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「見つけたぞ!」
 地上へ出て、さほど時間を置かず現れたのは、一人の天使。
 太陽の化身かと思うような、美しく眩しい存在。

 リコリスは、笑みさえ忘れて、その存在に息を呑んだ。

 翼は一対。白を基調とした能天使の戦闘衣に身を包み、太陽のような白金色の髪を風に靡かせ、同じような色の瞳が目標を捕らえ攻撃的に煌く。
 男性体であるのは間違いないが、顔立ちは中性的に整っており、今はそこにきりりと引き締まった表情が描かれている。少し緊張したようなその面持ちが初々しく、実に可愛らしく思えた。
 此方に気づいたのだろう。天使の顔が驚きに彩られ、その表情の変化さえ美しく、此方の視線を釘付けにする。
「お前は……?」
 怪訝そうな天使の声に、我に返ったリコリスは、いつもの余裕に満ちた穏やかな微笑を浮かべた。
 そして、問いには答えず、足元に転がる悪魔を指差す。
「君は、一人でコレを此処まで追い詰めたのかい?」
「……そうだ」
 戸惑いは隠せないようだが、返された天使らしい素直な答えに、リコリスは満足して頷く。
「お前は何者だ? いや、その角は悪魔のものだな。ならば……」
「やめておきなさい」
 悪魔を見れば滅するのが、能天使の役目。
 神に忠実であるが故の即戦的な言葉に、上級悪魔は冷笑を浮かべて静止した。
「中級悪魔を追い詰めることができたからと言って、私に勝てる筈も無い。力が違いすぎるからね。
 あぁ、だが、君ほどの力があれば、真名で私の動きを止める事くらいは出来るかもしれないね」
 そう、今は捨ててしまった、遠い昔に呼ばれていた……呼んでいた名前を使えば。
「それに、私は今回傍観者だ。君に手を出すつもりはないし、君の仕事を妨害するつもりもない」
「……リコリス様……ッ!?」
 実質、配下を捨てると宣言した言葉に、中級悪魔が悲鳴のような声を上げる。
 それを冷めた目で見下ろし、リコリスは嗤った。
「自分のミスは自分で落とし前をつけろ、と私は言ったはずだよ」
 そんな目の前の悪魔達のやり取りに、戸惑ったのは天使の方で。
 困惑した表情を隠しもせず、伺うように問うて来る。
「……いいのか……?」
「うん?」
「お前の、部下じゃないのか?」
 問いかけに、リコリスは声を上げて笑った。
「随分と優しいね。
 心配せずとも、私は彼を庇い立てする契約は結んでいない」
 故に、切ろうと思えば、いつでも切れる。
「だが、そんな、簡単に……」
「愚問だね。悪魔の行動基準はその時の気分だよ。
 勿論、情が無いとは言わないが、所詮、その程度だ」



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