お花シリーズ - すすき7

「ごめん。俺、彩の落ち度が見当たらない。だって、寂しい花瓶に花生けただけだろ?」

 今考えられる一番の原因である、先生の花瓶に花を生けた話をすると、昴先輩はそう言った。

 それはこの場にいる全員が同じ意見のようで、みんなしきりに不思議がっている。

「うーん。他に、何か思い当たること、ない?」

「特には……」

 立未先輩が首を傾げて聞いてくるけど、僕には何も思い浮かばず、首を左右に振ることしか出来ない。

 僕が説明を始めて直ぐ、五十鈴君に呼び出された真弥と入れ替わるように部屋に入ってきた、書記の金山(かなやま)先輩が唸り声を上げる。

 先輩はその筋では有名なカメラマンらしくて、あまり生徒会室にはこない。珍しいな……と思っていたら、聖先輩に言われて書類に目を通し始めた。

 どうやら、仕事をしろと呼ばれてきたみたい。

 先輩は、書類から顔を上げて気だるげに口を開いた。

「花言葉、じゃねぇの?」

「花言葉?」

 思いもよらなかった言葉に、僕はびっくりする。

「だって、好きだろ。司っち。

 花なんか貰ったら、まず一番に考えるんじゃねぇ? ましてや、好きなやつから貰ったんなら、尚更その理由考えるだろ」

「さすが、ショタコン!」

「かんけーねぇよッ! 当然の心理だろ!!」

 昴先輩と金山先輩が喚きあってるけど、僕は未だびっくりしたまま言葉が出ない。

 そうか……花言葉、が、あったんだ……。

 考えもしなかった。

「まぁ、金山がショタで犯罪者なのはこの際ともかくとして」

「オイ。原、てめぇ……」

「花言葉ってのは良い着眼点かも。調べてみようか」

 後ろで凄む金山先輩を完全に無視した立未先輩に誘われて、僕は戸惑いながらも頷く。直ぐに、聖先輩がパソコンを動かしてくれた。

「花の名前は?」

「セキチク、です」

 聖先輩の問いかけに、僕は答える。

 家の……花屋で、売れ残っていた物の中でも、綺麗で可愛い花を選んだんだ。その札には、そう書かれていた。

「セキチク……これだな」

 画面に向かっていた先輩は、直ぐに見つけたらしい。

「……?」

 けれど、それ以上何も言ってくれなくて、僕と立未先輩は顔を見合わせる。

 ちなみに、昴先輩と金山先輩は罵りあいの真っ最中。僕達の方は見ていない。

 あまりに固まったまま動かないので、立未先輩が聖先輩の肩を突いた。

「聖?」

「あ? ……あぁ、うん。

 セキチクの花言葉は、『私は貴方が嫌いです』だ」

「……え?」

 画面を見て、抑揚の少ない声で告げられた聖先輩の言葉に、今度は僕が固まってしまう。



 ワタシハ アナタガ キライ……嫌い?


  
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