魔王と救世主 - 2-8

 散らし乱れた銀糸が小刻みに震えているのを見て、魔王は苦い笑みを浮かべた。

「苦しめたいわけじゃぁ、ないんだがな」

 呟きは青年に届いただろうか。

 魔王は諦めたように目を伏せて、未だ青年の牡に絡めたままの手を上下に動かした。

 完全に萎えていたそれが次第に力を取り戻し始め、魔王を受け入れた内部が煽動を始める。

 流石に後ろだけで気持ちよくなるには、まだ時間がかかるだろう。

 だが、少し手を添えて快感を促してやれば、手の中の欲望は張り詰めて蜜を零す。

 時間を掛けさえすれば、この体を調教するのは容易に思えた。

「いい子だ」

 身を屈めて快楽と痛みに堪える子羊に、狼は背後から優しく声を掛けてやる。

 すると、シーツの奥から、小さな呟きが返ってきた。

「……あ、つい……」

 それは、青年が此処に来て初めて零した、弱音。

 魔王は返ってきた言葉に気を良くして、中を探るように小刻みに腰を揺らす。

 相変わらずキツイ内部は少しずつ柔らかさを増し、馴染み始めている。

 やがて奥のシコリに先端が当たり、銀糸の流れる白い背骨がビクリと跳ねた。

「……ぁあっ……」

 上がる甘い嬌声。弱さをさらけ出した救世主に、魔王は唇を歪めて食らいつく。

 重点的にそこを抉り、強制的に快楽へ墜とす。

 さらに、手の中の今にもはち切れんばかりの牡を丁寧に扱き、耳朶に歯を立てた。

「熱いか?」

「……あ、ぅ……」

 問われた獲物は、首を微かに上下に動かす。

 熱かった。

 まるで、焼けた鉄を打ち込まれたかのように、繋がった部分が熱く焼け爛れそうな錯覚を覚えて。

 痛みはある。

 だが、それだけではない何かが、確かに救世主の体を支配しようとしている。

「……おなか、あつ……ぃ……」

 子供のような口調で搾り出すように呟く子羊の様子に、狼が歓喜の牙をむく。

 体内で更に逞しさを増した牡に、組み敷かれた側は甘い悲鳴を上げた。

 たすけて、と言わんばかりに締め付けられ、堪らず魔王は熱い飛沫で救世主の中を穢す。

「……っく、ぅ……」

「……あぁ、あ……ッ」

 熱いマグマのような熱が、体内に溢れ満ちる。

 後ろからきつく抱きしめられながら、救世主もまた、促されるままに二度目の精を放ったのだった。


  
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