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 直視されて羞恥を覚えたユーデクスの頬が、ほんのり桜色に色付いていく。
 真っ直ぐに見下ろすその視線から逃れるように、彼は視線を逸らした。
「そんなに見ないでくれ」
「ふふ。照れているのかい?
 恥ずかしがらずとも、貴方の体はとても魅力的だ」
「ありがとう。だが、流石に凝視されるのは居た堪れない」
「なら、こうしようか」
 アイゼイヤはユーデクスに、寝台の上に四つんばいになるよう促す。
 大人しく従い晒された背中。翼の間を縫って浮き出た滑らかな背骨を指で辿り、震える双丘の谷間に指を埋めた。
「……ッ、……」
 ツプリ、と蕾に差し込まれる指。
 初めての異物に生理的な抵抗を見せ、きつく締まる内壁。だが、滑る何かを纏った指は、ゆっくりと、傷一つつけることなく内部へ侵入を果たす。
「……、はぁ……っ」
 馴染ませるようにゆるゆると動く一本の指に、次第に入り口が解れ、溶かされていく。
 徐々に上がっていく熱が入り口を解す液体を温め、その独特の甘い芳香を立ち上らせる。
「……アイゼイヤ、……これ、は……?」
「蜂蜜だ。人間が、慣れない性行為に使うものだよ。緊張を解す効果もある」
 なるほど、とユーデクスは浮ついた思考で納得する。
 脳を蕩けさせるような、甘く芳醇な香り。
 まるで、春の丘に咲き乱れる花の様な……否、それよりも、もっと気持ちを和らげる優しさと……何処となく体の疼きを覚えさせる艶やかさを持った匂い。
「……ん、ぁ……ぁぁ……」
 体内を擦る指の感触に、ユーデクスの背筋が震える。
 シーツを握り締め、翼を痙攣させて、初めての刺激にただただ酔わされる。
 痛みが無いわけではない。だが、緩やかに、時間をかけて中を馴染ませる行為は、初めての体にも、痛み以上の快楽を与えてくれる。
 指を徐々に増やされ、中をすっかり広げられて、とうとう腕を支えきれなくなったユーデクスは、シーツに顔を埋めた。
 瞬間、鼻腔を擽る、寝台から漂う最愛の友の気配。
 それだけで頭の芯が痺れ、言いようのない幸福感がユーデクスの心を満たす。
「あ、ぁっ……アイゼイヤ……は、ぁっ」
「気持ちが良いかい?」
「わからない……体が……熱くて……」
 体内で蠢く、指。
 記憶にある白く華奢なそれが、この熱を齎したのだと思うと、それだけでゾクゾクと翼が痺れるような刺激を覚える。
「痛くはなさそうだね」
 上気したユーデクスの蕩けた表情をアイゼイヤは覗き込んで確認し、震える翼に顔を埋めるように根元へと唇を寄せる。
 その柔らかな感触に再び翼を震わせる様子に笑いながら、彼はゆっくりと指を引き抜いた。



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