魔王と救世主 - 3-5

 魔王は、救世主を軟禁する部屋に来ると、必ずと言って良いほど、捕虜をベッドに拘束した。

 どうも彼は、暇があると鳥や獣などを狩りに出かけているらしい。今日は、大きな鴨を仕留めたと楽しげに報告してきた。

 そして、子供のように自慢げで得意げな報告とは裏腹に、手馴れた動きで衣服を脱がすのだ。

「……、……」

 ちゅ、と音を立てて、胸の飾りを口に含まれ口内で転がされて、救世主は息を乱す。

 抵抗などする気も無いのに、手首を一まとめにして頭上に縫いつけ、開かせた足の間に体を滑り込ませて、今日は執拗に胸を弄っている。

「反応してるな」

 圧し掛かる体に当たるのだろう。硬くなった青年のモノをそう揶揄して魔王はわざと体を擦り付け、端整な顔が歪む様を楽しむように見下ろす。

 そして、再び胸の小さな粒に齧り付いた。

「……っ、ぁ……」

 堪らなかった。

 胸を弄られるだけで、こんな風になるなど知らなかった。

 その上、力を増した中心を体全体でもどかしく擦られると、数日間快楽を与えられ続けて慣れ始めた体は、無意識にその先を欲して腰が揺れた。

「……欲しいのか?」

「…………」

 楽しげな赤い目と、快楽に潤む赤い目が交錯する。

 刺激が欲しい……その思いは伝わっているはずなのに、金髪の青年は嗤うだけで、それ以上何もしてこない。

「ほら、ちゃんと口で言えよ」

 卑猥な言葉を要求しているのであろう魔王に、求められた側は言葉が出ない。

 もとより、話すことが苦手で、何より自分の要求を口にすることなど滅多になかったのだ。

 一体、どうしたらいいのかわからず、救世主は助けを求めるように自分に圧し掛かる男を見上げた。

 その頼りない瞳に魔王は庇護欲をかき立てられ、苦い笑いを浮かべて助け舟を出してやる。

「扱いてほしいのか? 舐めて欲しいか?

 ……それとも、いつものように後ろを弄って欲しいか?」

「……、……しご、いて……ほしい……」

 小さな声で漸う強請った青年の中心を、魔王は空いた手で握りこむ。

 そして、要望どおり上下に手を動かしてやると、甘い声で青年が啼いた。

「……ぁ、あ……っ、……」

「イイか?」

 問われても、それがどうイイのかわからない。

 ただ、求めた刺激を与えられて、救世主は銀糸を震わせながら、あっけなく頂点に達した。

「……っぁ……イ、くッ……あ、ぁぁっ!!」

 教えられたとおり、その形の良い唇に卑猥な宣言を乗せて、背をのけぞらせながら、ビクビクと痙攣を繰り返す。

 壮絶な色気を放った開放の瞬間の顔から一変、余韻に呆然とする甘い顔へ変わる。
 その綺麗な表情の変化を楽しみながら、魔王は赤い瞳から零れた涙を舌で掬う。

「甘いな」

 舌で頬を舐められる甘やかな刺激に身を捩る様子をも楽しみながら、魔王は今度は自分の番、と言わんばかりに、後腔に指を差し込んだ。


  
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