= 2 =
「レッティ……生きてる?」
煩い。その声で、その呼び方をするなと言ってるだろう。
文句を言ってやりたいが、正直、もう、声を出すのも億劫だ。
全身は相変わらず痛い。
止血はしたようだが、下級悪魔ではこれ以上治癒することは出来ないだろう。
それは、目の前の悪魔も分かっているはずだ。
傷を癒したところで、傷ついた魂は治らない。
よほどの力がなければ。
俺の場合、天使であるフィリタスと欠けた魂を分け合っていたから、その絆さえ修復できれば助かるかもしれないが。
修復のための魔力など俺にはないし、使えるような状態ではない。
「返事してよ、レッティ」
「……うる、さい」
今にも泣き出しそうな悪魔の声に、俺は掠れた声を出す。
いや、声が出ていたかどうかも定かではない。
咽喉が震えた気がしない。もはや、吐息だ。
「ねぇ、僕を受け入れて?
お願いだから、魔力を受け取ってよ」
「誰が……悪魔の、力など……ッ」
まして、貴様から。
「このままじゃ、死んじゃうよ!?
ねぇ、お願い。少しだけで良いから……!」
「……いら、ん……」
契約もなしに、悪魔が俺を……人間を助けるとは思えない。
何より、この悪魔に助けてもらう位なら、死んだほうがマシだと思う。
それくらい、憎い。存在を、認めたくない。
「……レッティ……。
わかったよ。君がその気なら、悪魔らしく、無理やりにでも受け入れてもらうね」
「何、……を……ッ!」
「何って、キモチイイコト、だよ。
快楽と引き換えに、魔力を注いであげる。
してる最中に、死なないようにね?」
そしたら、魂を食べちゃうから。
嗤う、楽しげな、声。
びりびりと、衣服を裂く音。
冷気が肌を掠め、無意識に体が震える。
「やめ、ろ……ッ」
「イヤだ」
子供のように短い返事を返され、性急に事を進められる。
前触れもなく後ろに指をねじ込まれて、痛みに思わず呻く。
それでも暫く執拗な程に指を動かされたら、意思に反して身体は反応を始めて。
更に快楽を引き出すように前を扱かれ、否応なしに熱が上がっていく。
「いや、だ……やめろ……ッ」
「止めたいなら、抵抗してごらん」
できるものなら、ね。
笑う悪魔の声が憎い。
分かっていて、言っている。
俺には、もう、そんな力など欠片も残っていないことを。
体内の敏感な場所を散々指で抉られ、立ち上がった欲望を手中で弄ばれて。
俺は少しずつ、思考を快楽に侵食される。
「……、はっぁ……ぁっ」
「もういいかな? いれるよ、レッティ」
ドロドロに溶かされた内部に、宛がわれる牡の先端。
その先にある感覚を知っている身体が無意識にひくついて、俺は己をその場で抹殺したくなる。
当然、動かない身体で、実際に何かを為す術は無い。
「ッ、あ……あぁぁっ……ひぁっ……」
圧倒的な質量で内部を拡げる楔の熱さに、焼けそうだ。
ゾクゾクと背筋を走る刺激に、脳髄が震える。
目を開いても、見えるのは闇。
自分を抱いているのが誰か、分からない。
知りたく、ない。
<< back || Story || next >>