lucis lacrima - 4-6
「……んぁ、アァァ、ァ!!!」
手を握られて安心したのだろう。直ぐに、一際高い声を断続的に上げて、ハクビの身体が痙攣を繰り返し、同時に、若い男の体液がフェイの口腔に放たれた。
それを飲み干して、フェイは荒い呼吸をつく青年の顔を笑って覗き込んだ。
「気持ちよかっただろう?」
「ん……」
髪を掻き上げる自分よりも大きく節くれだった手の感触に目を細め、ハクビは素直に首肯する。そうして、肌寒さからだろうか。握ったままだった手を離し、腕をゆるゆると上げてしがみ付くと、その下半身を男の足に摺り寄せた。
「……足りない……」
そう囁いて。仔猫のような仕草で、男の肩に頬を摺り寄せる。
「初心なのか、手垂れなのか、どっちかにしろ」
苦笑いを浮かべれば、熱を持て余した青年は不思議そうに、無垢な表情で首を傾げた。
こりゃ駄目だな、と諭すのは早々に諦めて、フェイは組み敷いた身体を仰向けに反す。
「……フェイ?」
「言っただろ? 女側の苦労も知っといた方がいいってな」
顔の見えない体勢に不安げな声を上げるハクビに、男は笑みを含んだ口調でそう言って、上に圧し掛かる。髪を掻き分け覗く白い項に口付けを落とせば、未だ熱の篭る体は震えて歓喜した。
「……ぁ……」
「ホントは、花の蜜とか石鹸とかあると良いんだけどな」
呟いて笑った手馴れた男は、組み敷いた青年の中心を扱いて熱を集中させると溢れ出た透明な蜜を掬って後腔の襞に塗りこめる。
今まで誰も触れたことのない場所に滑る感触を得て、ハクビは違和感ともどかしさに腰を揺らした。
「力、抜いとけよ?」
そんな男を煽る無意識だろう仕草に笑いを零しながら、フェイは一本、その節くれだった太い指を中に潜り込ませた。
「……痛いか?」
強張る体をあやす様に、空いた手で頭や頬を優しい手つきで撫で、フェイは問いかける。
薬のせいだろう。思ったよりも抵抗なく受け入れた部分は、傷つくことなく、独特の締め付けと暖かさで彼の指を包んでいる。
寝台に顔を埋め、腰だけを軽く浮かせたハクビは、フェイの予想通り、首を左右に振って否定した。
「いたく、ない……けど、なんか、ヘン」
「慣れろ。これから、もっとぶっといモンを此処に突っ込むんだからな」
「……っ、」
中に入れた指を緩やかに蠢かせてやれば、苦痛ではない感覚に眉を寄せた青年は息を呑む。
その表情は、純粋で無垢な中に堪らない色気を放っていて、フェイの男を更に煽った。少し動きを早めて入り口を解すと、一度指を引き抜き、唾液を絡ませて二本目も挿入する。
「……ゃッ、……!」
途中、指先にシコリの感触を得た瞬間、一際大きな声が上がり、中が大きく扇動した。
男が尤も感じる場所に当たったのだと経験で気付いたフェイは、ハクビを再度絶頂させないように、しかし効率よくそこを利用して中を広げていく。指三本が入るぐらいまで、今の自分に出来る精一杯の時間をかけて、誰も穢した事のない場所を広げ緩めてやった。
「フェイ……も、ゃ……くるし……」
口で含まれた時とは違い、焦らされるもどかしさを感じているのだろう。涙声で訴える声に、フェイも限界を感じる。
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