lucis lacrima - 7-4
部屋に響いたノックの音に、ハクビは顔を上げる。
丸めるようにしてベッドに寝転んだ体が、軋んで痛い。どうやら、あの後、考え込んで眠ってしまったらしい。
いつの間にか、ベッドに倒れこんだのだろう。
中庭から入る眩しい太陽の光に、ほんの少し体が楽になって、思わず安堵の吐息を漏らした。
ノックの主である反乱兵らしい若い男は捕虜の返事など聞かず、勝手に扉を開けて中に入ってくる。
ソファのテーブルに置かれたのは、簡易な食事を乗せたお盆。パンと、スープのようだ。
それほど食欲は無かったが、何も食べずに倒れるわけにはいかないな、そう思いながらボンヤリと男の動きを眺めていると、出て行くと思っていた男は真っ直ぐにハクビの方へ向かってきた。
それを不思議そうに眺めていると、男は下卑た表情を浮かべて突然、若い神官の体をベッドに押し倒した。
「ちょ……何するんだよ!」
一呼吸遅れて、ハクビは必至の抵抗を始める。
だが、鍛えられた男の力を前に、護身用の技術しか持っていないひ弱な体力が適うわけがない。
「食事の前の軽い運動だよ」
「離せ……ッ!」
身をよじり、手足をバタつかせ逃れようともがく。男は激しい抵抗に辟易しながら、それでも腕を掴むと用意した鎖で頭上に一纏めにした。
「あんまり暴れるなよー。隊長には、傷つけるなって言われてるんだからよ」
「ふざ……けるな……!」
「丁重に扱ってるつもりだぜ? お前が暴れさえしなけりゃな」
言いながら、男はハクビの足を上に跨いで抵抗を抑え込みながら、その白い服を剥いでいった。
途中、纏めた腕が服を脱がすのに邪魔だと気付くと、腰の剣で器用に、容赦なく布を引き裂く。
「や、だ……やめろ……」
露わになった胸を男の生暖かい滑る舌が伝うと、そのおぞましさに声が震えた。
だが、それを楽しむかのように男は残酷な笑みを浮かべ、更に下半身へその手を伸ばしていく。
「冗談、じゃない」
「あぁ、冗談じゃないさ。
うんと気持ちよくしてやるよ、隊長以上に、な」
「隊長……?」
男の下卑た笑いよりも、彼の口から出た言葉に疑問を覚えて聞き返す。
直後、返って来た言葉に、ハクビは己の問いかけを激しく後悔した。
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