「そうか……わしの、このチ○ポが欲しいんじゃな?」

「んっ……ちん、チ○ポ、欲しい……ほ、しいっ」

 布団をゆらゆらと彷徨っていた左手が、艶めかしい動作で、汗粒を浮かび上がらせている下腹部に辿り着いた。その指先は、決して直接ヴァギナに触れる事はしない。しかし、その周辺の女性特有の柔らかい肉をくにくにと撫でさすりながら、収まるべき物を待っている中心を刺激していた。その指先は、誘っているのだ。

 押さえた笑みでは耐えられないほど、義祐の心は躍っていた。早朝志穂の躰を貪ってから、焼酎をあおりつつ何気なく眺めたテレビ番組。美しい女神が半裸で描かれた絵画。鑑賞者が「素晴らしいエロス」などと褒め称えていた。義祐は嘲う。わしの志穂の方が、よほど女神に相応しい。絵の中の女神が、男に「欲しい」などと甘くねだるだろうか?秘められた場所をしとどに濡らして、男のモノを淫らな表情で欲しがったりするだろうか?

「……んっ、んふ……」

 M字の脚の膝を持ち、少し開けば女は喘ぐ。義祐の目に映る光景は、さらに眩しくなる。

 義祐は、まだこの女を、じらしてやりたかった。

「ふ、うん……っ!」

 固い物が、自分の熱くてたまらない部分に触れる。粘膜はそれだけで歓喜の蠢動を開始するが、肝心の本体が、それ以上侵入しては来ない。代わりに、その潤んだ表面や粘つく突起達を何度も擦り上げるように往復する。その感触は、確かに小さな火花を躰のあちこちに弾けさせてはくれるが、どうしようもなく昂ぶらされた志穂が望んでいるのは、全身の全てを満たすような、大きな挿入感だった。大きな、モノだった。

「ああっ、お義父さま……意地悪、しない、でぇ……」

 瞳が、義祐のほうを見た。熱に浮かされたような、濡れた視線。

「困ったの。あんたの望み通り、チ○ポをくれてやってるじゃないか……」

 手先で巧みに自分自身を上下左右に動かしながら、義祐はそっけなく言う。先端は、溢れた愛液でびしょびしょだ。

「く、うっ……い、れて、欲しいの……っ」

「チ○ポをか?どこに?」

「ああ……っ!」

 義父が言わせたい言葉は分かっている。今まで義父は、あそこの事を何度もそう言って来た。日常では絶対に言う事の無い、卑猥な、卑猥な……。

 上下するペニスと入り口が、ぴちゃぴちゃと音を立て始めた。それは、女を淫らにさせる催眠術のように、志穂の耳に届いた。

「お、おっ……わたしの、オマ……オマ○コ、にっ……お義父さまの、チ○ポ、い、れ、てぇ……っ!」

 義祐が笑った。

「お義父さまのっ……ち、チ○ポ、入れて、下さい……入れて、激しく……突いてっ!」

 たまらなくなった志穂の腰は、男のを迎えるように押された。瞬間、まるで獲物を飲み込む獰猛な獣のように、女の淫口が男の先端を咥え込んだ。そのまま、もっと深くと言わんばかりに、尻を小刻みに前後させる。その運動に、垂れんばかりの淫液が、接点で小さく弾ける。

「あ、ひ……い、ひっ」

 それはまさに、女が色に狂いつつある動きだった。たった数センチ、こわばりが侵入する感覚が欲しくて、志穂は淫らに尻を振る。

「おやおや、勝手に入れてしまったか……ほんとにあんたは淫乱な女だな」

 頭の部分が、ぬらぬらと粘液にまみれて姿を現したり消したりしている。愉快で仕方が無い。しかし、そんな些細な性感で満足する義祐では無い。

「あ、ひいっ!」

 渾身の力を込めた、義祐の一突き。自分でも思わぬ高い声が洩れ、慌てて固く唇を噛む。しかしそれでも、この深夜の狭い客間に、くぐもった濡れ声が断続的に響き始める。

「さあ……本格的にいくぞ。志穂さん、あんたは祐二の真下で、わしに突かれて、よがり狂うんだ……クククっ」

 低いトーンの声を合図に、義祐の鋭い抽送が開始された。女の心を焦らした分、肉柱は充実し切っている。

「ああっ……んっ、ん、んく……っ」

 激しい前後運動。膣内を満たす熱い肉のこわばり。背徳感。がくがくと揺さぶられる頭の中で、全てが快感に直結していくのを、志穂は悟っていた。

 戸惑いと後悔に彩られていた、先程のつながりとは違って。

「ほほう。いつもより中が食い締めてくるぞ。あんまり年寄りをいじめんでくれ……」

 そう言いながら、義父の逞しいペニスは存分に志穂の内部を蹂躙する。しっかりと腰肉を抱え、自分の兇器を熱い奥深くに捻り込む。志穂はその一突き一突きに必死に耐え、代わりに素晴らしき快楽を得るために、躰を自然に揺らめかせ始める。それは義祐に強いられたものではない、本能から来る動きだった。そしてもはや、その本能の躍動を、志穂の道徳は止めようとはしなかった。

