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「レッティ……生きてる?」

 煩い。その声で、その呼び方をするなと言ってるだろう。
 文句を言ってやりたいが、正直、もう、声を出すのも億劫だ。
 全身は相変わらず痛い。
 止血はしたようだが、下級悪魔ではこれ以上治癒することは出来ないだろう。
 それは、目の前の悪魔も分かっているはずだ。

 傷を癒したところで、傷ついた魂は治らない。
 よほどの力がなければ。
 俺の場合、天使であるフィリタスと欠けた魂を分け合っていたから、その絆さえ修復できれば助かるかもしれないが。
 修復のための魔力など俺にはないし、使えるような状態ではない。

「返事してよ、レッティ」
「……うる、さい」

 今にも泣き出しそうな悪魔の声に、俺は掠れた声を出す。
 いや、声が出ていたかどうかも定かではない。
 咽喉が震えた気がしない。もはや、吐息だ。

「ねぇ、僕を受け入れて?
 お願いだから、魔力を受け取ってよ」
「誰が……悪魔の、力など……ッ」

 まして、貴様から。

「このままじゃ、死んじゃうよ!?
 ねぇ、お願い。少しだけで良いから……!」
「……いら、ん……」

 契約もなしに、悪魔が俺を……人間を助けるとは思えない。
 何より、この悪魔に助けてもらう位なら、死んだほうがマシだと思う。
 それくらい、憎い。存在を、認めたくない。

「……レッティ……。
 わかったよ。君がその気なら、悪魔らしく、無理やりにでも受け入れてもらうね」
「何、……を……ッ!」
「何って、キモチイイコト、だよ。
 快楽と引き換えに、魔力を注いであげる。
 してる最中に、死なないようにね?」

 そしたら、魂を食べちゃうから。
 嗤う、楽しげな、声。
 びりびりと、衣服を裂く音。
 冷気が肌を掠め、無意識に体が震える。

「やめ、ろ……ッ」
「イヤだ」

 子供のように短い返事を返され、性急に事を進められる。
 前触れもなく後ろに指をねじ込まれて、痛みに思わず呻く。
 それでも暫く執拗な程に指を動かされたら、意思に反して身体は反応を始めて。
 更に快楽を引き出すように前を扱かれ、否応なしに熱が上がっていく。

「いや、だ……やめろ……ッ」
「止めたいなら、抵抗してごらん」

 できるものなら、ね。
 笑う悪魔の声が憎い。
 分かっていて、言っている。
 俺には、もう、そんな力など欠片も残っていないことを。
 体内の敏感な場所を散々指で抉られ、立ち上がった欲望を手中で弄ばれて。
 俺は少しずつ、思考を快楽に侵食される。

「……、はっぁ……ぁっ」
「もういいかな? いれるよ、レッティ」

 ドロドロに溶かされた内部に、宛がわれる牡の先端。
 その先にある感覚を知っている身体が無意識にひくついて、俺は己をその場で抹殺したくなる。
 当然、動かない身体で、実際に何かを為す術は無い。

「ッ、あ……あぁぁっ……ひぁっ……」

 圧倒的な質量で内部を拡げる楔の熱さに、焼けそうだ。
 ゾクゾクと背筋を走る刺激に、脳髄が震える。
 目を開いても、見えるのは闇。
 自分を抱いているのが誰か、分からない。

 知りたく、ない。



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