!CAUTION!

・神無×双魔前提の双魔×コウモリネコです。
・再録済作品のソード×ネコ(あのレオタードは服でなく地毛)と既刊の神無×双魔(イオス×双魔含)の設定を踏まえています。
・エロギャグパートとややシリアスパートに別れる分岐があります。
・作中時期は原作終了後の設定ですが、絵柄&キャライメージは4巻~5巻冒頭辺りの、まだ頭身の縮んでない双魔でお願いします。

※ 最重要警告 ※

双魔に関して「姫」とか「(小さくて可愛いもの系)ちゃんv」とか「ピュアピュア」「純真無垢」という系統のイメージをお持ちの方は気分を害すること間違いないので、読まない方がいいと思われます。 つか後から怒られても困るので、そういう人は読まないでくれ頼む。
(特に分岐バージョンbの方。シリアスにおけるうちの双魔は、過去のトラウマの反動で、自分安売りしまくりの一部壊れた人になってます)

以上、OKの方のみどうぞ↓



◇ Love Sauce ◇


 鳳凰学園の地下武闘会も、天界魔界大決戦も、ついでに台風シーズンも終わり、天野家は今日も平和だった。
 所用で外出した父の代わりに、イオスはスーパーへ買い物に。双魔は洗濯物のアイロン掛けを終え、一息ついた日曜の昼下がり。
「―――双魔双魔、おやつの時間ニャ!」
 コウモリネコの催促に、双魔は壁の時計を見上げた。
「あー、もうこんな時間かあ」
「今日はささみスティックがいいニャ~」
「はいはい」
 キャットフード置き場の棚を漁り、ご所望の品を探し出す。
「後でイオスさんがプリンか何か買ってきてくれると思うけど、これでいいの?」
「なんでかは知らニャいけど、この格好の時と変身後とでは、食べたいものが違うのニャ」
「へえー」
 なんて会話を交わしながら、ドライパックのビニールを開けようとした双魔は、裏側にくっついている何かに気付いた。
「あ、マタタビパウダーのおまけ付きだって」
「ニャ?!」
 コウモリネコは目を輝かせ、しっぽをビリリと震わせた。
 シーリングされていた小袋をはがし取り、裏の注意書きを確認する。
「えーと‥‥『日常与えているフードにトッピングすると食欲増進効果があります、単独で与えると猫ちゃんのストレス解消に、一袋で成猫一回分です、子猫には量を加減して―――』」
「あちしは子猫じゃニャいから一袋OKニャ!」
「変身後がどう見ても十歳未満なんだけど‥‥」
「あれは人間界で使える魔力の限界のせいニャ! あちしはもうコドモじゃニャいニャー!」
「ほんとかなー」
 魔界に行った時も十分小さかったけど。という双魔の突っ込みはしかし、ネコの耳にはもう届いていない。封を切るのも待ちきれぬ様子で、小皿にマタタビを振り出すや否や、ダッシュで鼻面を突っ込んでくる。おかげで粉の最後の方がちょっと脳天に降りかかったが、ネコは気付いた様子もなく、夢中でマタタビを舐め始めた。
 そうして小さじ半分ほどのパウダーが無くなる頃には、ネコはすっかり酔っ払っていた。空っぽになった皿にも気付かずしばらく熱心に舐め続けた後、コロリと腹を見せてひっくり返る。
 そのままウニャウニャと転げ回る様子は、人間の酔っ払いとそう変わらない。普段は白っぽい鼻の頭も、今は濃いピンクになっている。
 神無と違って酒も飲めないし、酔う前に頭痛がする双魔には、その感覚が今ひとつ解らない。猫とマタタビって不思議だなあ、アレ苦手な猫っていないのかなあ―――なんて考えながらふと気付くと、開封前のささみスティックは、すっかり存在を忘れられていた。
「あー‥‥どうしようかな、これ」
 隣の皿に出しておけばいいのか、それとも鮮度を重視して、ネコが酔いから覚めるのを待って改めて開封するべきか。
 と、ささみスティックを手に考えていた双魔に、何かがどんと突き当たった。
「わっ」
 咄嗟にバランスを取り損ね、絨毯の上にひっくり返る。したたかに後頭部を強打して、しばらく視界がホワイトアウトする。
「―――おい、大丈夫か?」
 目の中に星が行き交う中、不意に聞き慣れた声がした。
「あたたた‥‥あ、ソードさん」
 後頭部をさすりながら目を開けると、宙に浮いたミニサイズのソードが、ひらひらと目の前で手を振っていた。
 その視線が、ふと横を見る。
「次来るぞ」
「え、―――うわ!」
 ソードの警告とほぼ同時に、ブン、と何か大きなものが頭上すれすれをかすめていった。
 慌てて身を屈め、やり過ごしてから、ふう、と安堵の溜息をつく。
