lucis lacrima - 7-10

 裏切られた、と、心の中の愚かな自分が血を流して叫ぶ。



「……ぁ、は、……んぁっ!」

 男に背後から獣のように犯され、ハクビは悲鳴のような嬌声を上げる。



 馬鹿馬鹿しい。

 裏切られたんじゃない。あの男が反乱を起こす事など、初めからわかっていたことだ。

 この状況を想像できなかった自分が、馬鹿だっただけ。勝手に、あの男がこんな事を許すはずがないと思い込んでいた自分が愚かで、ほんの少し男の救いを期待した自分が女々しい人間だったというだけだ。



 現状に傷つき見えない血を流す己の心を叱咤するように、ハクビは自分を罵る。

 フェイに許可を得た。そう告げた兵に犯されて以来、代わる代わる見知らぬ男がこの部屋を訪れ、彼を女代わりにしては欲を散らしていった。

 同時に複数人の男に嬲られた時もある。死ぬかと思うほど、長い長い制欲の果てに解放を乞うた時もある。

 多分、監禁されてから3日ほどしか経っていないはずだ。

 だが、ハクビにとって、それは永遠にも似た悪夢の時間だった。



「……やぁっ……!」

 胸の尖りを抉るように捻られ、痛みとそれを上回る快楽に声が上がる。

 その声に心は無い。

 ただ、反射的に上がるだけの嬌声でしかない。

 同じように、反射で締め付けた内部に、何人目か分からない男の体液が注がれる。

 溢れて腿を伝うそれに微かな嫌悪を覚えるが、拭う気力も体力も、既に彼にはなかった。

 同様に、衣服を身につける気力も。最初に犯されてから、結局一度も衣服は身に着けていない。

 玩具にされた後は泥のように眠り、目覚めた時は再び玩具にされる時だ。

「おい、まだくたばるなよ。今度は俺の番だ」

 頭上で声がする。

 虚ろな目が見上げる前に、細く白い腕が引かれ、息つく間もなく再びうつ伏せの状態で背後から貫かれた。

「……ぁ……ッ」

 背筋を走る電流のような刺激に、背が仰け反る。

 同様に中が軽く締まり、男を悦ばせた。

「なかなかいいぞ。ほら、その調子だ」

 嗤いながら、男はガンガンと突き上げる。

 疲弊した体を揺らしながら、ハクビは不意に小さく口端を緩めた。

 それは彼を犯す男には気付かれないほど、小さな、小さな変化。

 ハクビは、人形のような無表情に、虚ろな瞳のまま、嗤った。



 この期において、まだ、フェイを信じたいと思う、そんな愚かな自分を、嗤った。


  
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