「ひ、ん……っ、くふ、んふっ!」

 押さえている声も、洩れ出でれば高く闇に響く。閉じようとすればするほど艶やかな唇は、わなわなと興奮に震える。

「いいぞ志穂さん……もっと突いてやるから、あんたももっと尻を振って、祐二に聞こえるくらい泣くがいい……そら、そら」

 存分に尻の感触を味わった義父の手が、今度は闇の中でも確かに輝く脚をしっかりと掴んだ。ぐいっとそのまま高く差し上げ、互いの性器がこれ以上無く接触した秘部を大きく開いた。

「ひ……っ」

 無論かまわず義祐は強烈な攻撃を繰り出し続ける。志穂の開けた薄目には、その部分が否応無く飛び込んでくる。

 ああっ……わたしのオマ○コ、お義父さまのモノをあんなふうに咥え込んでる……ぐちょぐちょに、なってる……なんていやらしいの……わたし、もう……おかしく、なる……っ。

「くうっ……ほほう」

 義祐が思わず小さく呻くほど、志穂の腰の動きが鋭くなった。腰を男の方にぶつけるようにして、激しい突きに対抗している。内部もまた、熱いヴァギナの粘膜が、男の肉の塊を締め潰してしまうくらいに食い締めている。

「く、う……うんっ、ん……っ!」

 しかしそんな狭い肉洞を、義祐の固く張ったえらは確実にこさぎ立てる。ぬめる粘膜を構成する細胞は、その乱暴な衝撃を甘美な神経信号にして全身を痺れさせていく。

 肉のぶつかる音。かすかに骨の軋む音。そして、粘った液体と汗の交じり合う音。天井に向かい高く差し上げられた左脚は、愉悦に溺れるさまを示すように親指人差し指を絡ませて美しく反っている。

「……ううむ、なんだか疲れたな。志穂さん、しばらくの間上になってくれんか?」

 言うが早いか、義祐は体を折って志穂の背中に腕を廻した。ぐっと力を込め、そのまま後ろに倒れ込む。なす術もない志穂は、また女上位の体位で義父の冷笑を眺めなければいけなくなった。疲れた、などと言っているがそんなはずは無いのだ。

「……っ」

「さあ志穂さん。思う存分動いておくれ……いつものように、涎を垂らしながら尻をいやらしく振っておくれ……」

 鋭い刃のように心に刺さる義父の嘲り。しかし、汚れる事を求めた今夜は、そんな言葉も秘所の潤いの元となる。

「……んふ、ん……」

 小さく喉を鳴らして、志穂はその肉感溢れるヒップを揺らし始めた。重力に支配される騎乗位という体位は、女の淫らな興奮を一層煽り立てる。

「ん、ひっ……んく、うんっ」

 美しい黒髪は流れ落ちる汗によって額や首筋に張り付く。そこから牝のフェロモンが溢れ出ている。たわわな乳房は、まるで上下する事が当たり前のようにぷるんぷるんと激しく揺れ続けている。

「どうした志穂さん……両手が遊んでるぞ?折角だから、その大きなおっぱいを自分で弄ってみらんか」

 淫猥極まりない美女の躍動を眺めている義祐が、志穂に指示する。まるで攻撃する気が無いように、義祐の両手は頭の後ろで組まれていた。淫乱な若嫁が恥辱に耐えながら、ただひたすら快感を求め腰を振る姿を眺める事で、さらに貶めるつもりだ。

「ふあ……っ、んふうっ!」

 そして志穂は、それに抗わなかった。指さえ埋もれてしまうほど自分の乳房を強く掴み、揉みしだき始める。男を、そして自分さえ惑わしてしまうほどの、豊かで淫らな乳房。無論腰の揺らめきは止めないままで。

「ようし、いい調子だ志穂さん……どんどんおかしくなるがいい」

 義父の囁きは、志穂の耳に届いていただろうか?真っ直ぐに挿入された怒張が、躰全てを貫いているように感じられる。直立しているからこそ、自分が右に腰を振れば左の膣壁を擦り、左に腰を振れば右の膣壁を掻き立てる。淫らに振舞えば、その全ての動きが痺れるような悦びにつながる。乱れずには、いられない。

