lucis lacrima - 4-8
突き上げる動きに合わせて声が迸り、結合部分からは次第に濡れた音が響きだす。
「や、ぁ……フェイ……ッぁ、ん、……くぅ、あッ」
苦しいだけではない快楽の滲む声は、フェイを、そしてハクビ自身を煽り、追い上げていく。
「初めての癖に、気持ち良さそうな声出すじゃねーか」
「わか、な……ぁ……中、すご……ひぁ……っ」
言葉でからかわれても、ハクビは羞恥すら感じる余裕もなく喘ぐ。
勿論、これだけ快楽に溺れるのは薬の所為だという事はフェイも忘れていない。それでも、これ程素直に溺れていく姿を見ていると、つい言葉にしたくなったのだ。
否、言葉にしないと、自分が溺れてしまいそうで怖かった。
それくらい、余裕がなかった。
「ハクビ……可愛いよ、お前」
熱に浮かされ、普段なら想像もつかない言葉を口にしてしまうほど。
「あ……ッ、や、……フェイッ……フェイ……ッ!」
「中に、出すぞ……ッ」
聞いていないだろうと知りつつそう宣言し、同時にハクビの中心を扱いて追い上げる。
上り詰めるのは早かった。
「っ、ゃ、アァァ、ァァッ!!」
「……くゥ、ッ!」
きつく手を握り合い、身体をこれ以上なく密着させて殆ど同時に極みまで昇り詰める。暫く互いに痙攣し、余韻が去るのを待った後、どちらともなくドサリと重い身体を寝台に投げ出した。
拍子に、ズルリと繋がった部分が離れる。その微かな刺激に深い息を吐いて、二人は汗ばんだ身体を密着させて互いの熱い温もりに無意識に安堵する。
「大丈夫か?」
「……ん、平気……」
仔猫のように広く逞しい腕に頬を摺り寄せ、ハクビはぐったりと身体の力を抜く。フェイは逡巡した後、結局弛緩したその身体を抱き寄せてその場に身を落ち着けた。
いつの間にか周囲は真っ暗になり、蝋燭の明かり一つない部屋は闇が支配する世界になっている。普段からは想像もできないその暗い部屋で、しかしハクビは疲労の濃い溜息を漏らすだけで、いつものような息苦しさはさほど感じなかった。
薬の熱も、大分醒めている。あるのは、気だるい情事の後の余熱と、闇によって齎される体力を奪っていく熱だ。しかしそれも、いつものような息苦しさはなく、ただ眠りへと誘う睡眠導入剤のような役割を果たしている。
優しく頭を撫でる男の手に安堵しながら、ハクビはうとうとと意識を浮遊させる。
「灯り、つけるか? あと、服も……」
「いい……いらない……」
問いかけに、夢現で答える。
何もいらない。ただ、今の心地よい疲労感と男の温もりが誘うまま、早く深い眠りに落ちてしまいたかった。
「……そうか」
すぐさま返った答えにそれを感じ取ったのだろう。フェイはそれ以上問いかける事はせず、シーツだけを手繰り寄せ互いの身体に被せると、ただ暖かい温もりで二周りは小さい身体を包み込む。
訪れる静かな時間。
そうして、二人の意識はゆっくりと互いの世界へと堕ちていった。
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