ぼくたちの真実の証明<8>
* * * * * *
……ああ。鴻臣か。
うん? いや、ぼーっとしてただけ。……そう? 元気だよ。
え、……ああ……うん……実はね、ちょっとメゲてるとこ。
さっきさ……電話でね、別れたいって言われた。まあ、うん、予想通りではあるけど……もうちょっと先かなって……。
実験入っちゃって。二週間、会えなかったんだ。キツイよな、こういう不安定な関係の時の二週間って。マズイかなとは思ったんだけど。
離したくないんだ。
そう、そうだよ。間男してんのは俺のほう。横からちょっかいかけて、余計なことしてんのは俺のほうだよ!
……悪い。……ちょっとイラついてる。
それがさ……ないんだよ、全然。自信なんて……。……いや、俺のほうがいい男だよ? そう思う……思おうとするんだけどさ……。
ガキなんだよ。短気だし。今度のことだって、あいつがヒス起こさずに冷静に対処してりゃ、俺なんかに突けこまれずに済んでんだよ。
話したろ? タイミング見てメールして学校押し掛けて顔合わせたら、勝手にシュラバってくれたって。……バカなんだよ。
……ガキでバカなくせに……。
………………。
……二週間……手離すのが不安で……クギ刺しておかないといられなくて……そう、うん、そいつに会いに行ったんだ。……そうだよ、たいがいバカなんだよ、俺も。
目つき悪くなってるし、頬なんかコケて来ててさ。わざとらしいんだよ、髪もばっさり短くしちゃってて……ホント、どうしようもないガキなくせに……。
……泣かすなって言われたんだよ。……高橋を、泣かすなって。
生意気過ぎるだろ? フラれてるくせにカッコつけんなって思うだろ? カッと来て……気が付いたらさ……高橋、ホントにエロいよなって……どんなふうにイクか、どんな顔するか、どんな声だすか、俺、しゃべってんの。薄ら笑い浮かべてさ。おまえの仕込がよかったんだな、楽しませてもらってる、ありがとうなって……。
……ああ、最低だな。俺もガキでバカだよな。……おまえに言われなくても、自分でも情けないよ。
さあ……どうしようかな。うん? ……ああ、それはないんじゃないかな。かなり怒らせたからさ、ヨリを戻したりとか、そこまではまだいってないような気がする。
……けど、まあ……遅かれ早かれ……かなあ。……ちょっと、いや、かなりかな……切ないね。わかってたんだけどなあ……。
うん……実のとこ、自分でもあんまりきれいに別れてやれる気がしないんだよ。電話一本で別れられるとか、本気で思ってんのかって。笑えたよ。
ああ、やっぱり? 鴻臣も、俺、マズいと思う?
正直ね、こんなハマると思わなかった。
可愛いんだよ。なんかもう……笑わせたくて、泣かせたくて、とにかく俺ひとりのものにしちゃいたくて……。部屋閉じ込めて、俺だけ見て、俺のことだけ考えるようにできないかなとかね、つい……。
……冗談だよ。
冗談だって。
じゃあ鴻臣、一週間に一回、俺の部屋、チェックしに来いよ。
冗談だってば。
……なあ、鴻臣。ひとつだけ、聞いていいか? もし、もしさ……おまえ、先生に本命が別にいて、別れてくれって言われたら……。
おい、そこで溜息つくなよ。
うん。
うん。
うん。
なにそれ。自分は別れられなくても、俺には別れろって。それってダブルスタンダードって言うんじゃない?
ちがわないだろ! なんで……
俺は落ち着いてるよ! 鴻臣が……
………………。
……悪い。実験明けで、たぶん、疲れて……。
ああ。大丈夫。……大丈夫だって!
……うん。……ああ、そうする。風呂入って寝るよ。
悪かったな。
大丈夫だよ、ホントに。ひろちゃんたら心配性。
うん。……じゃあ。
………………。
* * * * * *
つづく