 が、ワンテンポ遅れて来襲したものがぴしりと顔面を真横に打った。
「あう」
「変わんねえなあ、お前も‥‥」
「痛たた‥‥あー、やっぱり」
 横一文字の太いミミズ腫れが見る間に浮き出す顔をさすりながら、双魔は今度こそ溜息をついた。
 目を向けた先ではお約束通り、床で転げ回っていたコウモリネコが、ネコ耳としっぽが残ったままの、半端な人型に変身していた。
 最初に双魔を突き飛ばし、次に頭上をかすめたものは、細い手足には不釣り合いに大きい、ファンシースリッパのようなネコの足だった。あまりの早さに見えなかったが、顔面を鞭打ったのは多分しっぽだろう。
 いくら人間の子供サイズとはいえ、猫型気分のまま転げ回られると、可動範囲は意外と広い。そして直撃のダメージも大きい。マタタビ酔いが覚めるまでは、不用意に近付かぬが吉である。
 コブの出来た後頭部をさすりながら、安全圏まで距離を取るべく、双魔はよれよれと立ち上がった。
 が、
「ん? どこ行くんだよ」
 ソードが行く手を塞ぐようにして、目の前にパタパタと飛び上がった。
「どこって、安全圏に避難を」
「何だ、やんねえのか?」
「何を?」
「ほれ」
「‥‥うわぁ!」
 足元を指差すソードにつられ、目を向けた双魔は次の瞬間、思わず叫んで飛び退いた。‥‥つもりだったが、驚きのあまり再びこけた。
「何で逃げるんだよ」
「だ、だってー!」
 などと言い合う二人の傍らでは、ネコがウニャウニャと鳴き声を上げながら、尻を突き出して身悶えていた。
 どうやら思いのほかマタタビ酔いが強く、疑似発情期に突入したらしい。とろんとした目はあらぬ方向を泳いでいて、すっかり正気を失っているのが解る。
「よし、ヤっちまえ!」
「だ、駄目だよそんなの!」
「何でだよ」
「何でって言われてもー!」
「だってコイツ、近頃は俺がマタタビやるって言っても警戒して近寄っても来ねえんだぞ!」
「それはソードさんがひどいことするのが解ってるからでしょー!」
「なのにお前がやったマタタビは食ったってことは、お前ならヤってもいいってことだろーが!」
 何故か逆ギレして胸を張る。双魔はがくりと肩を落とした。
「それって単に、ソードさんが信用されてないだけ―――」
「何?!」
「いやあの、ぼくはそんなことしないって安心してるからだと思うよ、それは‥‥」
「そりゃ逆に男だと思われてないだけじゃねえのか?」
「ええー」
 などと言っている間にも、傍らのネコの求愛行動はエスカレートしていく一方だ。
 その上、変身後だという自覚があるのか、それとも無意識に現状の身体に見合った行動を取るものなのか、頬擦りしたり抱きついたりと、動物のそれとは明らかに違う、怪しげな動きが混ざり始めている。
「うわあ、何か人間のお誘いっぽくなってきた」
「この体型じゃ色気もへったくれもねえけどな」
「それでもヤっちゃったソードさん鬼畜すぎ」
「鬼じゃねー、悪魔だ!‥‥ていうか、コレ見てやんねーのは男じゃねえだろ!」
 コレ、とソードが指差した先では、か細い脚を無防備に開いて、ネコが腰をくねらせていた。
「‥‥うわ!」
 つられて目を向けたその一瞬、毛皮の合間にちらりとピンク色の粘膜がのぞくに至って、さすがに双魔も顔色を変えた(赤い方に)。
「ちょ、ナナちゃん、中身見えてる、中身!」
「中身ってお前」
 あたふたと目を逸らしながら、何か覆うものはないかと周囲を探す。
 が、いかんせん場所がリビングなだけに、手頃な毛布もタオルもない。
「あーもう!」
 取りに行く、という発想が出る余裕もなく、双魔は慌てて羽織っていたシャツを脱いだ。
 転げ回ったり抱きついたりとひとときもじっとしていないネコに、苦労してそれを巻き付ける。
 長袖の部分を紐代わりに縛り、とりあえず腰回りを覆い隠すと、双魔はぐったりとへたりこんだ。
「つ、疲れた‥‥」
 その膝で、ソードがぼそりと指摘した。
「‥‥とか言いながらしっかり勃ってるじゃねーかよ」
「いやあのそれは、パンチラどころじゃない代物を見ちゃった以上、そこそこ健康な高校生男子としてしょうがないというか!」
 さすがに双魔もキレ気味に叫ぶ。しかし悪魔は動じない。
「あの程度のもん、お前だってアリアケとかいうだだっ広いとこで買ってくる本で見慣れてるだろ」
「リアルと二次元はまた別だって!」
「ともかく、お前がやんねえなら入れ替わってオレが―――」
「駄目ったら駄目ーーー!!」


※オチは両方とも神無×双魔

(2010/02/16)