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「ただいま」
「早かったの」
炎が消えて、着いた先は、聖都にある教会本部の教皇が持つ私室。
そこで、銀髪の美しい少年は穏やかな笑みを浮かべて二人を迎えた。
「元々の力が違うからね。
ただ、消滅はさせていないよ。数百年は戻れないだろうけれど」
「それでも、とりあえずは安心じゃ」
ホッと肩の力を抜く少年の姿に、キアランは怒りが湧いてきた。
「っんで……余計な事しやがった……」
「うん?」
搾り出すような弟子の非難に、少年は小首をかしげる。
「仮にも聖職者が、悪魔と契約なんて、何考えてんだ!」
「自惚れるな」
激昂する青年に、少年はピシャリと厳しい表情で言い放った。
しかし、直ぐに顔の力を抜いて苦笑を零したが。
「とはいえ、今回の件は、力量を見誤って派遣した私にも非はある。その代償を、支払っただけじゃ」
「その通りだよ。では、そろそろ対価を貰おうか」
穏やかに微笑む男に促され、少年は彼に近づいていく。
「まて! その対価は、俺じゃダメなのかよ!」
思わず叫んだキアランに、リコリスは笑って首を左右に振った。
「これは、私と彼との契約だからね。君ができる事は、そこで、おとなしく見ている事だ」
「余計な手出しはせんで良い」
「……っ」
悔しげに唇を噛むキアランの目の前で、男と少年の距離が近づく。
そして、男は少年の後頭部に手を添えると、唇を合わせた。
長い長い口付け。
「……ん、ふ…ぅ…」
時折、少年の口から小さな吐息が漏れる。
永遠とも思えるようなその接吻が終わると、少年はぐったりと、男の腕の中に力なく倒れこむ。
「!?」
慌てて駆け寄り、その華奢な身体を引ったくるキアランに、リコリスは嗤った。
「心配しなくとも、一日程で目を覚ますよ。
これに懲りたら、暫くは感情で行動する事を控える事だ」
彼はそう言い残すと、黒い炎を呼び出す。
「そうそう、彼に伝えてくれるかな? 君の力は美味しかったよ、とね」
「……、誰が……!」
「ふふっ」
男は、クスクスと笑みを零しながら、少年を大事そうに抱える青年を残し、炎と共に部屋から姿を消したのだった。
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