お花シリーズ - すすき11
その後、俺の荷物を取りに職員室へ寄り、さらに彩の荷物を取りに生徒会室に寄って、冷やかしと彩への賞賛を受けた後、
帰路についた。
並んで席に座ると、彩の手が俺の脚に触れる。それが催促されているようで、そっと手を差し出すと細い手に捕まえられる。
人は疎らだし、体と鞄の影に隠れて手を握り合っている姿は見られていないだろう。
中坊のような浮かれた気持ちで、俺はその手を握り返した。
「先生、あのすすきの意味、知ってたんですか?」
不意に問われて、俺は苦笑する。
「いや……実は良くわかってない。
すすきの花言葉は、『勢力』とか『活力』だが……」
「なんか……似合うのか似合わないのか、良くわからない花言葉ですね」
「まぁな。
それで、嶋津の言う意味はなんだったんだ? 花言葉じゃないんだろう?」
彩はこくりと頷くと、可愛らしく首をかしげた。
おいおい……今時、女子高生でもそんな可愛い仕草はしないぞ。もっとも、似合うから可愛いのだが。
「えっと、金山先輩に教えてもらったんですけど……」
「うん」
「すすきの頭を取ったんです」
……説明になっていない。
「すすきの、穂を取ったんだろ?」
「違います。『すすき』の単語の頭を取るんです。植物だと『穂』を取ると『茎』が残るけど……頭文字だと別の意味に変わるでしょう?」
すすきの頭……『す』?
あぁ、そういうことか。
「す・すきの頭を取ったら、『すき』だな」
わざと耳元で、周囲に聞こえないよう囁いてやると、彩は顔を真っ赤にして小さく頷いた。
本当に、可愛い。
列車の下車駅を告げるアナウンス。止まる電車に、俺は彩の手を握ったまま立ち上がった。
「ほら、降りるぞ」
「わ……せ、先生……っ」
羞恥と焦りに慌てる彩の手を笑って解放し、俺は歩き出す。
本線と単線が重なる総合駅。この駅で俺と彩の帰路は分かれることになる。
「じゃぁ、また明日な」
「はい。あの、先生……」
「ん?」
「明日、一緒に学校に行ってもいいですか?」
時間はわかってるから……おずおずとそう問いかける彩に俺は笑う。
いつの間にチェックされていたんだか。まぁ、俺も彩の校内での行動を一々チェックしている以上、人のコトは言えないのだが。
「構わないが、俺の朝は早いぞ」
「がんばりますっ」
勢い込む可愛い『恋人』の頭を、俺はかき回すように撫でた。
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