「ほら尻を触れ……そうだ、いいぞ。おお、そうだ……まったく、淫乱になったもんじゃ」

「く、ひい……ふん、んく……っ!」

 縋るものが無ければ、きっとあらぬ声を上げてしまうに違いない。そして、志穂が今縋っている物は、義父の狂おしいペニスと、自らの豊か過ぎる乳房だった。掌に力を込め揉み込む乳房、その先に息づく桃色から紅く変わった乳首を、中指と人差し指で痛いくらいに強く挟む。そう、義祐がいつも志穂の胸を愛撫しているように。

「ひ、い……ん、い、いっ……!」

 下半身にほとんどの力を込めて、志穂は腰を振り続ける。黒い髪を振り乱し、美貌をこれ以上無い程反らして感じ入る。距離にしてほんの数メートル上に夫が眠っているのに、志穂は乱れ狂う。夫への償いのために、今夜淫らに振舞おうと決意しても、すぐに義父の逞しい躰によってそれすら忘れ去ってしまっていた。

「あ、ひいい……っ!」

それは、泥酔の上眠っていなければ、祐二でさえ気づいたであろう大きな喘ぎだった。

義祐は、突いた。我を忘れ淫らにヒップを揺らめかせていた若嫁の膣奥に向け、固くいきったペニスを突き出す。子宮まで突き破られてしまいそうな衝撃に、志穂は思わず高く喘いでしまった。そして、イった。

「くっくっく……気をやったか志穂さん」

「ひっ、あ……あ、くう……っ」

 全身が細かく痙攣し、瞬く火花が脳裏を駆け巡る。しかし志穂は、志穂の腰は、まだ止まらない。義祐が開始した継続的な躍動に同調させるように、さらに巧みに美しいヒップをくねらせた。

「よおし……よく頑張ったな。ご褒美だ、あんたの大好きな格好で犯してやろう……」

 そう言ってすぐに、義祐は志穂の腰を持って、そのままその女体を浮かせた。力無く布団に倒れ込んだ志穂に、確かにその女の義父であるはずの男は、体をゆっくりと起こしながら、冷たく囁きかける。

「志穂さん、あんたの好きな格好だ……獣みたいに地べたに這って、男に尻を差し上げる、あの格好だぞ……」

 横顔を布団に埋めた志穂の耳に、その言葉が響く。地べたに這う、尻を差し上げる……四つん這いによがる自分の姿を想像するだけで、また脚と脚の間に淫水が溢れて来る。

「そうだ。その調子で尻をわしに見せておくれ……」

 志穂は、当たり前のように、四つん這いになって行く。肉感的で、しかし形の整った美しいヒップが、男なら誰でも痺れてしまうような尻が、ただ一人の男のために向けられる。

「ん、んふ……ふう、んっ」

 暗い部屋の中に、美しい半球が浮かぶ。布団に顔を埋め、呻きはくぐもっている。しかしその代わりに、義父に向かって突き出されている尻は、侵入を誘惑するようにゆっくりと振られている。

「……お義父、さま。い、れて……っ」

 少し大きな声で、志穂がねだった。我を忘れて、声の歯止めが効かなくなって行く。夫の真下で、誘惑する志穂。夫の事を忘れてしまいそうな、志穂。

「よしよし、しょうがないな……また入れてやるぞ、志穂」

 意図的に、義父は若嫁の名を呼び捨てた。義祐はこの格好で、志穂を狂わせるつもりでいる。素晴らしい弾力を湛えた尻肉を両手で強く掴む。指の跡がしっかりと残る程に。

「く、おお……っ」

「い、ひっ……い、いいっ!」

 ほんの一瞬だけ、自分の内部から消えていた存在感。しかし、今度は更に大きな圧力を持って、ぬめった花芯に突き刺さっていく。固く閉じていなければいけない唇は、熱い吐息を伴ってゆっくりと開いていく。また、淫乱女の中心は、イってしまった。

「ああ……お義父さまっ、いい……っ!」

 自分では抑えてるつもりなのだ。しかし、躰に埋没していくモノの固さ、熱さ、形、逞しさを蠢く膣壁で味わううち、声の障壁もまた哀しく脆く崩れていく。

「ほっほっ、やっぱりこの格好がいいようじゃな……すぐに食い締めて来たぞ」

 まだ埋没し切っていない自分のペニスと、それを嬉々として呑み込んで行く爛れたヴァギナ。二つを同じ視界で捉えながら、義祐は心の奥底から沸き上がる本能の喜びに酔い痴れていた。

