魔王と救世主 - 2-7

 白い体に、ポタポタと穢れた滴が落ちる。

 それを満足げに眺めた魔王は、白く濁る滴で滑る指を、覆うもののない双丘へと伸ばした。

 お楽しみはこれからと言わんばかりに、楽しげに。

 柔らかな手触りを白濁で穢しながら、後孔へ指を一本、静かに埋め込む。

「……ッ、……」

 感じたことのない違和感と、微かな痛みに綺麗な顔が歪む。

 それをじっくりと眺めながら、魔王はゆっくりと、しかし容赦なく指で襞を解していった。

 整う隙さえ与えられぬまま繰り返される、荒い呼吸。

 じっとりとした湿り気を伴った、独特の熱気。

 僅かな汗をかき始めた救世主の肌に触れる魔王の手もまた、欲情の汗をかいて若干の湿り気を帯びつつあった。

 余裕を持たせた長い鎖が擦れる音を聞きながら、強制的にうつ伏せの体勢を取らされた救世主は、シーツに顔を埋め、自分の体が少しずつ、変えられていくのを感じる。

 体の奥から湧き上がる、疼くような熱。

 違和感と痛みと痺れるようなその感じは、解放したばかりだというのに芯を失わない中心が『快楽』であると知らしめる。

「……は、ぅ……」

 体内から、ゆっくりと焦らすように指が抜けていく。

 長い長い、指の蹂躙から漸く開放されたと思ったのも、つかの間。

「入れるぞ」

 一度開放し、中途半端に高ぶる若い牡を掴んで再度強い刺激を与えながら、魔王は救世主の背中に身を押し付ける。

 回答など、初めから求めてはいない。

 無言を返す救世主の中へと、猛る自身を捻じ込んだ。

「……くぅ、ぁ……」

 苦しげな声。無意識に逃げようとする体に合わせて響く、鈍い金属の音。華奢な体を押さえ込み、魔王はぐいぐいと奥へと腰を進めた。

 狭い。このまま食いちぎられるのではないかと思うほど、キツイ締め付け。

 美しい容姿に色々想像もしたが、良い方に期待は裏切られたらしい。まぁ、経験豊富な男など、そう居るわけもない。

 確実に、初物だ。

「……切れるかもしれないな」

 冗談交じりに言葉を零しながら、それでも止めることなく最後まで収めきると、魔王は溜息を一息ついた。

 やはり、狭い。だが、丹念に準備したのと、ゆっくりとした挿入で、傷は付かなかったようだ。

 額から汗を落とし、苦しげに酸素を求めて喘ぐ相手の呼吸が落ち着くのを待って、魔王は腰を軽く振った。

「……ッぅ、ぁ……」

 無理やり振動を与えられ、シーツに埋もれた顔から呻き声がもれる。

 やはり、快楽とは程遠いらしい。


  
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