◇ 僕のペットを紹介するよ ◇



「ペット談義~」の続き)

職務を終えた影サタン様が、シバ(新)に外出する旨を告げた。
「知り合いにペットを見せる約束をしていたんだよ」
「ペット‥‥」
意外と動物好きな影サタン様は、結構な数の生き物を飼っている。 シバが大まかに把握しているだけでも、ネコからローパーからドラゴンまで、大小取り混ぜていたはずだ。
どれのことだろうか、と思っているうちに、サタン様は外出用らしき人間の服に着替え始めた。
「‥‥その知り合いは人間界にいるのか?」
「というか人間そのものだよ。だから魔界の生き物が珍しいようでね。是非見たいと言われていたんだ」
「それは‥‥相手をこちらに連れてきた方が早いのではないか?」
何も魔王が自ら出掛けていかずとも‥‥とか、そもそも魔界の生き物をあちらに連れて行くのは一苦労ではないのか‥‥とか、シバが眉間に皺を寄せて考えていると。
「ふふ、心配しなくとも大丈夫だよ」
何故か楽しげにサタン様は言い、
「向こうへの迷惑を案じているようだが、これはソードへのささやかな嫌がらせも兼ねているからね」
と付け加えた。
「‥‥‥‥‥‥」
‥‥嫌がらせの何がどう「大丈夫」なのか。
そしてソードへの嫌がらせとペット自慢が、どういう脈絡でつながっているのか。
この世界においては和解済み(の筈)のソードに、なにゆえ嫌がらせをしに行く必要があるのか―――
しばしの間、シバは苦悩した。
が。
「‥‥夕食までには戻って来られるのだろうな」
「勿論だよ。僕が君との食事を楽しみにしていない訳がないだろう?」
「‥‥そうか」
ならまあいいか、と割り切ることにして、シバはそれ以上の追求をやめた。


―――そして人間界。

「‥‥双魔。今度は何をやらかした」
魔界の底から響くような声で、神無が襟首を引っ掴んで言った。
「え、な、何??」
「‥‥見ろ」
ぶら下げた双魔を突き出すようにして、不機嫌な神無が指し示した先には、窓の向こうをいっぱいに塞いだ、巨大なドラゴンの鼻面が―――
「うわあ!!(喜)」
「喜ぶな!」
やっぱり双魔が元凶か!と何の根拠もなく断定しつつ、双魔を投げつけるかルシファーを抜くか、と神無が逡巡していると。
「やあ。約束通り、一番珍しいペットを見せに来たんだが―――兄弟喧嘩は後にして、ひとまず窓を開けてくれたまえよ」
 と、窓ガラスをコンコンと叩きながら、ドラゴンの頭に乗った影サタン様が言った。

「はーい、ちょっと待っててー」
「‥‥待て。何で窓から入ろうとしてるんだ‥‥(魔王のくせに行儀が悪いな‥‥)」


「影サタン様の弁明編」に続きます)
(2013/11/10日記)

(そしてソードは寝ていたので、嫌がらせには失敗した模様です)
(「人間界にそんなもん連れてくんな迷惑だろーが!」という方向なのか、それとも「魔王の権力で手に入れた珍しいドラゴンを見せびらかしに来たのか! ぐわームカつくぜ!」 というリアクションの、どっちを期待していたのかは謎ですが)
(ちなみにこのシバ(新)は元世界のシバとは別人なので、影様一筋で激愛中ですよ。<ソードには親心寄りの友情しか持っていないので、滅多なことでは心配とかしないらしい)