「ひい……く、ううっ!」

 しっかりと女の狭穴を蹂躙しつつ、義祐の肉棒が若い女を再び串刺し始める。志穂はそこで初めて高くトーン変化していた声に気づいた。慌てて唇をつぐんだが、それまで知らずに発していた淫らな喘ぎは、もう取り戻せなかった。

「……ふん、いまさら声を抑えるか。祐二に聞かせてやればいいんじゃ。さっき何と言っとったかな。そうそう、『わたしのオマ○コにお義父さまのチ○ポを入れてっ!』じゃったな……」

 羞恥を覚えて然るべきの嘲りに、志穂は腰の躍動と括約筋の収縮で応えた。狂い始めた女の肉体は、躰を満たしているものが禁じられたモノであっても、絶頂に駆け上がる為にこの上なく猥褻に奮われる。

「く、ひい……い、いっ!お、あ、お義父、さ、まぁ……っ!」

 確かに抑えてはいる。しかし声は抑えれば抑える程、淫らな響きを含んでいく。

「おおっ、おうっ……志穂、もっと狂え、もっと哭けっ!」

 男と女の接点から、淫猥この上ない粘着音が沸く。腰と尻、激しくぶつけ合わされるその場所から滴る愛液は、太腿やふくらはぎの曲線に沿って、幾筋幾粒も客用の布団に流れて行く。

「ほほう……」

 肉の悦びに痴れてもいいこの状況で、義祐は悪魔的な発見をする。突く。ひくつく。引く。すぼまる。そんな生物的蠢きを繰り返している器官を、見つけてしまったのだ。今まで気にしなかった訳では無かった。その奇妙な肉のすぼまりに、少なからず性的魅力を感じていた。先程正常位で貫いた時も、突き入れようとする女陰の下に微かに見えたこの場所を、美しいと思えた。

 きっと志穂の思考は、牝の悦びに霞み切っているはずだ。尻肉をしっかりと抱えていた左手がそっと離れても、垂れ落ちる涎に気に止めず善がっている。

 今まで何度も志穂の花芯を玩んで来た中指を、義祐は一点に向けた。口の端が、冷笑によって醜く上がる。

「……あ、あうううっ!」

 その叫びは、今夜一番高く響いた。補助灯の色によって、全てが暗い肌色に沈む客間。その部屋の中心の中心。その穴は、老人の中指によって2センチほどに拡がっている。老人のその愛撫を超えた攻撃に、また淫乱な若嫁は、イった。

「い、いや……っ、そんなの、あうっ……ふ、いっ、い、やぁっ!」

 嫌。嫌悪感の対象は、この期に及んで義父に向けられた物では無い。そう、志穂は自分の躰に嫌悪を感じた。おそらく生まれてから誰も触れた事の無い場所、そしてこれから触れられる事の無いはずだった場所に指を入れられ、エクスタシーを感じた淫らな肉体。

 アヌスで、イった自分。それはもはや、淫乱という表現すら相応しく無い。志穂は混乱する意識の中で思う。変態、だと。

「ほおっ……またオマ○コが食い締めて来たぞ。あんたは尻の穴でも感じる女なんじゃな……」

 猛る兇器で膣を穿つ速度と同調させ、義祐はアヌスに入れた中指を往復させる。志穂は、汚れた愉悦になすがままになるしか無かった。

「ひい、んっ……い、やぁ……あく、あふっ、う、うんっ!」

「イイぞ志穂……そら締めろ、そら振れ、お、おおうっ!」

 後背位で駆け上る、若嫁と義父。義父は美しい若嫁を、それこそ尻の穴まで支配し尽くした感動に打ち震え、若嫁は獣とまるで同じ格好で激しく尻を振り、義父のペニスをこれ以上無い位ぬめる内部で食い締める。アヌスに突き刺さる指も、たまらなく狂おしい。

 二人は、確かに近づきつつある激しい絶頂を悟っていた。余りにも淫らで、余りにも猥褻な、禁忌の繋がり。

狂い哭く、寸前。低い二つの音が、鳴る寸前。

 

 

 トン、トン。

 

 

 直前まで志穂を嘲る言葉を吐いていたはずの義祐の口さえ、その音の前では固まってしまった。全てを裏切り欲望のままに抱かれていた今の志穂なら、なおさらだ。

 トン、トン。

 もう一度、そのノックの音は鳴った。誰かが確かにこの客間のドアをノックしている。肉体の一番奥深い所で繋がる二人の意識に、恐怖という名の波が押し寄せて来た。息子である祐二が、愛する夫である祐二が、音に続いて現れたなら、二人の人生は破滅する。間違い無かった。

「……!」

 迷いを振り切るように、義祐はまた動き始める。息子に見つかる恐怖など、美しい志穂を抱く肉の悦びに比べれば些細な事だ。志穂の膣奥に今放出出来ないのならば、死んだ方がいいとも思える。

 ああ、そのドアを開けるがいい。お前に見せてやる。お前とは満足できずに、わしに突かれて気をやる志穂の美しい姿を……!

