lucis lacrima - 6-15
「……ん、ふ……ぅ……」
飲み込むのを忘れられたクロエの唾液が銜えた男の竿を伝い、怪しく暗闇に光る。
初めて、隊長達の餌食となっていた事に感謝した。相手に快楽を与えるための愛撫は、間違いなくそこで身に付いたのだから。
他でもないこの男が、自分の手によって気持ちよくなっていると思うと、体の奥からむず痒い喜びが湧き上がってきて、若い青年の体を熱くさせた。
罪悪感が消えたわけではない。自分が幸福を覚える事に戸惑いもある。
だが、少なくとも今この瞬間は。目の前の男に拒否される事のないこの体は、穢れていないのだと、触れても求めても良いのだと、認められた気がして。
丁寧な愛撫を続ける青年の服に、シラナギの手が掛かる。されるがままに、それでも愛撫の手を休めることなく服を脱がしてもらう。
器用に上下全ての衣服を脱がせていく男の手腕に、流石と感心すると同時に、少し悔しくなった。
手馴れたその手は、彼がその手の経験が豊富であることを示している事に他ならないのだ。
クロエは動きを止めると、顔を上げて男の顔を見た。
「シラナギ」
「何だ?」
「……気持ち、いい?」
「あぁ」
不安げな、少し拗ねた色を隠した青年の瞳を、闇色の目が愉快げに見る。
節くれだった大きな指が頬を撫で、首筋から鎖骨にかけて滑り落ちると、燻っていたクロエの熱が一気に燃え盛った。
彼はシラナギの手を掴み、その指を口に含んで舐め啜る。
「……入れて、いい?」
「自分で出来るのか?」
「俺を、誰だと思ってるの」
クロエは自嘲を含んだ笑みを見せると、脱がし残したシラナギの衣服を全て剥ぎ取ってベッドの上に座らせる。
自分で指を宛がい軽く後ろを解すと、胡坐をかいた男の体を正面から跨ぐようにして膝立ちになり、ゆっくりと腰を落とした。
指で解した部分を確かな質感が圧迫する。襞を解してゆっくりと先を進めていくと、不意に男が細い腰を掴み、膝裏を掴んで足を払った。
「う、わ……ッ」
自分の体重を持って、意識せず男を深く飲み込む。
まだ慣れていない内部を一気に擦られて、激しい痛みを感じた。
だが、それ以上に深部まで先端が到達する刺激に息を呑み、背筋が快感に痺れる。
「な、に、するんだよ……っ」
涙目で睨めば、シラナギが意地の悪い笑みを浮かべて、抗議の声を上げる青年の背を骨に沿ってなで上げる。
いつにない楽しそうなその表情に思わず見とれながら、クロエは快楽に身悶えた。
「クロエ」
耳元に囁かれる低い声に、肩にしがみ付いて瞼を閉じる。
その表情をどう思ったか、シラナギは更に繋がった細い体を抱き寄せて囁く。
「傍にいる。大丈夫だ」
「……ッ、」
クロエはその囁きに、益々瞼が開けられなくなった。
瞼の奥が熱を持って、開けた瞬間に涙が溢れそうな気がしたのだ。
だが、青年の願い空しく、閉じた瞼の隙間から雫が零れ落ちて男の肩を濡らす。
シラナギは敢えてそれに気付かないふりをして、小柄な体を下から突き上げた。
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