lucis lacrima - 2-4
ジャラリと重い鎖の音。息苦しさに仰け反り開いた口腔に、太い牡が捻じ込まれる。
「……ふ、……ぅっ」
薬に犯された頭はズキズキと痛み、それが何であるか認識しようとさえしない。ただ、教え込まれた通りに、舌を動かして無心に舐め啜り、喉でそれを扱く。
きつく戒められ、根元を堰き止められた哀れな牡。それを容赦なく握られ、クロエの身体が大きく跳ねた。
「……んっ……ァッ」
痛いのか、気持ちがいいのか、よく分からない。ただ、ドロドロとした熱に犯された身体は、与えられる刺激も痛みも全て糧として更に熱を孕んでいく。
更に背後から深く胎内を穿たれ、彼は狂嬉の啼き声を上げた。
同時に降り注ぐ、複数の下卑た笑い。
「随分と上手に上の口も使えるようになったな」
「我々の教え方が良いんですよ、ねぇ?」
問われたところで、青年に答える術など無い。口は男のモノに塞がれているし、何より薬に侵された頭は鈍い痛みと強烈な快感と共に彼の思考を完全に奪っている。
今やクロエは人間ではなく、性処理の為の飼い慣らされた獣だった。
錠に繋がれて、手足の自由を奪われ。無心に口内の肉棒を舐め啜り。後ろに咥えた男に自ら腰を振って刺激を求める。
性に溺れた、哀れな獣。
口から銜える物を引き抜かれると、名残惜しげに舌が追う。直後、青臭い生暖かな粘液が彼の顔全体に放たれた。
「は、ぁ……ッあァ!!」
その暖かさに浸る間もなく、今度は背後の男がクロエの中に同じ液を放つ。
「……んんっ……」
引き抜かれた穴からは、幾人と幾回となく繋がった名残が溢れ、灰色の床に小さな白い沼を作る。それは後から後から落ちてくる猥らな雫に、徐々にその幅を広げていった。
それを止めることも出来ず、ぐったりと身体を弛緩させたクロエは、掠れた声で周囲の男たちに懇願する。
「も……ゆるし……いかせ、て……」
塞がれた視界を緩々と上げて、濡れた声で請う。
この狂乱の宴が始まってからずっと、マグマのような欲望は堰き止められたまま。今も、身体の中で行き場を無くしてうねり続けている。
何度許しを請うても、男たちは決して手を差し伸べようとしないのだ。
「……おねがい、します……いんらん、な……メスいぬを……いかせ、て、くださ……おねがい……しま、す」
恥も自尊心も、何もかもを捨てる。嘗て教えられた通りの言葉を口にし、ただ気の狂いそうな熱を持て余して強請る。
これ以上焦らされたら、壊れてしまう、と。
弱々しい、今にも事切れそうな様子の玩具に、男達の一人が鼻で笑う。
「そろそろお開きですかね」
「そうだな」
口々に同意する声。
クロエは、真っ暗な視界の中で複数の気配が身支度を整えるのを感じる。
漸く、この狂った『会議』が終わるのだ。
だが、自分の熱はまだ解放されていない。
「後は若いもん同士で楽しんでくれたまえ」
「いやはや、今日も良い運動でしたな」
「全くだ」
先程までの異常な熱気が嘘のように気楽な言葉を残し、複数の気配が階段を上へと遠ざかっていった。
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