 志穂は、さすがに恐怖の真っ只中にいた。躰の揺らめきも、完全に停止した。しかし、本能に司られた女の内部は、男のペニスと指先を締め上げ続けている。粘膜の収縮は、止まらない、止められない。

 トン、トン。

 同じトーンの音が再び鳴る。義祐は覚悟し、志穂は絶望する。

「……ママ?」

 義祐の緊張は、一気に解けていったに違いない。しかし志穂にとっては、その声は決して安堵の音にはなっていない。声の主は、息子 等。等がドアのすぐ外にいる。ドアのすぐ外にいて、客間の中に向かって『ママ』と呼びかけているのだ。

「ママ、いるの?」

 余裕の出て来た義祐は、ほんの少しの中断も勿体無く、すぐにドア外の孫に話し掛ける。突きは、無論止めはしない。

「等、じいちゃんだ。じいちゃんが今日、この部屋に泊まらせてもらっとるんだ」

「……」

 祖父の言葉に、等は応えなかった。数秒間の沈黙が、志穂には堪らなく痛い。

「……ママは、いないの?」

 そして、その愛息の言葉は志穂の心を鋭く突き刺す。

 等は気づいているのだ。この部屋に、確かに母親がいる事を。祖父と一緒に、母親がいる事を。

そして、何をしているのかを……。

「ああ、ママはおらんよ。じいちゃんがいるだけだ」

「……そう」

 低い響きの返事は、母親でありながらいてはいけない場所にいる志穂の激しい動揺を誘う。息子の気配がドアから離れていくのを感じた時、義父の冷たい囁きを受ける。

「ふうむ、まだ等もママが恋しい年頃なんだな……くっくっく。等がいた時、あんたのオマ○コはいつもよりずっとわしのを締め付けとったぞ……」

「……っ!」

 きっと、それは事実。淫乱な自分を実感する、刹那。

「さあ、これで心置きなくあんたを愛せるぞ。志穂、存分に気をやるがいい……」

 義祐が、遠慮ない攻撃を再び繰り出し始めた。頂上に上り詰める寸前にいた志穂には、ここに至ってもはやその攻撃に耐える術など無い。霞んだ思考を、ただひたすら声を抑えるのみに廻すしかなかった。

「いいぞ、さあ狂え……そうだ、もっと腰を振るんだっ……いいぞ、おおう、志穂っ!」

「く、ひっ……い、あっ、んっ!んふう……っ!」

 恐怖から止まっていた女の躍動も、もう当たり前のように再び激しく動き始めている。

 心に、等の存在が小さな棘のように刺さっているが。

「おおっ、おうっ!し、志穂……っ、イケ、イケえっ……おおっ!」

「あう、ん……っ、あ、お、おと……う、さまぁっ……ひ、いんっ!」

 義父のペニスは、志穂の最奥点にしっかり捻り込まれている。肉のすぼまりに入れられた左手の中指は、もう第二関節を過ぎて侵入している。志穂は、それに気づかない。気づかないどころか、まだ余地があるかのように、激しく男の方に尻を突き出す。色に狂った、女。牝。

「おうっ……イクぞ志穂っ、おお、おおおっ……く、お、志穂ぉ……っ!」

「ひあっ、あうっ……だ、めっ、ダメ、ぇっ……あう、あっ、い、い……イ、クうっ!」

 絶頂の言葉は、階段を上がり切る前の愛息に、届く。等は一瞬足を止めたが、またすぐに部屋へと向かい始める。

 自分の膣粘膜が、義父の萎みゆく肉柱を未練がましくきつく締め上げているのを感じる。きっと、溢れる淫水がそのモノに浴びせ掛けられているのだろう。

 涙が、溢れる。夫とは得られなかった女の悦びを、義父と得る。どうしようもない事実。

 涙を流しながら、力が抜け自分にのしかかって来る義父の重みを感じながら、志穂は絶望の闇に、深く深く堕ちていった。

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