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「躾のなっていない獣だな」
ある程度好き勝手させた後、デウスは嗤ってサタンの黒髪を掴むと、首筋から無理矢理引き剥がした。
「……ぐっ……」
苦痛に歪められる彼の表情に、デウスは首筋から溢れ続ける血もそのままに、翡翠色の目を眇めて嗤う。
「その程度では、私は仕留められんぞ」
やり方を、教えてやる。
穏やかな声音で囁き、彼は掴んだ黒髪を引いて仰け反らせ、露になった白い喉元に顔を……唇を寄せる。
まるで注射前の消毒のように、ぬるりと舌で舐め上げる。
震える喉頭隆起。
そこに狙いを定めると、デウスは徐に皮膚に歯を立てた。
「……が、ぁあ……ッ!」
先ほどまでは確かに無かった、獣のように鋭い牙が、ずぶりとサタンの喉に食い込む。
仰け反る体。ビクンビクンと痙攣を繰り返し、同時に胎内を締め付けデウスの牡を喜ばせる。
彼は牙を喉に食い込ませたまま、相手にとって毒でしかない精をその胎の最奥に叩きつけた。
「……ッ、か、はっ……ッッッッ!!!」
まるで絶頂を迎えた瞬間のように、男の腕の中で痙攣を繰り返す体。
無意識にちがいない。その下肢は大量に吐き出されたことによる結合部から溢れた分だけでなく、自らが放った新たな精で彩を増していた。
鮮血を滴らせて咥えていた皮膚を食いちぎり、溢れる血を浴びてデウスは薄く嗤うと、組み敷いた獲物を見下ろす。
大きく見開かれた瞼。一方は虚空を見上げ、一方の眼球のない空洞からは、赤い血の涙が溢れている。
ごふ、と、濡れた空気音を立てて、開いた唇から血が溢れた。
声帯を潰してしまったのかもしれない。口だけでなく、穴の開いた首筋からも、ひゅーひゅーと息が漏れる音がする。
折角の悲鳴が聞こえない事を残念に思いながら、しかし特に手当てをするでもなく、デウスは加えた肉片を吐き捨てると、血が溢れる喉元に舌を捻じ込んだ。
先程の仕返しのように……下肢を陵辱する動きとあわせ、舌で気管を犯す。
「……ッ!……、!!!」
痛みに喘ぐ喉の動きが、下肢と直結してどちらも猥らにデウスを締め付ける。
「くくっ……やはりお前は、やるよりやられる方が感じるようだな」
口元を返り血で赤く染め、喉に吹き込むようにデウスは囁く。
その間にも、喉から、口から鮮血が噴き溢れ、白い肌を染めていく。
「受け取れ。お前が欲した私の一部だ」
そうして、神の力を帯びた精が、魔王の胎に放たれた。
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